2017年2月27日月曜日

ルフィーノとプラネタの地方料理書

このところワインの話が続きましたが、今日は大手ワイナリーが出したイタリア料理の本の話。

最近入荷した本、『シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ』と、『ルフィーノのトスカーナ』は、どちらも力作です。



ワインメーカーたちの土地への強い愛情と豊富な知識を、改めて認識しました。
彼らは料理の分野でも、とてもユニークな存在です。

プラネタもルフィーノもは、広大な土地を所有する貴族であり、領地の産物と自然との結びつきを熟知する農民であり、優れた醸造技術者を育てる研究者であり、世界中の消費者に自社のワインをPRするビジネスマンでもあります。
本からは、その土地の食文化の形成に、自らが一役買っているという自負が強く感じられます。
さらに、ワインのマーケットが世界規模なので、彼らが紹介するトスカーナやシチリア料理も、世界中に通用する洗練したセンスのよさがあります。

どちらの本も、特にルフィーノの本は、ある程度トスカーナ料理を知らないと理解できない中級以上の本です。
ワイナリーのイタリア地方料理は、イタリア料理の分野の一つとして、確立されつつあるなあと感じる本でした。

『ルフィーノのトスカーナ』出版イベント
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プラネタは本の出版1周年を記念してフードチャレンジのイベントを開催。
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2017年2月23日木曜日

ヴァッレ・レアーレ

ガンベロ・ロッソの『ヴィーニ・ディ・イタリア2015』、今日は白ワイン・オブ・ジ・イヤーの話。

ベスト白ワインに選ばれたのは、
“トレッビアーノ・ダブルッツォ・ヴィニャ・ディ・カペストラノ2012/ヴァッレ・レアーレ”。

トレッビアーノかあ。
赤と同じで、いまいち盛り上がりに欠けそう。

いや、そんなこともない。
このワインの注目ポイントは造り手のようです。
ヴァッレ・レアーレは職人気質のカンティーナで、ワイン造りにあまり適さないラクイラにヴェローナからやってきて、その厳しさに魅入られたレオナルド・ピッツォーロが率いるカンティーナ。

ヴァッレ・レアーレのワインを説明するレオナルド・ピッツォーロ氏。
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気のせいか、気候の厳しさを説明する口調がうれしそう。
ガンベロ・ロッソによると、後にトレンドとなるビオダイナミック農法を取り入れた初期のワインだそうです。
BIBENDAのオスカー・デル・ヴィーノ2014のベスト白ワイン部門にもノミネートされています。
同じトレッビアーノ・ダブルッツォでも、こちらはヴィニェート・ポポリ。




他にアブルッッォと言えば、モンテプルチャーノ・ダブルッツォですが、こちらも注目されています。

つまり、このカンティーナのワインは全部注目つーことのようですね。
しかも、ガンベロ・ロッソのベスト白ワインに選ばれたヴィニャ・ディ・カペストラ2012はまだ若いけれど、2010年はすでに小さなグランデワインの片鱗を見せているんだそうですよ。
つまり、2012年にこだわることもないかも。

おまけです。超素敵なモンテプルチャーノ・ダブルッッォのPVをどうぞ。




聖地巡礼したくなるワインのPVだなあ。

もう一つおまけ、アブルッツォの名物。
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“ヴィーニ・ディ・イタリア2015”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年11月号に載っています。
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2017年2月20日月曜日

バローロ・ヴィッレーロ・リゼルヴァ・ヴィエッティ

カンティーナの凄腕女性経営者の話が出たので、今回は、久しぶりにガンベロ・ロッソのヴィーニ・ディ・イタリアの話。
例によってちょっと前、2015年版の話です。

この年、ロッソ・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのは、バローロ。
ヴィッレーロ・リゼルヴァの2007年。
ガンベロ・ロッソによると、1982年以来、わず8つのヴィンテージしか生産されていないワインで、イタリアのワイン醸造の頂点を極めたワインの1つで、芸術品。
現時点でも美味しいが、ボトルで何年も熟成させることができるワイン、なんだそうですよ。

まあ。そんなワインを私が口にできる機会があるわけもないので、せめて写真だけでも。

Barolo Riserva Villero 2007 monumento alla Langa di oggi e di domani, eleganza e ricchezza e forza che travolge

凄いインパクトのあるラベルですね。
もし見かける機会があったら、ちゃんと思い出せそう。

ホームページを見ると(こちら)、ヴィエッティでは5つのクリュのバローロとリゼルヴァを生産していますが、リゼルヴァ用に選ばれたのは、ネッビオーロの栽培に最適と言われるテロワールのカスティリオーレ・ファッレットのコムーネのクリュ・ヴィッレーロのワイン。


ヴィエッティ家はクリュのブレンドが一般的だった時代から、単一のクリュのワイン造りに取り組んできたワイナリー。


ランゲ地方にあるカスティリオーネ・ファッレット。
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同地区のロカンダ。
メニューを眺めてるだけでも美味しそう。
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“ヴィーニ・ディ・イタリア2015”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年11月号に載っています。
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2017年2月16日木曜日

ドナテッラのオステリア

今日は「総合解説」で紹介している女性シェフ、ロベルタ・アルキテッティさんのご紹介、
と思ったのですが、記事のほとんどを費やして紹介されているのは、シェフではなく、経営者のドナテッラ・チネッリ・コロンビ―ニさんのことでした。
店の名前もオテリア・ディ・ドナテッラで、ドナテッラさんを前面に押し出しています。
いったい、ドナテッラさんて何者なんでしょうか。

まずは紹介がてらこの動画をどうぞ。
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なんだかすごい肩書をずらっとお持ちですが、どうやら、イタリアのワイン業界で断トツに注目されているやり手のビジネスウーマンのようです。

まずはワイン。
ファットリア・デル・コッレというワイナリーとアグリトゥーリズモの経営者です。
すべて女性が運営に携わっています。
ワインはもちろん一級品。





ドナテッラさんは、オープンカンティーナのアイデアを考え出して、数年でイタリアのエノトゥーリズモの主流にしました。
2012年のヴィニタリーで国際賞受賞、2013年には女性醸造協会副会長就任。




そしてアグリトゥーリズモのレストラン、オステリア・ディ・ドナテッラとシェフのロベルタさん。




ソラマメとペコリーノのアニョロッティ。
トスカーナならではの食材ですね。
料理教室も併設されているそうですよ。


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“ロベルタ・アルキテッティ”シェフの記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年11月号に載っています。
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2017年2月13日月曜日

ミラノの飲食店のトレンド

今日はちょっと前の、ミラノのレストランの話。
皆さん、覚えてますか、ミラノ万博のこと。

いつの話でしたっけ。
2015年ですよ。
今日話題にするミラノは、ミラノ万博を前にして、気持ちが上がっていた頃のミラノの話です。

イタリアで食がテーマの万博が開催される直前のミラノのレストラン業界は、相も変わらず、ミラノの飲食業界はこの10年で大きく変わった、と言われていました。
どう変わったかというと。ハイクラスの店とトラットリアの間の違いがあやふやになってきたそうですよ。
今は、パニーノを食べるだけでもグルメな体験ができて、上等なファーストフード、巨匠が作るパニーノが大流行。
今のミラノでは“象の耳”を食べるより美味しいハンバーガーを食べる方が簡単なんだそうです。

ハンバーガーを食べる時にソースを選べるなんてのは当たり前。
選べる肉の種類は、カンパーニア産水牛、パダーノ産のリムザン牛、ブラックアンギュス、日本の和牛、という豪華さ。

ミラノで成功する秘訣は個性と品質だそうです。

万博が終わって1年が経過した現在、ミラノの飲食業界はどのくらい変わっているかは分かりませんが、
まずは2年前は話題だった店、ザ・ミートボール・ファミリー。

ミートボールはイタリア語でポルペッティーネ、ミラノの方言ではモンデギーリ。
ミラノの人気の伝統的で庶民的なお惣菜です。

おしゃれなナヴィッリ地区のニューヨークの雰囲気をたたえたスタイリッシュな店。
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次は高級ブランドショップが立ち並ぶモンテナポレオーネ通りのパニーノの店、シック・エ・ゴー。
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パニーノの具は天然サーモン、アンガスビーフ、イセエビなどだそうです。


エコや有機栽培に敏感なレストランの代表は、28ポスティやエルバ・ブルスカ。
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スタリッシュな生き方を愛するミラノ人が好きそうな店ばかりですねえ。
ミラノでこてこての伝統料理を食べるのは、ますます難しくなりそうです。
店の詳細やホームページアドレスは「総合解説」をご覧ください。


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グルメガイド“ミラノ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年11月号に載っています。
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2017年2月9日木曜日

タッジャスカオリーブ

今日の「総合解説」のビジュアル解説は、リグーリアのオリーブオイルの話。

リグーリアのオリーブと言えば、タッジャスカ種。

Taggiasca olives

タッジャスカは薄紫色で小粒のオリーブ。
上質なパテになり、うさぎ肉や鶏肉に合います。
リグーリアのオイルの特徴は、酸度が低くて甘く、デリケートでまろやかな味。
300種類以上あるイタリアのオリーブの中でも、最もデリケートなオイルができるのがタッジャスカ種。




リグーリアの中でもタッジャスカの栽培が盛んなのはインペリア。



リグーリアの畑は、海と山に挟まれた狭い段々畑。
リグーリアの石壁の総延長は万里の長城より長いんだそうですよ。
プーリアなどの南イタリアの広大なオリーブ畑とは、まったく違う姿をしています。
畑での労働もきつくて過酷なものでした。
オリーブの栽培をリグーリアに伝えたのは古代ローマ人。
広めたのは中世後期の修道士。




リグーリアの食材





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“オーリオ・リヴィエラ・リグレ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年11月号に載っています。
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2017年2月6日月曜日

ティラミスの元祖?パルマのドルチェ

今日はパルマのドルチェの話です。
パルマのドルチェには、前回取り上げたファルネーゼやマリア・ルイーザ女公の宮廷と結びついた高貴なドルチェと、それ以前の、家庭や尼僧や修道士のドルチェの2つのベースがあります。

修道院生まれでパルマで今も愛されているドルチェの代表は、スポンガータ。
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ドライフルーツやスパイスがたっぷり入って、飾り気のない厳格な外見は、いかにも修道士が作ったドルチェ。
スポンガータなんて名前だから、スポンジ生地のふわふわしたケーキが思い浮かぶけど、これは硬そうですねー。
ねこちら
一説によると元々はローマ生まれで、ベネディクト会の修道士によって完成したドルチェ。
パルマに伝わってからは、サン・ジョヴァンニの修道院のものが人気ですぐに広まったのだそう。

総合解説」でもう一つ紹介されている修道院生まれの歴史のあるドルチェ、トルタ・ビアンカ、別名ブシランはこちら。
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これをホワイトケーキと呼ぶのは、どう考えても無理があります。
でも、復活祭のドルチェというのは納得。
ちなみにスポンガータはクリスマスのドルチェ。
これも納得。

次に、マリア・ルイーザの宮廷のドルチェとして紹介されているリチェタの一つが、ストラッキーノ・ディ・ドゥケッサ。

サヴォイアルディとマスカルポーネとコーヒーを使う、ティラミスによく似たドルチェです。




パルマ県のフォンテヴィーヴォという町の修道院で12世紀に生まれました。

ドゥケッサとは女公のこと。
ストラッキーノとは、形が似ているところからこう呼ばれるようになったとのこと。
いやーティラミスに似てますねえ。そっくりです。
チョコレートとアーモンド入りなので、ティラミスよりリッチ。
でも、名前のインパクトはティラミスの圧勝ですね。
ティラミスは私が考え出したと言う人が続出したのに、パルマの人はなぜ沈黙を守っているのでしょう。
詳しいリチェッタは「総合解説」にあります。



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“パルマのドルチェ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年11月号に載っています。
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2017年2月2日木曜日

パルマの宮廷の主役

バジリカータのおばあちゃんのパスタの次は、パルマの宮廷のドルチェ。
パルマの宮廷というと、ファルネーゼ家やマリア・ルイーザ女公の宮廷だそうです。

マリア・ルイーザは、ナポレオンの妃だった人です。

ナポレオンは、戴冠式の肖像画で有名なジョセフィーヌと離婚して、オーストリア皇帝の娘のマリア・ルイーザと結婚します。
そしてナポレオンが失脚した後の1814年、マリア・ルイーザはパルマの大公になります。
そのあたりの波乱万丈でぐしゃぐしゃの人生は、wikiでどうぞ。

2014年は、彼女がパルマの大公になってから200周年の年。
パルマ市は、パルマ市民に一番愛された大公、マリア・ルイーザの、こんな動画を作りました。




ファルネーゼ家は、最初にパルマの大公となった家系。
パルマのテアトロ・ファルネーゼ。
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ローマのパラッツォ・ファルネーゼは、ローマ法王も出したファルネーゼ家の威光が感じられるルネサンスを代表する建物。
ミケランジェロも雇われて建築に携わりました。
現在はフランス大使館。
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かつてパルマを訪れた時は、パルマの歴史など何一つ知らず、生ハムとパルミジャーノしか知らなかったけど、かつての宮廷文化の名残のような品の良さはびんびん感じました。
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次回はパルマのドルチェの話です。


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パルマのドルチェの記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年11月号に載っています。
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生ハムの一番美味しい部位はガンベレットこと端っこ。

生ハムやパルミジャーノを、パルマの食文化の観点で見ると・・・。 食の都パルマのシェフが語るパルマの食文化 これはアルタ・クチーナとしてのパルマ料理ですね。 もう少し庶民的な、パルマの日曜日の家庭のプランゾの場合、スタートは、クラテッロ、パルマの生ハム、コッパ、ストロルギーノなどの...