2020年12月29日火曜日

『ルフィーノのトスカーナ』はリチェッタが1つもないトスカーナ料理書の傑作。ルフィーノは何を伝えたかったのか。

キアンティの本を紹介するなら、外せない1冊がありました。


です。
トスカーナを代表するワイナリー、ルフィーノが、トスカーナやフィレンツェの食文化を美しい写真と深い文章で紹介する、総力をあげて作った傑作です。
リチェッタが1つも載っていない料理書を、どうしてルフィーノは出版したのか。
ルフィーノはこの本のことを民話集、と形容しています。
子どもたちに語り継いでほしかったのでしょうか。

議論を起こす本だけど、呼んだ人はみんな、トスカーナ人の生活に深く思いをはせるはず。




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ルフィーノのトスカーナ

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2020年12月28日月曜日

キアンティとシエナの争いを解決した方法は、マキャベリズムのわかりやすい実例。

キアンティはイタリアワインの中で、最も世界的知名度が高いワイン。
その産地は、アメリカ人に溺愛されました。
多分、外国人は殆ど知らないけど、アメリカ人の間ではとても有名なのが、パンツァーノのコンカ・ドーロConca d'Oro Panzano in chianti。
憧れのトスカーナの姿が広がっています↓

パンツァーノのヒーローは肉屋のダリオ・チェッキーニ。
食べた人の幸せホルモンをどはどば出す本物の肉食系↓

キアンティはフィレンツェとシエナの間の長さ70kmに渡る細長い地方。
フィレンツェとシエナの間には歴史的な領土争いがありました。
このアンティ地方を有名にしたのは、ワインと、この領土争いの解決方法。
キーワードはマキャベリズム。

聞いたことはあるけど詳しくは知らない言葉だよね。
でも、キアンティを例に説明すると、かなりわかりやすくなります。
つまり、どんな卑怯な手段でも、大義のためなら許される、というルネサンス期に生まれた考え方で、これを信じていたのがルネサンスが花開いた街、フィレンツェです。
その際に生まれたのが、キアンティのトレードマーク、黒い雄鶏gallo neroの由来に関する話↓


フィレンツェとシエナの境目を決める方法は、鶏の鳴き声を合図に双方から出発した騎士が出会った場所を境界線とする、というもの。
大切な役目を担わされたのは、フィレンツェの黒い雄鶏とシエナの白い雄鶏。シエナは鶏に美味しいものを食べさせてリラックスさせてぐっすり眠らせました。
一方フィレンツェは、何も食べさませんでした。黒い雄鶏は空腹でイライラしていました。
そして早朝に鳴き出したのです。
当然ながら、フィレンツェの騎士は先に出発し、ゆっくり眠ったシエナの雄鶏は遅い時間に鳴き、騎士は出遅れました。
その結果、フィレンツェはシエナの壁より12kmも外側に領土を広げたのです。
その時得た領土がキアンティ地区です。
黒い雄鶏のマークを誇らしげに掲げるフィレンツェのワイン畑を眺めるシエナ市民の心の内は、煮えくり返っていたかも。



には、キアンティとフィレンツェ料理の本も。

オステリエ・エ・ジェンティ・ディ・フィレンツェ・エ・キアンティ





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2020年12月27日日曜日

世界が憧れるイタリア料理とワインがある場所、トスカーナ

今日のお題はグルメ旅。
今月の旅の目的地は、キアンティChiantiです。

キアニーナがフィアスコを引きながらフィレンツェの中心部をパレード。

こも被りのあの独特のボトルは、バブルが弾けた頃に消えていったイメージがあるのですが、昔はイタリアワイン(キアンティ)といえばこのワインでした。
つる棚の下の庭のテーブルに赤と白のチェックのテーブルクロスがかかっていて、その上にこもかぶりのキアンティとイタリア料理かのっている風景は、アメリカ人の理想のイタリアなのです。
『トスカーナの休日』は普通のアメリカ人女性がトスカーナで不動産を買い、田舎暮らしとイケメンを手に入れるアメリカンなシンデレラストーリー。

『トスカーナの幸せレシピ』は料理人を目指す純粋な青年が居場所と仲間を見つける物語。

イギリス人のイタリア好きも年季が入ってます。
EMフォースターの名作、『眺めのいい部屋』はフィレンツェが舞台。
イギリスの中産階級の目で見るフィレンツェは、とても高尚。

今日はトラベルガイドというより、たまにやりたくなる映画紹介でした。
フィレンツェの話は次回に。

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総合解説
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2020年12月26日土曜日

ペーストとエビのスパゲッティは、“ペスト・エ・ガンベリ”と略称で呼ばれるほど人気で、実はジェノバではなくシチリアを代表するパスタだった。

シチリアのパスタがたくさん載ってるお勧め本は、
シチリア愛が強いシチリアの出版社が、経費を削るためか、小さな本に全部載せようとシチリア料理をギュウギュウに詰め込んだ格安のおもしろいシリーズ、“ブランカート・クチーナ・シチリアーナ”シリーズ
パスタの1品目は、
ペーストとエビのスパゲッティ。
この料理、略称“ペスト・エ・ガンベリpesto e gamberi”は、メジャーな料理だったんですね。
このペーストはピスタチオのペーストではなく、ジェノバ風ペースト。
でも、シチリアではこの料理、多分ジェノバより広まってます。
やっぱりポイントはエビか。
そしてウニのパスタ、
ペースト・トラパネーゼのパスタ、
ノルマ風パスタ
イカ墨のスパゲッティ、
マカロニのティンバロ、
アンチョビとパン粉のスパゲッティ、
ブロッコリーのパスタ、
ボッタルガのスパゲッティ、
ドライトマトのパスタ、
トラパニ風クスクス、
・・・etc.と続きます。
シチリアはプリーモ・ピアットがバラエティ豊かな地方と、改めて気がつきました。
しかもどれもがイタリア料理を代表する傑作ばかり。



ペーストとエビのスパゲッティSpaghetti pesto e gamberi

・にんにくとイタリアンパセリのみじん切りをオリーブオイルで焦がさないようにソッフリットにする。
・小さく切ったエビを加えて火をやや強め、さっと炒める。
・白ワインをかけてアルコール分を飛ばし、ピスタチオのペーストを加えて火を止める。
・ゆでたパスタを加えてなじませ、皿に盛り付ける。

タリオリーニ・ぺスト・エ・ガンベリTagliolini Pesto e Gamberi
自家製ペーストとタリオリーニで2ランクup。

・ペーストは粗塩、バジリコ50g、にんにく1、2かけ、松の実大さじ1、オリーブオイル1/2カップ、角氷1、2個をハンディミキサーで撹拌し、ペコリーノ・サルド大さじ2、パルミジャーノ大さじ6を加えてさらに撹拌する。
・エビは炒めて塩をする。
タリオリーニ250gをゆでてペーストでマンテカーレし、皿にニーディ・ルンギ形に盛り付ける。エビとバジリコを加えて油を回しかける。




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 「総合解説
シチリア・イン・ターヴォラ
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2020年12月25日金曜日

シチリア名物で作るペースト・トラパネーゼは、思い出も詰まった保存できるお土産。

シチリアにはピスタチオのペースト以外にも、名物ペーストがあります。
“ペースト・アッラ・トラパネーゼpesto alla trapanese”です。
トラパニとシチリア西海岸↓


シチリア名物のアーモンドとトマト入り。
ペスト・トラパネーゼに組み合わせるパスタは、ブジアーティbusiati。
棒に巻きつけて作る穴あきロングパスタ。
この料理はかなり広まっていて、ノルマ風スパゲッティと共に、シチリアを代表するパスタとも言えます。

ペースト・トラパネーゼのブジアーテ

ブジアーテ

ペーストの本、ファッチャーモロ・ペスト』の著者は、

子供の頃、毎年夏はシチリアのエトナ山の麓にある田舎で過ごしたんだそうです。
帰る日になると、おじいちゃんは必ず、お土産を詰めてくれました。
それは、レーズン、ケッパー、ヘーゼルナッツでした。
著者は、これらにドライトマト、オレガノ、アーモンドを加えたペーストをシチリアの思い出と名付けて、懐かしいシチリアの夏を完璧に保存していたそうです。
ブジアーテは、南イタリアで人気の穴開きパスタ。
ブカティーニの一種です。
料理上手の姑が嫁にアドバイスするような本、『マンマミーア

には、ブカティーニをおいしくする姑のこんなアドバイスが。
いつものブカティーニに塩抜きしたケッパー一握りと松の実、オーブン焼きの種抜き黒オリーブ、リコッタ・サラータを加えてごらん、だって。
この人、シチリアのお姑サンですね。

シチリア料理のミニ・シリーズ、“ブランカート・クチーナ・シチリアーナ”シリーズ
の『シチリア・イン・ターヴォラ』のペースト・トラパネーゼのリチェッタは、

ペース・トラパネーゼPesto alla trapanese
材料/4人分
スパゲッティ・・400g
にんにく・・1かけ
バジリコ・・1束
皮むきアーモンド・・50g
トマト・・250g
おろしたペコリーノ
EVオリーブオイル
塩、こしょう

・トマトは皮をむいて小角切りにし、乳鉢に入れる。バジリコ、アーモンド、にんにくを加えて2分すり潰し、ボールに移す。
・パスタをアルデンテにゆでてペーストのボールに加える。
・EVオリーブオイル少々とペコリーノを加える。
・よく混ぜて皿に盛り付け、バジリコとアーモンドで飾る。


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シチリア・イン・ターヴォラ
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2020年12月24日木曜日

パスタ同様アラブから伝わったシチリアのピスタチオはペーストの調理方法と出会って世界中に広まった。

今日のお題は“エビとピスタチオ・ペーストのストラッチェッティ”です。
キーワードはピスタチオとペースト。
イタリアでピスタチオといえば、エトナ山の麓の町、ブロンテです。
イタリアのピスタチオの大部分はブロンテで栽培されています。
ピスタチオは2年に一度収穫します。
その量は世界のピスタチオの総生産量のわずか1%ですが、その色や味は高く評価されています。

ブロンテは、ヨーロッパで最も高く、最も活発な活火山、エトナ山の西側にある古い町。
かなりの部分が国立公園の区域で、何世紀にも渡って流れ出したエトナ山の溶岩は玄武岩の黒い川となってブロンテまで達している。
かつてこの町の農民は圧政に苦しんできた。暴動が起きたこともある。
そんな農民たちにピスタチオ栽培を広めたのはガリバルディが組織した千人隊の副官、ニーノ・ピクシオという人物だった。
彼の指揮によって広大な畑や古い牧草地がピスタチオ畑へと生まれ変わっていった。

ブロンテのピスタチオ祭り↓


ピスタチオはアラブ人がシチリアを支配していた時代に中東から伝わった。
同時に彼らの菓子作りの技術も伝わった。

カッサータやジェラートなどが知られているが、ピスタチオのペーストはパスタのソースにもなる。
というか、そもそもペーストはパスタのソース用に生まれた。
ペーストといえば、ジェノバ。
ジェノバは地中海地域の小麦の販売を独占していた。パスタ作りの歴史も古い。
伝統的なペーストは乳鉢ですり潰す、ミキサーが一般的になった現代では、乳鉢ですり潰すペーストは滅多に見かけなくなった。
でも、ジェノバでは、料理は時代と共に変わるものであり、変化を受け入れることも必要、というスタンス。
だからペースト作りは信じられないくらい簡単になった。
その分、はっきりしたのが、使う食材の品質に左右される、ということ。
ピスタチオのペーストについて、お勧めのペースト専門の料理書、ファッチャーモロ・ペスト』には、こう書いてあります。



美しいピスタチオはトーストして皮付きのまま売っているが、強い香りを楽しみたいならトーストしていない生のピスタチオがお勧めだ。

ピスタチオの皮をむく小芝居付き“エビとピスタチオのタリオリーニ”のリチェッタをどうぞ↓

エビとピスタチオのタリオリーニtagliolini gamberi e pistacci
材料/4人分
タリオリーニ・・320g
ピスタチオ・・80g
無頭のエビ・・300g
バジリコ・・6~8枚
にんにく・・1かけ
オリーブオイル
塩、こしょう

・殻をむいたピスタチオを2分ゆでて(ゆですぎない)皮をむく。
・油でにんにくをソッフリットにしてにんにくを取り除く。この油でエビをさっと炒める。
・ピスタチオを刻む。
・油とバジリコをハンディミキサーで撹拌する。
・パスタをゆでてエビのフライパンに加える。ゆで汁少々も加える。
・バジリコ風味の油にピスタチオを加える。
・これをパスタにかけてなじませる。
・パスタをニーディ形に巻いて皿に盛り付け、エビで飾る。ピスタチオとこしょうを散らす。
生のピスタチオがあれば栽培もできるらしい↓


シチリア料理のミニシリーズ“ブランカート・クチーナ・シチリアーナ”シリーズ



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ブランカート・クチーナ・シチリアーナ”シリーズ
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2020年12月23日水曜日

ラザーニャ生地のバリエーション、ストラッチェッティはぼろきれというひどい名前だけど、ぶきっちょさんでも簡単に作れます。

ジビエの話になりそうでしたが、パスタのマルタリアーティの話をしているんでした。
今月の「総合解説」のマルタリアーティの最初のリチェッタは、うさぎとアスパラガスのマルタリアーティP.34。
うさぎ肉はかなりマイルドでデリケートな味なので、パスタもタリアテッレの切り落としのような薄くて細めのパスタが合う、ということはわかりました。
次の料理はエビとピスタチオペーストのストラッチェッティです。
そもそも、マルタリアーティmaltagliatiには切り損ない、という意味があります。
手打ちパスタの本場エミリア地方では、パスタ作りは姑から嫁へと受け継がれる伝統の技。
もし姑に、あんたのパスタは切り損ない、なんて言われたら、今時の嫁なら耐えられないと思うのですが、容赦ないです。今度はストラッチェッティstraccetti/ぼろ切れですよ。

決まったリチェッタはないと思うけど、1回見ただけではわからなかったストラッチェッティの作り方↓

グラニャーノのあるパスタ・メーカーにはストラッチェッティという名前のパスタがありました(こちら)。
商標登録しているそうで、どんなパスタにも歴史があると豪語していますが、このパスタの由来は不明。
写真を見る限り、切り落としのミックスかと。

下の動画はもっとわかりやすいです。ラザーニャの生地を重ねて作ります。
これはぶきっちょさんには救いの神みたいなパスタで、簡単にできます。



「総合解説」でこのストラッチェッティに組み合わせたソースはエビとピスタチオペースト。エビは炒めるだけ。ピスタチオペーストは材料をミキサーにかけるだけの、これもお嫁さんには嬉しい簡単にできて本格的なソース。

ペーストといえば、ファッチャーモロ・ペスト

という楽しい本もあります。



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ファッチャーモロ・ペスト
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2020年12月22日火曜日

忘れているようだが、人間は猟師だ。狩りの目的は新鮮な肉と暖かい毛皮を手に入れること。だが、料理人にはさらに目指すものがある。

今日のお題はうさぎ肉です。
悲しいかな都会で生まれ育ったので、家禽にもジビエにもまったく縁のない暮らしです。
うさぎと言われても、うさぎがどんな環境に棲んでいるかも知りません。
イグレス・コレッリシェフのジビエの本、『カッチャジョーネ』が唯一の教科書です。

ジビエの話をする時は、狩りの様子を見て毎回落ち込むのですが、そのたびに、この本の序文で元気づけられます。

ルイジ・クレモナという有名なガストロノミアのジャーナリストが旧友のコレッリシェフの本の序文のために書いたものです。

それは、人間は猟師なのだ、という文章で始まります。
原子時代から、狩りの目的は新鮮な肉と暖かい毛皮を手に入れることだった。
だが、料理人にはさらに上に目指すものがあるはずだ。
人はスプーンで食べるようになり、柔らかくて甘くてくせが弱い味を好むようになり、咀嚼しなくなった。
こうして徐々に“野生”やジビエは姿を消し、料理人はジビエを料理するのをためらうようになった。
しかし、雉や野うさぎを料理しなければ、野生の意味はわからないだろう。

この本は、野生動物を沼、潟、森、丘陵、山など生息地のタイプごとに紹介しています。
それによると、うさぎは平原pianuraの動物だそうです。
イタリアで一番広い平野、ポー河流域のパダナ平野↓
自然環境が消えるに従い、そこに暮らす野生動物も減りました。

うさぎ以外の平野の生き物というと、狐、カエル、ハリネズミ、アナグマなどがいます。
野生のうさぎは地下に穴を彫りやすい砂地まじりの土壌を好みます。
lepreとconiglioはそっくりですが、coniglioはlepreより小さく、尾と耳が短いのだそうです。
生息地は標高2000m以下の水気が少ない場所。夜行性で、草や果物、木の実などを食べます。
どちらも同じリチェッタで調理できます。
Igles CorelliシェフはフェラーラのLa Locanda della Tamericeのシェフで、ちょっと前に紹介したブルーノ・バルビエリシェフの師匠。


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総合解説
カッチャジョーネ
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2020年12月21日月曜日

パッパルデッレはトスカーナのタリアテッレだった。と言うことはトスカーナのマルタリアーティはパッパルデッレの切れ端。

マルタリアーティの料理も珍しいけど、うさぎ肉のラグーって、食べたことないなあ。
今月の「総合解説」P.34の料理、“うさぎとアスパラガスのラグーのマルタリアーティ”についての解説です。
うさぎ肉のラグーについて調べていたら、カルロ・クラッコシェフが本にこんなこと書いていました。


うさぎ肉はとてもフレッシュな白肉で、様々な料理に使うことができる。
イタリアにはうさぎ肉料理の伝統がある。
例えばイスキア島の穴うさぎの料理は有名。
カルマニョーラ(ピエモンテ)にはコニッリオ・グリージョという品種のうさぎがいる。
エミリア地方にもうさぎ肉のリチェッタが色々あるが、一般的には煮込みや、小さく切って野菜を添えてサーブする。
最近では次第にうさぎ料理が減りつつある。
おそらく、日本のように、うさぎがペットとして身近な動物になり、誰も食べなくなった、というような事情があるのかもしれない。

いきなり日本の話が出てきたけど、つまり欧米ではうさぎ肉はもっと普通に食べる肉、ということでしょうか。
確かに、日本にはうさぎ肉を食べる習慣がないからなあ。
クラッコシェフは腕をふるえなかった経験があるのかも。

例えば、下の動画は、
ウサギ肉のラグーのパッパルデッレ↓

パッパルデッレといえばトスカーナのパスタですが、傑作地方料理書、“グイド・トンマージ”のクチーナ・イタリアーナ・シリーズの『トスカーナ』には、こうあります。

トスカーナでは、手打ちパスタはアペニン山脈の向こう側とは違う伝統的なリチェッタで打つ。一般的にもっと素朴で厚く、幅が広い。トスカーナではタリアテッレの代わりはパッパルデッレだ。組み合わせるソースもかなりボディーがある。
したがって、タリアテッレの切り落としのマルタリアーティは、トスカーナではパッパルデッレの切り落としで作る。

うさぎ肉のラグーのパッパルデッレは、クリスマスにふさわしいご馳走。
ただし、ジビエの野うさぎは高価すぎるので、もっとお手軽な家禽のうさぎ肉を使います。



料理は骨の周囲のお美味しい肉を骨から外すことから始まります。
捨てるところは何もなく、切り落としも全部使います。
香味野菜と肉のソッフリットには骨も内蔵も加えてブロードを取ります。
うさぎ肉は脂が少なく、デリケートでマイルドな白肉なので刻んだパンチェッタを加えることもあります。
スパイスはジュニパーやナツメグ。

野うさぎのパッパルデッレ↓



農場の動物たち↓



次回は野うさぎの話です。


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カルロ・クラッコの地方料理
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2020年12月20日日曜日

自然の中で家畜たちと共に過ごし、手を粉と卵まみれにする暮らしは計り知れない喜びだった。ブルーノ・バルビエリシェフの子供時代

マルタリアーティがどの地方のパスタかなんて、考えたことなかったけど、タリアテッレの切り落としがルーツなら、やっぱりエミリア・ロマーニャ地方、という訳で、
エミリア・ロマーニャ地方の料理の本を探していたら、紹介するのを忘れて埋もれていた本を見つけました。
ボローニャ出身でマスターシェフで有名になった星付きシェフ、ブルーノ・バルビエリシェフの『ブルーノ・バルビエリ/ビア・エミリア』という本です。


ブルーノ・バルビエリシェフの“クルマエビとインゲン豆のブロードのマルタリアーティ。


・鍋に油と粗く切った玉ねぎ1片、インゲン豆、小さく切ったグアンチャーレを入れてソッフリットにし、缶詰のダッテリーノ(ミニトマト)、ローズマリー少々、フメット・ディ・ペッシェ少々を加えて約10分煮る。

・エビは頭を別にして背わたを取り。小さく切る。
・フライパンでエビの頭を油とにんにく少々でソッフリットにし、頭を取り出す。エビとマルタリアーティを加えて火を止め、予熱でなじませる。
・皿に盛り付けて油少々をかけ、マジョラムとオレガノで飾る。

さて、パスタの話です。彼の本には、“卵”という章があってこんなことが書いてあります。


エミリア地方の家庭では、どの家でも、週に最低2、3回は麺棒で生地を伸ばしてパスタを打つ。
スパゲッティのような乾麺のパスタは食べない。
常に卵入りのパスタ・フレスカだ。
どの家にも庭には家禽がいて卵は常に手に入った。
パスタは常に打ち立てというわけではなく、前日の残りということもあったが、出来合いを買うことはない。80歳の私の母は今でもパスタを打つ。
エミリア地方の女性にとっては儀式のようなものだ。
田舎では一週間でい一番大切な日と考えられている日曜日には、一日かけてトルテッリーニを作る。
ボッリートも作り、ブロードはトルテッリーニに使う。
朝になると麺棒を出して頭に布巾をまきつけて、頭の後ろできりりと縛る姿は、とてもカッコよかった。

麺棒で伸ばすのは、乾麺で言えば、ブロンズのダイスを通すようなもの。パスタマシンで伸ばしたパスタはテフロンのダイスを通したパスタ。

ボローニャで極められたのは、生地を麺棒で薄く伸ばす技。
透き通るほど薄いのに、表面はざらざら。
軟質小麦粉と卵の2次元のパスタの集大成。

私の母の場合、台と麺棒は母から娘へと受け継がれる贈り物だった。
ノンナ・ミーナの麺棒は100年ものだった。今は私の母が使っている。
パスタを伸ばす台は神聖なものだった。仕舞う時は布や革で包んだ。水をつけるとそってしまうので、水では決して洗わなず、ナイフの背でこずっていた。
パスタを伸ばす以外には使わず、味が染み込むのでドルチェを作る時や肉や野菜を切る時には使わなかった。

“卵”の前の章は“ノンナ”でした。
どうやらブルーノシェフはおばあちゃん子だったようです。
ノンナは孫の料理人としての才能は早くから見抜いていたようです。
一方ノンノは、農業と家畜の飼育をしていました。
シェフは搾乳、パン作り、チーズ作り、収穫、家畜の屠殺といった季節の移り変わりと結びついた仕事を学びます。
出来合い品は一切買わなかったというノンノは、パン、牛乳、チーズ、パスタ、豚肉の
加工品、トマトの瓶詰め、トリュフの手に入れ方を教えた。
きつい仕事だったが、自然と共に家畜たちと一緒に過ごし、手を粉と卵まみれにする暮らしは、計り知れない喜びだった。

ボローニャの暮らしがこんなにワイルドだなんて、想像もしていなかった。
エミリア地方に親戚はいないけど、親戚から農家の暮らしを聞かされているような本でした。

エミリア・ロマーニャ



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ブルーノ・バルビエリ/ビア・エミリア
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2020年12月19日土曜日

冬のパスタ、ひよこ豆とマルタリアーティのズッパ。マルタリアーティは冬のミネストラにぴったり。

今日からはパスタです。今月のパスタは“マルタリアーティmaltagliati”
リチェッタは「総合解説」P.34~。
軟質小麦粉と卵の基本のパスタ、パスタ・リッシャから作るパスタのバリエーションの1つです。
パスタ・リッシャから作るパスタの代表はタリアテッレ。
本場はもちろんエミリア・ロマーニャです。

ロマーニャ地方を紹介するこちらのページによると、
マルタリアーティはタリアテッレを作るときに出る切れ端で、細いのやら四角いのやら、様々な形がありました。
幅広に切った麺を不揃いに切って作ります↓


伝統的には、いんげん豆のミネストラに使うのが一般的ですが、肉のラグー、サルシッチャ、きのこ、魚など様々なソースをかけて食べることもありました。
湯気の立った豆のソースは冬にぴったりのパスタです。

ひよこ豆とマルタリアーティのズッパZuppa di Ceci e Maltagliati.


材料/
ひよこ豆・・400g
マルタリアーティ・・250g
にんじん・・2本
セロリ・・2本
玉ねぎ・・1/2個
ローズマリー・・1枝
ローリエ・・1枚
オリーブオイル
塩、こしょう

・鍋に熱湯、セロリ、玉ねぎ、にんじん、ローリエ、ローズマリーを入れ、30分ゆでて野菜のブロードを取る。
・にんじん・玉ねぎ・セロリのみじん切りをソッフリットにし、トマトのパッサータ少々を加える。ひよこ豆と野菜のブロード。塩、好みのハーブを加えて30分煮る。必要ならブロードを足す。
・ひよこ豆を少量取り出してミサーにかけ、ソテーパンに戻す。
・ブロードを足しながら豆が柔らかくなるまで2時間煮る。
・マルタリアーティを加えて4~5分煮る。
・油、こしょう、ローズマリーを加えて熱々をサーブする。

マルタリアーティのバリエーショシ、クアドルッチ↓


スローフードの地方料理のパスタの本



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スローフードの地方料理のパスタの本

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2020年12月18日金曜日

フロッラ生地のカラブリアのビスコッティ、ネピテッレ。まぶたを模したドルチェ。

きのうはちょっと横道にそれましたが、復活祭の伝統料理、最後はカラブリアのネピテッレです。
総合解説」P.28で紹介したリチェッタは、基本的な、南イタリアのディープなドルチェらしい地味なリチェッタでしたが、ネットにはこんなに可愛いのがありました↓
カラブリアは田舎なのに都会で、そのギャップが面白いですね。

これまで見てきた復活祭のドルチェとは違って、発酵させない生地の甘くて具だくさんのビスコッティ。
発酵させない生地でもパスタ・マッタではなく、パスタ・フロッラpasta frolla、タルト生地です。
全体的にふっくらしていますが、パンパンというほどでありません。
このドルチェの名前、ネピテッレには、まぶたという意味があります。
調子に乗って、膨らませすぎてものもらいにしないように。
それにしてもこのお花付きネピテッレ、超カワイイ。

マエストロ・イジニオ・マッサーリのパスタ・フロッラ↓

イタリアのパスティッチェリア界の巨匠が初心者向けに丁寧に説明しています。
これはフロッラ・ミラノというバージョン。伝統的なフロッラは卵黄だけで作りますが、ミラノバージョンには蜂蜜を加えてもっと香ばしく、色も濃く仕上げます。

pasta frolla milanoパスタ・フロッラ・ミラノ
材料/
バター・・200g
粉糖・・75g
アカシアの蜂蜜・・40g
卵黄・・1個
塩(水少々で溶く)・・2g
バニラ・ビーンズ・・1本
レモンの皮・・1/2個
薄力粉・・300g

・柔らかい(柔らかくしすぎると生地に粘りが出る)バター、粉糖、蜂蜜をニーダーで低速でこねてバターに他の材料を吸い込ませる。バターが空気を含まないように泡立てないようにする。空気を含むと焼くのに時間がかかり、均一に焼き上がらない。
・卵黄を水と塩少々で溶いて加える。
・バニラビーンズを開いて種を削り取り、生地に加える。
・レモンの皮の色付き部分のみをすりおろして加える。振るった小麦粉を加えてバターと混ぜ込む。練りすぎると粘りが出る。よく混ぜないと焼きムラができる。粉を全部吸ったらニーダーをすぐに止め、少量手に取ってこねてみて、手に何もつかない状態になるまでこねる。
・生地を台に出し、ラップで包んで冷蔵庫で一晩休ませる。
《クロスタータ》
・冷蔵庫から出したら打ち粉をした台で麺棒で生地を1方向に伸ばす。生地を90℃ずつ回転させながら厚さ4mmに均一に伸ばす。セルクルを天版にのせ、同じ大きさに抜いた生地を中に敷く。切り落とした生地は棒状に伸ばして渦巻形に巻く。底の生地の縁にのせて押さえて貼り付け、ナイフの先端で飾る。底はピケする。または同じ生地をやや薄く伸ばし、型で抜いてビスコッティにする。クロスタータは具を詰めた後に抜きやすいように型ではなくセルクルで焼く。
詳細は巨匠の本、


イジニオ・マッサーリ』をどうぞ。



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イジニオ・マッサーリ

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2020年12月17日木曜日

香水には欠かせないカラブリアのベルガモット。もちろんあのブランドの香水にも。

復活祭の伝統料理の最後の1品は、カラブリアのネピテッレnepitelleです。
リチェッタは今月の「総合解説」P.28。
トリエステからカラブリアと、北へ南へと、イタリアの知られざる個性を発見する旅が続きますが、ついてきて~。

カラブリアとシチリアを隔てるメッシーナ海峡はわずか3km。

ディオールが紹介するカラブリアのベルガモット。
高級ブランドの香水には欠かせない。↓

ということは、シチリア推しのあのブランドも、やっぱり?
期待を外さないなあ。
ドルガバにはべルベット・ベルガモットという香水があった↓



ベルガモットは紅茶のアールグレイに使われていることでも有名。
お薦め地方料理書の『イタリア・イン・クチーナによると、ベルガモットは1860年に初めてカラブリアに伝わり、現在ではカラブリアのベルガモット生産量は世界一になっている。オレンジに似ていてどこにでもありそうに思えますが、栽培されているのは海沿いの限られた地区のみ。皮から取れる精油が化粧品に欠かせない。

どのファッションブランドの香水でも、ベルガモットは中心となる大切な香り。

カラブリアのもう一つの魅力は圧倒的に美しいビーチ。



北の庶民的てせ大衆的なビーチと違って、手つかずのゴージャスな自然に囲まれた国際的でリッチなビーチリゾートの雰囲気。
ピッツォ↓

カラブリアってこんなに素敵なところだったんだ。



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イタリア・イン・クチーナ
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2020年12月16日水曜日

復活祭のピッツァをウイーンの宮廷が作るとこうなる。トリエステのピンツァ。

復活祭の伝統料理の話、今日は、トリエステのピンツァpinzaです。
トリエステはフリウリ・ベネツィア・ジューリアの州都。
アドリア海とアルプスに挟まれたとても小さな街で、時間がない観光客は1時間も滞在しないで通り過ぎていく街。
でも、地中海地域の中にあって中央ヨーロッパの空気をひしひしと感じる劇場のような場所で、この中に宇宙のすべてが要約されている、と言った有名な作家(Ippolito Nievo)の言葉がよく引用されます。

アドリア海に沈む夕陽とカフェは忘れずに。
一生の思い出になります。

この街にはスラブとウイーンの文化が伝えられました。
お菓子を始めとする食文化にもその影響は見られます。

復活祭の伝統料理として紹介するのは、ピンツァです。
ピッツァとも聞こえますが、トリエステの復活祭といえばピッツァです。

ピッツァ・ディ・パスクアとは言ってもナポリのカザティエッロとはまったく違って、ウイーンの宮廷の香りがしそうです。

リチェッタは「総合解説」2019年3/5月号P.27にあります。
ピンツァはトリエステの復活祭の朝食や家族が集まる復活祭のディナーの前菜には欠かせない食べ物。↓

復活祭のピッツァは中世に修道女が作り始めたと伝えられています。
その特徴はよく膨らんでいること。

これでもかと具を詰め込んだカザティエッロとは違って、トリエステのピンツァは具の痕跡はまったくないのに、バターを始めとしてリッチな食材をたっぷり使い(カザティエッロはラードでした)、風味は相当豊かなはず。お上品で洗練されています。



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グランディ・クラシチ

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2020年12月15日火曜日

カザティエッロには頑固者という意味もあった。ぽっちゃりした頑固者のことらしい。結局、大好きなんじゃない。

ドルチェ、サラート、ルスティコと3種類あるカザティエッロのうち、今日のお題はルスティコ。


ルチアーノ・ピーニャタロの
リチェッテ・ディ・ナポリ』によると、カザティエッロの語源はラテン語でチーズ という意味のcaseum
カザティエッロの“ルスティコrustico”バージョンは、よく似ていることから混同されがちなのがトルタノtortano。こちらの語源はラテン語のtortilisで、季節の再生という意味。

ガブリエレ・ボンチのトルタノ。
この人が作ると何でも芸術品みたいになりますね。イースターのねじりパンという説明がぴったり。

普通はねじらないで巻きます。
トルタノ・ナポレターノtortano napoletano
またはクグロフ型などを使えば、ねじったような出来上がりになる。

材料/12人分
ピッツァドウ・・1kg
ラード
おろしたペコリーノ
サラーメ・ナポレターノの小角切り
モルタデッラとカポコッロの小角切り
プロボローネ・デル・モナコの小角切り
プロボローネ・アウリッキオ
チッチョリ
崩したゆで卵・・6個
こしょう

最後にもう一度カザティエッロ・サラート。
確かに、材料はよく似ています。
違いは仕上げに生卵をのせるかのせないかです。

さらに発酵時間も違います。
驚きの長さのトルタノと比べると、カザティエッロはかなり短いため、出来上がりも、あまり膨らまず、消化に悪い、と考えられています。
そのため、ナポリでは頭が硬くて頑固な人のことをカザティエッロと呼ぶんだそうです。
確か、ぽっちゃりさんのこともカザティエッロでしたね。
結局、大好きだから何でもカザティエッロに見えてくるんじゃないですか。

復活祭のパンやケーキなトルタは、手が込んだ豪華なのが各地にありますよね。
総合解説」ではもっといろんな料理を紹介しています。
次回に続く。

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2020年12月14日月曜日

カザティエッロはナポリではぽっちゃりさんのこと。軽い食べ物ではない。

料理だけでなく人間の暮らしにもフォーカスを当ているお薦め地方料理シリーズ、“グイド・トンマージのクチーナ・レジョナーレ”の『ナポリ』には、

カザティエッロについて、こんなことが書いてありました。
ナポリでは、“カザティエッロcasatiello”という言葉は、persona pesante(ぽっちゃりさん)を意味する言葉としてと時々使われる。確かに、この料理は軽い料理ではない。
そしてカザティエッロのドルチェ版をパスクアの朝食に食べる習慣がある地区、バコリのカザティエッロ・ドルチェのリチェッタを紹介しています。

ナポリ料理の研究者としてイタリア人から絶大な信頼を誇るルチャーノ・ピニャタロの本、
リチェッテ・ディ・ナポリ
には、カザティエッロには、ドルチェ、サラート、ルスティカの3種類がある、と書かれています。

グイド・トンマージの『ナポリ』では、カザティエッロの隣にトルタノがあります。
そして、ドルチェもサラートもトルタノも全部まとめて、春の訪れと断食明けを祝う復活祭の料理で、ポッチャリさんをイメージさせるらしい、とあります。
カザティエッロ・ドルチェとカザティエッロ・サラートの外見はかなり違う。
カザティエッロ・ドルチェの本場、モンテ・ディ・プロチダのカザティエッロ。↓
この地方のカザティエッロはドルチェだけ。


グイド・トンマージの『ナポリ』には、モンテ・ディ・プロチダの麓の街、バコリ出身の人のリチェッタがあります。

casatiello dolceカザティエッロ・ドルチェ
材料4人分/
天然酵母・・200g
小麦粉・・1kg
卵・・10個
砂糖・・500g
ラード・・200g
バニラビーンズ
シナモン
ストレーガ・リキュール
オレンジとレモンの皮
《アイシング》
粉糖・・350g
レモン汁・・大さじ2
卵白・・2個
各色のコンフェッティーニ

・朝に、天然酵母、卵2個、小麦粉適量をこねて締まった生地にする。
・容器に入れて布巾で覆い、2倍になるまで発酵させる。
・夜に2倍になったら卵2個と小麦粉大さじ数杯を加えてこねる。
・一晩休ませる。
・翌朝、卵2個、小麦粉適量を加えてこね、腰のある生地にする。
・1日休ませる。
・最後の卵、砂糖、ラード、スパイスを加えてニーダーなどでよくこねる。
・直径20cm、 高さ15cmのエンゼル型にバターを塗って小麦粉をまぶし、生地を入れて最低一晩発酵させる。
・生地が型一杯に膨らんだら180℃のオーブンで最低1時間30分焼く。
・串を刺して中まで火が通っているかチェックする。
・アイシングを作る。卵白をホイップしながら粉糖とレモン汁を加えて艶のあるアイシングにする。
・カザティエッロの表面にかけてコンフェティーニで飾る。

モンテ・ディ・プロチダのカザティエッロコンクール↓


アイシング次第でかなり違う。
それにてもこんなに面倒なドルチェだったとは。
ルスティカは明日。

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2020年12月13日日曜日

イースター・エッグはイタリアではパンを卵で飾るスタイルに進化した。サルデーニャのコッコーイもナポリのカザティエッロも主役はパンだった。

命や自然の再生を祝う祭り、復活祭。
その象徴となったのは、生まれたばかりの動物やミルク、卵などでした。
中でも手に入れやすい普遍的な食べ物、卵は、イースターエッグなどと呼ばれてヨーロッパを始めとする世界各国に広まりました。
ヨーロッパの伝統のイースターエッグ↓
復活祭は老人と子供の距離が近くなる祭り。
卵はこの時期、子供へのギフトの定番。


卵でパンを飾るのはサルデーニャなどイタリアの地中海地方に広まった習慣。
“コッコーイ・クン・スオイCoccoi c'un S'ou”は、パスタ・ドゥーラpasta duraという細かい細工に適した硬い生地のパン。


材料は
セモリナ粉・・500g
ぬるま湯・・250g
塩・・大さじ1
ゆで卵・・5個
生イースト・・15g

パーネ・ドゥーラ生地のパンといえば、フェラーラ名物のコッピア・フェッラレーゼが有名。

卵で飾るパスクアのパンの代表格は、ナポリのカザティエッロ。
リチェッタは「総合解説」P.25にあります。
2013年のピッツァ・ナポレターナの世界チャンピオンでナポリの食文化に詳しいピッツァイオーロのダヴィデ・チヴィテッロが作るカザティエッロ。

こんなに専門的なことをよどみなく、手も動かし続けながら話すことができるって、どんだけ研究したんでしょうね。
しかもおちゃらけもシモネタもなしのど真面目に。
彼のwebページ(こちら)によると、9歳からピッェリアで働いてたんだって。
カザティエッロはやっぱりパン。ピッツァイオーロが作るカザティエッロ、食べてみたいです。



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総合解説
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2020年12月12日土曜日

マンジャフォーリエ(葉っぱ好き)とからかわれたナポリ人に愛された野菜と肉のご馳走スープ、ミネストラ・マリタータ。

きょうの料理はカンパーニアの“ピニャート・マリタートPignato maritato”。
総合解説」2019年3/4月号P.24です。
写真が楽しいナポリ料理の本、“グイド・トンマージ・クチーナ・レジョナーレ”シリーズの『ナポリ』によると、
マンジャマッケローニ(マカロニ喰い)と呼ばれてからかわれる前はマンジャフォーリエ(葉っぱ喰い)と呼ばれていたカンパーニア人が好きそうな、青菜と野草がたっぷり入る料理です。
この多様さと手順の複雑さのせいで作る人が減った料理ですが、美味しいものを作るのに絶対手は抜かないナポリ人の根性がよく分かる料理。

こちらのサイトによると、カンパーニアの田舎のトラットリアでは、日曜日のご馳走として人気の料理で、“ミネストラ・マリタータminestra maritata”いう肉と野草などの野菜をたっぷり使うスープがそのルーツ。 
肉は豚肉が主体で、鶏肉も入りますが、元々は残り物で作りました。
クリスマスや復活祭に欠かせない伝統料理でもあります。

ナポリの隣のアベッリーノに住む作家で有力者が広めた料理のよう。
ある意味で、カンパーニアの代表的ご馳走。


下の動画は長さ30分の大力作。田舎の農家でないと作れないような、クリスマス向けのご馳走。材料揃えるだけでもかなり出費したのでは。


材料/
豚の肩肉
サルシッチェ
豚ももの皮付き骨
豚スペアリブ
豚リブロース
豚モモの皮
唐辛子入りのサラメ・ナポレターノ
牛肩バラ
牛すね肉
雌鶏
生唐辛子
ラルド
赤にんにく
玉ねぎ、にんじん、イタリアンパセリ、セロリ
スカローラ、エンダイブ、フリアリエッリ、サボイキャベツ、チコーリア、プンタレッレ、ビエタ、カーボロ・ネロ
黒粒こしょう

・大鍋に肉と香味野菜を入れて最低2時間ゆでてブロードを取る。
ざく切りにした野菜を加える。

材料さえ揃えれば、あとは煮るだけ、という料理。

詳しいリチェッタは「総合解説」2019年3/4月号P.24です。



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グイド・トンマージ・クチーナ・レジョナーレ”シリーズの『ナポリ』
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2020年12月11日金曜日

子羊肉じゃなくて卵とリグーリアの発酵させない生地、パスタ・マッタが主役のトルタ・パスクアリーナ。

今日のお題はトルタ・パスクアリーナtorta pasqualina。
パスクアの時期(春)になると毎年登場するお馴染みのリグーリア料理。
私はパスクアの時期にリグーリアに行ったのに食べそびれて、大後悔しています。
その頃は、この料理が春やキリストの復活を祝う大事な料理だとは思いもせず、おしゃれなパイ、ぐらいに思っていました。
トルタ・パスクアリーナ↓

総合解説」のリチェッタは2019年3/4月号P.23です。

この料理の魅力は、切り分けると見える鮮やかな黄色い卵と、薄くてサクサクの生地。
卵は身近にある再生の象徴で、復活祭の主役の一つ。もう一つの復活祭の象徴、子羊肉より手に入りやすいお手軽な食材だけど、トルタ・パスクアリーナは、それをとても効果的に使っている料理。具の他の食材、青菜とリコッタも復活祭の定番食材。
さらに特徴なのは、生地。
この料理はパイではないので、パイ生地じゃない。
今月の「総合解説」では、リグーリアのトルタトをもう1品、紹介している。
P.16のプレブジュンのトルタだ。
その際に、このトルタの生地は、リグーリアのトルタのベースの生地、という話が出ています。
その生地というのは、いわゆるパスタ・マッタpasta matta、発酵させない生地です。
発酵の技術はエジプトで生まれたそうですが、エジプトは、ユダヤ人にとっては、長い奴隷生活を強いられた地で、モーゼに率いられてユダヤ人がこの地から抜け出す物語は、
ハリウッドも大好き。↓

ユダヤ教ではエジプトを脱出した時にパンを発酵させる時間がなかった。
その結果できた発酵させないパン、マッツァーを過ぎ越しの祝いで食べて、
エジプトを脱出したときのことを忘れないようにした。
という訳で、発酵させる、させない、というのは、宗教的な意味合いまであったのでした。


そういえば、リグーリアの発酵生地といういい本がありました。

なぜわざわざ発酵生地というのか、ちょっと気になったけど、リグーリアでは発酵させない生地が主役になりがちだったのですね。

ズッキーニのトルタ・サラータtorta salata di zucchine

材料
《パスタ・マッタ》
00番の小麦粉・・250g
タイム
塩、こしょう
ビネガー(生地に弾力を出す)・・15g
室温の水・・130ml
EVオリーブオイル・・30g

・生地の材料を混ぜ、台でこねる。ボールに入れてラップで覆い、15分休ませる。
・エシャロット35gのみじん切りを油20gで5分ソッフリットにし、パンチェッタの小角切り160gとズッキーニ600gの輪切り、塩、こしょうを加える。火を弱め、蓋をして10分蒸し炒めにして冷ます。
・パスタ・マッタを薄く伸ばしてバターを塗ったパイ皿に敷き込み、余った生地を取り除く。
・冷めたズッキーニとパンチェッタを入れ、
・卵4個、塩、おろしたパルミジャーノ50g、スカモルツァ・ドルチェの小角切り120gを混ぜて詰め物にかける。
・200℃のオーブンで30分焼く。

仕上げに卵とチーズを加えるリチェッタはまるでカーチョ・エ・オーヴェですね。


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2020年12月10日木曜日

カーチョ・エ・オーヴァはスープや焼き汁をつないでとろみをつけるテクニック。スローフードの店のローマの田舎料理版カーチョ・エ・オーヴァ。

今日紹介するのはローマの田舎料理を出す名店2軒。
1軒めは1949年開業のOlevano Romanoのリスランテ、Sora Maria e Arcangeloソーラ・マリア・エ・アルカンジェロです。
店のwebページはこちら
下の動画で披露する料理は野草のチコーリアのズッパ、カチョ・オーヴァ・タルトゥーフィ入りZuppa di cicora di campo con cacio ova e tartufi



スローフードの集大成的力作、『オステリエ・ディ・イタリア

に載っていたこの店のアバッキオのカレのローストを見て、こんなに繊細な食材をワイルドにナチュラルに、かつ美しく料理できるなんてと衝撃を受け、いつかは行ってみたいと密かに思っている店です。
現在のシェフはアルカンジェロの孫で上の動画で料理を作っている人、ジョヴァンニ。

作り方は
・玉ねぎ、セロリ、にんじん、じゃがいも(スープのとろみ用)、グアンチャーレをたっぷりのオリーブオイルでソッフリットにする。
・チコーリアを加えてなじませ、チコーリアのゆで汁を加えて数分煮る。塩、こしょうして約30分煮る。
・ハンディミキサーでさっと撹拌し、再び火にかけて沸騰させる。
・皿にトーストしたパンを敷き、その上からズッパを注ぐ。卵を1個割り入れ、おろしたペコリーノ・ロマーノを散らす。仕上げに黒トリュフをおろしながら散らす。

あまりにも質素だったので、おまけにもう1つ、スローフード・ラツィオのチャンネルの料理をどうぞ。Cassinoのリストランテ・エノテカ、サント・ベヴィトーレSanto bevitoreの子羊肉のカーチョ・エ・オーヴァAgnello cacio e ovaです↓


・カステッリの赤にんにく1かけとハーブ(ローリエ、ローズマリー、セージ、タイム)の束をオリーブオイルでソフリットにし、にんにくに焼き色がついたらハーブと一緒に取り除く。火を強めて肉1kgを焼く。
・鍋にザバイオーネの用の湯を沸かす。
・卵黄4個、溶かしたバター70g、塩、こしょうを加えてホイッパーで混ぜながら湯煎にかけ、おろしたカチョフィオーレ100gを加えて溶かす。白ワイン1カップを少しずつ加え、約10分煮詰める。
・肉に焼き色がついたらレモン汁をかける。
・皿にグリーンピースのクレーマを盛り付け、その上にザバイオーネを絡めた子羊肉を盛り付ける。

カーチョ・エ・オーヴァのザバイオーネという、定番を見事に外した異色の料理でした。

サント・ベヴィトーレ↓

店のwebページはこちら
今月の「総合解説」のパスクア料理のリチェッタはP.18~。


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オステリエ・ディ・イタリア
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2020年12月9日水曜日

ローマの繁盛店ロッショーリの子羊料理はこだわりのパンのパン粉をつけて揚げるフリットのプンタレッレ添え。

そうそう、子羊料理といえばローマでした。
ローマの繁盛店として度々登場してる店、ロッショーリには、どんな子羊料理があるのか、本から探してみました。

ロッショーリ
/パーネ・クチーナ・ローマ


サルーミやパンも売ってるレストラン併設の惣菜店、ロッショーリ。
生ハムはスライサーじゃなくてナイフでやや厚めにスライスするスタイル。
アメリカのシェフで作家で人気司会者が伝えるロッショーリ。
何をやっても憧れの言葉が返ってきます。 
パルミジャーノのサーブの仕方、超かっこいい。


とにかくローマを訪れる外国人の心を鷲掴みにする方法をよく知っている店です。
ローマの下町で、昔ながらのローマ料理を出していた店が、90年代に1m70cmのピッツァ・ロッサと自家製ドルチェで評判になり、今や流行の発信源として世界中に知られています。
ドルチェを焼くのはピッツァを焼かない土曜日の午後。
まさに、店のかまど(forno)から家族経営で名物料理を生み出してきた店です。
店の正式な名前はアンティコ・フォルノ・ロッショーリ。
その後、サルメリーアを吸収してチーズやサラミの販売も初め、料理も出すようになります。

ローマを訪れる外国人が一度は食べてみたいと思うのが、ローマの子羊料理。
本には1品、ありました。
子羊肉にパン粉をつけて揚げるコストレッテです。
costolette di agnello e cicoria子羊のストレッテ、プンタレッレ添え
材料/4人分
ラツィオの子羊のリブロース・・12本
パン粉(ラリアーノのパンの皮のパン粉)・・200g
00番の小麦粉・・200g
全卵・・4個+卵黄2個
ガスなしミネラルウオーター
ピーナッツ油
《チコーリア・リパッサータ》
野草のチコーリア・・1束、約600g
粗塩
EVオリーブオイル・・40ml
にんにく・・1かけ
唐辛子・・1本
マルドンの塩

・ラリアーノ(できれば焼きたてでないもの)1本の皮を粗くおろす。
・子羊のリブロースを肉叩きで軽く叩く。
・小麦粉、全卵、卵黄、水1/2カップを混ぜて軽い衣にする。
・コストレッタに衣とパン粉を押さえながらつけ、熱したたっぷりの油で約10分揚げる。
・チコーリアを塩ゆでし、中心が柔らかくなったら取り出す。
・油、潰したにんにく、開いた唐辛子を熱し、にんにくに色がついたらにんにくと唐辛子を取り除く。チコーリアを加えて5分炒め、余分な油を切ったコストレッタに添える。マルドン塩を散らしてサーブする。
薪で焼く天然酵母の田舎パン、パーネ・ディ・ラリアーノpane di Lariano↓



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2020年12月8日火曜日

子羊のオーブン焼き、フリット、バーベキュー、素朴にダイナミックに焼くのが美味しそう。

アバッキオの話題になったら、やつぱりスコッタディート。
まずはローマの子羊、アバッキオじゃなくてアニェッロのリブロースのスコッタディートagnello scottadito

・肉に軽く塩、こしょうして油を引いたフライパンに入れ、200℃のオーブンで5~6分焼く。
・コストレッテを骨1本ずつに切り分けてオーブン皿に盛り付け、粗塩とハーブを散らしてオリーブオイルをかける。仕上げに200℃で5~6分焼く。

次はリブロースにパン粉をつけた子羊のフリットcostolette d'agnello fritte

・肉は平にして骨を出す。
・衣は粗挽きパン粉、粉にんにく、タイム。
・肉に小麦粉、溶き卵、たっぷりのパン粉をつける。肉を抑えて平にする。
160~170℃のひまわり油でゆっくり両面を揚げる。高温にしすぎないようにする。中はロゼに仕上げる。パン粉が剥がれないように揚げている間はさわらないようにする。
・オーブンで焼く場合は衣をつけてバターをのせてオーブン皿に入れ、きつね色になったら裏返してバターをのせて反対側も焼く。



子羊のバーベキューagnello alla brace

・暖炉に炭を燃やして1000℃にし、網を取り付ける。
・肉をのせて両面を焼く。
・皿に取り出して塩を散らす。

オーブン焼きの定番の味つけはレモンとローズマリー。
今月の「総合解説」P.25にはベネト風オーブン焼きのリチェッタを載せました。
子羊のもも肉のロースト、ローズマリーとレモン風味。



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総合解説
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2020年12月7日月曜日

アバッキオのブロデッタートがこの本で一番美味し料理と言い切るローマ料理の本。お薦めです。

ラツィオの子羊料理、カーチェ・エ・オーヴェにたどり着くと、必然的に、次の料理はローマの子羊のブロデッタートです。
ローマ料理の素晴らしい本、“ グイド・トンマージ・クチーナ・レジョナーレ”シリーズの『ローマとラツィオ』は、

裏表紙の写真を見だけで、中身が期待できます。

松並木の下の石畳の古い街道を移牧中の羊の群れです。
ほんと素晴らしい写真。
しかも、子ヤギのブロデッタートの解説が、
“復活祭の料理、子ヤギ(アバッキオ)のブロデッタートは、当然ながら、この本で一番美味しい料理”だって。

ほんと、このシリーズの本はどれもユニークです。
イタリアの子羊料理は、羊を移牧している地方の料理が一番。
羊の移牧の代表的産物は、羊が食べたもので味が決まるペコリーノ。
ペコリーノが有名な地方は子羊料理も美味しい。
ローマとか、サルデーニャとか・・・。
アブルッツォのペコリーノも有名。


前述の本から、ブロデッタートcaprettto brodettatoのリチェッタです。
材料/6人分
小さすぎない一口大に切り分けた子羊肉・・1kg
グアンチャーレ・・50g
玉ねぎ・・1個
小麦粉・・大さじ1
白ワイン・・1カップ
卵黄・・2個
EVオリーブオイル・・大さじ4
レモン汁・・1個分
マジョラムとイタリアンパセリ
塩、こしょう

・底の厚い浅鍋で玉ねぎのみじん切り、グアンチャーレの薄切り、子羊肉を油大さじ4でソッフリットにする。肉の色が変わったら塩、こしょうし、小麦粉大さじ1を振りかける。
・よく混ぜてワインをかけ、アルコール分を飛ばす。
・湯で全部の肉を覆い、必要なら湯を足しながら40~60分煮る。
・煮上がる直前に卵黄とレモン汁を混ぜてマジョラムとイタリアンパセリを加え、火から下ろした浅鍋に加える。卵が固まりすぎないようにとろ火で熱する。

ブログでは度々紹介している移牧。
2019年にユネスコの無形文化遺産に登録された。
ローマの移牧の風景↓


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ローマとラツィオ
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2020年12月6日日曜日

アブルッツォ人に溺愛されてる子羊の内蔵料理、マッツァレッレ。イタリアのチーズボール、パロッテ・カーチョ・エ・オーヴェ。

復活祭料理にちなんで、子羊料理の本場、アブルッツォの名店、ヴィッラ・マイエッラの復活祭のメニューから、地元、テーラモの名物子羊料理を紹介しています。
今日はマツァレッレmazzarelle。
子羊の内蔵、というか小腸の料理です。
移牧をする羊飼いがいない国で子羊の小腸の料理というのは、一体何人の人が食べたことがあるんだろうかとは思いますが、どんな料理かは気になるので、動画を探してみました。
子羊の心臓、レバー、肺をエンダイブやロメインレタスの葉で包んで小腸で縛ったインボルティーニにブロードをかけてじっくり加熱したもの。

上の動画でマッツァレッレのことをめちゃ難しくて美味しい料理と説明するじっちゃんとばっちゃんが孫に言ってるのは、ベッピンの彼女よりマッツァレッラ作りが上手な彼女を見つけなよ、だって。将来が楽しみだけど、お嫁さんは大変だ。

そしてアブルッツォ風子羊肉のカーチェ・エ・オーヴェagnello cece e ove abruzzese。↓
子羊肉の焼き汁を卵とチーズでつなぐ料理。
この調理方法はフリカッセの一種ですね。
子羊料理の定番調理方法で、ローマではブロデッタートと言います。

ペコリーノと卵を使う料理、カーチョ・エ・オーヴァはアブルッツォ料理の定番。
アブルッツォ風パッロッテ・カーチョ・エ・オーヴァpallotte cacio e ova abruzzese

以前にも何度か取り上げたリチェッタです。これは子羊料理ではなく、崩したパンの料理。
材料/
パンのクラム・・120g
おろしたペコリーノとパルミジャーノ・・各75g
イタリアンパセリのみじん切り・・大さじ1
潰したにんにく・・1かけ
こしょう
卵・・6個、300g

・上記の材料を混ぜて柔らかい生地にし、冷蔵庫で30分休ませる。塩はチーズの塩気があるので加えない。
・EVオリーブオイル大さじ5~6で玉ねぎのみじん切りを10分ソッフリットにする。
・トマトのパッサータ1Lを加える。
・とろ火にして蓋をずらして載せて煮る。
・手にEVオリーブオイルを塗って生地を約30gずつ丸める。
・00番の小麦粉100gをまぶす。
・175℃のたっぷりのピーナッツ油で揚げる。
・沸騰したトマトソースに入れ、かき混ぜずに鍋をゆすりながら蓋をずらしてのせて10分煮る。
・煮上がる5分前にバジリコ6~8枚、塩少々を加える。


子羊料理の焼き汁を卵とチーズで閉じるフリカッセの手法は子羊料理の定番。
ローマではブロデッタートと言う。
ローマのブロデッタートの話は次回に。
リチェッタは『イタリア・イン・クチーナ』にも載っています。




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お薦め地方料理の本
イタリア・イン・クチーナ
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2020年12月5日土曜日

アブルツォのパスクアのプランゾのアペタイザー、チーズのフィアドーニ。チーズは世界で唯一豚のレンネットで作るペコリーノ。

復活祭の子羊料理はイタリアを含む地中海沿岸諸国の再生のシンボル。
きのう、アブルツォの名店、ヴィッラ・マイエッラのシェフが語っていた地元の復活祭の料理を今日はもう少し解説。
ヴィッラ・マイエッラの復活祭のプランツォ↓

まずはフィアドーニ・アル・フォルマッジョfiadoni al formaggio。
アブルツォでは復活祭の時期以外でも食べるラビオリで、サラートとドルチェタイプがある。
ヴィッラ・マイエッラの復活祭のプランゾでは、アペタイザーとして出す。
詰め物のチーズはペコリーノなどの羊のミルクの硬質チーズや、牛乳や羊乳のリコッタ。

フィアドーニはアブルッツォの代表的な前菜で、復活祭の時期には家庭に常備されていて、来客に振る舞う。
ぷっくり膨らんだ形は、復活祭の再生と豊穣のイメージにマッチして、縁起のよいものとみなされている。
ラビオリは詰め物のアレンジがかなり自由にできる料理で、この料理も、豪華さを競ったり、地元の名物をうまく取り込んだりと、各家庭で様々なバリエーションが作られました。
フィアドーニ・アブルッツェージfiadoni abruzzesi

材料
00版の小麦粉・・250g
ベーキングパウダー・・小さじ1/2
卵・・1個
ピーナッツ油・・60ml
白ワイン・・50ml

おろしたペコリーノ・・100g
おろしたパルミジャーノ・・100g
おろしたリガティーノ(ペコリーノ)・アブルッツェーゼ・・100g
塩、こしょう
卵・・小3個
直径10cmの抜き型

・ボールに小麦粉、塩、ベーキングパウダー、卵、ピーナッツ油、白ワインを入れて手で混ぜる。
・台に移してこね、締まった生地にして30分休ませる。
・その間に詰め物を作る。ペコリーノ、パルミジャーノ、リガティーノ・アブルッツェーゼ、粗挽きこしょう少々、卵(小)を混ぜて濃い詰め物にする。
・休ませた生地を半分に切り、手でやや平らにする。さらに打粉をした台で麺棒で厚さ2mmに伸ばす。丸い型で抜く。
・表面に溶き卵を塗って詰め物をのせ、半分に折る。縁をフォークの刃先で抑えて閉じる。
・表面の膨らみの一番上に十文字の切込みを入れる。
・オーブンシートを敷いた天板に並べて表面に溶き卵を塗り、200℃のオーブンで約15分焼いてきれいな焼き色をつける。

ペコリーノ・アブルッツェーゼの一種、ペコリーノ・ディ・ファリンドラpecorino di 

Farindola↓は、豚のレンネットを使う世界で唯一つのチーズ。甘くてマイルドな味になるのが特徴。熟成させても辛くならない。また、女性だけが作る伝統があり、女性のチーズformaggio delle donneとも呼ばれる。



ペコリーノは羊飼いの暮らしには欠かせないチーズ。チーズの味は羊が食べた牧草によって決まるので、長年続いた移牧の伝統から生まれたチーズ。アブルッツォの羊飼いはアブルッツォとプーリアを羊の群れを連れて行き来した。

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総合解説
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2020年12月4日金曜日

アブルッツォで一番の店と言われるヴィッラ・マイエッラのシェフのパスクア料理の説明は、超面白い。

今日からお題は復活祭です。
翻訳作業があるため現実のカレンダーとはタイムラグがあり、クリスマスが近づくこの時期ですが、話題は復活祭。
そもそも、復活祭は移動祝日で、キリスト教にとってはクリスマスに次ぐ大事な祭り。2021年の復活祭は4月4日。
復活祭はキリストの復活を祝い、春の再来を祝う祭りです。
イタリア料理の世界でも、パスクア(復活祭)は一大イベント。

キリスト教の習慣では、復活祭の前に断食をする四旬節というのがあり、その前後には各地で様々な祭りが行われます。
断食の後に行われる春の再来を祝う祭りのご馳走は、いやでもウキウキ気分を引き立てます。
パスクアの料理が何を象徴しているかは、今月の「総合解説」P.18~にも、詳しく書いてありますが、
まずは子羊。
生まれたばかりの動物とミルクは、再生のシンボルの1つです。
古代の民は羊飼い。子羊はキリストの犠牲と人間の救済の象徴で、キリスト教以前の宗教では再生のシンボルでした。
子羊の肉は過去との結びつきを象徴しています。
さらに、子羊のためのミルクはフレッシュチーズやリコッタにしてケーキやパイなどのドルチェに使います。
卵は自然の再生を表す、手に入りやすい普遍的な食材。
ヨーロッパを始めとする各国にイースターエッグの伝統が生まれました。

卵で飾ったパンは地中海全域に広まりました。
夏の終りに熟すアーモンドは、手に入りやすい地方では、復活祭の宗教的なシンボルで、縁起の良い食べ物とされました。
多産の象徴で、結婚式や春を祝う祭りにアーモンドのドルチェは欠かせません。

ユダヤ教にとっても、奴隷状態だったユダヤ人がモーゼによってエジプトを脱出したことにちなむ重要な日。
食事は奴隷時代の辛さを表すマッツァーというイーストが入らないパンが有名。
そういえば、きのう紹介したリグーリアの焼いても膨らまないイーストが入らない生地、パスタ・マッタにも関係があるのかも。

ユダヤ教の膨らまないパン、パーネ・アッジモ、パーネ・マッツォ↓

ゆで卵、春の野原にたくさん生えているほろ苦い野草、子羊肉、ミックスドライフルーツなどがパスクアの主役の食材。
なんだかここ最近ずっと取り上げてきた料理は、こんな食材を使った料理ばかりだったような気が・・・。
アブルッツォで一番有名なレストラン、ヴィッラ・マイエッラVilla Maiella(店のwebページはこちら)のパスクアのプランツォや↓

メニューはクレープとポルペッティーネ入り雌鶏のブロード、
子羊肉はオーソドックスなリブロースの炭焼きとオリジナルのアレンジを加えたジュニパー焼きの2種。
さらに復活祭の卵3種、
アブルッツォやモリーゼの伝統のパスクア料理、チーズ入りフィアドーネ、
地元の伝統料理の子羊の内蔵料理マッツァレッレ、
レバーのカーチョ・エ・ウオバ、
そしてドルチェはパスクアか家族に伝わるピッツァ・ディ・コロンバか、カンパーニアのパスティッチェーレに教わったパスティエーラかと、話は尽きません。
パンも自家製。
ドルチェにはアーモンドもあります。
組み合わせるワインは絶対アブルッツォ産だそうです。
アブルッツォの4つの県のワインを全部揃えているそうですよ。マジパンのドルチェに添えるなら、アブルッツォのパッシートだそうですよ。

料理からデザートワインまで、情熱を溢れさせながら流れるように語ってくれたこの人は、ただものでないと思ったら、アブルッツォで一番魅力的な場所と言われる国立公園の中にある店、ヴィッラ・マイエッラのオーナーシェフのペッピーノ・ティナーリさんでした。
ヴィッラ・マイエッラ↓

子羊料理といえば、アブルッツォ。
アブルッツォの伝統的パスクア料理↓
最初の3分はCMです。

1品目は卵のストラッチャテッラとチコーリア入りパスクアのブロードbrodo di Pasqua con stracciatella e cicoria
・ブロードは雌鶏、七面鳥、子牛の3種類。チコーリアはほろ苦い春の野草。
・ゆでて刻んだチコーリア、卵、おろしたチーズ、こしょう、塩微量を混ぜて沸騰したブロードに入れて混ぜゆっくりながら固める。

子羊のカーチョ・エ・オーヴェagnello cacio e ove
・子羊肉はリブロースを一口大に切る・
・にんにく、にんじん、イタリアンパセリのみじん切り少々を油でソッフリットにし、肉を加えて薄く焼き色がつくまで焼く。白ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・その間に卵、おろしたチーズ、塩、こしょう、ナツメグを混ぜる。
・肉に焼き色がついたら卵をかけ、水気を飛ばしながらなじませる。

店のパスクアのメニューは、ベンベヌートのプロセッコ、カルディとフレッディのアンティパスティ・ディ・カーサ、アブルッツォ風ブロード、森の香りのフェットゥッチーネ、トマトソースのラビオリ、子羊肉のカーチョ・エ・オーヴァ、子羊肉の炭焼きグリル、じゃがいものサラダ、ピッツァ・ドルチェ、自家製ドリンク。

長くなりそうなので、今日はこのへんで。


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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...