2023年3月1日水曜日

アラブ人が伝えた中世後期の米はヨーロッパでは食べ物で、薬で、魔法だった。ロンバルディア人にとっての米はナポリ人のトマトに匹敵する。

今日はヴィチェンツァ生まれ(1965)で、マルケージやデュカスを始めとする内外のグランシェフの元で働いて、イタリアを代表するシェフとなったカルロ・クラッコシェフが書いた初心者向きのイタリア料理の本から、リゾットにまつわる話を訳してみます。

彼の本は、どれも個性的なタイトルですが、『È NATO PRIMA L'UOVO O LA FARINA?(卵が先か小麦粉が先か)』という本は、基本的な食材ごとにシェフの考えが書かれています。
食材の中には“米”もあります。
 クラッコシェフは、米について、歴史の古い穀物で大昔に遠くの国から伝わった、と語っています。彼が語るのは、ヨーロッパのシェフから見た米の歴史です。
米は境界上の食べ物で、栄養源で、薬で、魔法だった、と語っています。なんだか米がファンタジーな食べ物になったみたいで楽しいですが、この発想はちょっとなかった。
そして米の栽培を伝えたのは地中海全域に勢力を広げつつあったアラブ人でした。
イタリアでは、まずシチリア、そしてプーリアと、水が豊富な南部に普及します。そして15世紀になると強力な領主が土地を水田化した北イタリアにも伝わります。まずロンバルディア、そしてパダナ平野全域でした。
 北イタリアではすぐに米が広まったが、小麦栽培が主流の南では変化はゆっくり進みました。現在、米は地中海料理の柱の一つで、パンやパスタに匹敵するものです。リゾットはイタリア料理のシンボルの一つとして世界中に認められています。私のベースとなる料理のようなもので、北イタリアのスペチャリタで、私はリゾットと共に育ったと言えます。リゾットには伝統が込められているので、料理人の腕前が披露される料理とも言えます。メニューにリゾットを載せるということは、シェフの考え方を披露するということになります。
 さらに地域性もあります。米は北から南に移動するにつれて徐々にほかの穀物に取って変わられます。例えばトスカーナや中部イタリアではファッロや大麦が普及しました。さらにターラントやバーリではリゾットではなく、ムール貝やじゃがいもと組み合わせて他の料理が作られました・・・。
 アラブ人の登場から、南イタリアの名物料理まで、米を語らせたらトマトを語るナポリ人に匹敵するくらい、熱く語る北イタリア人でした。

イタリア食物史~《米》。

ロンバルディアのリゾット・ミラネーゼはサフランと牛の骨髄を使う高価な食べ物で、ベネトの米のミネストラは残り物から造る質素な食べ物、と言ってますねー。しかも質素な食べ物というイメージが南イタリアでは確立してしまい、あまり広まらなかったようです。

米、ポロねぎ、じゃがいものミネストラMinestra riso patate e porri

材料
米(オリジナーリオ)・・120g
じゃがいも・・600g
ポロねぎ・・500g
にんにく・・1かけ
サフラン(ホール)・・一つまみ
野菜のブロード
パルミジャーノ
EVオリーブオイル・・大さじ3

・鍋に油少々とにんにくを熱する。
・ポロネギは緑の部分を取り除いて小口切りにする。
・油からにんにくを取り除いてポロネギを加え、焦げないようにソッフリットにする。
・じゃがいもを小角切りにして水にさらす。
・熱い野菜のブロード1/2カップにサフランを溶かす。
・野菜のブロード少々で鍋底をデグラッサーレし、じゃがいもを加えてなじませる。
・野菜のブロードで覆い、蓋をして沸騰させる。
・サフラン入りブロードと米、塩を加えて(オリジナーリオ米はミネストラに最適の小粒の品種)10~12分煮る。煮上がる4~5分前に火を止めて休ませる。
・器に盛り付けてパルミジャーノを散らす。

この料理を質素と考えるかゴージャスと考えるかはブロードの違いでしょうか。
ブロード・ディ・カルネ。

クラッコシェフの本、『クールにしたいならエシャロットを使う

からブロード・ディ・カルネのリチェッタをどうぞ。

・玉ねぎを半分に切ってクローブ2個を刺す。油を引かずにフライパンで切り口をトーストし(澄んだブロードにするため)、セロリ、にんじん、ポロねぎ、イタリアンパセリのブーケガルニ(好みで)と一緒に鍋に入れる。
・水5ℓ、牛骨付きあばら肉1㎏、粗塩約30gを加え、表面に浮いたあくを取りながら3時間ゆでる。
・野菜と肉を別々に取り出して冷ます。
・日付を書いて冷凍してもよい。
・肉が冷めたら余分な脂身を骨から取り除き、ジュリエンヌに切る。野菜も同様にする。
・オリーブとケッパーを散らし、油少々を回しかけ、塩、こしょうしてサラダにしてもよい。

下の動画では牛の骨髄を切り出しています。お肉屋さんの本気を見た・・・。しかもネアンデルタール人の狩りまで引き合いに出して熱く語ります。骨髄のことを。魚食べてる民族にはついていけないレベル。感動しました。


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