2020年1月31日金曜日

料理人の守護聖人、聖ロレンツォとパッパルデッレ

それでは今日は、キアンティ地方のオステリアのパスタのリチェッタを

オステリエ・ディ・イタリア新版

から訳します。
トスカーナのパスタは、いつも問題です。
州別にグランシェフのパタを集めた本、
パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリアによると、
トスカーナの人は、肉やジビエや豆やパンは大好きですが、スパゲッティにはさほど興味を抱かないとか、グルメならトスカーナでパスタシュッタを注文する時は用心しろ、などと言った作家もいるほどです。
そんなトスカーナを代表するパスタとして知られているのは、パッパルデッレpappardelleです。

パッパルデッレは幅5~6cmのラザーニェの一種で、片側だけ波打っています。
風変わりな名前の語源はpappareパッパーレ(たらふく食べる)。
狩りの獲物であるうさぎのラグーに釣り合うような幅広で大きなパスタです。

ファブリのパッパルデッレ

このパスタを手打ちで作るのは、考えただけでも大変そうですね。
基本はタリアテッレですが、トスカーナでは、普通のタリアテッレより数cm幅広でやや厚めに打ちます。多分ジビエのラグーに合わせるとそうなるのですね。
トスカーナの定番は野うさぎのラグーですが、鴨などの野鳥のラグーもあります。

料理人やパン屋の守護聖人としても知られる聖ロレンツォは8月10日に殉教したとされ、この日にはパッパルデッレを作る習慣がありました。

彼についてのwikiはこちら
フィレンツェの共同守護聖人でメディチ家の守護聖人でもあります。

8月10日のパレード



鉄格子の上で火炙りにされるという殉教時の壮絶な様子が語り継がれていますが、これがビステッカ・フィオレンティーナのルーツだという話まであります。
横道にそれちゃったのでリチェッタは明日訳します。

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総合解説
パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリア

オステリエ・ディ・イタリア新版

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2020年1月30日木曜日

フェットゥンタからピッツァへと続くクロスティーニの進化

地方料理シリーズの力作、“グイド・トンマージのクチーナ・レジョナーレ”シリーズのトスカーナに、びっくりなクロスティーニがありました。
ちなみに、この本の表紙の料理はきのこと豆のズッパの上にクロスティーニ、という伏線がすごい構造。ちなみにこのクロスティーニはズッパに入れて食べます。
この本はこんな風に写真にフラグが詰め込まれていて、それに気がつくと、すごーく楽しい。

トスカーナ料理は、その象徴でもある幾多のクロスティーニから始まりますが、
そのうちの1品に、なんだか変な料理がしれーと混ざっていました。
“黒キャベツのクロストーネCrostone con cavolo nero”です。
たいてい黒キャベツのクロストーネと聞けば、こんな料理を想像します。
クロストーネは大きなクロスティーニ。
 ↓

それでは本のリチェッタをどうぞ
黒キャベツのクロストーネCrostone con cavolo nero
材料/4人分
薪で焼いた天然酵母のパーネ・トスカーノ・・4枚
黒ャベツの葉・・大4枚
キャベツのゆで汁
EVオリーブオイル
塩、こしょう

・キャベツの葉は大きくてきれいなものを選ぶ。
・これを塩少々を加えた湯でゆでて崩さないように取り出す。ゆで汁は取っておく。
・パンを炙ってキャベツのゆで汁をかける。皿に広げ、その上にキャベツを1枚のせる。
・こしょうとEVオリーブオイルをかける。

出来上がりは、こんな感じ
つまりクロストーネの上にはみだすほど大きな黒キャベツがデーンと1枚のっているだけなのです。
その下のクロストーネはもっとシンプル。新オリーブオイルのフェットゥンタFettuna con olio nuovo

薪で炙った天然酵母のパーネ・トスカーノににんにくをこすりつけて塩、こしょうし、緑色の新オイルをかけてすぐにかじりつく、というもの。

固形の具はなにもなく、いわばガーリックブレッド。
こうやって誕生したのですね。
さらに、トマトやチーズ、オリーブ、ケッパーをのせれば、ピッツァに限りなく近づきます。
逆にガーリックトーストもフェットゥンタと呼べばトスカーナ風に・・・。

フェットゥンタ、ブルスケッタ、クロスティーニの盛り合わせ

すごくピッツァに近いものを感じます。

次は、オステリアのリチェッタに戻って、パスタの話です。

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総合解説
グイド・トンマージのクチーナ・レジョナーレ”シリーズのトスカーナ
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2020年1月29日水曜日

トスカーナの基本の前菜、ブルスケッタ

トスカーナの前菜、クロスティーニの次は、ブルスケッタです。
2つがどう違うのかは、いくら考えてもズバリな答えは見つからないので、今は無視します。
語源はクロスティーニはトーストで、ブルスケッタはブルスカーレ(炙る)、という程度で、ほぼそっくり。
リチェッタを訳していると、料理の最後にペースト状にした料理をトーストにさっと塗ってクロスティーニにして添える、という表現はよくあるけど、ブルスケッタにして添える、という表現は、今まで出会ったことないです。
クロスティーニのリチェッタは無数に見つかるけど、ブルスケッタのリチェッタはなかなか見つかりません。

今日もリチェッタはイタリア料理初心者のバイブル、
ブルスケッタBruschetta
ブルスケッタはイタリアの伝統的な前菜で、軽く乾燥したパンから作る。
一番シンプルなものは熱いパンににんにくをこすりつけてEVオリーブオイルをかける。
これにトマトやきのこ、なすなどの具をのせる。

材料/12個分
パーネ・プリエーゼなどの田舎パン・・大6枚(半分に切る)
にんにく・・1かけ
EVオリーブオイル
トマトとバジリコのブルスケッタ:
熟したトマト・・4個
ちぎったバジリコ・・大さじ1
ブルスケッタ・・4枚
きのこのブルスケッタ:
EVオリーブオイル・・大さじ2
ミックスきのこ(スラテスしたポルチーニ、ピオッパレッリ)・・400g
潰したにんにく・・2かけ
タイム・・小さじ山盛り1
ブルスケッタ・・4枚
・ブルスケッタを作る。パンをトーストか炭火でこんがりグリルして両面ににんにくをこすりつけてオリーブオイルをたらす。
・トマトとバジリコのブルスケッタを作る。トマトを粗く刻み、バジリコと混ぜて塩をする。これをブルスケッタにのせる。
・きのこのブルスケッタ。熱した油できのこを強火で炒めて塩、こしょうする。きのこをは数回に分けて炒めて水分が出すぎないようにする。
・きのこの水気が飛んだらにんにくとタイムを加えて1分炒める。ブルスケッタにのせて熱いうちにサーブする。
・なすのブルスケッタ:やや厚くスライスにしたなすの両面を柔らかくなるまでグリルする。
・にんにく、油、レモン汁、ミント、塩でマリネ液を作る。
・皿に並べたなすにマリネ液をかけて最低30分マリネする。
・ブルスケッタになすを2枚ずつのせてマリネ液小さじ1をかける。

クスティーニではなく、クロストーネという言い方もあります。
次回は面白いクロストーネのリチェッタを訳します。



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総合解説
クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブラインブリッジ
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2020年1月28日火曜日

キアンティ地方で食べたい(イタリアで食べたい編) クロスティーニ

それでは、キアンティ地方の人気オステリアはどんな料理を出しているのか

オステリエ・ディ・イタリア新版

のマンジャンド・マンジャンドのリチェッタを訳してみます。
店のwebページはこちら
メニューは、
・鶏レバーのクロスティーニ
・猪肉のパッパルデッレ
・トスカーナ風パスタ・エ・ファジョーリ
・ペポーゾ・アッラ・フォルナチーナ
・アリスタのオーブン焼き
・カントゥッチーニのセミフレッド、ヴィン・サントのソース

さすがに、キアンティ地方までやってきて、地元の食通の間で人気の店で食事をしようという人たちが食べたいものを、よく知ってますね。
すべてこの地方の最高の食材を使った伝統料理です。

そもそもトスカーナというのは、イタリアで最も外国人に人気の地方です。
イタリアを代表するワインの産地でもあります。
それではトスカーナで食べておきたいトスカーナ料理をざっと説明します。

最低限知っておきたいのは、
トスカーナでは上質のオリーブオイルとワインが造られ、
トスカーナ人は肉が大好きで、
巨大なビステッカで知られる牛肉や貴重な豚肉の料理があり、
豆も大好きで、その代表がいんげん豆のボルロッティ、
そして肉料理に添えるのは塩気のないパーネ・トスカーノ。
このパンはスープにも入れます。
スープはパッパ・アル・ポモドーロやリボッリータ、アックアコッタなど個性的。
太いパスタのパッパルデッレに合う定番のソースは、野うさぎ、鴨、猪といったジビエのソース。
魚料理は沿岸部のズッパ・ディ・ペッシェ。
ドルチェで有名なのはシエナ。
名物はパンフォルテやリッチャレッリ。
フィレンツェはズッコット誕生の地。
そしてカントゥッチはトスカーナ中にあって、デザートワインのヴィン・サントに添える伝統のビスコッティ。

カントゥッチとヴィンサント、ビステッカ・フィオーレンティーナ、パン、そしてキアンティワインはマスト中のマスト。

それではリチェッタです。
レバーのクロスティーニCrostini neri di fegatini di pollo
材料/8~10人分
鶏レバー・・1kg
玉ねぎ・・2個
にんじん・・4本
セロリ・・4本
ケッパー・・一握り
アンチョビ・・6枚
赤ワイン・・1カップ
固くなったパーネ・トスカーノ
EVオリーブオイル

パーネ・トスカーノ

・玉ねぎ・にんじん・セロリをみじん切りにし、油を熱したソテーパンできれいな焼色がつくまでソッフリットにする。
・アンチョビとケッパーを加え、さらにレバーを加えて全体を炒める。
・ワインをかけて弱火で30分煮る。
・ミキサーにかけてパンに塗れる程度のクリーム状にする。
・焼きたてのパンに塗る。


クロスティーニはトスカーナの(イタリア料理の)前菜の定番中の定番。
ついでなので、イタリア料理の基本中の基本が充実した本


クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ

のクロスティーニのリチェッタを訳してみます。
クロスティーニはスライスしてオーブンで焼いたブルスケッタ用のパンよりやや小さめのパンのトスカーナの前菜。トッピングはブルスケッタ用でも応用できる。

クロスティーニCrostini
材料/50個分
2日経ったチャバッタかパーネ・プリエーゼ
EVオリーブオイル・・200ml
※乾燥したパンはスライスしやすく、トースト時間も短い。

タプナードのクロスティーニcrosstini con tapenade:
種抜きブラックオリーブ・・250g
フィレ・アンチョビ・・50g
ケッパー・・小さじ1
潰したにんにく・・2かけ
ちぎったバジリコ・・15g
レモンの汁と皮のすりおろし・・1個分
EVオリーブオイル・・200ml
クロスティーニ・・1ポーション

パプリカのクロスティーニCrostini ai peperoni:
EVオリーブオイル・・大さじ3
玉ねぎのみしじん切り・・1個
薄い輪切りにした赤パプリカ・・2個
潰したにんにく・・2かけ
バルサミコ酢・・大さじ2
粗いみじん切りにしたイタリアンパセリ・・大さじ1
クロスティーニ・・1ポーション

鶏レバーのクロスティーニCrostini di fegatini di pollo:
鶏レバー・・200g
EVオリーブオイル・・大さじ3
玉ねぎのみしじん切り・・小1個
潰したにんにく・・2かけ
セージのみじん切り・・大さじ1
マルサラ・セッコ・・大さじ2
マスカルポーネ・・大さじ2
クロスティーニ・・1ポーション

・クロスティーニを作る。オーブンを180℃に予熱する。
・パンをスライスして4つに切る。
・両面に油をかけてオーブンでカリッとトーストする。
・タプナードのクロスティーニを作る。
・オリーブ、アンョビ、ケッパーを刻む、またはミキサーにtかけ、にんにく、バジリコ、レモンの汁と皮、オリーブオイル、塩を加える。
・サーブの直前にクロスティーニに塗る。

・パプリカのクロスティーニを作る。
・玉ねぎを油でソッフリットにし、パプリカを加えて15分炒めて塩をする。
・にんにくを加えて1分炒め、ケッパーとバルサミコ酢を加えて水気を飛ばす。
・サーブする直前にイタリアンパセリを散らしてクロスティーニに塗る。

・レバーのクロスティーニを作る。
・レバーを下ごしらえして筋を取る。
・玉ねぎを油でしんなり2分炒め、片側に寄せて火を強めてレバーを入れる。
・両面に焼き色がつくまで炒め、セージとにんにくを加えて1分炒める。
・マルサラを加えて水分を飛ばし、塩味を整える。
・包丁で刻み、またはミキサーにかけてペースト状にしてマスカルポーネを加える。
・熱い、または冷めたクロスティーニに塗ってサーブする。

トスカーナ風レバーのクロスティーニ


次はブルスケッタのリチェッタです。


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総合解説

クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ

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2020年1月27日月曜日

キアンティの農家とレストランの結びつき

前回は、キアンティ地方の有名オーナーシェフの店、マンジャンド・マンジャンドのオーナーシェフの料理と店に対する熱い思いを、

オステリエ・ディ・イタリア新版』から訳しました。

今回は、食材を店に納入している造り手の話です。

ヴァッローネ・ディ・チェチオーネは、グレーヴェ・イン・キアンティにある小さな農場で、現在は30歳のフランチェスコ・アニキーニが父親から受け継いで経営している。
彼は土地に対する明確な考えと情熱を持った人物。
彼の父親は50歳の時に25年働いて借りていた土地を手に入れ、夢を実現させた。
最新の農業技術に精通し、約700本のオリーブと4ヘクタールのぶどう畑を有機栽培で栽培し、完全なビオダイナミック農法を目指している。
少量のキアンティ・クラッシコとオリーブオイルを生産していたが、明らかに量より質が目標だった。土壌への自然なバランスを考慮して、大麦、ルーコラ、マスタード、グリーンピースなど数種類をミックスして栽培していた。

いつも感じることですが、イタリアのシェフたちの生産者への思いは、深いです。父親の功績まで熟知しています。

宿泊も受け入れているようで、ネットの口コミサイトには情報が溢れてます。
動画もすぐに見つかって、これが他の地方、特に南イタリアの農家との大きな違い。
ドローンで撮影した農場。


トスカーナのキアンティはピエモンテのランゲ地方に似ています。
世界中からグルメな客がやってきて、伝統の美食文化を体験し、革命的な試みが評価されています。

パンツァーノPanzano



次はいよいよリチェッタを訳してみます。

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総合解説

オステリエ・ディ・イタリア新版

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2020年1月25日土曜日

伝統は不変だが、常に改革されている。

先日のリボッリータribollitaの話題の時、『サーレ・エ・ペペ』
がリチェッタを紹介する店として選んだのは、グレーヴェ・イン・キアンティのマンジャンド・マンジャンドMangiando Mangiandoでした。

どんな店かリチェッタを探してみたら、

スローフードの会員を紹介する豪華な本、『オステリエ・ディ・イタリア新版』に載っていました。

オーナーシェフのサルヴァトーレ・トスカノさんは、
「歴史が感じられる料理を作りたい、人生も店も、地元との強い結びつきから生まれたものを使って造り上げたい、と語っています。
子供時代を過ごして彼に強い影響を残した地は、グレーヴェ・イン・キアンティ。

グレーヴェ・イン・キアンティ


料理に最高の食材だけを使う、という考えは、彼の父親の影響。
シチリア出身の父親は、いつも土曜と日曜だけ肉を料理した。その時は、窓も扉も開け放して、ご近所に、うちでも週2回は肉を料理していることが分かるようにしたのだった。
彼は行きつけの肉屋でチッチャciccia(クズ肉)を買うのが好きだった。野草を探して摘むのも習慣だった。
料理上手な母は、毎日7人分の料理を作った。日曜には父も加わった。
そこで私は、フィレンツェで最初に始めた店ダニー・ロックDanny Rockのメニューに、
子供時代の日曜日のメニューを再現した料理を加えた。他の曜日に食べていた料理も忘れられなかった。

ダニー・ロックを締めた頃、妻は、グレーヴェの中央広場の一角に小さくて美しい惣菜屋を見つけていた。そこで私は、少ないテーブルとオープンキッチンの店をやりたいという長年の夢を実現させた。最高の生産者が作った食材で料理を作る。これがこの店の哲学だ。重要なのは地元と季節。伝統は普遍でアンタッチャブルだ。
だが、伝統は博物館の展示物ではなく、生きていて、絶えず改革が繰り返される。
そして重要なのは人間だ。
歴史を感じない料理に興味はない。
私にとって今の時代に料理人をやるということはその土地と仕事を愛する、というこだと確信している。
手間ひまかけて生産物の品質を上げることに取り組み、仲間と環境に配慮する。
私はサッカーで言うなら、トップのフィニッシャーだが、後ろで走ってボールを奪うセンターやウイングがいなければなりたたない。
私の店のセンターとウイングは肉屋のエンリコ・リッチ、オイルの生産者のパオロ・プルネッティ、ビオワインの作り手、フランチェスコ・アニキーニ、パスタメーカーのジョヴァンニ・ファッブリ、生乳のチーズメーカーのマルコ・カッシーニたちだ。
どの料理も最低2人前で、おいしいワインと一緒に食べるように作ってある。
食事は人との出会いを楽しむ場でもある。
私の店がその機会を提供できれば光栄だ」

かなり熱い人なので、話も長い。
突然サッカーの話が始まるし・・・。
でも面白いので次回に続きます。

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総合解説

オステリエ・ディ・イタリア新版

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2020年1月24日金曜日

料理の香りが満ちる路地には、本物の暮らしがある。

イタリアのストリートフードには、粉ものと内臓の2つの柱があります。
粉ものの代表はピッツァ。
内蔵で人気なのは、フィレンツェのランプレドット。
でも、さほど内臓に精通していないと、なぜ、フィレンツェのランプレドットがこんなに人気なのか、正直言って、不思議です。
牛の胃袋が、なぜここまで愛されるのか。


お手頃価格でもとても充実した内容の本、『ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ
で、フィレンツェの有名店、チブレオのオーナーシェフが語ったトリッパのサラダのリチェッタが印象的でした。
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トリッパのサラダのリチェッタは、こんな説明で始まります。
ヨーロッパを半分横断して運ばれてくる苛性ソーダで洗った白いトリッパでなく、フィレンツェの職人が蒸し器で下ごしらえした1キロのピンクのトリッパを、流水で5回洗って不快な匂いのもとになる脂を落とす。そして幅0.5cm、長さ4cm以内に切り、ビネガー1/2カップを加えたたっぷりの水に10分さらす。これがフィレンツェのトリッパ職人の下ごしらえだ。

チブレオの厨房
 

シェフは超個性的。


ファビオ・ピッキシェフはさらにこう語ります。
私はビジネスマンの料理人は信用しない。
それよりはバンで田舎を回って料理の香り付けにするネピテッラやローズマリーやセージを摘んでいるシェフを信用する。
ありがたいことにフィレンツェのトリッパ職人は市場の中にいることを選んでいる。
スリートフードの香りが路地を満たすとエンドルフィンが最高に高まるのは世界共通だ。
パレルモの市場やベネチアのバカロやエルベ島のバールには、本当の人生がある。


トリッパは、イタリア各地に名物料理がありますが、こんなに地元愛が強い食材だとは知らなかった。
ローマ風トリッパ

ファビオ・ピッキシェフのトリッパのサラダは、こう続きます。
本物のトリッパのサラダとは、フィレンツェの市場で、フィレンツェの農民がフィレンツェの畑で育てた野菜と前述のトリッパを混ぜ、フィレンツェのオリーブオイル大さじ4と上質のヨーグルト大さじ2、パルミジャーノ大さじ1弱、塩をハンディブレンダーで撹拌したソースをかける。

トリッパのサラダの材料は/10人分
トリッパ・・1kg
赤玉ねぎ・・小2個
にんじん・・2本
セロリ・・1株
EVオリーブオイル・・1/2カップ
イタリアンパセリのみじん切り・・大さじ1
にんにく・・2かけ
赤ワインビネガー・・大さじ4
白ワインビネガー・・1/2カップ
塩、こしょう、唐辛子

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総合解説
ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ
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2020年1月23日木曜日

リボッリータとランプレドットはつながっていた

リボッリータの話を続けます。
リボッリータはトスカーナの野菜と固くなった残り物のパンと白インゲンの質素な冬の料理。
パスタ・エ・ファジョーリと同じようにスプーンを刺しても倒れないくらい、トロトロに煮ます。
料理は、まず豆を一晩水に浸して戻すことからスタートして、豆の皮がむけないように、塩は最後に加えます。
地元の農家の暮らしと強く結びついている料理で、肉が入らないマーグロな料理です。
農家で肉が入らない質素なスープをリッチにするには、ベーコンでも入れるのかな、と思いがちですが、ベーコンよりもっとお手軽な食材、トリッパを入れます。
イタリア中で造られている料理です。

バジリカータ料理の農家風トリッパ・エ・ファジョーリtrippa e fagioli alla contadinaファジョーリ・エ・トリッパ


材料/4人分
下ゆでしたトリッパ・・1kg
いんげん豆・・300g
ホールトマト・・500g
玉ねぎ・・1個
にんじん・・2本
セロリ・・1本
にんにく・・1かけ
唐辛子(好みで)・・1本
EVオリーブオイル
塩、黒こしょう

・玉ねぎ、にんじん、セロリの粗いみじん切り、潰したにんにく1かけ、唐辛子1本を深い鍋で油でソッフリットにし、細く切ったトリッパを加えて炒める。
・さっと撹拌したトマトと野菜のブロード、塩少々を加え、蓋をして弱火で30~35分煮る。塩味を整える。
。ゆでて水気を切った豆とこしょうを加え、蓋を取ってとろ火で最低20~30分煮る。煮込むと美味しくなる。翌日煮直してもよい。

トリッパ料理と言えば、フィレンツェ風トリッパのリチェッタも気になります。


基本は同じですね。

そしてフィレンツェのトリッパと言えば、ランプレドット。
ランプレドットとは、牛の第4胃のフィレンツェでの名前ですが、リチェッタを調べると、第1胃など他の胃袋を使うリチェッタもあります。


少しでも若くて胃袋が丈夫なうちに食べておきたいイタリアの内臓系スリートフードの代表格。
上の動画は『ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ』←この本に載っているリチェッタの解説です。
さらに、トリッパのサラダと言えば、チブレオ。
詳しくは次回に。


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総合解説
ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ
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2020年1月22日水曜日

グランシェフがテイクアウトしたリボッリータ

今月は、トスカーナ人の豆好きを証明する料理としてパスタ・エ・ファジョーリをすでに紹介していましたが、今月の「総合解説」では、もう1品、トスカーナの代表的な豆料理を取り上げています。
“リボッリータribollita”です。
この料理の主役は皮が薄くて柔らかい白いんげんのカンネッリーニcannellini、またはトスカネッリtoscanelli、
冬の霜が降りると美味しくなる黒キャベツcaboro nero 、別名 braschetta。
そして塩気のないパーネ・トスカーノ、またはパーネ・ショッコsciocco、別名sciapo。

天気予報で雪が降るかもなんていってる日にはぴったりの料理。


田舎の家庭料理そのもののこの料理をちょっと特別なものにしているのは、黒キャベツ。
その別名はケール。ケールやサボイキャベツで代用も可です。
黒キャベツの下ごしらえ
 ↓

さらに「総合解説」ではミラノ万博の際にトスカーナ料理の代表としてリボッリータを作ったグレーヴェ・イン・キアンティのオステリア・マンジャンド・マンジャンドのシェフの話も載せています。
店のwebページはこちら

シェフのサルヴァトーレさん。


異色の地方料理書の力作、『カルロ・クラッコの地方料理
で取り上げているトスカーナ料理は、まずリボッリータでした。
シェフは
「トスカーナ料理を代表する定番の1品、リボッリータは、質素な畑の冬野菜のズッパで、料理の出来は、料理人の経験と野菜の質によって決まる」と書いています。
私が食べた最高のリボッリータは、とても寒い冬の日にアレッツォのラウラの家で食べたもので、さんざん食べて満腹になった後に出されたが、一口食べて夢中になり、あまりに美味しかったので、家に持ち帰ったほどだ。
ここではそのラウラのリチェッタを紹介しよう。
すでに完璧だったので、何も手を加える必要はなかった」

リボッリータRIBOLLITA
材料/8人分
戻した白いんげん(カンネッリーニ)・・500g
カーヴォロ・ネロ・・400g
キャベツ・・100g
じゃがいも・・100g
スイスチャードかエルベッテ・・100g
トマト・・3個
セロリ・・3本
玉ねぎ・・大2個
にんじん・・大2本
パーネ・トスカーノ・・8枚
にんにく・・3かけ
セージ、ローズマリー
トスカーナ産EVオリーブオイル
塩、こしょう、唐辛子
トロペアの赤玉ねぎ(好みで)

・玉ねぎ、にんじん、セロリをみじん切りにして陶器の鍋で油少々、セージ、ローズマリー、皮付きにんにく1かけ(最後に取り除く)でソッフリットにする。白いんげんを加え、水で覆って煮る。
・豆が柔らかくなったら半量を取り出してミキサーにかける。
・鍋に小さく切ったトマトと香味野菜のみじん切り、小さく切ったカーヴォロ・ネロ、キャベツ、じゃがいも、スイスチャード、塩少々、ミキサーにかけた豆、水気をきった丸ごとの豆を加えて再び水で覆い、中火で蓋をして30分煮る。野菜が十分柔らかくなって混ざり合うまで煮る。こうなったらパーネ・トスカーノを加えて2分沸騰せる。火から下ろして冷まし、休ませる。
・翌日、リボッリータと油少々を鍋に移し、唐辛子を加えて塩、こしょうで味を調える。
・弱火で約20分煮て水気を飛ばす。
・皿に盛り付けてトスカーナ産EVオリーブオイルをまわしかけ、生のトロペアの赤玉ねぎ1/2個の薄切りを散らす。

※この料理はパンがスープを吸って溶けるまで最低1~2日必要。
私はフォークで食べることができるくらい水気が少ないバージョン(アッシュッタasciutta)が好きだ。このスープはバジリカータ発祥のトリッパ(センマイ)がベースの歴史の古いスープに似ている。野菜は殆ど入っておらず、ペコリーノでつないで唯一の野菜、セネージ唐辛子のパプリカで調味する。質素だが風味豊かな1品だ。


確かに、リボッリータには肉が入っていないので、ベジタリアンでも食べることができるスープ。

農家で豆のスープをちょっとリッチにする時は、トリッパを加えるんですね。
これは次回のテーマに・・・。

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総合解説
カルロ・クラッコの地方料理
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2020年1月21日火曜日

百年続く大ヒット料理、フェットゥッチーネ・アルフレード

今日はフェットゥッチーネ・アルフレードの話。

アメリカで大ヒットしたローマ生まれのパスタだそうです。
聞いたことがあるようなないような・・・。
サーレ・エ・ペペ
の記事によると、この料理は約1世紀前にオープンしたローマのリストランテ・アルフレードの、バターであえたシンプルなパスタです。

たまたまこれを食べた二人のハリウッド女優が、この料理を気に入って周りに紹介し、口コミが口コミを呼んでどんどん知れ渡り、100年後の今では、世界中に知れ渡りました。ただしハリウッド経由なので、その文化圏に縁のない人はまったく知らないという、今時の若者文化についていけないチャンバーには身につまされる話です。

リチェッタを見てもなんでこんなにバズったのか、まったく理解できない料理です。ハリウッド女優の影響力がすごい、というのはよくわかりますが、特に有名な女優でもなかったようで、100年経った今でも、ローマのアルフレードを人気店にしているほどの強い影響力を持っていた理由は、まったくの謎です。
リチェッタの日本語訳は「総合解説」に載せました。

個人的には、この料理の秘密はお客の前でマンテカーレするという、サービス方法にあるのではと考えています。客の前でカメリエーレが料理の仕上げをするというと、シーザースサラダが思い浮かびますが、この手法にアメリカ人は弱いようで、皿にバターとパルミジャーノとゆでたてのフェットゥッチーネをのせて、頑固な職人のようなカメリエーレがひたすらマンテカーレして優雅に盛り付ける、というパフォーマンスは、このシンプルなパスタを10倍美味しそうにしています。
盛り付け


今でもアルフレードでは1日に15kg、週末には40kgのフェットゥッチーネが出るそうです。
有名店にはつきものの本家争いも起きています。リチェッタの権利を主張する店もあるそうです。
今でもローマにあるアルフレード

ロンドンのストリートカルチャーの発信地、カムデン・ロックで進化を遂げていたフットゥッチーネ・アルフレード。

おまけの動画
シーザースサラダ

どうせやるならこれくらい本気でやらないとね。この人、髪型が素晴らしい。

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総合解説
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2020年1月20日月曜日

クルマエビのスパゲッティのピッツァイオーラ

今月の「総合解説」から、最後のパスタは、“クルマエビのピッツァイオーラ”。
ピッツァィオーラは肉用のソースだと思っていたのですが、クルマエビのパスタのソースでもバッチリのようですね。
料理の写真はこちらのページの中ほど。
ピッツァィオーラは、ピザ職人風、という名前だから、もちろんナポリのピザ職人が考えた料理だと想像できます。
深読みするなら、ナポリの“貧しい”ピザ職人、と、ナポリ料理の起源にはつきものの形容詞も欠かせません。
貧しかったので、残り物のピッツァ用ソースを肉料理につかったところ、美味しくて簡単な料理ができちゃった、というのが正当派ナポリ料理誕生の物語。
ただし、残念ながら誰も本当のところは知りません。
簡単な料理なのでバリエーションは無数にあります。
使ったピッツァ用ソースは一番ベーシックでシンプルなマリナーラ用。

ピッツァ・マリナーラ


マリナーラは香りを楽しむ料理だとこのピッツァィオーロは語ってますね。
ソースのベースの材料は、トマト、オレガノ、にんにくの3品。
ピッツァ・マリナーラは海のピッツァという意味の名前ですが、海の食材は何も入っていません。その由来にはいつくつも説があります。
例えば、力作のピッツァの本、『ピッツァ・アルバ・ペゾーネ
には、豊漁の時は、漁師はピッツァに小魚をのせて作ったのですが、不漁の時はトマトとオレガノだけ。そこでたまたまにんにくを入れてみたところ、これが海の男たちに大ヒットで、港のピッツァと言えば、この味になったとか。
魚のないマリナーラはこうして生まれたと言い伝えられています。
もちろん諸説の1つで、確証は何もありません。
ほんとにナポリ料理は、あくまでも庶民派ですね。
話が横道にそれましたが、このマリナーラと同じ材料で作るのが、ピッツァィオーラです。
子牛肉のピッツァィオーラ


豚肉のピッツァイオーラに関しては、ちょっと変な思い出があります。
ニューヨークのリトルイタリーで適当に目についた店に入ったところ、もうランチタイムが終わっていたようで、食材が殆ど残っていないようでした。
何でもいいから1品、と頼んだら、豚肉のピッツァイオーラが出てきたのです。
今思えば、無理な注文をする客にはピッタリの、残ったソースですぐにできる料理だったのでした。
「総合解説」では、肉を縦半分に切った大型のクルマエビに変えて、トマトソースにはアサリを加えていますが、それだけでロブスター・テルミドール張りにすごくゴージャスになるのでびっくりです。
甲殻類の料理の最後は、“シャンパンザバイオーネをかけた牡蠣のグラタンです。”
名前だけで十分オオボス感があります

バレンタインデーのいちごのシャンパンザバイオーネ。


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総合解説
ピッツァ・アルバ・ペゾーネ
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2020年1月19日日曜日

海辺で食べたウニのスパゲッティは一生記憶に残る

「総合解説」1/2月号の甲殻類の料理、続けます。
前回取り上げたキタッラは、珍しくアブルッツォのパスタでした。
アブルッツォ料理は取り上げられること自体少ないマイナーな地方。
でも、パスタのキタッラは、イタリア料理のベースのパスタの一種としてメジャーな存在。
以前、ディチェコのイタリア各州の代表的シェフが作るパスタの本『パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリア

を紹介した時、“仔羊のラグー・ビアンコのキタッラ”のリチェッタを訳しています。
こちら

「総合解説」の甲殻類の記事に載っているパスタの2品目は、ウニのラビオリ。

ウニのスパゲッティはよくあるけど、ウニの詰め物のパスタ、ありそうで見たことなかったなあ。
イタリア料理の代表作を素晴らしい写真と取材力で紹介する本、『トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ/2巻

には、1ページ丸ごと全部にウニのスパゲッティのどアップの写真が載っています。
カンパーニア料理のページです。
プロチダのリストランテ・ゴルゴニアの料理です。
店があるのはmarina di corricella地区。

ウニのスパゲッティを出す店は、観光地としても素晴らしいところにあるので、料理の思い出と結びついて何倍も素晴らしい体験になります。
私は随分前にシチリアで食べた時の、海の波しぶきがひっかかりそうなテラス席で食べた時の思い出が、未だに鮮やかに記憶に残っています。

ゴルゴニアは島の家庭料理を出す店で、ウニのスパゲッティは、この店の大人気料理。
お客は全員ウニのスパゲッティを注文するそうです。
でも、秘密は何もなくて、毎朝早く出た船が昼前に戻ってきて、獲ったウニをすぐに出しているだけだそうです。スパゲッティ1人前用には10個のウニが必要。
それでは、リチェッタをどうぞ。

ウニのスパゲッティSpaghetti con i ricci
材料/6人分
スパゲッティ・・500g
ウニ・・60個
EVオリーブオイル・・80ml
にんにく・・1かけ
イタリアンパセリ・・1房、塩

・ウニを開いて身を小さなスプーンで取り出す。汁も少量取っておく。
・海辺で作業した時は身をビンに入れてすぐに冷蔵庫で保存する。
・たっぷりの水を沸騰させて塩を加え、スパゲッティを入れる。
・イタリアンパセリをはさみで刻む。
・大きなフライパンでにんにくを油で炒める。イタリアンパセリ少々、ウニの汁、ウニ少々を加えて炒めずになじませる。
・アルデンテにゆでたスパゲッティとゆで汁大さじ数杯を加えて1分なじませる。
・火を止めて皿に盛り付け、生のウニとイタリアンパセリ一つまみで飾る。




確かにとてもシンプル。ウニのラビオリは、パスタを作って詰め物を作ると、もっと手をかける分豪華さも2倍。


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総合解説
トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ/2巻
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2020年1月18日土曜日

ロブスター・テルミドール、オマールとブラッディ・マリーのキタッラ

今月の「総合解説
のリチェッタの特集1つめは、“甲殻類”です。
年末年始に登場する機会が多くなるゴージャスな食材は、イタリアでもこの季節の主役。
最初の料理は“ロブスター・テルミドール”。
『サーレ・エ・ぺぺ』1月号の表紙の料理です。

これは確か・・・、おせちに入ってる一番豪華なやつでは・・・。
日本もイタリアも年末に同じ料理食べてる(遠い目・・・)。

イタリア語で言うならアラゴスタ・テルミドールAragosta alla Thermidor。



これをパスタにのせると、豪華なパスタのできあがり。

2品目のパスタは、“オマールとトマトソースのキタッラ”。
オマールエビとトマトソースのパスタは、日本でも人気のソースですが、これを1段ゴージャスにするアレンジは、トマトソースをブラッディ・マリーのソースにして、パスタはキタッラに。

スパゲッティでもいいけど、キタッラのほうがスーゴを吸います。

キタッラはアブルッツォの伝統的な硬質小麦粉、卵、塩の断面が四角いパスタ。正確にはスパゲッティ・アッラ・キタッラspaghetti alla chitarraですが、キタッラと略すのが一般的。
タリオリーニに似た麺ですが、キタッラという道具を使って整形するので多孔質になり、肉がベースのスーゴ、特にラグーに合う麺。



ブラッディ・マリーは、よく見ると、料理にすごく使えそうなカクテルでした。
トマトジュース、ウスターソース、タバスコ、ウオッカ入り。


ブラッディ・マリーと言えば牡蠣。(「総合解説」P.9)


牡蠣といえばミニョネットソース。
フレンチだけど(「総合解説」P.9)。



甲殻類の料理はご馳走が多くて、訳していて楽しいですねー。
次回に続きます。

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総合解説
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2020年1月17日金曜日

ニーダーコフラーシェフが標高3000mで作るイタリアン

前回紹介した最優秀新人シェフのアレッシオ・ロンギーニシェフ、さすがに若すぎて、まだ世の中にリチェッタや動画は出回っていないようです。
そういう意味でも、今月の「総合解説」で訳したリチェッタは、なかなか貴重だったかも。
かわりに今日は、彼の師匠、ノルベルト・ニーダーコフラーシェフの話を。
アルト・アディジェのヴァルバディアにあるホテル・ローザ・アルピナのシェフとして、かなり以前から、アルプス、ティロル地方の料理を代表する一流シェフとして知れ渡っているシェフです。
リストランテ・セント・ウーベルトゥス。


こんな雪山の上でも、素晴らしい料理を作っている人がいるんですね。

北イタリアの料理自体、あまり馴染みがないので、どんなにすごイシェフかよくわかっていなかったのですが、イタリア料理界に革命を起こした一流シェフのパスタを紹介する本、『パスタ・レボリューション
の彼のページを訳してみます。
この本では彼のカルボナーラを紹介しているのですが、ドロミテ山地のシェフがなぜカルボナーラ?という疑問には、こう答えています。
ノルベルト・ニーダーコフラーは、バディア渓谷の空気とエネルギーを感じさせる料理を作っている。
数年前からは、自らの企画を“山を料理する”と名付けて、山の食材の価値を高めることに取り組んでいる。
例えば、彼を有名にした料理の代表的な食材はフォアグラだが、ドロミテ山地で手に入らないスカンピやクルマエビは料理しない、と語る。
彼の店の料理は、どの一口もすべて100%、地元の大地の声が聞こえてくるもので、逆に他では手に入らないものを使っている。
彼の料理はルーツが明確だ。食材はすべてメイド・イン・アルト・アディジェ。
だから、彼のスッド・ティロル版カルボナーラは特別だ。
パスタは、少し前に発見された土着のファッロ、regiogranoを有機栽培したもの。
グアンチャーレのカリカリ感はスペックで、脂身の甘みはラルドのスライス。そしてペコリーノの代わりは高原のチーズだ。

ニーダーコフラーシェフのカルボナーラ

この小さなパスタに彼の地元への思いと料理哲学がこんなにぎゅっと詰め込まれているとは、知りませんでした。
彼のもとにやってくる若手も、山の料理について、はっきりした考えを抱いているのでしょう。
それにしてもドロミテは標高3000m超えですよ。

よくこんな山の上でイタリアンを作ろうと思うなあ。

高地のカルボナーラCARBONAR AD'ALTA QUOTA
材料/4人分
ファッロのフジッリ・・280g
オーガニックの卵・・4個
葉玉ねぎ・・2本
山小屋のチーズ・・40g
バター・・約40g
薄くスライスしたラルド・・12枚
スライスしたスペック・・約100g
EVオリーブオイル
塩、こしょう

・70℃の湯で卵を12~16分ゆでる。すぐに氷水に取って冷ます。
・殻をむき、丁寧に卵白を外す。
・ 小さな器に卵白と油少々を入れて皿に卵黄がつかないようにし、ラップで覆う。
・サーブする直前に温かい場所に15分置く。
・スペックを80℃のオーブンで3時間焼き、ミキサーにかけて粒状に砕く。
・葉玉ねぎをみじん切りにしてバターの半量と油少々でブラザーレする。
・フジッリをアルデンテにゆでては玉ねぎのフライパンに加え、残りのバター、おろした山小屋のチーズ油少々を加えてよくマンテカーれする。
・塩、こしょうで調味する。
・皿の中央にフジッリをニード形に盛り付け、卵黄と薄切りのラルドをのせてスペックを散らす。




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パスタ・レボリューション
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2020年1月16日木曜日

新年のカウントダウンと乾杯

「総合解説」今月号の次の記事は、“乾杯に添える1品”。
年越しカウントダウンをして新年になったら乾杯をする、というのは欧米の基本的なその瞬間の過ごし方。

やってるやってる。


パレルモ人最高

レストランでも。

新年からへべれけで元気いいですね。
これだけ出来上がってたら、つまみは何でもよさそうですが、グルメな欧米の皆様は、わざわざシャンパンに合うご馳走を用意します。
『クチーナ・イタリアーナ』では、ミシュラン1つ星でまだ30歳で期待の若手シェフの料理を用意しました。
最優秀新人賞など料理の賞をいくつも獲得して、大注目されています。
高原の料理と世界中の料理をミックスした洗練されたモダンな知性を感じさせる料理で、師匠はノベルト・ニーダーコフラーシェフ。
アジアーゴのリストランテ・ストゥーベ・グルメのシェフです。
webページはこちら



記事で紹介した料理は、新年の定番レンズ豆のパテを茶巾絞りにした一口サイズのカボチャや、地元の名産品、アジアーゴを詰めた雫形のニョッキなど。

師匠は北イタリアを代表するシェフ。


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2020年1月15日水曜日

ブエ・グラッソとスカヴィンシェフのアルタ・クチーナ

ランゲの話になったので、ピエモンテ料理の話を・・・、と探していて、ふと思い出しました。
そういえば『カルロ・クラッコの地方料理
のピエモンテの章に、12月は、カルーのブエ・グラッソの品評会とボッリートの儀式だ、と書いてありました。
ピエモンテのブエ・グラッソの季節と冬の到来を告げるのが、ピエモンテ人とグランシェフが待ちに待ったこの品評会。

牛肉の王様ことブエ・グラッソ

カッルーのブエ・グラッソはファッソーネ牛など各種のピエモンテ牛の交配種。去勢後、約5年かけて大切に肥育します。ピエモンテの農家の貴重な収入源でした。bue grassoとmanzo は違うんだそうで、grassoとは言っても運動させてヘルシーな餌を与えるので脂身や肉の質がよくて柔らかくいのが特徴だそうです。
ブエ・グラッソの料理の定番は7種類の部位を使うボッリート・ミスト。

ピエモンテ風グラン・ボッリート・ミスト

カルーのリストランテ、ブエ・グラッソ

ピエモンテ牛のグランシェフのリチェッタを探してみたら、

アルタ・クチーナの団体、レ・ソステの本、『グランディ・リストランティ・グランディ・シェフ』の中にすごいのがありました。
コンバル・ゼロのダヴィデ・スカビンシェフの料理です。
料理の国際大会に出した1品で、ガストロノミアの未来を感じさせるシンプルでナチュラルな料理です。
分厚いボッコーネに切ったファッソーナ牛のヒレ肉にグリッシーニのパン粉を2回つけて焼き、象の耳と呼ばれた70年代のピエモンテ料理の傑作、コトレッタを再現しています。ガラスのコッパには焼き立てでまだ煙が出ているピエモンテの香草が敷かれています。
こうして暖炉のアロマを再現しているのだそうです。
料理の名前はVitello Fassona di razza piemontese al caminoです。
衣付きステーキという最初のアイデアをここまで広げて実現できるなんて、すごいです、このシェフ。

ダヴィデ・スカヴィンシェフのミラノ風コトレッタの暖炉風味

最近庶民的な料理ばかり調べていたので、反動で強烈なカルチャーショックです。
グランシェフはやっぱりすごい。
今でも強烈に印象に残っているのが、昔、日本のテレビ番組で、マルケージシェフと日本人の若手シェフにコトレッタ対決をさせた無謀極まりない番組。
若手シェフは教科書どおりにヒレ肉を叩いて薄く広く伸ばしたのですが、マルケージシェフは、いい肉だからと分厚いまま調理していました。
重鎮でも自由な発想ができ、自らの行為の結果をよく理解している人でした。

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グランディ・リストランティ・グランディ・シェフ
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2020年1月14日火曜日

モンフェッラート風パスタ・エ・ファジョーリ

きのうのブログの「総合解説」の記事で、編集長が話題にしていた子供の頃に食べたランゲ地方の幻のドルチェは、マットーネMattone。
編集長の記憶には、ランゲで一番美味しくて一番キレイなドルチェとして残されていました。
写真を見る限り、ピエモンテのドルチェにしては、ちょっと素朴で、手作り感満載、なんて思っていたのですが、一流店のシェフが作るとこんなに変わるのか、というお手本みたいな料理がありました。
オステリエ・ディ・イタリア』に載っていました。

アスティのデル・ベルボ・ダ・バルドンDel Belbo da Bardonという店のリチェッタです。
リチェッタを訳してみます。
マットーネMattone
材料/6~8人分
卵黄・・4、5個
四角いガッレッタタイプのもろいビスコッティ・・500g
砂糖・・1kg
ビターチョコレート・・300g
トーストした殻むきヘーゼルナッツ・・150g
コーヒー
ドルチェ用リキュール
バター・・1kg

・砂糖、バター、卵を混ぜてハンディホイッパーで撹拌する。
・クリームを2つに分け、一方に粉にしたビターチョコレートを加えて黒くする。
・コーヒーとリキュールを混ぜてビスコッティを浸し、やや柔らかくする。
・サーブ用皿にビスコッティの1/6を敷き、白いクリームで覆う。
・その上にビスコッティを重ねて黒いクリームで覆い、さらに材料がなくなるまで白いクリームと黒いクリームを交互に重ねる。
最後は黒いクリームで覆い、表面に刻んだヘーゼルナッツを散らす。
最低5~6段重ねる。
・冷蔵庫で2時間休ませ、サーブする5分前に室温に出す。

ほぼ同じように作っていても、出来上がりはプロと素人ほど違って見えます。
側面や角がまっすぐでぴしっとしているところはさすがです。

とにかく編集長の長年の謎だった、イタリア中で作られているので、このドルチェが本当にランゲ地方のものかどうか分からない、という謎はひとまず解決しました。しかも今どきは、ネットでちょっと探せば、すぐに分かります。
マントヴァのマットーネ

同じ本に、パスタ・エ・ファジョーリのリチェッタもありました。
モンフェッラート風パスタ・エ・ファジョーリPasta e fagioli alla monferrina
材料5~6人分
ミネストラ;
生のいんげん豆(ボルロッティ)・・500gまたは乾燥豆200g
じゃがいも・・3個
にんじん・・1本
玉ねぎ・・1個
ポロネギ・・小1本
セロリ・・1本
にんにく・・1かけ
厚く切ったラルド・・1枚
脂の少ないブロード・ディ・カルネ・・1.5L
EVオリーブオイル、塩
パスタ;
小麦粉・・200g
卵・・3個、塩

・豆が生ならさやから出し、乾燥豆なら一晩戻す。
・全部の野菜をみじん切りにして油大さじ2でしんなり炒め、レードル1/2杯のブロードで10分煮て冷ます。
・鍋に野菜のソッフリット、豆、丸ごとのじゃがいも、ラルド(最後に取り除く)、塩一つまみを入れ、ブロードで覆って沸騰させて約3時間煮る。
・小麦粉、卵、塩をこねてパスタを作る。薄く伸ばして幅広のひし形に切り、2~3cmのマルタリアーティに切る。バットに広げて乾かす。
・ミネストラを3時間煮たらじゃがいもとレードル1杯の豆を裏漉しし、ブロードに戻して沸騰させる。パスタを入れて数分煮る。
・スープチューリンに入れてサーブする。

そうか、煮崩れないアメリカ産豆しかないときは、じゃがいもを加えるんですね。しかもモンフェッラート風ってかっこいいし・・・。




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オステリエ・ディ・イタリア
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2020年1月13日月曜日

あなたの知らないランゲの世界

今月の「総合解説」から、
今日紹介する記事は『サーレ・エ・ペペ』の編集長のエッセイ。

北イタリアのキャリアウーマンの日常を通して見えてくるイタリアの食文化的エピソードが垣間見れるエッセイです。

編集長のラウラさんは、友人に誘われて、ランゲ地方で週末を過ごしたようです。
まず、友人の叔父さんに連れられて体験したのが、pallapugno/パッラプーニョ。
後継者が減って消滅の危機にある伝統スポーツだそうです。
専用競技場もあって、ランゲ地方では盛り上がってますねー。
よくわからないけど・・・。手でやる軟式テニスのような?
こんなスポーツ


イタリアにこんなスポーツがあるなんて、まったく知りませんでした。

次に出てきたキーワードは、Cesare Paveseチェーザレ・パヴェーゼ。
イタリアのネオリアリズモを代表する作家で詩人。
ランゲ地方出身の人なんですね。
聞いたことがあるから有名な人だとは思いますが、作品はまったく知りません。編集長が、彼の詩や小説を通してランゲ地方の丘陵地帯、村、人々のことを知り、親しみを抱くくらいこの地方が好きになったと言うので、ちょっと興味は湧きましたが・・・。
個人的には、このエッセイで一番ビックリしたのが、知人のヴィヴィアナのランゲ地方の家からジェノヴァの港が見えたという話です。

確かになんだか見えそう。


ランゲ地方と言えば、ワインとトリュフしか知らなかったけど、奥深い世界がありそうですね。


そう言えば、この記事で最後に紹介しているのはレンズ豆のパテ。新年のパーティーで、ブラッディ・マリーや牡蠣に添えるのピッタリの一品になります。
最後のリチェッタには、牡蠣には定番のミニョネットソースもありますが、牡蠣とブラッディマリーの組み合わせが定番だったとは、勉強になりました。さらに牡蠣をブラッディマリーのグラスにひっかける盛り付けは、なんだかカッコイイ。
ランゲ地方のオステリアの料理なら、

オステリア・ディ・イタリア

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オステリア・ディ・イタリア
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2020年1月12日日曜日

パスタ・エ・ファジョーリにはナポリ人気質が詰まっていた

パスタ・エ・ファジョーリは何地方の料理なんだろうと探していたら、トスカーナやヴェネトという情報に混ざって、やたら、ナポリ風、という情報が見つかりました。
ナポリ人、どんだけパスタ・エ・ファジョーリが好きなんだと思ってさらに調べてみたら、どうやら、好きすぎて、ニックネームまでつけていて、これが有名になって広まって、ネット上に情報が普通のパスタ・エ・ファジョーリの2倍あふれる、ということになっているらしい、ということがわかりました。
そのニックネームは、pasta e fagioli azzeccosaといいます。
azzeccosaは、どろどろという意味です。つまり直訳するとどろどろパスタ・エ・ファジョーリ。こんな状態
ナポリ料理の大家、ルチアーノ・ピニャターロさんの本、“リチェッテ・ディ
ナポリ”にはばっちり詳細に載っています。


それによると、昔はもっとサラサラなスープだったのが、次第にフォークを刺しても倒れないくらいどろどろになっていき、都会ではあまり作られない田舎料理になったのだそうです。
田舎の庶民の味をよく知っているナポリで生まれた、経済的で栄養価の高い、しかも美味しい料理です。
それでは本より、サレルノの、アンティカ・ピッツェリア・ヴィコロ・デッラ・ネーヴェのパスタ・エ・ファジョーリ・アッツェッコーザpasta e fagioli azzeccosaのリチェッタをどうぞ。
ピニャターロ氏のブログのナポリ風パスタ・エ・ファジョーリのページはこちら
材料6人分/
いんげん豆・・500g
ミックスパスタ・・500g
ラルド・・200g
ホールトマト・・250g
トマトペースト・・100g
にんにく・・1かけ
EVオリーブオイル、塩

・にんにく、オリーブオイル、ラルドをソッフリットにし、ラルドが溶けだしたらトマトペーストを加えて10分煮る。
・ホールトマトを加えて30分煮る。
・鍋にたっぷりの水を入れて生の豆を入れ、塩味を整えて1時間煮る。これをスーゴに加えて20分なじませる。
ミックスパスタ(カンデーレ、ツィーティ、ツィトーニ、ブカティーニ)を折って不揃いの形にし、豆に加えて必要な時間煮る。



初めて食べたときから、すごくおいしいけど、とても田舎っぽい洗練された美しさはない料理だなあとは感じていました。
でも、それこそナポリの人が大好きなスタイル。
この気取りのなさはナポリ料理の証。



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リチェッテ・ディ・ナポリ
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2020年1月11日土曜日

マンジャファジョーリとパスタ・エ・ファジョーリ

イタリア料理のベースのパスタをチェックしています。
海がある地域のアサリのパスタと、海がない地域のパスタ・エ・ファジョーリまで行きつきましたが、
ファジョーリといえば、イタリアには豆喰い(mangiafagioli)、と揶揄されるくらい豆が大好きな地方がありました。そう、中部イタリアのトスカーナ州です。

それに、“豆喰い”というタイトルの、この地方の料理を紹介する時に必ず登場する有名な絵もあります。



17世紀末の作品で、ローマ・バロックの傑作。当時の農民の生活が写真のように描き出されています。
現在はローマのコロンナ宮殿の美術館所蔵です。
webページはこちら
とても写実的な絵で、アートに詳しい人は、構図や光源などに興味をいだくのでしょうが、料理人の皆さまなら、おそらく、この豆は何か、卓上にある食べ物は何かなどに目が行くはず。
しかも答えはすぐ分かる。
白インゲンにも見える豆はトスカーナの名産品カンネッリーニではなく、多分黒目豆。
スプーンから汁が滴り落ちているので、この料理はズッパ・ディ・ファジョーリですね。
横にある葉玉ねぎとパンをかじりながら食べるのでしょう。

そういえば、トスカーナには乾麺のパスタの地方料理で、これといった代表的なものがないですね。
豆には強い愛着を示したトスカーナの人は、なぜかパスタには冷たい対応なんです。
パスタよりパンが有名でした。塩気のないパーネ・ショッコです。
パンがあったということは小麦粉があったのですから、乾麺のパスタも当然作られていました。
パスタ・エ・ファジョーリは農民の暮らしから生まれたスープのようなパスタです。

でも、豆のスープが大好きなトスカーナの料理ではなく、なぜかパスタの産地の方、ナポリの料理として世に出回っています。
ただ、家庭料理の定番だけあって、イタリア中に広まっていてバリエーションは無数にあり、どこの地方の料理とは言い切れません。

人気のナポリ料理の本、ルチアーノ・ピーニャターロのリチェッテ・ディ・ナポリ

には、パスタ・エ・ファジョーリは農村の料理から次第に都会の料理になり、それに伴い、皿の中央にフォークを刺しても倒れないような料理、つまり汁気の少ない料理になった。と説明しています。
ナポリでは、パスタ・エ・ファジョーリのことをazzeccosaな料理だと言います。つまりどろどろの料理です。
そういえば、以前、カンネッリーニでない缶詰の白インゲンを使ってスープを作ったら、全然どろどろにならなくて、ただの豆入りスープになってしまったことがありました。
パスタ・エ・ファジョーリの魅力はどろどろ具合だったのですね。
確かに、初めて食べた時は、その味に比べて、残念ながら見栄えが非常に悪い料理だと感じたものです。
でも、このドロドロ具合は、パスタや米をマンテカーレしたのと同じ効果を料理に与えます。
ところが、どの豆でもどろどろになるのではなく、カンネッリーニやボルロッティなどのイタリアの豆が必要だったのです。アメリカ原産の細長いタイプの豆ではどろどろにならないのです。
ナポリの人は、パスタのデンプンをゆで汁に溶け出させて、とろみをつける料理方法を知っていました。
トスカーナの人が豆喰いと言われるほどに豆が好きになったのは、ドロドロになる豆が栽培できたからなのでは・・・。
パスタの話がちっょと脱線してきましたが、ナポリの人がわざわざazzeccosaと呼んだ調理方法には、大きなポイントがあるような・・・。

カンネッリーニのパスタ・エ・ファジョーリ

ナポリ風パスタ・エ・ファジョーリ

クラシック・パスタ・エ・ファジョーリ
リチェッタは次回。




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リチェッテ・ディ・ナポリ
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2020年1月10日金曜日

新年恒例の縁起物、レンズ豆、今年はサルシッチャとレンズ豆

今月の「総合解説」から、新年の料理の話。
毎年必ず1月号に登場するのは、レンズ豆です。
お金を儲けたいという庶民の夢は、新年に外すことのできない縁起物となって定着していますが、お金が儲かるご利益がありそうな食材の代表が、コインの形をしているレンズ豆。
富だけでなく、鉄分やタンパク質ももたらしてくれます。
イタリアのレンズ豆の消費が年末年始に集中しているという事実からも、イタリア人に期待されている縁起物だということがわかります。
レンズ豆はゆでてオリーブオイルとレモン汁で調味して、コテキーノやザンポーネ、サルシッチャなどのこってりしたサラミや肉料理に添えるのが一般的ですが、
1月号のリチェッタでは、レンズ豆のパテをパン生地でチャンベッラ(リング形)に包んだスフォルマートにアレンジして、派手な形が新年らしい1品にしています。
パテやテリーヌ、スープ、パスタにもしやすい食材です。
ヴェネトには、伝統的なアサリのリゾットにレンズ豆を加えた料理があります。
レンズ豆のスープにタリアテッレと唐辛子を加えるのはバジリカータ。
アルト・アディジェではレンズ豆とキャベツとスペックのパスタ。
パスタ・エ・ファジョーリに代表されるマメとパスタは、スープパスタの基本の1品。

イタリアの海に囲まれた地域のベースのパスタがアサリのパスタで、海がない地域ではカーチョ・エ・ペペ、と考えていましたが、パスタ・エ・ファジョーリを忘れていました。
レンズ豆の産地として知られるウンブリアは海なし州ですが、美味しい豆が名物。
家庭料理の食材としては、チーズより豆のほうが身近かも。

今日は、イタリア料理の教科書のような、イギリス人が書いたイタリア料理の基本の本、

クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ

から、ザンポーネやコテキーノよりは手に入りやすそうなサルシッチャとレンズ豆のリチェッタをどうぞ。

“イタリアの緑のハートと呼ばれるウンブリアで栽培されるカステッルッチョのレンズ豆は、小粒で、イタリアで一番美味しいと考えられている。新年に食べると富をもたらすとも信じられている”
サルシッチャとレンズ豆Salsiccia e lenticchie
材料/4人分
オリーブオイル・・大さじ3
サルシッチャ・・8本
玉ねぎのみじん切り・・1個
にんにくの薄切り・・3かけ
ローズマリーのみじん切り・・大さじ2
ホールトマト・・800g
ジュニパー・・16粒
ナツメグ・・小さじ1
ローリエ・・1枚
唐辛子・・1本
赤ワイン・・200ml
カステッルッチョのレンズ豆・・100g

・大鍋にオリーブオイルを熱し、サルシッチャを5~10分焼く。しっかり焼き色がついたら取り出す。
・鍋肌に焦げ付いたらきれいにする。
・火を弱めて玉ねぎとにんにくを加えて焦がさないようにしんなり炒め、薄く焼き色をつける。ローズマリーとトマトを加えて弱火で煮詰める。
・ジュニパー、ナツメグ、ローリエ、唐辛子、赤ワイン、水400mlを加えてレンズ豆が柔らかくなるまでかき混ぜながら煮る。途中、必要なら水を足す。
・ローリエとローズマリーを取り除いてサーブする。

レンズ豆とサルシッチャ

カステッルッチョのレンズ豆は戻す必要がないが、他の豆の場合は表示に従う。


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クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ

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2020年1月9日木曜日

ナポリの新年とグレゴリオ歴

「総合解説」2018年1/2月号発売しました。

最初の記事は、“新年を祝う”年越しパーティーの料理。

12月31日の夜から1月1日の晩餐の間に、ザンポーネとレンズ豆、といった伝統料理を食べて新年を祝うというのがイタリアの習慣ですが、そもそも新年は1月1日に始まる、というのは誰が決めたのか、という、そこから?とつっこみたくなる話題です。
考えたこともなかたけど、帝政ローマ時代のなんちゃらユリウスという人が定めた帝政ローマ時代の暦(ユリウス暦)を、ローマ教皇グレゴリウス13世が改良したグレゴリオ歴が、現在は世界の多くの地域で採用されている“太陽暦”、なんだそうですよ。

グレゴリオ暦が制定されたのは1582年。
17世紀まで、スペインではクリスマスが1年の始まりだったと言うから、ハリウッドの脚本家なら1月1日を祝う習慣の背後にローマ帝国やバチカンの陰謀でも発見しそうです。

というわけで、新年を祝う食事は、様々な宗教や時代が混ざり合って生まれました。
でも、ローマにもキリスト教にも関係ない東の端の島国から見ると、要は、儲かって長生きしたい、という願いが込められたのが新年の食事です。
イタリアの新年の料理にも、えげつないくらい、儲かりたい、という願いが込められていました。
統一前のイタリアでは州ごとに新年の始まりの日が違ったというから、想像しただけでもカオスです。

ナポリの新年の料理

伝統的なナポリの年越し料理は魚のプリーモと野菜と肉のセコンド。
欠かせない定番は真夜中の乾杯、スパゲッティ・ボンゴレ、オオウナギ、バッカラ、貝、イカ、魚のフリット、


新年を迎える前の市場は、東京もナポリの同じ雰囲気。

ゆでた魚のマヨネーズ添えも新年の料理

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2020年1月8日水曜日

ロッショーリのカーチョ・エ・ペペ

アサリのスパゲッティは基本の基本のパスタですが、地産地消にこだわるイタリア料理では、海辺の地域のベースのパスタと言ういうのが正確ですかね。
では、海がない地域では、何が基本のパスタでしょうか。
やっぱり、カーチョ・エ・ペペあたりですよね。

以前、このブログでも、ローマ系パスタのルーツとして取り上げて、かなり詳しく調べていました。
こちら
酒が飲みたくなる深夜の料理だって。
これだけシンプルな家庭料理ですから、家庭の数だけバリエーションがあります。

今日は、ローマの商売上手な繁盛店、『ロッショーリ』のリチェッタを訳してみます。

Cacio e pepeカーチョ・エ・ペペ
材料/4人分
トンナレッリ・・280g
ペコリーノ・ロマーノ・・400g
ヴァッケ・ロッセの24ヶ月熟成のパルミジャーノ・・130g
ガスなしミネラルウオーター・・500ml
※粒黒こしょう・・3g
粗塩

※味の強い食材が少ないローマ料理では、どのこしょうを使うかは、基本的な選択。
ロッショーリでは数種類をミックスして使っている。
使う直前にジャワとサラワクの黒(どちらも辛さはそれほど強くないが興味深いアロマがある)を同量ずつフライパンで軽く炒め、乳鉢で細かくなりすぎないようにすりつぶし、強い松脂や甘くて濃厚な樹脂のバルサミックな風味、ジュニパーやミルトのようなフレッシュな風味を引き出す。

・2種類のチーズをすりおろし、大きなボールに入れる。
・ぬるま湯500mlを加えてハンディミキサーで撹拌し、なめらかで濃いクリーム状にする。
・これがカーチョ・エ・ペペやグリーチャのベースになる。
・トンナレッリをゆでる。
・油も水も入れないソテーパンにベースのチーズを1人につき大さじ1ずつ入れる。
・アルデンテになったトンナレッリをゆで汁少々と一緒にソテーパンに入れてマンテカーれする。乳化したらニード型に巻いてスープ皿の中央に盛り付ける。
・ソース大さじ1を加えてチーズとこしょうを散らす。

ロッショーリのカーチョ・エ・ペペ

マレーシアのこしょう



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『ロッショーリ』
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2020年1月7日火曜日

アルタ・クチーナのアサリのパスタ

今日はアルタ・クチーナのシェフのアサリのパスタをどうぞ。
イタリアのトップシェフ40人のパスタを集めた本、パスタ・レボリューション


アルタ・クチーナとは相性が悪い乾麺のパスタの一番ベーシックで家庭的な料理を、あえてアルタ・クチーナにしようという無謀な企画にのった唯一のシェフは、モレノ・チェドローニシェフ。ミシュラン2星のマドンニーナ・デル・ペスカトーレのオーナーシェフです。
シェフのwebページはこちら。アンコーナ生まれ。確か、寿司職人のような豆絞りのはちまきがトレードマークで、寿司バーを始めるなど寿司に注目したのはすごく早かった人で、イタリア風寿司の考案者と言われています。


モレノ・チェドローニシェフのアサリのタリオリーニTaliolini alle vongole by Moreno Cedroni
材料/4人分
卵入り乾麺のタリオリーニ・・100g
ソース;
EVオリーブオイル・・100g
にんにくのみじん切り・・3g
アサリ・・700g
ヴェルディッキオ・・50ml
トマトのブロード(トマトと玉ねぎを魚のブロードで煮てオイルとバジリコで炒めてミサーにかけた薄いピンク色のスーゴ)・・100ml
イタリアンパセリ・・2.5g
ビアンコ・リモーネ;
ジュリエンヌに切ったレモンの白い部分・・5g
レモン風味のオリーブオイル・・1ml
塩・・0.7g
ブロード・ディ・ペッシェ・・5ml
仕上げ;
アサリ・・12個
レモンの皮

・あらかじめ下ごしらえしておき、調理は短時間で済ませるのがポイント。
・タリオリーニは半分火を通しておき、仕上げにソースで熱を加えずにマンテカーレする。こうするとパスタがよくソースを吸うが、加熱するとパスタは短時間で火が通る。
パスタはニード型に巻いて器に入れ、冷蔵庫か急速冷凍機に入れる。
・サーブする直前に電子レンジでさっと解凍する。

・ソースはオイルでにんにくをソッフリットにし、よく洗ったアサリを加えてワインをかける。蓋をして弱火で熱して貝を開ける。
・アサリの汁を漉してミキサーに入れ、殻を取り除いたアサリ50g、トマトのブロード、粗く刻んだイタリアンパセリ、トータルの重さの1/3の水を加えて撹拌する。
・水1Lにつき塩15gを加えた湯でタリオリーニ100gを2.5分ゆでる。
・パスタの水気を切ってソースに加え、よくあえて冷やす。
・レモンの白い部分を約10秒ゆでてブリュノワーズに切り、他の材料と混ぜる。
・生のアサリをさっとゆでて冷まし、汁は残したまま殻から出す。
・白い部分を切り取ったレモンの皮を少量みじん切りする。
・パスタをスーゴであえて深いレードルでニード型にし、ラップで覆ってレンジで中が55℃になるまで加熱する。
・生のアサリ3個とレモンの白い部分を加え、皮のみじん切りを散らす。

出来上がりの写真を見ると、オレンジ色のソースがよく乳化していてとても濃厚でパスタとよくからんでいる。レモンの白さとたった2個のアサリのトッピングも強いアクセントになっている。
こんもりした盛り付けがボリューミーで、ソースの濃厚さを強調している。
ミキサーにかけたアサリとトマトのブロードのソースは、想像の範囲を超えている。

このリチェッタのポイントは、チェドローニの得意技、パスタのマンテカーレ・ア・フレッド。la manteacura della pasta  a freddo

パスタをマンテカーレしてニード型に盛り付ける

マンテカーレはリゾットの話のときにも説明しましたが、パスタからスーゴに溶け出たデンプンに油脂を加えて乳化させること。その時、熱を加えないのがア・フレッドのマンテカトゥーラ。


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パスタ・レボリューション
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2020年1月6日月曜日

アサリが入らないアサリのスパゲッティ

新年早々、アーリオ・オーリオの変な動画を見つけてしまって、違和感にまとわりつかれていました。
こんな動画

あれは、私の知ってるイタリアンでもナポリ料理でもない。
なんでそう感じたのでしょうか。
その答えを探していた時、ある話を見つけました。

ナポリでは、アーリオ・オーリオは、アサリが入っていないボンゴレだ。
これですよ。

パスタが、労働者層が生まれて女性が家事から開放されつつあった時代に、庶民のためのストリートフードとして誕生した歴史を考えても、高級レストランの天才シェフが、自らの才能をアピールしようとしたのか、誰も知らないテクニックを駆使して作るパスタに、ナポリや南イタリアの魅力が、感じられるわけがないですねー。

アサリが入っていないボンゴレ、つまり、手に入る食材から工夫と想像力で作り上げる料理、地中海の海と太陽を感じて、南の人情の暖かさも感じるような料理。
まあ確かに、かなり古臭い典型的なおばちゃんの考えであることは否定しません。
それでは、ナポリの人から支持されているジャーナリストのナポリ料理の本、
ルチアーノ・ピニャターロのリチェッテ・ディ・ナポリ』から、
ナポリ人にとってはアーリオ・オーリオより基本のパスタ、アサリのスパゲッティのリチェッタをどうぞ。

あさりのスパゲッティspaghetti cn le vongole
材料/4人分
スパゲッティ・・400g
アサリ・・600g
EVオリーブオイル
にんにく・・1かけ
唐辛子
イタリアンパセリ、塩

・フライパンに油、にんにく、唐辛子を入れてソッフリットにする。
・アサリを加えて蓋をし、強火で熱して全部の貝を開ける。
・パスタをアルデンテにゆでる。
・フライパンから飾り用のアサリ数個を取り出す。
・ゆでたパスタをフライパンに加え、なじませて皿に盛り付ける。
・飾り用アサリを加えてイタリアンパセリのみじん切りを散らす。

名乗るほどのリチェッタでもないと思いますが、この本では、誰のリチェッタか分かるものはすべて名前入りです。
これはナポリのリストランテ・ラ・カンティネッラristorante La Cantinellaのリチェッタだそうです。
店のwebページはこちら
サンタ・ルチア地区にあります。

アサリのスパゲッティの定番のリチェッタ

ちなみに、
スローフードの『オステリエ・ディ・イタリア2017


には、ローマのトラットリア・ロステ・デッラ・ボン・オーラTrattoria L'Oste della Bon Ora
webサイトはこちら
のアーリオ・オーリオのリチェッタが載っています。

アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノはローマの庶民料理の定番、ajo e ojoに最低限のアレンジを加えた唐辛子入りバージョン。
この料理のルーツはラツィオ、アブルッツォ、カンパーニア、カラブリア一帯。

Spaghetti aglio olio e peperoncinoスパゲッティ・アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ
材料/4人分
スパゲッティ・・320g
にんにく・・3かけ
唐辛子・・1本
イタリアンパセリ・・1房
EVオリーブオイル、塩

・にんにくは皮をむいて、好みでまるごとや数個に切って、またはみじん切りや潰して使う。
・油ににんにくと手でちぎった唐辛子を入れて熱する。にんにくと唐辛子はあとで取り除く。
・スパゲッティをアルデンテにゆでて水気を切り、にんにくや油を熱したソテーパンに入れてなじませる。
・仕上げにイタリアンパセリのみじん切りを散らす。

ローマの庶民料理の定番、アーリオ・オーリオに最低限のアレンジを加えた唐辛子入りバージョン。
この料理のルーツはラツィオ、アブルッツォ、カンパーニア、カラブリア一帯。
リチェッタを提供したオステリアのオーナーシェフは、
にんにく風味を弱めたい時は水気をしっかりきったスパゲッティに熱いオイルをかける。または半分に切ったにんにくをボールの内側にこすりつけてからスパゲッティを入れ、イタリアンパセリと唐辛子のみじん切りを散らす。
ロッソバージョンにする時は、にんにくと唐辛子風味にしたオイルに、生か裏漉しした、または小さく切ったトマト、またはホールトマトや瓶詰めトマトを加える。
パスタはリングイーネやヴェルミチェッリでもよい。とアドバイスしています。


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リチェッテ・ディ・ナポリ
スローフードの『オステリエ・ディ・イタリア2017
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2020年1月5日日曜日

今どきのナポリ料理、ついていけない問題。

いやー、きのうのアーリオ・オーリオにはびっくりしました。
実はこの料理、基本中の基本のイタリアのパスタで、部活帰りのお腹をすかせた子どもたちにお母さんが作る定番料理だとばかり思っていたのですよ。

だから、母親から受け継いだリチェッタを守って作っている、というシェフのリチェッタでも紹介しよう、と軽い気持ちで取り上げた動画でした。

1品目はたしかに、定番と思わせるリチェッタでした。
ところが問題は2品目。
ナポリの高級ホテルの星付き総料理長のアーリオ・オーリオです。
これ初見で理解できた人いるんでしょうか。
特に、ナポリのお母さんは、大丈夫だったのでしょうか。
1品目のシェフは2品目を作ったシェフとは親子ぐらい年が離れているように見えましたが、もし息子がこんなアーリオ・オーリオを作ったら、今どきの若いもんの考えていることはまったく分からない、そもそも伝統とは、と説教の一つもしそうです。
それくらい見事なまでに伝統をぶっ壊していました。
今日は気力を振り絞って、3品目のリチェッタを訳してみます。


・スパゲッティ160gをゆでる。
・にんにく1かけは230℃のオーブンで約40分焼いて黒にんにく風にする。
・ひまわりオイル100gでにんにく1かけをソッフリットにする。6分ゆでたパスタ、パスタとレードル1杯のパスタのゆで汁を加えて最後まで火を通す。
・半ばまで火が通ったパスタを熱した鉄板で焼いてロースト香をつける。
・バットに広げて室温にする。
・生にんにく1/2かけをすりおろし、卵1個、ビネガー10g、レモン汁10g、塩をハンディミキサーで撹拌する。ヒマワリオイルを少しずつつ加えて乳化させ、ソースにする。
・パスタをソース、にんにく、唐辛子のみじん切り、ゆで汁、オイル、イタリアンパセリのみじん切りであえる。
・フォルケットーネで巻いて皿に盛り付け、すりおろした黒にんにくを散らす。
ローストしたパスタのサーブの適温は60℃。ソースを少量ずつ絞り出す。
盛り付けた後のパスタのサーブの適温は30~35℃。

これもかなり理解不能でした。
いやー、今どきのナポリ料理、どうなってるの。
私が好きなイタリア料理とは違うなあ。
1品目を作ったシェフの料理でお口直しでも。


そもそも、スパゲッティ・アーリオ・オーリオってどんな料理でしたっけ。
こんな超クリエイティブな料理を見ると、元来の姿を見失いますが、そもそもは、アサリのスパゲッテイのナポリの貧しい人々のバージョン、つまりアサリが入らないアサリのスパゲッティだなんて言われています。
少ない材料と経験でも作ることができるパスタです。
ただ、ナポリ料理はパスタのアルデンテ具合には超こだわるので、パスタの湯で具合だけは、素人でも失敗は許されません。
そうそう、スパゲッティ・アッレ・ヴォンゴレはナポリとサレルノを始めとするカンパーニアの海に面した町のレストランには必ずある1品。
次回はナポリ料理の本から、リチェッタを訳してみます。



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2020年1月4日土曜日

ナポリ風アーリオ・オーリオ

謹賀新年
今年もよろしくおねがいします。

2020年最初の話題はパスタのリチェッタなどどうでしょう。

イタリア料理初心者向きの本、

クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ

この本の著者はイギリス人。
イギリス人向けに長年イタリア料理を教えてきました。
イギリス人といえば、昔からイタリアに憧れ続けてきた人たち。
年季が違います。
この本は、私が初めてイタリアを訪れて、その虜となっていった頃の純粋なイタリア料理で満ちています。

イギリス人が書いた本なのに、イタリアでロングセラー。
イタリア人からも愛されている本です。

この本の最初の料理は野菜の前菜。
さらに海の前菜、肉の前菜と続きます。
当たり前と思えるのに、野菜の前菜が載っている本は、意外と少ないのです。

昔ながらのオステリアのメニューがゴージャスな本になったような1冊です。

さて、そんな本に載っているパスタは、どんなメニューでしょうか。

ざっと挙げると、
■スパゲッティーニ・アーリオ・エ・オーリオ
■トマトソースのペンネ
■ペスト・ジェノヴェーゼ
■タリアテッレ・アル・ラグー
■スパゲッティ・カルボナーラ
■ブカティーニ・アマトリチャーナ
■スパゲッティ・プッタネスカ
■パスタ・アッラ・ノルマ
■パスタ・プリマベーラ
■サルシッチャとスーゴのリガトーニ
■パスタ・エ・ファジョーリ
■野うさぎのラグーのパッパルデッレ
■ブロッコリのオレッキエッテ、サルサ・ピッカンテ
■くるみのソースのタリアテッレ
■オーブン焼きラザーニャ
■ヴィンチスグラッシ
■トリュフとポルチーニのラザーニャ
■アーティチョークとほうれん草の具のカネロニ
■カボャとセージのトルテッリーニ
■きのこのトルテッリーニ
■ラビオリ・サルディ
・・・
といった地方料理と定番が絶妙に混ざったラインナップ。
アーリオ・オーリオといった基本中の基本から始まって、リストランテには欠かせないトリュフのパスタや超マニアックな・サルデーニャ風ラビオリまで網羅しています。

スパゲッティーニ・アーリオ・オーリオには、
「オリーブオイルがベースの軽いソースなのでスパゲッティーニがあいます。にんにくを焦がすと苦味が出るので焦がさないようにするのがポイント」という短い解説が。
ちなみに、料理名にペペロンチーノは省略されていますが、リチェッタには入っています。
アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノはやっぱり長い。

アーリオ・オーリオはローマの名物パスタだけど、
ナポリのシェフたちのナポリ風アーリオ・オーリオがビックリ。


一番最初のシェフはおふくろの味の家庭料理が得意。

盛り付けは、シンプルなパスタに用いると映えるベスビオ山型。
レードルを使ってフォルケットーネで巻きつけ、崩さないようにまっすぐ抜きながらこんもり盛り付けます。

2番めは、高級ホテルの総料理長就任後1年でミシュランの星を1つ獲得した若手シェフによる、かなり斬新なアーリオ・オーリオ。

・口の広い浅鍋に水と海塩を入れ、スパゲッティ160gを入れる。室温37~38℃で45分置いて戻す。
・別の浅鍋で水を沸騰させ、塩少々とイタリアンパセリ15gを加えてさっとゆで、氷水に取る。にんにく(風味が強いブランドにんにく)5かけをスライスして水に浸し、冷蔵庫で一晩休ませてにんにくの香りをつける。
・ボールにニンニク風味の水、種を取り除いて小口切りにした生唐辛子2.5gを入れて湯少々、りんご酢を加えて冷ます。この水とゆでたイタリアンパセリ、塩少々、オイル少々をハンディミキサーで撹拌してソースにする。
・鍋ににんにく風味の水、野菜のブロード、イタリアンパセリの茎5g、オイル少々、粉唐辛子少々を入れる。
・戻したパスタを加えて蓋をし、リゾッターレする(リゾットの要領で水分を少しずつ加えながら煮る)。
・仕上げにオイルをかけてイタリアンパセリの茎を取り除く。皿に盛り付けて唐辛子風味の水をスプレイして散らす。イタリアンパセリのソースをたらす。

今時の若手のトップシェフは、既存の概念を破壊することにすべてをかけてますね。
常識的なことはいっさいやりません。最初のシェフとは親子ほど年齢が離れていると思いますが、今どきのナポリの親子はうまくいってるんでしょうか。
しれっとこれがナポリ風のアーリオ・オーリオだと言っているのでびっくりしました。

3人めも私が知ってるアーリオ・オーリオと全然違う・・・。
イタリア料理はどうなってるのか。
訳は次回です。


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クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ

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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...