2020年12月4日金曜日

アブルッツォで一番の店と言われるヴィッラ・マイエッラのシェフのパスクア料理の説明は、超面白い。

今日からお題は復活祭です。
翻訳作業があるため現実のカレンダーとはタイムラグがあり、クリスマスが近づくこの時期ですが、話題は復活祭。
そもそも、復活祭は移動祝日で、キリスト教にとってはクリスマスに次ぐ大事な祭り。2021年の復活祭は4月4日。
復活祭はキリストの復活を祝い、春の再来を祝う祭りです。
イタリア料理の世界でも、パスクア(復活祭)は一大イベント。

キリスト教の習慣では、復活祭の前に断食をする四旬節というのがあり、その前後には各地で様々な祭りが行われます。
断食の後に行われる春の再来を祝う祭りのご馳走は、いやでもウキウキ気分を引き立てます。
パスクアの料理が何を象徴しているかは、今月の「総合解説」P.18~にも、詳しく書いてありますが、
まずは子羊。
生まれたばかりの動物とミルクは、再生のシンボルの1つです。
古代の民は羊飼い。子羊はキリストの犠牲と人間の救済の象徴で、キリスト教以前の宗教では再生のシンボルでした。
子羊の肉は過去との結びつきを象徴しています。
さらに、子羊のためのミルクはフレッシュチーズやリコッタにしてケーキやパイなどのドルチェに使います。
卵は自然の再生を表す、手に入りやすい普遍的な食材。
ヨーロッパを始めとする各国にイースターエッグの伝統が生まれました。

卵で飾ったパンは地中海全域に広まりました。
夏の終りに熟すアーモンドは、手に入りやすい地方では、復活祭の宗教的なシンボルで、縁起の良い食べ物とされました。
多産の象徴で、結婚式や春を祝う祭りにアーモンドのドルチェは欠かせません。

ユダヤ教にとっても、奴隷状態だったユダヤ人がモーゼによってエジプトを脱出したことにちなむ重要な日。
食事は奴隷時代の辛さを表すマッツァーというイーストが入らないパンが有名。
そういえば、きのう紹介したリグーリアの焼いても膨らまないイーストが入らない生地、パスタ・マッタにも関係があるのかも。

ユダヤ教の膨らまないパン、パーネ・アッジモ、パーネ・マッツォ↓

ゆで卵、春の野原にたくさん生えているほろ苦い野草、子羊肉、ミックスドライフルーツなどがパスクアの主役の食材。
なんだかここ最近ずっと取り上げてきた料理は、こんな食材を使った料理ばかりだったような気が・・・。
アブルッツォで一番有名なレストラン、ヴィッラ・マイエッラVilla Maiella(店のwebページはこちら)のパスクアのプランツォや↓

メニューはクレープとポルペッティーネ入り雌鶏のブロード、
子羊肉はオーソドックスなリブロースの炭焼きとオリジナルのアレンジを加えたジュニパー焼きの2種。
さらに復活祭の卵3種、
アブルッツォやモリーゼの伝統のパスクア料理、チーズ入りフィアドーネ、
地元の伝統料理の子羊の内蔵料理マッツァレッレ、
レバーのカーチョ・エ・ウオバ、
そしてドルチェはパスクアか家族に伝わるピッツァ・ディ・コロンバか、カンパーニアのパスティッチェーレに教わったパスティエーラかと、話は尽きません。
パンも自家製。
ドルチェにはアーモンドもあります。
組み合わせるワインは絶対アブルッツォ産だそうです。
アブルッツォの4つの県のワインを全部揃えているそうですよ。マジパンのドルチェに添えるなら、アブルッツォのパッシートだそうですよ。

料理からデザートワインまで、情熱を溢れさせながら流れるように語ってくれたこの人は、ただものでないと思ったら、アブルッツォで一番魅力的な場所と言われる国立公園の中にある店、ヴィッラ・マイエッラのオーナーシェフのペッピーノ・ティナーリさんでした。
ヴィッラ・マイエッラ↓

子羊料理といえば、アブルッツォ。
アブルッツォの伝統的パスクア料理↓
最初の3分はCMです。

1品目は卵のストラッチャテッラとチコーリア入りパスクアのブロードbrodo di Pasqua con stracciatella e cicoria
・ブロードは雌鶏、七面鳥、子牛の3種類。チコーリアはほろ苦い春の野草。
・ゆでて刻んだチコーリア、卵、おろしたチーズ、こしょう、塩微量を混ぜて沸騰したブロードに入れて混ぜゆっくりながら固める。

子羊のカーチョ・エ・オーヴェagnello cacio e ove
・子羊肉はリブロースを一口大に切る・
・にんにく、にんじん、イタリアンパセリのみじん切り少々を油でソッフリットにし、肉を加えて薄く焼き色がつくまで焼く。白ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・その間に卵、おろしたチーズ、塩、こしょう、ナツメグを混ぜる。
・肉に焼き色がついたら卵をかけ、水気を飛ばしながらなじませる。

店のパスクアのメニューは、ベンベヌートのプロセッコ、カルディとフレッディのアンティパスティ・ディ・カーサ、アブルッツォ風ブロード、森の香りのフェットゥッチーネ、トマトソースのラビオリ、子羊肉のカーチョ・エ・オーヴァ、子羊肉の炭焼きグリル、じゃがいものサラダ、ピッツァ・ドルチェ、自家製ドリンク。

長くなりそうなので、今日はこのへんで。


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