2009年12月28日月曜日

2010年の三つ星店は・・・

今日は『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事、「三つ星の料理」の解説です。

ミシュランの三つ星店、日本にはなんだかずいぶんたくさんあるんですね。
2010年版では東京は11軒、京都大阪は7軒だそうで。

さてそれでは、11月24日に発売されたミシュラン・イタリア2010年版では、三つ星店は何軒?

・・・答えは、6軒です。
イタリア中で、わずか6軒。

二つ星は37軒。
ちなみに日本は東京だけで42軒。
京都大阪は11軒。

フランスの人は日本料理に甘いのか、イタリア料理に厳しいのか・・・。

東京の11軒というのはパリの10軒を抜いていて、結果的に「東京が世界一の美食の街」というお墨付きを与えたようなもの。
これにはさすがにフランスでは怒りの声が上がっているようで、フランスのL'EXPRESS誌は「日本市場で儲けようという魂胆」というような記事を載せています。


イタリアでは、「ミシュランが好むのはフレンチスタイルの高級店」という評価が一般的。
でも、毎年その結果が発表される時期には、星が増えた減ったと、話題にはなるようです。

2010年版の3つ星店は、
Dal Pescatore(Canneto sull'Oglio/マントヴァ)
Ristorante Enoteca Pinchiorri(フィレンツェ)
La Pergola(ローマ)
Al Sorriso(Soriso/ノヴァーラ)
Le Calandre(Rubano/パドヴァ)
Da Vittorio(Brusaporto/ベルガモ)


今年は動きがありましたねー。
常連の5軒に、新顔のDa Vittorioが加わりました。


下の動画で最初に登場するのが、出版イベントでのDa Vittorioの面々。
話をしているのはミシュラン・イタリアの編集長。






次の動画は、Da Vittorioのシェフ、エンリコ・チェレーア氏。
2008年のヴィニタリーで披露した、春の食材の料理を説明しています。
「ロワイヤルのズッキーニ風味」
「じゃがいものクレーマ、頬肉の煮込み入り」
「アスパラガスとスクアックエローネのオルゾット」
「ヒラメのフィレットの子牛の頭肉添え」
「クレーム・ブリュレとピスタチオのクリーム」
「自家製ピッコラ・パスティッチェリーア」







Da vittorioのhpはこちら


イタリアの三つ星の話、次回に続きます。



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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年4月号
「三ツ星の料理」のリチェッタは「総合解説」'07&'08年4月号に載っています。

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2009年12月24日木曜日

アッバッキオ・アッラ・カッチャトーラ

クリスマスイブの今日も復活祭の話(笑)。

間があきましたが、子羊料理の話、続けます。

前回は、おいしい子羊料理がたくさんあることで知られるローマでも特においしい一品、「アッバッキオ・アッラ・カッチャトーラ」、別名「アッバッキオのローマ風 abbacchio alla romana」のリチェッタの途中でした。

あらためて材料からどうぞ。
出典は、ローマ料理のバイブル、Livio Jannattoni著『La cucina romana e del Lazio』です。

アッバッキオ・アッラ・カッチャトーラ Abbacchio alla cacciatora
材料/6人分
 アッバッキオ・・1.5~2㎏
 オリーブオイル(またはラード)・・1/2カップ
 ビネガー・・1/2カップ
 塩、こしょう
 小麦粉・・大さじ1/2
 にんにく
 ローズマリー
 セージ・・1枚
 洗って骨を取って崩した塩漬けアンチョビー(好みで)・・2尾

・大きなフライパンに油を熱し、子羊肉(40gに切り分ける)を入れて強火で焼く。塩、こしょうをして木べらで裏返し、全体に均一に焼き色をつける。
・弱火にしてにんにく1片、ローズマリー、セージを加え、再び火を強めて小麦粉大さじ1/2を散らしながら焼く。
・肉を裏返し、ビネガー1/2カップと水1/2カップをかける。鍋肌を軽くこそげ、火を弱めて蓋をする。
・水分が煮詰まったら水を加えながら煮る。
・アンチョビーを肉の煮汁大さじ2で溶かし、肉にかけてさっと煮る。

ジッジ・ファーツィ(ローマの有名シェフ)のカッチャトーラ
・フライパンに油、にんにく、唐辛子を入れてソッフリットにし、切り分けた子羊肉を入れて塩をする。
・強火で焼き、焼き色がついたらワインをかける。しっかり蓋をして火を半分に弱め、15分焼く。
・ローズマリーを加えてビネガーを散らし、再び蓋をする。火をやや強めて10分熱する。

ファーツィのリチェッタはワインの量が多く、小麦粉がなく、こしょうの代わりに唐辛子を加え、セージは加えない(おそらくこれは正解だろう)。

若手のレオポルド・カッチャーニ(フラスカーティのリストランテ・カッチャーニ、ソムリエでもある)のカッチャトーラ
・カッチャトーラの肉は、まだ母乳だけを飲んでいる乳飲み子羊で、肉の重さが7~8㎏のものがよい。
・肉を切り分ける時は小さくなりすぎないようにする。
・上質のオリーブオイルをステンレスではなく鉄のフライパン(火が均一に行きわたる)に入れて熱し、肉を入れて10分焼く。
・薄く焼き色がついたら油の大部分を捨て、にんにく、ケッパー、ローズマリー、唐辛子、塩のペーストを加える。
・さらに焼き、白ワイン(できれば辛口のフラスカーティ)とビネガーを加える。
・蓋をして火を弱め、10~15分煮る。
・蓋を取って水気を飛ばす。熱した皿に盛り付け、フラスカーティを添える。

「新しい」リチェッタだが、伝統を十分に尊重している。



復活祭の子羊の締めくくりは、ペコレッラ。
マジパンで作った子羊です。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の表紙にもなっています。




これはずいぶん整った形をしていますが、パスティッチェリーアに並んでいるペコレッラはこんな感じこんな感じで、もっと素朴。

たいていは、背中に旗をつけています。
今まで、この旗にどんな意味があるのか考えたことがなかったのですが、『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事で初めて知りました。
これは復活したキリストが持っているのと同じもので、死への勝利を意味しているんだとか。
そういえば、旗を持ったキリストの絵、ありますねー。


今日のおまけ。
やっぱりクリスマスですから、パンドーロのメーカー、バウリのCMをどうぞ。





メリー・クリスマス!



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関連誌;Livio Jannattoniの『La cucina romana e dal Lazio』はクレアパッソで販売しています。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年4月号、「ペコレッラ」のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年4月号に載っています。

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2009年12月21日月曜日

パンペパート、おまけ

前回のウンブリアのパンペパートpanpepatoの話を見て、Italiamamaさんがトスカーナはシエナのパンペパートの写真を送ってくれました(Grazie Italiamamaさん!)








Italiamamaさんが住んでいたエミリア・ロマーニャには、これに似たスポンガータというドルチェがありますよー、とも教えてくれました。
スポンガータ


そう言えば、パンペパートはイタリア各地にあります。
パンペパートに似たドルチェもあちこちにあります。

そもそも、パンペパートはどこのドルチェ?

一般的に、パンペパートはイタリア中部、特にウンブリアのテルニ周辺のクリスマスのお菓子として知られています。

ウンブリアのパンペパート

でも、ラツィオやエミリア・ロマーニャにもパンペパートがあります。



下の動画はラツィオのヴィテルボ地方のパンペパート。
ウンブリアのものとほとんど同じですね。
「ペパートとは言っても、今ではこしょうは加えません」と言ってます。







『Grande enciclopedia illustrata della gastronomia』によると、パンペパートとは・・・

ドライフルーツ、蜂蜜、カンディート(フルーツのシロップ煮)、チョコレート、スパイスがベースの歴史の古い焼き菓子。
多くの地方で蜂蜜にこしょうを加える。
こしょうの量は様々。
作り方はどの地方も似ているが、食材は地元ならではのものを加える。
たとえば、エミリア地方では松の実とジビッボ種のぶどうを入れたり、ラツィオではジャムとチョコレートで覆ったりする。
トスカーナのパンフォルテも元々は“パン・ペパート”だった。
他の材料と比べてこしょうの量が多かったため、「パーネ・パッツォ pane pazzo」(狂ったパン)と呼ばれた。



ちなみに、Touring club Italianoの『L'Italia dei dolci』によると、
ウンブリアのパンペパートに合うワインは、「オルヴィエートのアレアティコ」だそうです。
甘口の赤のオルヴィエートということでしょうか?
地元でないと飲めないワインですねえ。



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2009年12月17日木曜日

パンペパート

このところずっと復活祭の話をしていますが、やっぱり今はクリスマス(笑)。
久々にポモドーロさん(クレアパッソのイタリア在住スタッフ)からイタリア便りが届きました。
そこで、復活祭の話はちょっとお休みして、今日はペルージャのクリスマスの様子をどうぞ。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



キリスト教国のイタリアは、12月8日の聖母の無原罪の御やどりの祝日から1月6日の御公現の祝日まで、クリスマス一色になります。

日本のお正月と同じように、この時期、主婦はとても大変です。

12月8日までにツリーを飾り、家族や友達にプレゼントを用意、クリスマスイブとクリスマスの正餐の準備をします。
クリスマスが過ぎるとすぐに大晦日のパーティー、元日、醜いおばあさんが悪い子には石炭を、よい子にはプレゼントを持って来てくれる1月6日のエピファニアで一連のお祝い事が終わり、やっとツリーをかたずけます。

我が家では、ツリーを飾りクリスマスのお菓子パンペパートを作ると、クリスマス気分がぐっと盛り上がります。

ペルージャの伝統的なクリスマスのドルチェは アーモンドベースのトルチリオーネですが、相棒が近郊のテルニ出身の為、我が家のクリスマスのドルチェはパンペパートです。

パンペパート、ペーペの入ったパンという名のこのドルチェは、その名の通りコショウがたっぷりと入っています。
ここで紹介するレシピは、近所に住んでいたテルニで一番有名なバールのドルチェ職人さんから教えてもらった物です。



材料:下記レシピの3分の2の量です。


材料の分量はすべて殻をとったものです。
 くるみ 1kg
 ヘーゼルナッツ 500g 
 アーモンド 500g 
 松の実 100g 
 種無し干しブドウ 400g 
 シトロンの砂糖漬け 500g 
 ブラックチョコレート 1kg 
 蜂蜜 600g 
 パウダーココア 100g 
 小麦粉 200g 
 凝縮コーヒー(4人分のコーヒーメーカーで3回出ししたもの。一回目に出したコーヒーを水の代わりに入れ、コーヒーを作る。3回目も2回目に作ったコーヒーを水の代わりに入れる。)
 モストコット(ブドウの絞り汁を10分の1程に煮詰めた物) カップ1
 コショウ
 ナツメグ
 お菓子用オスティア(オブラート)

(材料の下ごしらえ)
シトロンの砂糖漬けは荒いみじん切にし、チョコレートと蜂蜜は湯煎にかけて溶かします。
くるみ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、松の実、干しブドウは切らずにそのまま使います。

(作り方)
オスティア以外のすべての材料を台の上に山盛りし、たっぷりのコショウとナツメグ3分の1個をおろしたのを入れ、全材料を両手でよく混ぜ合わせます。
最初はドロドロしていますが、チョコレートと蜂蜜がさめてくるとまとまってきます。
コショウの量は好みですが、かすかに感じる程度が良いようです。





ヘラで少量とり、小麦粉を敷いた台の上で、底の直径が8センチ程のパン型に成形します。
手に粉をつけながらすると成形しやすいのですが、つけすぎないように注意します。





成形したパン型をオスティアに乗せ、オーブンの鉄板に並べます。





160度に熱したオーブンで25分焼き、さまします。
日持ちさせる場合は、一日乾燥させてから包装すると2-3ヶ月はもちます。
できたパンペパートは5ミリ程の厚さに切ってサービスします。









我が家では、このドルチェをプレゼントにも使うので、通常より大きめに作ります。
上記の分量で、底の直径10-11センチのパン型に成形した場合、16個程作れます。
見かけはイマイチですが、味は抜群。
ブオン ナターレ!!



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



お疲れ様、ポモドーロさん。
今年もグッジョブ!
ポモドーロさんのパンペパートは、ほんとにおいしいんですよ。



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2009年12月14日月曜日

復活祭の子羊、その2

復活祭の料理の話、今日こそは子羊料理です。
『サーレ・エ・ペペ』の解説です。


復活祭の時期、つまり春は、子羊肉も旬。
という訳で、復活祭には様々な子羊料理が登場します。

最も一般的なのは、ロースト。
他には、スペッツァティーノ、フリット、ブロデッタート、フリカッセ、ポルペッティーネ、フラザート、タリアータなどなど、何でもありです。



下の動画は、定番中の定番、「アッバッキオとじゃがいものロースト、アーティチョーク添え」。





・子羊肉は、後ろ半身1㎏(火が通りやすいように切り込みを入れる)と前半身1㎏(3つに切る)。
・にんにく4片を半分に切って肉にこすりつけ、油をかけてローズマリーを差し込む。
・180度のオーブンで最低1時間30分焼く。
・塩は約30分焼いてから振る。
・1時間たったらじゃがいもを加え、コンベクションオーブンで熱風循環させて30分焼く。
・途中、1、2度裏返す。
・その間にアーティチョーク(棘のないローマ種)を調理する。
・軸をやや残して掃除し、葉の間に塩少々を詰める。
・小鍋に隙間ができないように伏せて並べ、EVオリーブオイル1/2カップ、水1カップ強、にんにく、塩、たっぷりのプレッツェーモロを加える。
・蓋をして弱火で最低30分蒸し煮にする。



『サーレ・エ・ペペ』では、「アッバッキオ・アッラ・ロマーナ Abbacchio alla romana」、つまりローマ風アッバッキオのリチェッタも紹介しています。
これは、ローマでは「アッバッキオ・アッラ・カッチャトーラ Abbacchio alla cacciatora」と呼ばれている一品。
スペッツァティーノ(小さく切った肉の煮込み)の一種の、超おいしい子羊料理です!
ポイントはアンチョビー。
子羊とアンチョビーって相性バッチリなんですねえ。



ローマの料理人のバイブル、リヴィオ・ジャンナットーニの『La cucina romana e del Lazio』では、子羊のカッチャトーラをこんな風に解説しています。


アッバッキオ・アッラ・カッチャトーラ Abbacchio alla cacciatora
材料/6人分
 アッバッキオ・・1.5~2㎏
 オリーブオイル(またはラード)・・1/2カップ
 ビネガー・・1/2カップ
 塩、こしょう
 小麦粉・・大さじ1/2
 にんにく
 ローズマリー
 セージ・・1枚
 洗って骨を取って崩した塩漬けアンチョビー(好みで)・・2尾

風味のあるスペッツァティーノ。
この料理を前にすると、アーダ・ボーニ(イタリアを代表する料理研究家)のようなプロフェッショナルでも興奮を隠せなくなる。
もちろんボーニ女史ともなれば、とても控えめな言葉でそれを表現する。
「ローマのアッバッキオはおいしい。
さらに、ローマ料理にはそのアッバッキオの味を最大限に引き出す個性的なリチェッタがいくつかある。
中でも、アッバッキオ・アッラ・カッチャトーラはその筆頭だ」

アッバッキオは40g程度に切り分ける。
ジッジ・ファーツィ(フェリーニの映画『甘い生活』の舞台にもなった有名店のシェフ)は、店でカットしてもらうとよいと言っている。
最適の部位はももとロース。
“アッラ・カッチャトーラ(猟師風)”というのは、伝統的に、にんにく、ローズマリー、ビネガー風味の料理につけられる名前。
肉の量は以前と比べて少しずつ増えてきているようだ。
アーダ・ボーニは「1㎏あればよく食べる人6人分に十分」、と言っている。
ジッジ・ファーツィは「1.5㎏」。
レストランによっては「牛肉は一人前で最低200gは必要で、アッバッキオは最低300~350g」と言う。



著者のリヴィオ・ジャンナットーニという人は、こんな調子で細かく細かく解説しながらローマ料理を語っています。
具体的なリチェッタの話はここからなんですが、まだまだ続くので、今日はここまで。
続きは次回に。



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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年4月号
「復活祭の料理」と「アッバッキオ・アッラ・ロマーナ」のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年4月号に載っています。

Livio Jannattoniの『La cucina romana e dal Lazio』はクレアパッソで販売しています。


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2009年12月11日金曜日

復活祭の卵

復活祭の話、その4。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』と『サーレ・エ・ペペ』の解説です。


復活祭の主役、卵と子羊。

そのうんちくが分かったところで、今度はどんな料理があるのか見てみましょうか。


まずは卵。

なんと言っても、町のあちこちで売られている大きなチョコレートの卵ですよね。



視線の先にはマンマがいるのか?
「マンマ・ミーア」とか言ってたりして。
photo by muscolinos



そしてこれも一般的なのが、復活祭の朝食のゆで卵。



ゆで卵、サラミ、サルシッチャ、ピッツァ・アル・フォルマッジョ(チーズブレッド)の盛り合わせ。
こちらのお宅では、この後、「子羊のコトレッタ(フリット)のアーティチョークとアスコリ風オリーブ添え」、「子羊のオーブン焼きとインサラータ」、「ストラッチャテッラとアマレットのセミフレッドのカッサータ」を食べるんだそうです。
photo by Flaviakappa




子供用には殻に色をつけたゆで卵


教会ではゆで卵に祝福を与えます。
教会の祭壇にはあちこちの家のゆで卵が・・・



ジェノヴァのトルタ・パスクアリーナは、ゆで卵入りのほうれん草とリコッタのパイ。
伝統的なリチェッタではキリストの歳の数だけパイを重ねる、とも言いますが、こちらはお手軽版。






殻付きゆで卵をのせて焼くトルタ・サラータのイースターブレッドは、イタリア各地にあります。
この動画はカンパーニアのカザティエッロ






『ラ・クチーナ・イタリアーナ』にリチェッタが載っている「スカルチェッレ」は、ゆで卵をのせたプーリアのお菓子。



きょうのおまけ。

卵の中身は・・・。






次回は子羊料理です。


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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』、『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年4月号
「復活祭の料理」(SP)と「パスクアのドルチェ」(CI)のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年4月号に載っています。


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2009年12月8日火曜日

復活祭のコロンバ

季節外れの復活祭の話、その3。
クレアパッソで現在配本中の『サーレ・エ・ペペ』の記事の解説です。


イタリア料理の世界では、復活祭の主役は「卵」と「子羊」。

そして準主役級も色々あります。
まずは、「鳩」。

と言っても、鳩の場合は食べるわけではないですねー。
鳩の形をしたケーキで「平和」を謳っています。



パスクアのコロンバ, photo by distopiandreamgirl



鳩がなぜ平和の象徴かというと、「ノアの箱舟」の物語に由来しているのだそうですね。

洪水が続いた後、ノアは鳩を放ちます。
その鳩がオリーブの小枝をくわえて戻ってきたのを見て、ノアは水が引いたことを知りました。

洪水が引いた、つまり地上に平和が戻った、ということで、それを伝えた鳩が平和のシンボルとされるようになった訳ですね。


イタリアでは、復活祭の時期に「コロンバ」という発酵生地のドルチェが出回ります。
鳩のモチーフが、宗教色の強い復活祭の料理に使われるのは、別に不自然なことではないですよね。
ドルチェのコロンバにしても、その起源は、6世紀のアルボイーノ王にまつわる話だとか、12世紀の皇帝バルバロッサが関係する、などの説が知られています。

でも、『サーレ・エ・ペペ』の記事の一文を見て、ちょっと見方が変わりました。

「イタリアでは、菓子業界のアイデアもあって鳩は復活祭のイメージキャラクターとして定着した」

そういえば、イタリア以外で、復活祭に鳩のお菓子を食べる国って、あったっけ?

・・・なんとコロンバは、イタリアの菓子業界が造った習慣だったんですねえ。

そもそものきっかけは、モッタ社。
パネットーネで有名ですよね。
このモッタが、20世紀初めに、第二のパネットーネをもくろんで復活祭用に開発した商品が、コロンバだったんですねー。


『サーレ・エ・ペペ』は、こうも言っています。
「鳩のモチーフはドルチェとして定着したが、ケーキ以外にも応用できる」

・・・ごもっとも。
ただし、イタリアの法律では「コロンバ」として販売していいのは焼き菓子のコロンバだけで、製法も法律で定められています。

『サーレ・エ・ペペ』が提案したのは、パン生地を小さな鳩の形に抜いて焼いた「コロンビーネ」。
これにパルミジャーノ、オイル漬けドライトマト、松の実をミキサーにかけたソースをつけて食べます。
なかなか美味しそうだし、小鳩というモチーフも可愛いですよ。



『ラ・クチーナ・イタリアーナ』のリチェッタの自家製コロンバ。
小麦粉は0番の軟質小麦粉(マニトバ)を使っています。







こちらはニーダーを使わない文字通り手作りのコロンバ。
こちらも粉はマニトバ。







復活祭の料理の準主役級は、この他に、「発酵生地」や「リコッタ」などがあります。
発酵生地は、膨らませるところが豊穣のイメージにつながるから。
リコッタは、たくさんの羊の群れ、つまり繁栄を願う食材。
さらにチーズ全般として、滋養を象徴し、生命の復活をイメージさせる食材。



こんなところをふまえて、次回は復活祭の地方料理あれこれ編です。

・・・と、ここまで書いて気がつきました。
今日は子羊の話、その2のはずだったー!
すっかり忘れてたー!
すいません。
子羊の話は、多分次回に出てきます(汗)



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2009年12月3日木曜日

復活祭の子羊、その1

復活祭の話、その2です。


キリスト教の最も重要な典礼の1つ、復活祭。

宗教的なテーマは、キリストの復活を祝う、というもの。
その一方で俗世界では、春の到来を祝い、生命の復活を喜ぶお祭りでもあります。
イタリアの地方料理の世界にとっては、最大級のイベントです。


イタリア料理の復活祭の主役は、「卵」と「子羊」。

どちらにも復活祭のテーマがたっぷりと詰まっています。

卵は、
まずは「生命」の象徴。
そして「再生」、
さらには「希望」の象徴。
殻を破って新たな命が誕生するぞー、という感じですね。



パスクアのチョコレートの卵。力作ですねー。
photo by francesca!!



そして子羊は、
「キリスト」を象徴しています。

このあたりはちょっと分かりにくい。

その昔、人は神に祈る時に、生贄をささげました。
子羊は、西洋では典型的な生贄だったんですねえ。
「生贄」は「犠牲」という意味にも結び付きます。
キリストが十字架にかかったことには、自らを犠牲にする、という意味もありました。
この世の罪を償うために、自ら生贄の子羊となった訳です。

子羊は、「キリストの犠牲」の象徴であり、同時に「けがれなきキリストの体」の象徴でもあります。

でも、その象徴を食べるというのは、かなり分かりにくい発想ですよねえ。

キリスト教の中でもカトリックの教えには「聖体」というものがあります。
ミサの時に、神父さまが何やら信者の口に入れて回っているものがあるじゃないですか。
あれです。






これ、一体何を口に入れてるんでしょう。
イタリア語では「オスティア」と言う物体で、ウエハースの一種です。

「聖体」については、wikiなどを参考にしてください。


初めての聖体拝礼はハプニングの宝庫。






この子もやってくれます。







キリスト教では、「パンとワインはキリストの体と血」と言いますよね。
最後の晩餐で、キリストは「これは私の体、これは私の血」といって弟子たちにパンとワインを与えました。
体であるパンを食べる!
うーん、キリスト教徒でないと、かなり難解な発想ですねー。
きっと深い意味があるのでしょうが、信徒たちの連帯を強めるという意味では効果抜群の儀式です。


でも、「これは私の体」といってこんな料理が出てきたら、難しいことは忘れてありがたーくいただくことは、キリスト教徒じゃなくても分かります。



復活祭のアッバッキオ, photo by masolino



復活祭の子羊の話、次回に続きます。




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2009年11月30日月曜日

イタリアの復活祭

今日は復活祭と子羊の話。
季節外れなのはよーく分かってますが、クレアパッソの次の配本が4月号なもので(汗)。


イタリア料理と復活祭はとても深い関係にあるけれど、キリスト教の話はどうもよく分からないですよねえ。
復活祭には子羊料理を食べる、という話も、なんとなく知ってはいても、その理由となると、いま一つピンとこなかったりして。

宗教の話が出てくると、ちょっととっつきにくいですが、イタリア料理を知る上では、やっぱり少しは知識があったほうがいいかも。

というわけで、料理に関係のある復活祭の話のごく初歩的なものをいくつか集めてみました。


復活祭は、イタリア語ではパスクア Pasqua。
キリスト教圏では、毎年日付が変わる移動祝日ですよね。

「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」です。

紀元4世紀には、すでにこの方式が定められてたそうです。
2009年は4月12日でした。
2010年は4月4日です。

そして何が復活したのかと言えば、キリスト。
十字架にかけられて死んでから3日後に復活したんですねー。

復活祭の46日前には、四旬節(イタリア語ではクアレージマ Quaresima)というのがあります。
昔はこの期間は、キリストの苦しみを分かち合うために肉食を断つ、という習慣がありました。
そこで、その前にたっぷり肉を食べてどんちゃん騒ぎをしておこう、というのがカーニバル(カルネヴァーレ carnevale)。

46日間もキリストの受難に思いをはせてひたすら節制した後に、いよいよやってくるのが復活祭です。
キリスト教の典礼の中でも最高のもの。


2009年の復活祭の日のヴァチカン、サン・ピエトロ広場。
えーっと、今のローマ教皇の名前、また忘れた。
ベネディクト16世でした。






この時期、運が悪いとサン・ピエトロ寺院は中に入れないので、旅行の予定がある時は要チェックですね。

復活祭は洗礼を受ける人がもっとも多い時期。
サン・ピエトロでもやっています。
洗礼は、キリスト教徒でないと何のためにするのか、まったく分かりませんねー。
でも、イタリア料理の中には洗礼に関係するものもあるんです。






寺院の外ではこんなパレードも。
ヨーロピア~ン、ですなあ。






こちらはカラプリアのサン・カロージェロという町の復活祭の様子。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督の映画に出てきそうですが、2009年の復活祭です。







復活祭の話、次回に続きます。



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2009年11月24日火曜日

ガンベロ・ロッソのイタリアのカプチーノ、ベスト10

今日はカプチーノの話。

以前、『ガンベロ・ロッソ』が「ローマのカルボナーラ、ベスト10」というのを発表した、という話をしました。
『ガンベロ・ロッソ』では、色々なもののベスト10を発表しています。
クレアパッソで次に配本予定の2008年4月号で取り上げているのは、リゾット・ミラネーゼとカプチーノのベスト10。

リゾットの情報は「総合解説」に載せますので、ここではカプチーノのベスト10をどうぞ。
順位はつけられていないので、アルファベット順に紹介されています。


■バスティアネッロ Bastianello(ミラノ);hp
1.60ユーロ

ミラノで最高のカプチーノ。
クリーミーでクリームは最後まで濃厚。
混雑していてもエレガントなサービスを受けられる。

これがそのカプチーノ。

こちらは同店のホットチョコレート。



■ヴェランダ・イル・カランドリーノ Veranda Il Calandrino(ルバーノ);hp
1.35ユーロ

レ・カランドレを経営するアライモ家の店。
レストランだけでなく、カプチーノも素晴らしい。
洗練されたブレンド。

日本にもあったんでしたっけ。
今もあるんでしょうか。



■コーヒー&チョコレート Coffee & Chocolate(パレルモ);via Principe di Belmonte 108, Palermo
1.30ユーロ

スピンナート家が経営する3軒の店の1つ。



■ディ・パスクアーレ Di Pasquale(ラグーザ);hp
1.00ユーロ

ディ・パスクアーレ家が経営するシチリアを代表するパスティッチェリーアの1つ。
伝統と新しさのバランスが取れた店。
プロの技のカプチーノ。



■ジーノ・ファッブリ・パスティッチェーレ Gino Fabbri pasticcere(ボローニャ);hp
1.30ユーロ

イタリアでも最大規模のパスティッチェリーア。
豆のブレンドが素晴らしい。
造り手によって微妙な違いもある。



■ムラッサーノ Mulassano(トリノ);hp
1.30ユーロ

トリノの中心部にある。
イタリアの歴史的なカフェの中では小さな店。
バリスタはまるで魔法使いのよう。

店の入り口
バリスタ?
カフェ・シェケラート



■ムレーナ・スイート Murena Suite(ジェノヴァ);via XX Settembre 153/157r, Genova
1.20ユーロ

ジェノヴァでも特にモダンな店の1つだが、伝統は十分に尊重されている。
信頼できるプロの手が作りだすカプチーノ。



■リナルディーニ Rinaldini(リミニ);hp
1.30ユーロ

パスティッチェリーアとチョコレートの世界大会で優勝した経歴のあるロベルト・リナルディーニの店。

「うるるん」で飴細工の指輪を作った人ですねー。
店のショーケースに並ぶドルチェ



■ルージュ・エ・ノワール Rouge et Noir(ブリンディジ);via Santi 15, Brindisi
1.20ユーロ

南イタリアで最高のカプチーノの1つ。
経営者のロモロ・スペッキアは上品で洗練された飲み物を作る魔術師。



■ヴィア・デッレ・トッリ Via delle Torri(トリエステ);via Roma 4, Trieste
1.40ユーロ

美味しいコーヒーの街にある店。
どんなに混雑していても完璧なカプチーノを出す。



どの店も、近くを訪れる機会があったら要チェックですね。


それでは今日のおまけ。
アート系のカプチーノ作りの動画をどうぞ。








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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2008年4月号


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2009年11月19日木曜日

ノヴェッロ

今日は11月の第3木曜日。
ボジョレー・ヌーヴォーの解禁日ですね。
そこで今日は、イタリアのノヴェッロの話です。

ノヴェッロの販売の解禁は、1999年の法律で11月6日の午前0時01分と定められています。
(なぜ01分?)
展示や試飲の解禁は、1日前の11月5日の午前0時01分。


ローマにあるラツィオ州のエノテーカ、パラティウムで行われた2009年のラツィオ産ノヴェッロのテイスティングの様子。
盛況ですね。






ノヴェッロは、ボジョレー・ヌーヴォーと同じマセラシオン・カルボニック、イタリア語なら「マチェラツィオーネ・カルボニカ macerazione carbonica」、つまり炭酸ガス浸漬法で製造されます。
法律では、マチェラツィオーネ・カネボニカのワインを最低30%含む、と定められています。
アルコール度は11%以下。
ボジョレーと違うのは、様々な種類のぶどうを使って様々な地方で造られている、ということでしょうか。
だから、個性も様々なので、ボジョレーと違って今年の出来はどう、と一概に言いきれないですよね。

ちなみに、普通の醸造方法のワインの新酒、という意味の「ヴィーノ・ヌオヴォ vino nuovo」とは別のもの。
ヴィーノ・ヌオヴォの方は、たいてい春に出回ります。


マチェラツィオーネ・カルボニカ







次の動画は、プーリアのルーヴォ・ディ・プーリアというコムーネの今年のノヴェッロのテイスティング。
今年の気候は6~7割は良い年。
後半は雨が降ったが、例年のような酷暑はなく、特に問題はなかった。
今年も素晴らしい香りのノヴェッロに仕上がっている。
とのこと。
テイスティングの評価は、エレガントで輝きのある色、レッドカラントやラズベリー、桑の実、いちごなどのベリー類の香り、強くて心地よい香り。
若者や女性に人気。
焼き栗やきのこ、狩猟肉など、季節の食材と一緒にどうぞ、と言ってます。








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2009年11月16日月曜日

ポレンタ

もうそろそろフランスのヌーヴォーも解禁になる季節。
少しずつ寒くなってきました。
そこで今日は、寒い季節が似合う料理、ポレンタの話です。

ポレンタは、とうもろこしの粉を煮たピューレ状の食べ物ですよね。
その語源は、古代ローマ人の日常食だった“プルス plus”、という説が有力です。
でも、とうもろこしがアメリカ大陸からヨーロッパに伝わって北イタリアに広まったのは、18世紀以降のことなんですねー。
ということは、古代ローマ人が食べていたプルスは、現在のポレンタとは違うものだったわけです。
とうもろこしが伝わる前のポレンタは、空豆、スペルト小麦、大麦、あわ、そばなどの粉で作られていたそうです。


質素な庶民の食べ物として広まったポレンタですが、現代人にとっては、なかなかグルメな食べ物。
45分もかき混ぜ続けるという手間のかけ方は、現代では「贅沢」な部類ですよね。

ポレンタ作りは、北イタリアの田舎家で、薪をくべたかまどの前におばあちゃんがどかっと腰かけ、銅鍋の中の湯気の立ったポレンタをせっせとかき混ぜている・・・。
こんなイメージでしょうか。


まさにそんな動画をどうぞ。
作っているのはおじいちゃんですが。





このポレンタの作り方は、銅鍋に水4リットルを入れて沸騰させ、塩を加えます。
そこにとうもろこしの粉1㎏を加え、素早くかき混ぜてダマができないようにします。
火はずっと強火で、かき混ぜながら煮ます。
ポレンタが固まったら火を弱めます。
煮る時間は約45分。
お好みでさらに5~10分。
この間にブラザートを煮ておきます。
鍋を火から外したら、布をかぶせた木の台の上に裏返してあけます。
湯気が勢いよく立って、美味しそうですねー。


次の動画は、ポレンタの歌で無邪気に盛り上がる北イタリア人。
大人たちが、やたら楽しそうですよ。
イタリア風ジェスチャーが面白い!







調理時間が短いインスタントポレンタの粉が一般的な昨今。
こんなポレンタもあるんですねー。

翌日のポレンタに卵とパン粉をつけて揚げたコトレッタ風ポレンタ

ポレンタの一口ピッツァ

ポレンタのお弁当
ミートボールの上に花の形に抜いたポレンタをのせ、モッツァレッラの顔とバジリコの髪のファミリー(お父さんが2人?)。
その上は花の形に抜いたキュウリ、トマト、にんじんのサラダ。
ドレッシングはバルサミコ酢風味。
右はにんにくとパルミジャーノ入りブレッドスティックとぶどうとプルベリー。

これもポレンタのお弁当
なるほど、ポレンタはパスタやリゾットよりお弁当にしやすいんですねえ。

これもお弁当
なんとキリンが葉っぱをくわえてるー。



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2009年11月12日木曜日

ザッカニーニのクレマティス2002

モンテプルチャーノ・ダブルッツォのパッシートの話、その2です。

2008年版『パッシーティ・ディ・イタリア』で「最も感動的なパッシート」に選ばれたワイン、
クレマティス2002。

造り手は、アブルッツォの大手カンティーナ、ザッカニーニ(hpはこちら)。

年間生産量は、ハーフサイズのボトルで約4,800本。
貴重なワインですねー。

ぶどうはモンテプルチャーノ・ダブルッツォ100%。

ザッカニーニが市場の要望を受けて赤のパッシート造りを始めたのが90年代初めのこと。
まず最初は、カンノナウから“プレジール”というワインを造りました。
そして次に取り組んだのが、モンテプルチャーノのパッシート。
モンテプルチャーノのタンニンを征服して糖分でやわらげるのに、12年かかったそうです。

2002年のクレマティスは、世に出してから3度目のヴィンテージ。
それで早くもこんな評価を獲得したんですから、大したもんですねー。
いったいどんな味なんでしょうねえ。

『クチーナ・エ・ヴィーニ』のテイスティングによると、

「チョコレート菓子、オレンジピール、キノット、ブルーベリー、さくらんぼ、オレンジ、パイナップル、プラム、桑の実、紫のいちじく、タマリンドの香り」

「奥にバラの花、ヘーゼルナッツ、くるみ、デーツなどのドライフルーツ、マジパン、ヌガー、蜂蜜、プラリネ、カラメル、カルダモン、こしょう、ジュニパーの香り」

「花やスパイスの風味」

「石墨、粘土、コーヒー、甘草の洗練された香り」

があるんだそうです。

『パッシーティ・ディ・イタリア』の最優秀ワインに与えられる賞は、「最も感動的なパッシート」という名前です。
確かに、上質のパッシートは感動を与えてくれますよね。



ところで話は変わりますが、ザッカニーニって、変わった名前のワインを造ってるんですね。

イケバナ”と“ヤマダ”ですか。

イケバナは、モンテプルチャーノ・ダブルッツォのノヴェッロ。
ヤマダは、ペコリーノ100%の白ワイン。

ホームページには、
「“ヤマダ”とは日本語で“山の畑”という意味です」
と書いてありますねー。
ほほーお、なるほどー。
日本人でも気がつかなかった斬新な解釈!
そう説明されると、ワインの名前が“ヤマダ”であっても、そんなにおかしくないような気がしないでもないような・・・。
きっとイタリア語では、ヤマ~ダ、と言うんでしょうね。




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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年3月号
“モンテプルチャーノ・ダブルッツォ・パッシート”の記事の解説は、「総合解説」'07&'08年3月号、P.38に載っています。


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2009年11月9日月曜日

モンテプルチャーノのパッシート

今日はワインの話。
『クチーナ・エ・ヴィーニ』の解説です。

今日取り上げるのは、パッシートワイン。

パッシートとは、干して糖分を凝縮させたぶどうから造るワイン。
甘口と辛口があります。

甘口の代表的なパッシートは、パッシート・ディ・パンテッレリーアヴィン・サントなど。
他にも様々なものがあります。

辛口のパッシートの代表格は、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ
これ以外にはほとんどありません。



ヴィン・サント用ぶどうの天日干し, photo by Chris P.


パッシートワインを造るために8ヶ月間棚で干したマルヴァジーア。





このパッシートワインの格付け本が、2008年に『クチーナ・エ・ヴィーニ』から出版されました。
『パッシーティ・ディ・イタリア』という本です。
現在は2009年版が発売されています。

2008年版で、甘口、辛口、両方の中から、最優秀の「最も感動的なパッシート」に選ばれたのが、
コッリーネ・ペスカレージIGT・“クレマティス”2002
というワイン。

こう書くと全然ピンとこないですが、分かりやすく言うと、モンテプルチャーノ・ダブルッツォのパッシートです。

赤の甘口。
しかもモンテプルチャーノ・ダブルッツォの甘口です。


モンテプルチャーノは、サンジョヴェーゼと並んで中部イタリアの2大ぶどう品種の1つ。
その特徴は、多様性です。
上質な赤、手頃な赤、ロゼ、白、スプマンテと、何にでもなります。
当然、甘口ワインも・・・、と思うところですが、これがそうでもないようです。

モンテプルチャーノは、ポリフェノールが豊富で厚いタンニンのあるぶどう。
タンニンの多いぶどうから甘口ワインを造るのは、かなり大変なことなんだそうです。
タンニンの多いぶどうから造られるパッシートの甘口ワインというと、伝統的なものでは、モンテファルコ・サグランティーノ・パッシートあたりがありますが、他にはあまりありません。

アブルッツォでモンテプルチャーノのパッシートが造られるようになったのは、比較的最近のこと。
どの造り手も、試行錯誤を繰り返しながらチャレンジしているようです。
2008年の最優秀パッシートに選ばれた“クレマティス”も例外ではありません。
完成するまでに10年以上かかったそうです。


モンテプルチャーノのパッシートの話、次回に続きます。



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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年3月号
“モンテプルチャーノ・ダブルッツォ・パッシート”の記事の解説は、「総合解説」'07&'08年3月号、P.38に載っています。


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2009年11月6日金曜日

カッサータ・シチリアーナ

今日はカッサータの話。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。

カッサータと聞いて、何を思い浮かべますか?

ジェラート


カラフルでクラシックなシチリアのケーキ?


カッサータ・シチリアーナ, photo by paolovalde



それともナポリのカッサータ

カッサータ・ナポレターナは、Touling Club Italianoの『L'Italia dei dolci』によると、シチリアのカッサータに似ていますが、側面を緑のマジパンではなく砂糖のアイシングで覆ったり、表面を砂糖漬けフルーツで飾るのではなくチョコレートで覆ったりするのだそうです。
でも、どちらも同じもの、と言う人もいます。



はたまた、チェンテルベというリキュールをしみ込ませたアブルッツォのカッサータ


こちらは刻んだヌガーととチョコレートを混ぜたクリームをスポンジケーキに挟んだもの。
チェンテルベはアブルッツォの香草と薬草のリキュールで、アルコール度は70%。
リチェッタをいくつか見てみましたが、どれも薄めて塗るとは書いてないですねー。



色々あるカッサータですが、本家となると、やっぱりシチリアのカッサータ。


2008年から、『Il Pasticciere Itlaiano』誌の主宰で「アワード・デル・パスティッチェーレ」というコンクールが開催されています。
イタリア各州のパスティッチェーレがチームを組んで腕を競うというもので、2008年は20の州が参加しました。

競技の一つ、“ドルチェ・ティピコ・ロカーレ”は、伝統をきっちりと守ったアレンジを加えないドルチェを審査する部門です。
2008年にこの部門でシチリアチームが作ったのが、カッサータ・シチリアーナ。
そして“最高伝統リチェッタ賞”を受賞したそうです。



これがその時のカッサータ, photo by Mario Ragona



シチリアのカッサータの特徴は、いかにも南イタリア的なデコレーションですかね。

様々なカッサータ・シチリアーナ。

シンプル系カッサータ

これはパステル系

クリスマスのイメージでデコレーションしたカッサータ

ドーム型

アバンギャルド風?

カッサータのオレンジソースがけ

一人用のミニカッサータ

チョコレートコーティングのミニカッサータ

白カッサータ

赤ちゃんのためのベイビーカッサータ

ぬいぐるみのカッサータ!



パレルモのパスティッチェリーア・シモーネ(hp)のカッサータ作りの動画。
長いですが、プロの技をじっくりどうぞ。
途中でチラッと出てくるは、復活祭の子羊のドルチェ。
カッサータは春の食材を使った復活祭には欠かせないドルチェ。
お店の中も復活祭のドルチェで一杯ですね。








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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』'08年3月号
“カッサータ”の記事の解説は、「総合解説」'07&'08年3月号、P.31に載っています。


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2009年11月2日月曜日

羊乳のパスタ・フィラータ、ヴァステッダ

パスタ・フィラータの話をもう一つ。

羊のパスタ・フィラータを作っているところですよ~と写真を送っていただいたので、さっそくご紹介(Grazie Italiamamaさん!)。

シチリアには、イタリアでおそらく唯一の、羊のミルクを使ったパスタ・フィラータがあります。

“ヴァステッダ・デッラ・ヴァッレ・デル・ベーリチェ Vastedda della valle del Belice”というチーズです。

シチリア西部のアグリジェント、パレルモ、トラーパニの各県で作られている、DOPのフレッシュチーズ。

ちなみに、クレアパッソで前回配本の「総合解説」にも、このチーズの簡単な記事を載せています。
Italiamamaさんは、このチーズを作っているところを見てきたんですねー。



ヴァステッダ作り
ミルクが固まったらスライスして・・・


ヴァステッダ作り
湯かリコッタを作った後のホエイをかけて加熱しながら再び塊りにし・・・


ヴァステッダ作り
モッツァレッラのようにちぎってスープ皿のような陶器の型に入れます。


この後、チーズが乾いたら2時間塩水に漬け、さらに12~48時間乾かしたら完成です。
直径15~17㎝で、厚さは3~4㎝。
フレッシュなミルクの香り、甘さ、酸味のある味。



再び溶かしてから固まるまでの過程の動画






こちらはヴァステッダ用のミルクを熱しているところ。
のどかです。
家族で作ってるんですかね。
シチリアのフレッシュチーズ屋さんは、日本の豆腐屋さんのようなものでしょうか。


羊のミルクからパスタ・フィラータを作るのはとても難しく、ベーリチェ以外の羊のミルクでは、うまくできないのだそうです。


こちらもItaliamamaさんの写真。
ベーリチェ土着の品種、として連れてこられたのがこの動物なんだそうです。
これははたして、羊なのか?


ヴァル・ベーリチェの山羊



これがベーリチェの羊。
羊毛ではなく、ミルクを取るのが目的だと、羊もこんな姿になるんでしょうか。



おまけ。
“ヴァステッダ”とは形をあらわす言葉で、シチリアにはヴァステッダというフォカッチャもあります。
下の動画はパンのヴァステッダ。
ごまつきの、典型的なシチリアパンです。







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関連誌;『ア・ターヴォラ』2007年2月号
“ヴァステッダ・デル・ベーリチェ”の解説は、「総合解説」'07&'08年2月号、P.27に載っています。


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2009年10月29日木曜日

ミラノのナヴィーリ

今日はミラノの話。

『ヴィエ・デル・グスト』の解説です。


ミラノに行ったら、どこに行きますか?
まずはドゥオモとガレリアあたりでしょうか。
それと、プラダやグッチといったブランド店も外せない。
スカラ座に行く人もいますよね。
ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』もありましたねえ。
ミケランジェロの遺作があるスフォルツェスコ城やブレラ絵画館も有名。



ドゥオモ, photo by redbanshee


ミラノを訪れる人は毎年800万人以上。
でも、地中海の国イタリアにあって、そのほとんどが目的はビジネス。
ミラノ県のデータによると、中~上ランクホテルの宿泊客の平均滞在日数は、わすが1.8日だそうで。
しかもこの数字、徐々に短くなりつつあります。

ミラノを訪れる人は多いのに、みんなちゃちゃっと仕事をして通り過ぎて行くだけ・・・。

ミラノ県の観光課としては、ミラノにだって魅力的な場所がたくさんあるのに~と、悔しい思いをしている訳ですねえ。

そんなミラノの観光課もお勧めの、知られざる魅力の一つが“ナヴィーリ”です。


ナヴィーリとは運河のこと。
ミラノの左右を流れるアッダ川とティチーノ川から人工的に通した運河です。
12世紀から建設が始まり、レオナルド・ダ・ヴィンチが設計を試みたこともありました。

最も大きな運河はナヴィーリオ・グランデ。
かつては、運河に沿って貴族の別荘が立ち並ぶ瀟洒な地区だったのだそうです。

それが1930年代になって、船より車、という訳で、運河は次々と埋められて姿を消していきました。
今ではナヴィーリは、主にナヴィーリオ・グランデとナヴィーリオ・パヴェーゼを指す言葉となりました。

で、その運河沿いが、なかなか素敵な雰囲気なんですねえ。
レストランもたくさんあります。
一番有名なレストランは、エツィオ・サンティン氏のアンティカ・オステリーア・デル・ポンテですかね。


ちょっと音がうるさいですが、ナヴィーリの雰囲気を味わえる動画。






こちらはナヴィーリの様々な姿を紹介したフォトギャラリーのページ。
ミラノ近郊とは思えないような、静かな田園風景が広がっています。


ナヴィーリはミラノの中心部からは少し離れているので、1.8日の滞在ではちょっときついかも。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年3月号
“ミラノのナヴィーリ”の解説は、「総合解説」'07&'08年3月号、P.32に載っています。


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2009年10月26日月曜日

パスタ・フィラータのチーズ

今回もチーズの話。
『ア・ターヴォラ』の記事の解説です。


『ア・ターヴォラ』には、イタリアの個性的なチーズを毎月4種類ずつ紹介する記事が連載されています。
クレアパッソで現在配本中の号で紹介されているのは、“山のパスタ・フィラータ”。

“パスタ・フィラータ”というのは、イタリアではチーズに対してよく使われる名称なんですが、日本ではあまり知られていないような・・・。
そこで今回は、“パスタ・フィラータ”について、ちょっと解説。


パスタ・フィラータ pasta filata”は、直訳すると、「紡いだ生地」という意味。
普通チーズは型に入れるなどして成形しますが、パスタ・フィラータのチーズは糸を紡ぐように成形するところからこの名がつきました。


パスタ・フィラータのチーズの代表格は、モッツァレッラ。
カチョカヴァッロやスカモルツァ、プロヴォローネもパスタ・フィラータです。



モッツァレッラ・ディ・ブファラ, photo by Pabo76



カチョカヴァッロは変形版も多いですねー, photo by 2friends4cooking.com



スカモルツァ, photo by cyclingshepherd


プロヴォローネ



これらのチーズに共通している特徴は、生地が糸状にさけることと、溶けると糸を引くように伸びること。
この特徴が生まれる秘密は、その製法にあります。
牛乳に含まれるカゼインが特定の酸度と温度の元で起こす変化を利用したもので、イタリア独特のものなんだそうですよ。


少し長いですが、伝統的なカチョカヴァッロ作りの動画。
06:35あたりが、なるほど糸を紡いでいるみたいです。








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関連誌;『ア・ターヴォラ』2007年3月号
“山のパスタ・フィラータ”の解説は、「総合解説」'07&'08年3月号、P.29に載っています。


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2009年10月23日金曜日

パルミジャーノ・レッジャーノ

今日はパルミジャーノ・レッジャーノの話。

『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。

パルミジャーノ・レッジャーノは中世に誕生したチーズなんだそうです。
13世紀頃、乳牛の飼育が盛んだったパダナ平野の修道院で、大勢の巡礼者に食糧を提供するために作りだされた大型で日持ちのするチーズ。
それがパルミジャーノ・レッジャーノの最初の姿でした。

パルミジャーノ・レッジャーノ管理組合のキャッチフレーズは、「今も8世紀前と同じ製法で造られているチーズ」。
つまり、誕生した当初から製法が変わっていない、ということですね。


最初、パルミジャーノ・レッジャーノは8㎏程度だったそうです。
それが、この地域の農業の発展を象徴するように次第に大きくなっていき、15~16世紀頃には18㎏になりました。

21世紀の現在、パルミジャーノ・レッジャーノは何㎏だと思いますか?

平均38㎏です。



パルミジャーノ・レッジャーノ, photo by Claudio Cicali




ところで、パルミジャーノ・レッジャーノは、「パルマの」という意味の“パルミジャーノ”と、「レッジョの」という意味の“レッジャーノ”がくっついてできた名前。
つまり、「パルマのとレッジョの」という意味ですよね。
パルマとレッジョ・エミーリアの生産者組合が合併したのは、1934年のことなんだそうです。

ここでふと疑問が。

合併する前から、パルミジャーノ・レッジャーノという名前だったんでしょうか?
それともその前は、別の名前だった?

パルマ公国は1612年に“パルミジャーノ”の産地を公式に定めています。
これがイタリアで最初のDOPとも呼ばれている法律です。

14世紀に書かれたボッカチオの『デカメロン』にも登場するというこのチーズ。
後年に出版された版のこの本を見てみると、“フォルマッジョ・パルミジャーノ”と書いてあります。
古い料理書でも、“パルミジャーノ”だけの名称が多いようです。

『Grande Enciclopdia Illustrata della Gastronomia』によると、「いつの間にか自然と“パルミジャーノ・レッジャーノ”と呼ばれるようになった」となっていますが、いつ頃かは書いてないですねえ。

“パルミジャーノ”だけでなく“レッジャーノ”もつけたということは、レッジョの生産力がパルマに匹敵していたからなんでしょうね。
すぐ後の1937年には、モデナ、ボローニャ、マントヴァも管理組合に加わりましたが、チーズの名前が“パルミジャーノ・レッジャーノ・モデニアーノ・なんたら”となることはなかった訳です。


“パルマとレッジョの”という意味のチーズですが、世界中でこの名をつけた別の場所で造られたチーズが出回っているのも事実。
管理組合では、“パルメザン”という名称を使われることにも異議を唱えています。



何だこれは!
パッパッパッ、パッパルミジャーノ?






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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年3月号
“パルミジャーノ・レッジャーノ”の記事の解説は「総合解説」'07&'08年3月号、P.27に載っています。


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2009年10月19日月曜日

カルロ・クラッコの卵料理

一流シェフが作るビックリ卵料理の話、その2。
『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事の解説です。


ミラノのアルタ・クチーナを代表するシェフで、マルケージチルドレンの一人、カルロ・クラッコ氏。
この人はいつも超斬新な料理を作りますが、今回の卵料理もやってくれてます。

卵料理というテーマで彼が披露したのは、まずは「マヨネーズのラヴィオリ」。
なんと、ラヴィオリの詰め物がマヨネーズ、という一品です。

これです。

かなりシュールな外見の一品ですねー。

どこからつっ込んだらいいのか迷いますが、まずはパスタから。

この、テニスボールのような黄色いのがラヴィオリです。
パスタは00番の小麦粉がベースで、卵黄をたっぷり加えて鮮やかな黄色を出しています。
この生地を薄く伸ばし、その上に、普通のラヴィオリのようにマヨネーズを絞り出します。
そしてサルサ・ヴェルデと乾燥ケッパーをトッピングし、生地をかぶせて丸く抜きます。
これを熱湯で30秒ゆでてから、オリーブオイルと水少々で炒めます。

確かにマヨネーズは卵料理と言うことになるんでしょうが、パスタの詰め物がマヨネーズって、普通はちょっと思いつかないですよねえ。
きっと、マヨネーズに相当自信があるに違いありません。


そしてラヴィオリの周囲を覆う黒い粒々。
これ、バジリコの種なんだそうです。
種を野菜のブロードで煮てソースにしています。

それにしてもすごい数。
これだけたくさん種を食べたら、一つぐらいお腹の中で発芽しそうですねえ。


そして仕上げが、ソースにトッピングされているオレンジ色のもの。
これ、ウニです。

マヨネーズにウニに種ですよ。
いったいどんな味なのか、想像できるような、できないような・・・。
うーん。

なんだかかなり無謀な料理のように見えますが、これ、ミラノのトップクラスのレストランの料理です。
ミシュランでは2つ星、ガンベロ・ロッソでは3フォルケッタですから。

店のhpはこちら

このマヨネーズのラヴィオリは、少し違うバージョンのものが26ユーロ。
もちろん、マヨネーズにこの値段を払っても怒らない人が行く店です。


カルロ・クラッコ氏の料理は、これに限らず、どれもとても骨太な外見をしていて、はっきり言って見た目はそんなに美味しそうじゃないんですねー(言ってしまった~、ゴメンナサイ)。
でも、とにかくその筋の人たちには評価が高い。
実はこの人の料理、見た目は大ぶりなのに、その裏に駆使されている技術は、想像を超えた複雑さなんです。
そして、分かる人には分かる知的な遊び心が、チラチラ隠されているんですねー。


卵料理の特集で彼が披露したもう一つの料理は、「卵黄だけで作った小麦粉の入らないパスタのカッペッレッティ」。

パスタの材料は卵黄です。
卵黄がどうすればパスタになるのか。
そもそも、卵黄だけでパスタを作ろうとなぜ思う!

実は、卵はカルロ・クラッコ氏の料理のシンボルとも言える食材なんだそうです。
卵黄のパスタは卵黄のマリネから作るのですが、これは彼のスペチャリタとして知られています(これがそう)。
逆に、卵黄を加えないタリアテッレというのまで考え出しました。
まったく、とどまるところを知らない発想力の持ち主です。


カルロ・クラッコ氏はこんな人。






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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年3月号
カルロ・クラッコの“マヨネーズのラヴィオリ”と“卵黄だけで作ったパスタ”のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年3月号、P.12に載っています。


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2009年10月15日木曜日

イタリアにもこんな卵料理があった

前回は、この20年でイタリアの家庭料理が少しずつ変化していった過程をちらっと紹介しました。
家庭料理でもこんなに新しいものを取り入れているくらいですから、レストランの世界では、もっとすごいことになってます。

今回紹介するのは、『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事から、
「てっきりイタリアにはないと思い込んでいたのに実はある」卵料理
です。
日本ではお馴染みの卵料理も、イタリアの理科系シェフの手にかかるとこうなる!


まず1つめは、「温泉卵」。

日本と同じように温泉の湧くイタリア。
確かに、温泉卵があっても不思議じゃない。
でも、想像もしなかったですねー、イタリアンの温泉卵って。

イタリアでも「この温泉に卵を浸すと1分でゆで卵になる」というような話はあります。
でも、日本のように、温泉に浸して半熟状態にした卵、というのは聞いたことなかったなあ。


このイタリア版温泉卵は、バーニョ・ディ・ロマーニャという温泉の町のシェフ、パオロ・テヴェリーニ氏のスペチャリタ。

バーニョ・ディ・ロマーニャを日本語にすると、ローマ風呂ならぬロマーニャ風呂。
ロマーニャ地方の南の端にある素敵な町です。
イタリア式エステを受けて、温泉に入って、美味しいもの食べて・・・。
そんなひと時を過ごせますよー。






テヴェリーニ氏の店のhpはこちら
ホテル、エステ、レストランが一つになったゴージャスな場所です。
彼はイタリアのエステ系レストランでは有名なシェフ。

レストランのメニューを見ると、前菜に、「温泉卵、アスパラガスとチンタ・セネーゼ豚のパンチェッタ添え」(26ユーロ)というのがありますねー。
お値段もゴージャス。
きっとセレブな温泉卵なんでしょうねえ。
大きな写真がないのが残念ですが、これも彼の温泉卵の1バージョン。
黒トリュフがけです。

彼の温泉卵のリチェッタは、63度の温泉で1時間ゆでるというもの。



次は、「鶏のきんかん」。
果物の金柑のような、殻ができる前の卵ですよね。
鶏のきんかんの煮物

何の根拠もなく、イタリアには鶏のきんかんはないと思い込んでいました。
でも、あったんですねー。
イタリア語では、“ウオヴァ・エンブリオナーリ uova embrionali” と言うらしいです。

鶏のきんかんを使った料理を披露したのは、モデナの有名店、オステリーア・フランチェスカーナのマッシモ・ボットゥーラ氏。

なんと、去勢鶏のブロードでゆでたきんかんの中身を注入器で吸い取って、代わりに生ハムの骨から取ったブロードを注入するという、科学の実験のような方法で、見た目はきんかん、ところが中は豚骨スープ、という驚きの一品を披露しています。

スプーンの上にのせたその姿は、どう見てもきんかんそのもの(写真は「総合解説」に載せました)。
この写真は、ボットゥーラ氏が鶏のきんかんを見せているところ。
これは、そのきんかんを、パルミジャーノの代わりにミモザ状に散らしたインサラータ。
ソースはなんと、イワシのコラトゥーラとバルサミコ酢というフュージョン料理です。


食通たちを引き寄せるオステリーア・フランチェスカーナ(hpはこちら)の料理






卵料理の話、次回に続きます。


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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年3月号
ここに紹介した温泉卵ときんかんのブロード詰めのリチェッタは、「総合解説」'07&'08年3月号、P.11に載っています。


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2009年10月13日火曜日

イタリア料理のトレンド

現在クレアパッソで配本中の『サーレ・エ・ペペ』は、創刊20周年号。
この20年に、イタリアではどんな料理がブームになったのかを振り返っています。

日本のように流行を国民総出で追いかけるのは好きではないように見えるイタリアでも、やっぱり流行ってあるんですねえ。

イタリアでは、過去にどんな料理が流行っていたのか。
あーそうそう、なんて料理があったりして、なかなか面白いですよ。
ちょっと見てみると・・・


★1987年 いちごのリゾットが話題に。

あったあった!
懐かしい~。
この頃、フルーツを甘くない料理に使うというのが流行りました。

日本では国鉄が分割民営化され、安田火災がゴッボの「ひまわり」を53億円で落札した年。
大韓航空機爆破事件もありました。



★1989年 ルーコラが大人気。

イタリアでルーコラがブームになったのは、この頃だったんですねえ。
これ以来、何にでもルーコラを山盛りにのせる人が続出。



ブレザーオラとルーコラのピッツァ, photo by avlxyz


日本は平成元年。
この年を最後にバブルがはじけます。
世界では、ベルリンの壁が崩壊。



★1991年 イタリア料理の帝王、グアルティエロ・マルケージの全盛期。

1986年にイタリアで初のミシュラン3つ星店となったミラノのマルケージ。
ファッショナブルで、それでいて哲学的なメッセージも詰まった彼の料理は、イタリア料理がフランス料理にも匹敵する高級料理になる、ということを、イタリア自身と世界中に認識させたのでした。

代表作の金箔とサフランのリゾット


日本では東京都庁が西新宿に移転。
12月にはソビエト連邦が崩壊。



★1997年 バルサミコ酢がブーム。

料理の仕上げにバルサミコ酢を加えれば、見た目もワンランクアップ。
名前に「all'aceto balsamico」とついた料理が続々登場。



去勢鶏の胸肉、トラディツィオナーレ・ディ・モデナのバルサミコ酢がけ, photo by hotelrealfini


香港が中国に返還され、ダイアナ元皇太子妃がパリで事故死した年。



★1999年 みんな大好き、ダブルバーガー!

やっぱりイタリア人もファーストフードは好きだった。
1986年にローマのスペイン広場にマクドナルドのイタリア2号店がオープンした当時はさんざん叩いていたイタリア人。
でも今や、イタリア中に340店舗あります。
ちなみに、ダブルバーガーは、イタリア語ではdoppio hamburger。


欧州連合でユーロが導入された年。



★2002年 エスニック料理ブーム。

まずレストランのエスニック料理が注目され、次第に家庭料理にも取り入れられていきました。
今や日本料理は、エスニック料理を代表するものの一つになりましたねえ。


日本では北朝鮮に拉致された5人が帰国。



★2005年 フュージョン料理ブーム。

記事では、パスタの代わりにギリシャのフィロ生地をパッケリに見立てて具を包んだ料理を紹介しています。
イタリア料理とそれ以外の要素の融合ですね。


法王ヨハネ・パウロ二世が死去し、ドイツ人の法王ベネディクト16世が誕生。
北京で反日デモ激化。



こうして見ると、ルーコラやバルサミコ酢など、イタリア料理の定番スタイルと思っていたものが、比較的最近生まれたトレンドだったのだと気が付きます。
この他にも、オールドアメリカスタイルのブーム、ベジタリアンブーム、スペイン料理ブームなど、まだまだあります。
イタリア料理の懐もだいぶ深くなってきているようですねえ。



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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年3月号

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2009年10月8日木曜日

ローマのカルボナーラ、ベスト10

今日は、以前に何度か紹介した「ローマのカルボナーラ、ベスト10」の話。

このランキングはガンベロ・ロッソが発表したものなんですが、その詳細が、ちょうど今、クレアパッソで配本中の号に載っています。

それによると、ローマのカルボナーラが美味しい店、ベスト10は、こうなっています。
どれも人気の有名店で、ローマでレストラン選びに迷った時の参考にもなりそうです。
解説文の中に“ジャンナットーニ氏”という名前が出てきますが、この人はローマについて多数の著書があるジャーナリストで、ローマの伝統料理を集めた有名な料理書も書いています。


■1位 ロッショーリ Roscioli
via dei Giubbonari 21, tel/066.875.287(hpはこちら

卵からこしょうに至るまで上質の素材を使用。13ユーロ。

以前にも紹介しましたが、ロッショーリのシェフが語るカルボナーラの動画



近くにパンや総菜を売る店も出していて、こちらも大人気, photo by Pabo76


■2位 ラルカンジェロ L'Arcangelo
via G. G. Belli 59, tel/063.210.992

正統派で完璧なカルボナーラ。グアンチャーレが最高。14ユーロ。


■3位 アル・プレジデンテ Al presidente(hp
via in Arcione 95, tel/066.797.342

ゆで汁を加えてするマンテカーレが絶妙で、パスタの歯ごたえとソースの濃さが完璧。


■4位 グラッポロ・ドーロ Grappolo d'Oro
piazza della Cancelleria 80, tel/066.897.080(hp

パスティフィーチョ・セターロのスパゲッティとノルチャの美味しいグアンチャーレの幸せなマリアージュ。7.50ユーロ。


■5位 フェリーチェ Felice
via Mastro giorgio 29, tel/065.746.800

ショートパスタとクリーミーな卵のソースの本物のローマの伝統のカルボナーラ。8ユーロ。


■6位 ソーラ・レッラ Sora Lella
via di Ponte Quattro Capi 16, tel/066.861.601(hp

軽いのにコクのあるカルボナーラは店の人気の定番料理。16ユーロ。


■7位 クイント・クアルト Quinto Quarto
via della Farnesina 13, tel/063.338.768(hp

フィリッポ・サンタレッリ版カルボナーラは、パスタはリガトーニでグアンチャーレはカリッと炒める。オリーブオイルは使わない。
8ユーロ。


■8位 オスタリーア・ロマーナ Hostaria Romana
via del Boccaccio 1(angolo via Rasella), tel/064.745.284

客の前でボールに入れたパスタをマンテカーレする、ジャンナットーニ氏が本物と認めるスタイル。食材に余計なものは加えないが味は折り紙つき。9ユーロ。


■9位 ラ・カルボナーラ La Carbonara
piazza Campo de' Fiori 23, tel/066.864.783(hp

ジャンナットーニ氏によると、“現代版”カルボナーラを作った最初の店。ペンネを使用し、食材の分量も完璧なバランス。11ユーロ。

ラ・カルボナーラのペンネのカルボナーラ


■10位 ダ・ダニーロ Da Danilo
via Petrarca 13, tel/0677.200.111(hp

クラシックバージョンの他に、夏はズッキーニ入りのオリジナルカルボナーラも出す。スパゲッティのマンテカーレ具合が完璧。8ユーロ。




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2009年10月5日月曜日

フィレンツェのマンマ・ジーナ

前々回のリボッリータの話の時、フィレンツェのレストラン、マンマ・ジーナのリチェッタを紹介しました。

その店に、去年の10月に行ってきましたよ~というコメントを写真と一緒にいただきました(Grazie italiamamaさん!)。

どれも美味しそう~。
italiamamaさんのコメントと一緒にどうぞ。

リボッリータ

「昨秋の10月、フィレンツェ近郊の友人宅へオリーブ摘みに出かけ、帰りがけにマンマ・ジーナへ寄りました。
ちょうどリッボリータを食べてきました。
リチェッタにあるようにオーブンに入れてはありませんでしたが。
いかにもトスカーナの家庭料理といった味で、大好きです」



豆のサラダ

「Contornoとして注文したお豆のサラダ(カンネリーニが映っています)」



ポルチーニのフリット

「ポルチーニのフリット。
なぜかミラノ風オッソブーコも頼んでしまいましたが、これもおいしかったです。
雰囲気もアットホームで、日本人の方にも喜ばれるお店です。
すぐ近くに、Cinghiale Bianco などおいしいトラットリアが軒を連ね、食事時にはお薦めの場所です」



おー、このポルチーニのフリット、なんて肉厚!
そしてなんて山盛り!
胃袋を万全に整えてから行かないと。


マンマ・ジーナの場所は、こちら
ポンテ・ヴェッキオを渡って最初の道を右に曲がって少し行った所ですね。

italiamamaさんのコメントにあるオステリーア・デル・チンギアーレ・ビアンコは、そのすぐ先です。
店のhpはこちら
店の名前は「白い猪」という意味。
「猪肉のマレンマ風」という名物料理があります。


あーフィレンツェに行きたくなってきたー。

おまけの動画です。
ポンテ・ヴェッキオ



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2009年10月3日土曜日

パーネ・トスカーノ

リボッリータの話、その3です。

今日は、リボッリータに使われるトスカーナの名物食材の1つ、パーネ・トスカーノの話。



パーネ・トスカーノ, photo by fugzu


形は、ボッツァ(円形)、フィローネ(バゲット形)、チャバッタ(長方形)のタイプがあります。


写真で見ると、まあ典型的な田舎パン、ぐらいにしか見えない。
でも、食べてみればすぐに分かるんですよね、あの味。

塩気がない。

パーネ・トスカーノは、別名、パーネ・ショッコとも呼ばれます。
ショッコとは、「まぬけな」とか「あほな」という意味。
だから、あまりフォーマルな席では、パーネ・ショッコと言うのはやめといたほうが無難ですよ~。
「塩気がないパン」をフォーマル(笑)に言うなら、パーネ・シャーポ pane sciapo ですかね。


まぬけな味のパーネ・トスカーノも、慣れてしまうと、逆にバターたっぷりのパンに抵抗を感じるようになるから不思議なもの。
たとえて言えば白いご飯のようなもので、「ご飯にバターをのせたりするのは邪道だあ」という感じと似てますかね。

でも、塩気のないパーネ・トスカーノは、「塩気があるのは邪道」という考えから誕生したわけではないんですねー。
しょうがなく塩気がなくなってしまったんです。

その原因となったのが、フィレンツェとピサの戦争。

時は12世紀。
フィレンツェのライバルのピサは、海辺の町です。
一方、フィレンツェに海はありません。
そこでピサは、港に入った塩をフィレンツェには流さないという戦略を取ったんですねー。
その結果、フィレンツェでは塩の値段が跳ね上がりました。
あまりに高価になったので、とうとうパンに入れることができなくなってしまったんです。
こうして生まれたのが、塩気のないパン、パーネ・トスカーノでした。

塩が安く手に入るようになっても、パーネ・トスカーノは残りました。
フィレンツェの食生活との相性が相当良かったんでしょうね。
リボッリータだけでなく、パッパ・アル・ポモドーロやパンツァネッラから、クロスティーニや朝食のパンに至るまで、あらゆるものにパーネ・トスカーノが使われています。
それどころか、最近では健康のための減塩を意識する人も増えて、理想的なパン、と言わることもあるようです。


パーネ・トスカーノは、0番の小麦粉、天然酵母、水が材料。
一度発酵させてから、再び小麦粉と水を加えて発酵させます。
このパンのもう一つの特徴は、薪で焼くこと。
塩気がない分、薪の香りが重要なポイントとなるんですね。


パーネ・トスカーノ作りの動画
薪で200度に熱した窯で焼きます。




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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年3月号
“リボッリータ”のリチェッタは「総合解説」'07&'08年3月号、P.5に載っています。


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2009年10月1日木曜日

リボッリータの食材

リボッリータの話、その2です。

リボッリータには、トスカーナならではの食材が3つ入っています。

カーヴォロ・ネロ(黒キャベツ)

カンネッリーニ(小粒の白いんげん)、

そしてパーネ・トスカーノ(塩気のないパン)


カーヴォロ・ネロは、結球しないキャベツで、黒ずんだ色をした、縮れた細長い葉。

イタリアでは、キャベツは最初の霜が降りた後に美味しくなると言いますが、この黒キャベツも、旬は冬の時期。
でも、一年中出回っています。
味は普通のキャベツより強く、加熱時間は長め。
カーヴェロ・ネロを使った一番有名な料理が、このリボッリータですかね。


下の動画は「カーヴォロ・ネロ入りファリナータ」
リボッリータと同じく白いんげん(ピアッテッリーノというカンネッリーニより大粒の品種)とカーヴォロ・ネロが入るのですが、チェーチの粉を加えて濃いクリーム状にした一品。
もちろんトスカーナ料理。
ラルドがたっぷり入ってますねえ。
豚皮も入れます。






リボッリータに使う白いんげんは、カンネッリーニという小粒の品種です。
イタリアでは缶詰に使われる最も一般的な白いんげんで、トスカーナ原産。

そもそもいんげん豆は、アメリカが原産地ですよね。
ヨーロッパに伝わったのは16世紀だから、それ以降に造られた品種なんですね。
ちなみに、アメリカからいんげん豆が伝わるまでイタリアで一般的だったのは、アフリカ原産の黒目豆。

カンネッリーニは皮が薄くて小粒なので、加熱時間が短いのが特徴。

トスカーナ人は、昔から豆好きで有名。
イタリアで、豆を食べる人のシンボルになっているのが、この絵
アンニバーレ・カッラッチ作、“マンジャファジョーリ”です。
この絵の農夫が食べているのは黒目豆のようですね。
この絵が描かれたのは1583年だから、まだカンネッリーニはなかったのかも。



黒目豆もあります, photo by pikimota



3つめの食材、パーネ・トスカーノの話は次回に。


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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年3月号
“リボッリータ”のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年3月号、P.5に載っています。


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2009年9月26日土曜日

リボッリータのリチェッタ

今日も、もうすぐ配本予定の「総合解説」から。

『サーレ・エ・ペペ』の記事の解説で、リボッリータの話です。


リボッリータは、豆と野菜のごった煮スープで、トスカーナの庶民料理の定番の一つ。

『サーレ・エペペ』の記事にも、
「トスカーナのトラットリーアやオステリーアなら必ずメニューに載せている」
とあります。



シエナのレストランのリボッリータ, photo by foreverdigital


こちらはフィレンチェの小さなトラットリーア『ラ・タヴェルナ』のリボッリータ。
この写真を撮ったlife on glassさんによると、この店のリボッリータ、お勧めだそうですよ。


リボッリータとは、直訳すれば、「再び(リ)煮た(ボッリータ)」という意味。
この名前から想像するのは、前日に作ったスープを翌日に煮直したものですよね。
レストランでも前日に作ったものをもう一度煮て出しているのかなあ、なんて疑問に思うことないですか?

実は、リボッリータの“2度目”は、煮るのではなく、オーブンで焼くんですねー。

フィレンツェで伝統的なリボッリータを出している店のリチェッタを見てみましょうか。

ポンテ・ヴェッキオの近くにある有名店、「マンマ・ジーナ」。
この店のリボッリータは、イタリア料理アカデミーのフィレンツェ支部が初めて公認したリボッリータとして知られています。

店のhpはこちら

hpではリボッリータのリチェッタも公開しています。
こちらのページの中ほど。
それを訳してみると・・・


リボッリータ Ribollita
材料/6人分
 硬くなった田舎パン・・300g
 乾燥白いんげん・・400g
 カーヴォロ・ネロ・・1個
 縮緬キャベツ・・小1/2個
 ビエトラ(ふだん草)・・3把
 じゃがいも・・2個
 にんじん・・2本
 セロリ・・2本
 玉ねぎ・・2個
 トマトペースト・・大さじ1
 オリーブオイル
 塩、こしょう

・2リットルの水に豆を入れてゆでる。豆を取り出し、約3/4を裏漉ししてゆで汁に戻す。
・玉ねぎ1個のみじん切りをオリーブオイル大さじ8で炒める。玉ねぎがしんなりしたらトマトペーストを湯かブロードで溶いて加える。
・ここに、輪切りにしたにんじんとセロリ、細く切ったビエトラと2種類のキャベツ、厚い輪切りにしたじゃがいもを入れて塩、こしょうをし、蓋をして数分煮る。
・裏漉しした豆をゆで汁ごと加えてじっくり煮る(約1時間)。
・野菜に十分に火が通ったらスライスしたパンと裏漉ししていない豆を加え、10分煮て火を止める。
・かき混ぜて粗熱を取る。
・ズッパを耐熱皿に入れて玉ねぎの薄い輪切りを散らす。こしょうと油をかけ、高温のオープンに入れて玉ねぎに焼き色がつくまで焼く。
・数分休ませてからサービスする。



どうやら一晩置いておく訳ではないんですね。

リボッリータにはトスカーナならではの食材がいくつか使われています。
次回はその話です。



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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年3月号
“リボッリータ”のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年3月号、P.5に載っています。


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2009年9月18日金曜日

ラルド

まずは、クレアパッソの定期購読ご利用の皆様へ。

もうすぐ次号を配本の予定です。
現在、馬力をかけて総合解説の最終仕上げを行っておりますので、もう少しお待ちくださ~い。


今日はその、もうすぐ配本号の総合解説から。


『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の「グルメ紀行」で紹介しているのは、アルト・アディジェのヴァル・ダヤスという渓谷です。

モンテ・ローザのふもとにあって、周囲には標高4,000mを超える山もあります。
なんでも、モンテローザスキーエリアという巨大なスキー場(?)の一部なんだそうで、ウインタースポーツが好きな人ならご存知かも。



ヴァル・ダヤスの乳牛, photo by kenyai
気持よさそう~


ヴァッレ・ダオスタの料理の話をする時、必ず登場するのが、“アルナのラルド”と“モチェッタ”。
今回の記事でも、たいていのレストランが、これらを前菜のメニューに載せています。

モチェッタは、元々はアイベックス(エイベックスじゃないですよ~)というアルプスに棲む山羊の一種のもも肉を干した生ハムのようなものですが、今は鹿やカモシカなどから作っています。



モチェッタ, photo by Rubber Slippers In Italy



ラルドは、豚の皮のすぐ下の脂身を塩やスパイスで漬けたもの。
ラードじゃないですよ~。
ちなみに、ラードはイタリア語では“strutto(ストゥルット)”。


今回は、ラルドの話。

ラルドというと、大理石の桶で漬けるコロンナータ(トスカーナ)のラルドも有名ですが、アルナのラルドは、木の桶で漬けます。
ヨーロッパで唯一のDOPのラルド。

アルナのラルド



コロンナータのラルド, photo by Claudio Cicali




アルナのラルドと蜂蜜のパニーノ, photo by Rubber Slippers In Italy


こうやっておしゃれな料理になっている姿を見ると、一瞬、これが豚の脂身だということを忘れてしまいそうですねえ。

メタボだなんだと動物性脂肪は嫌われがちな昨今、体脂肪を気にしながらも、あえて豚の脂身を食べるというのは、食通の意地というか、さがと言うか。
一見地味な食材のラルドですが、イタリア料理史上の様々な食通が、ラルドについて語っています。

中でも、教皇の料理人だった16世紀の人、バルトロメオ・スカッピが語った言葉は、ラルドの本質をついたもの。

「ラルドは、農家ではなく、森で育てた雄の若い豚から取ったものでなくてはならない」

なるほど、豚の脂身なら何でもいいわけじゃないんですね。

実はラルドは、昔のイタリアの農民に取っては、とても身近な食材でした。
農家では、豚を捌いたら、保存のきかない血や胸肉を食べて盛大な宴会をしました。
ももは、物々交換の材料や小作料の代わりになるので、滅多に食べることはできません。
サルシッチャやコテキーノ、ロース肉は、ある程度保存することができました。
そして、ほぼ一年間保存することができたのが、少量のサラミ、ラード、そしてラルドです。
ラードは、ラルド以外(皮の下以外)の脂身で締まっていない部分から取りました。


保存ができたとは言え、それは最低限の食料としてのラルドのこと。
食通が選ぶ上質なラルドの条件は、締まっていて塩分が少なく、新鮮なものです。

ペッレグリーノ・アルトゥーシは、
「揚げ油は、トスカーナでは植物油、ロンバルディアではバター、エミリア地方ではラルドが使われる。
エミリア地方のラルドは真っ白で身が締まり、ローリエの香りのするとても上質なものだ」
と書いています。
ビスケット生地を作る時も、バターの半量は溶かしたラルドにするとよいと言っています。

イタリアでも、豚の背脂は、消費の傾向に合わせてどんどん薄くなっていく傾向があるようです。
ラルドは今後、生き残っていくのでしょうか。



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クレアパッソからもう一つ、ご連絡です。
ドルチェの本についてご質問いただいた方、メールアドレスをお知らせくださればご返信いたします。
ご質問等、いつでもお気軽にどうぞ。



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2009年9月15日火曜日

パルマとサン・ダニエーレ以外の生ハム

パルマとサン・ダニエーレの生ハムの次は、それ以外の生ハムの話。


イタリアでは、北から南まで、各地で生ハムが作られています。

上記の2つ以外で有名なのは、

ヴェネト・ベリコ・エウガネオ
モデナ
トスカーノ
カルペーニャ
ジャンボン・ド・ボス
(ここまではDOP、つまりヨーロッパ諸国公認の産地呼称)
ノルチャ
サウリス
(これらはIGP、つまりイタリアの法律によって保護された地域表示)
といったところ。


プロシュット・ヴェネトは、軽くプレスして作るタイプ。
フレッシュな味で、ぶどうや桃との相性がばっちり。
シンボルマークは羽根のついたサン・マルコのライオン。


モデナの生ハムは、パルマのお隣で作られていて、パルマの生ハムとほぼ同じ。
調和が取れた味をしています。


この写真の左の生ハムはプロシュット・トスカーノで、右はサン・ダニエーレ。
プロシュット・トスカーノは黒ずんだ色をしていますねえ。
肉も赤みの強い色をしています。
トスカーナ地方の香料を加えているのが特徴で、きりっとした塩気があります。
塩気のないパーネ・トスカーノによく合いますよね。
一般的に、イタリアの中~南部の生ハムは、北部のものよりやや辛口です。


プロシュット・トスカーノ造りの動画。






カルペーニャの生ハムは、マルケの生ハム。
グリッシーニに巻きつけたりして、果物などとは組み合わせずに食べるのがお勧め。
脂身も適度に付けてスライスして、あまり冷やさずに、口の中で溶ける脂身の風味も味わいます。

カルペーニャの生ハムの管理組合のhpに、「生ハム上手に切れるかな?」ゲームというのがありました。
なかなか難しいですよ~。

こちら

「play」をクリックすると、まず包丁が3種類出てくるので、生ハムを切るのに最適のものを選んでください。
間違えたらもう一度選びます。
次に包丁を持ちます。
もつ場所を間違えるとやり直し。
正しい場所を持ったら、さあカット!
上手にカットするコツは、包丁を入れたらぎこぎこ動かさずに、一気に切ることのよう。


ジャンボン・ド・ボスは、ヴァッレ・ダオスタの生ハム。
ヨーロッパでもっとも標高の高い場所(1,600m)で作られているDOPの生ハムなんだとか。
足付きで、軽くプレスしてあります。
野趣のある味で、香草の風味やほろ苦さも。
バターを添えると甘みを感じます。
生産量が少ない生ハム。


ジャンボン・ド・ボスの産地、サン・レミ・アン・ボスはこんな町。
とにかくのどかです。





ノルチャの生ハムこんな姿
カットの仕方によって、“ヴィオロンチェッロ”(チェロ)と呼ばれる独特の三角形をしています。
塩漬けするときに、バルサミコ酢、こしょう、スパイスも加えます。
原料の豚肉が外国産の場合もあるために、DOPではなくIGP製品。
熱いパンのクロスティーニにバターを塗ったものを添えてどうぞ。


サウリスの生ハムは、フリウリ産で、イタリアで唯一、軽くスモークする生ハムです。
サウリスはフリウリでもっとも標高の高い場所にある町(1,212m)で、周囲をアルプスの山々に囲まれています。
かつては、冬になると雪で閉ざされて外部との交通手段がなくなる、いわゆる山の孤島でした。

この町が有名になったのは、14世紀にヨーロッパ全土がペストに襲われた時。
この時、サウリスはペストの影響をまったく受けませんでした。
外部との接触が断たれた環境が幸いしたのかもしれません。
偶然、その数十年前に、イギリス人の巡礼によって、サウリスにある聖人の遺体の一部がもたらされていました。
そこで、ペストの被害を受けなかったのは、その聖人のご利益だという噂が広まり、それ以来サウリスは巡礼地となって多くの人が訪れるようになったのだそうです。

冬の間は暖炉の周りに集まって暮らすサウリスでは、薪が燃える香りが、家の壁にしみ込んでいるのだそうです。
そんな環境で、スモークする生ハムはきっと自然に生まれたんですね。
スモークは熟成の前に行います。






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2009年9月11日金曜日

サン・ダニエーレの生ハム

生ハムの話、その2です。


これはパルマの生ハムのマーク。



出来上がった生ハムに最後に押される焼印です。
とんがりが5つついた、パルマの大公の王冠がデザインされています。


そしてこれは?



生ハムに足が付いているからすぐに解りますねー。
サン・ダニエーレの生ハムのマークです。


サン・ダニエーレは、イタリアの北東の端、フリウリ=ヴェネチア・ジューリア州のほぼ中央にある町。
中世の姿を残していて、ドイツやスイスの雰囲気も感じられます。
丘の上にある町で、北からはアルプスの涼しい風、南からはアドリア海の暖かい風が吹いてきます。
乾燥と湿気、これが生ハム作りの大切な要素です。


サン・ダニエーレの生ハム作りの動画をどうぞ。
この生ハムの特徴は、塩をまぶしたももを積み重ねて、ももの重みでプレスしながら塩漬けする点。
サン・ダニエーレの生ハムにのみ行われている方法です。
製造期間はトータルで最低13ヶ月。
うち自然熟成は8ヶ月以上。






サン・ダニエーレの生ハムは、塩分が比較的少なく、デリケートな味で、切るとすぐに香りが広がるのが特徴。

サン・ダニエーレで生ハムの工房を探すなら、他の建物より窓の数が多くて、窓の形が細長いものを探せばすぐに見つかるそうです。
熟成室の空気の通りを、この窓で調整するんですねー。



次回はパルマとサン・ダニエーレ以外の生ハムの話です。



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2009年9月7日月曜日

生ハム

いちじくの話をしたら、次は生ハムですかね。



いちじくとバジリコの生ハム巻き、オリーブオイルとヴィンコットがけ
photo by avlxyz


生ハムも、イタリアが世界に誇る食材の一つ。

生ハムはイタリア語で prosciutto crudo(プロシュット・クルード)。

prosciuttoとは、俗語ラテン語の“perexuctus”(水分を欠いた)が“presciutto”(プレシュット)になり、そこに“proexsucatus”(乾燥させた)から変化した“prosciugato”(プロシュガート)という言葉が組み合わさって生まれた言葉。

プレシュット+プロシュガート=プロシュット

プロシュットだけでは、まだハムか生ハムか分かりません。
これに crudo(クルード)がついたら生ハム。
cotto(コット)がついたらハム。

でも、リチェッタにはプロシュットとしか書いていないこともあって、生ハムなのかハムなのか、はっきりさせてくれ~と思うこともしばしば。


生ハムは、北から南まで、イタリアのあらゆる地方で作られています。
中でも特に有名なのは、パルマの生ハム。

次に有名なのが、サン・ダニエーレの生ハム。

パルマの生ハムとサン・ダニエーレの生ハムでは、何が違うんでしょうか。

最大の違いは外見。
比べてみてください。

パルマの生ハム

サン・ダニエーレの生ハム

よーく見ると分かります。

そうです、サン・ダニエーレの生ハムには蹄(ひづめ)がついています。

生ハム作りは古くから行われてきましたが、サン・ダニエーレの近くの町で発見された古代ローマの肉屋の墓には、この蹄付きの生ハムの像があったんだそうですよー。

味にも違いがあって、サン・ダニエーレの生ハムは塩分が少ない“甘い”生ハムです。


でも、何はともあれイタリアの生ハムの顔、パルマの生ハムに敬意を表して、パルマの生ハム管理組合作成のPVをどうぞ。

原料となる豚は、イタリア国内の11の州で飼育されたもの。
生産地区は、生ハムの乾燥と熟成に最適な環境で、パルマ県のエミリア街道から南に5km以上離れた地域で、標高は最高900mの丘陵地。
パルマ県の東端を流れるエンツァ川より東と、西の端にあるスティローネ川より西は含みません。
トスカーナのヴェルシリア地方から吹く海風が松の香りを含んで北上し、途中の山に当たって塩気が抜け、栗の香りの中を通ってこの地方まで流れ込み、生ハムを熟成させるのだそうです。





豚は9ヶ月齢以上で、150kg以上。
これを24時間冷やしたあと、ももの形を整えます。
次に、皮の部分には水分を含んだ塩、赤身の部分には乾いた塩をまぶします。
最初の塩漬けは湿度の高い部屋で1週間。
再び塩をまぶしなおして15~18日置きます。
次に塩を落として60~80日休ませ、ぬるま湯で洗ったら自然乾燥させます。
そして、豚の脂、塩、こしょう、場合によっては米の粉を練ったパテを赤身の部分に塗ってから、12ヶ月熟成させます。



生ハムの話、次回に続きます。


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2009年9月3日木曜日

いちじくの付け合わせとドルチェ

いちじくのリチェッタ、その2です。

いちじくを肉料理の付け合わせにすることもありますよね。
鴨の胸肉に添えるケースが比較的多いように思うのですが、せっかく地中海を代表する果物なのだから、肉も地中海のイメージのものと組み合わるというのはどうでしょう。

いちじくと子羊。

いちじくと子羊肉のスピエディーニ


『サーレ・エ・ペペ』に、いちじくを子羊肉の付け合わせにした一品がありました。


子羊のコストレッタといちじくのオーブン焼き、揚げなすの付け合わせ Costolette alle melanzane
材料/4人分
 子羊のコストレッタ(骨付きリブロース)・・8枚
 にんにく・・2片
 熟した緑のいちじく・・8個
 なす・・小1個
 ミントとプレッツェーモロ・・1杷
 EVオリーブオイル
 アニスのリキュール
 塩、オールスパイス

・プレッツェーモロ、ミント10枚、にんにくをみじん切りにする。
・コストレッタに香草とにんにくのみじん切り、アニスのリキュール、油大さじ3、オールスパイスをかけ、ラップで覆って冷蔵庫に入れる。時々裏返しながら3時間マリネする。
・なすを薄い輪切りにして塩を振り、ストレーナーに入れて最低1時間置いて水分を出す。
・コストレッタに塩を振り、200度のオーブンで20分焼く。4つに切ったいちじくを加えて焼き汁をからませ、さらに10分焼く。
・なすを洗って水気をふき取り、たっぷりの油で揚げる。シートに取って塩を振り、コストレッタといちじくに添える。




いちじくのドルチェは動画をいくつか。

いちじくのカラメッラート。
いちじくを砂糖の中で12時間発酵させてから砂糖ごと1時間煮て、仕上げにビネガー少々を加えるんだそうです。






次はシチリアのクリスマスのお菓子、プルチッドラーティ(またはマストラッゾーラ)。
ドライいちじくは自家製で、天日で干します。
これを小角切りにし、砂糖、シナモン、水少々を加えて30分煮ます。
冷めたら小麦粉、水、イーストの生地で包んで約1時間発酵させます。
溶き卵を塗って白ごまを散らし、220度のオーブンで15分焼きます。
ごまを散らすのがシチリア的ですね。






こちらはカラブリアのピッタ・ンキウーザ Pitta Nchiusa 。
アーモンド、松の実、レーズン、ドライいちじく、蜂蜜、砂糖、シナモン入り。
普通はもう少し生地の部分が多いと思いますが、とにかくドライフルーツがびっしりで、虫歯になりそうな典型的なイタリアの地方菓子。








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2009年8月31日月曜日

いちじくの前菜

今日はいちじく料理の話。

イタリアンのいちじく料理と言えば、生ハムといちじく。



こんな楽しい生ハムといちじくもいいですねー, photo by PaoloMazzo


他に、味の強いチーズとの組み合わせも前菜の定番。

『ア・ターヴォラ』に、いちじくのゴルゴンゾーラ詰めというのがありました。

いちじくのゴルゴンゾーラ詰め Fichi ripieni di Gorgonzola
材料/4人分
 緑のいちじく・・大8個
 ゴルゴンゾーラ・ドルチェ・・200g
 マスカルポーネ・・30g
 栗の蜂蜜・・大さじ1
 ミント・・2枝
 こしょう

・ゴルゴンゾーラとマスカルポーネを練り、ミントの粗いみじん切りとこしょうを加える。ラップで覆って冷蔵庫で20分冷やす。
・いちじく(皮つき)を縦に半分に切り、チーズのクリームと蜂蜜をはさんで冷蔵庫で冷やす。
・ミントで飾り、室温に5~10分置いてからサービスする。細いグリッシーニを添えてもよい。



『サーレ・エ・ぺぺ』からは、いちじくとスモークサーモンのサンドイッチ。

いちじくとスモークサーモンのサンドイッチ Triangolini al salmone
材料/4人分
 スモークサーモン・・6枚
 黒いいちじく
 バター・・60g
 ロビオーラ・・60g
 プレッツェーモロ
 シリアル入り食パン・・12枚(耳を取る)
 EVオリーブオイル
 レモン汁
 塩、粗挽きミックスペッパー

・バター、ロビオーラ、プレッツェーモロのみじん切り大さじ1/2、塩、ミックスペッパーを練り、パン6枚に塗る。
・スモークサーモンにオリーブオイルとレモン汁をかけてパンにのせる。
・具をのせたパンを2枚ずつ重ね、残りのパンをかぶせる。
・これを4つの三角形に切り、いちじくの輪切りとプレッツェーモロの葉をのせる。



『サーレ・エ・ぺぺ』からもう一つ。
いちじくとスカンピのインサラータ。

スカンピといちじくのインサラティーナ Insalatina di scampi al prezzemolo
材料/4人分
 スカンピ・・600g
 いちじく・・6個
 プリーツレタス・・200g
 プレッツェーモロ
 レモン・・2個
 白ワイン・・400cc
 セロリ・・1本
 葉玉ねぎ・・1本
 EVオリーブオイル
 塩、粒こしょう

・水1リットルに葉玉ねぎ、セロリ、プレッツェーモロ、ワイン、塩、こしょう3~4粒を入れて沸騰させ、5分煮る。ここにスカンピを入れて4分ゆで、取り出して殻をむく。
・オリーブオイル大さじ4、レモン汁大さじ1、レモンの皮のすりおろし、塩、粗挽きこしょうを混ぜてシトロネットにする。
・いちじくは皮をむいて薄く切る。
・スカンピ、いちじく、プリーツレタスを混ぜてシトロネットで調味し、レモンの輪切りで飾ってプレッツェーモロを散らす。



いちじくのフリットは『ア・ターヴォラ』から

いちじくのフリットのインサラータ Fichi fritti in insalata
材料/6人分
 黒いいちじく・・8個
 卵・・3個
 パン粉・・150g
 小麦粉・・150g
 インサラータ・ミスタ(クレソン、ベビーリーフ、ソンチーノ、ミント、ルーコラ、バジリコ、タンポポ)・・500g
 熟成させた辛口の硬質リコッタ・・250g
 EVオリーブオイル
 レモン汁・・小さじ3
 ビネガー・・小さじ3
 蜂蜜・・小さじ1
 白ごま
 塩、こしょう

・丸ごとのいちじくに小麦粉、溶き卵、パン粉をつけ、先端から十文字の切り込みを入れる。これを油で揚げる。
・インサラータ・ミスタ、削ったリコッタ、熱いいちじくのフリットを皿に盛り付ける。
・オリーブオイル大さじ3、レモン汁、ビネガー、蜂蜜、塩、こしょうを混ぜてサラダにかけ、仕上げにごま大さじ1を散らす。



チーズの蜂蜜がけといちじく

いちじくとしょうがのサルサとカマンベール

ゴルゴンゾーラといちじくのカラメッラートのカナッペ

いちじく、パンチェッタ、カプリーノのオーブン焼き

いちじくのスキアッチャータ



いちじくのリチェッタ、次回に続きます。


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2009年8月27日木曜日

いちじく

いちじくがおいしい季節になりました。
そこで今日はいちじくの話。

いちじくは、イタリア語で“フィーコ fico ”。
複数形なら“フィーキ fichi ”。

夏が終わりを迎えてビーチリゾートがちょっと寂しい気分になる頃、地中海のいちじくは旬の季節を迎えます。



いちじく, photo by lepiaf.geo


いちじくは小アジア地方の原産ですが、今では地中海を象徴する果物の一つとして定着しています。

いちじくが昔から地中海世界に浸透していたことを示す例を一つ思いつきましたよー。
それは、ローマのバチカン美術館で目にすることができます。
この美術館には、古代彫刻の傑作が数多く展示されていますが、ずらっと並んだ彫刻のある部分が、ことごとくいちじくの葉で覆われているんですねー。
隠すのが目的なのに、かえってそこに目が行ってしまいます。
かなり不自然というか、こっけいです。
こんな記念写真は定番(笑)

あそこを隠すのに、なんでいちじくの葉っぱなんでしょうか。
なんでもそれは、アダムとイブに由来するんだそうです。

アダムとイブが禁断の果実を食べて、楽園から追放された、という話は聞いたことありますよね。
禁断の果実を食べると、どうなるんでしょうか。
禁断の果実とは、知識の木の実のこと。
それを食べたアダムとイブには、それまでなかった「羞恥心」が生まれました。
そして裸の体を恥ずかしく思い、いちじくの葉で体を隠した、というわけ。

つまり、楽園にもいちじくは生えていたんですねー。


それと、ローマの始祖とされる伝説上の双子、ロムルスとレムスは、いちじくの木の下で狼に育てられたと言われています。



カピトリーノの雌狼とロムルスとレムス, photo by Bobby Chorlton


こちらはローマのカピトリーナ絵画館(Pinacoteca Capitolina )にあるルーベンス作の『ロムルスとレムス』。
中央の巨木はいちじくだったんですね。
たしかに、あの葉っぱがついてる。

いちじくの話、次回に続きます。



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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...