2019年3月29日金曜日

広まることに抵抗しているサルデーニャ料理

“サルデーニャ風、鶏のリピエーノ”(こんな料理)を紹介する『サーレ・エ・ぺぺ』の記事は、こんな文章で始まります。
「総合解説」はP.24。

「サルデーニャ料理はサルデーニャ人気質のように古風で、まじめで、地味だ。
そしてその料理が広まることに今でも抵抗している」

なるほどーでしたよ。
「その料理が広まることに今でも抵抗している」
これ、料理書を売っていても、強く感じます。
せっかくいい本を作っても、売る気、まったくないんです。
サルデーニャ料理をイタリア料理に変えてもいいかも知れません。
どんなに素晴らしい本でも滅多に重版しないし、売る気あるんですか、と言いたくもなります。

イタリア料理は口伝の料理だということは、広く言われていますが、このことは、フランス料理と比べるとはっきりしてきます。
宮廷や天才料理人によって常にマニュアル化されてきたフランス料理は、料理を料理書に書き記して、文化として確立させ、後世に伝えてきました。
このあたりが家庭料理とそうでない料理の違いかも。
イタリアの主婦たちは、その料理を娘や息子に教えることには熱心でも、書き残すことには興味がなかったのです。
広めようとしなかったのではなく、逆に秘伝のものにして子孫に代々受け継がせることに情熱を注ぎました。

料理が広まることに抵抗している、という発想は、イタリア人じゃないと生まれないなあ。

家族の料理を教わる子どもたちにとって、母や祖母は神。絶対的存在。
この話を語る時、サルデーニャの羊飼いの親子の姿を描いた映画、『パードレ・パドローネ』を観ると、納得しやすいかも。


ちょっとだけトラウマものなので、心を強く持って観てね。(こんな映画by wiki)
父から自立していく息子が天才で、後に高名な言語学者になったというのは、感動的だけど非現実的(だけど実話だからすごい)。
息子を、文盲のまま育てて、家業の前時代的な羊飼いを継がせるというのは残酷なことだけど、親の権威に疑問を持ったら息子は結局独り立ちしてしまい、家業の羊飼いは途絶える、と考えるお父さんを責めることもできない。
これは、サルデーニャ料理を守るためには、広める必要はないという考えにつながるかも。

フランスでは革命が起こって王様を断頭台に送ったけど、親をギロチンにかける子供なんていないように、親の絶対君主ぶりは、強烈ですよ。
イタリアの地方料理のリチェッタは、うちの母親の料理が一番と無条件に信じる子どもたちによって次の世代へと受け継がれてきたのです。
だれの家の料理が一番とか正解なんて、決められるわけもなく、バリエーションを無数に増やしながら増殖してきました。

このことをふまえて今月の「総合解説」の“ティラミス”の記事P.26を読むと、一段と面白いですよ。

ご存知の通り、ティラミスは世界的に有名になったイタリアのドルチェ。
でも、誰が考え出したのかは不明です。
歴史の短いドルチェなので、イタリアだけでなく、地球規模で、この料理は私が、または私の関係者が考え出した、と主張する人たちがいます。
でも、数ある本家を名乗るレストランではなく、広まることに興味を持たない母親が考え出した料理が地球規模で広まってしまったと考えるほうが、納得できます。
この先も、永遠に謎のままでしょう。

ところで、サルデーニャ風鶏のリピエーノの記事は、最後まで衝撃的ですよ。
この料理に使う鶏は、2~6ヶ月齢の若鶏ですが、サルデーニャではこの種の若鶏は家で飼われているので肉屋で買うことはあまりないのだそうです。

鶏1羽を使い切る庶民の料理
 ↓

サルデーニャ料理
 ↓

すぐに売り切れになるサルデーニャ料理のお勧め本は、
トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ/2巻スッド・エ・イーゾレ
南伊と島の料理の2巻は、サルデーニャの文化遺産のような素晴らしい料理の数々から始まります。



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サルデーニャ風、鶏のリピエーノのリチェッタの日本語訳は「総合解説」2017年1/2月号に載っています。
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2019年3月27日水曜日

今どきのイタリアの年越しパーティー

今月のホームパーティーメニューのテーマは年越し。

1月号のお約束の季節物ですが、今年はついに、イタリアの現代っ子たちは、伝統の儀式を受け継いで年越しをする気はまったくない、ということがわかりましたよ。
記事の冒頭でまず断っているのは、新年のホームパーティーとは、行く年来る年を祝うのではなく、プチセレブ気分を味わえるエレガントでリッチな料理とワインを友人たちと大いに食べて飲みながらカウントダウンをするパーティ。

そのメニューは、まさに多国籍。
ゲストに振る舞う最初の飲み物、ウエルカム・ドリンクはサングリア・ビアンカです。

サングリアはイタリアでも大人気。
バリエーションは無数にありますが、今回はベースはモスカート・ダスティで、白いフルーツ、洋梨とりんごを入れて白さを際立たせています。
隠し味はリモンチェッロ。

サングリアの歴史を解説してます。
 ↓

伝統を全く無視するわけでもなく、ちゃんとレンズ豆とザクロという王道の縁起物食材も使っています。
レンズ豆は貝と一緒にサラダにして貝の殻に盛り付けて、持って歩ける前菜に。
ザクロは鴨の胸肉のセコンドのソースに。

鴨と言えばオレンジですが、ザクロの赤いソースも人気のよう。
下の動画は解説のリチェッタとは関係ありません。


鴨の胸肉のザクロソース/ANATRA AL MELOGRANO
 鴨の胸肉・・2~3枚
 熟したザクロ・・3個
 ブランデー・・1/2カップ
 ディジョンマスタード(好みで)
 バター、塩、こしょう

・胸肉の皮に斜め格子状の切り込みを入れる。
・皮のない面にディジョンマスタードを塗る。
・油を加えずにフライパンで皮目から両面をこんがり焼く。
・ザクロ2個を半分に切って汁を搾る。3個めは粒を取り出す。
・胸肉が焼き上がったらアルミ箔で包んで休ませる。
・焼き汁にザクロの汁を加えて煮詰め、ブランデーを加えてアルコール分を飛ばす。
・火から下ろして冷えたバターと塩を加える。
・肉をスライスしてオーブン皿に入れる。
・熱いザクロのソースをかけてザクロの粒を散らす。

「総合解説」のリチェッタではブロッコリーの鮮やかな緑色のピューレを敷いているので、とても華やかな1品になっています。

プリーモは、エビのビスクと七面鳥のカネロニ。
セコンドの後のチーズは定番の盛り合わせではなく、チーズサブレにカマンベールと蜂蜜を絡めたドライフルーツをのせてオーブンで溶かした、その名もカマンベール・フオンデンテ。
トロトロカマンベールです。

トロトロチーズ入りパニョッタ
 ↓

デザートはパッションフルーツのクレーマ・ムスリーヌのミルフィーユ。
パッションは情熱のことじゃないんですよね。
キリストの受難でしたっけ。
めちゃキリスト教的フルーツでした。
おかげておしゃれなフレンチ風ドルチェでも全然気になりません。

マグロのパッションフルーツ風味


マグロのパッションフルーツ風味/Cubi di tonno al frutto della passione

・しょうゆ大さじ4、蜂蜜大さじ1、EVオリーブオイル大さじ1を混ぜてマグロのさく300gにからめる。
・ポップキノア30gをまぶして押さえる。
・EVオリーブオイルで片面40秒ずつ焼いて角切りにする。
・パッションフルーツ3個の中身とEVオリーブオイル大さじ1をミキサーにかけて漉す。
・皿にパッションフルーツのソースを敷き、その上にマグロを盛り付ける。
・ポップキノア、パッションフルーツの実、薄片の塩を散らす。


微妙に伝統を活かした、フランスとスペイン風味のおしゃれなメニューでした。
レンズ豆とザクロはまだ当分生き残りそうです。


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“年越しのホームパーティー”のリチェッタの日本語訳は「総合解説」2017年1/2月号P.2~に載っています。
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2019年3月25日月曜日

日本の梨とパドヴァのゴージャスな鶏

「総合解説」2017年1/2月号、発売しました。
じわじわ遅れを取り戻し中です。
定期購読をご利用の方には、購読期間を延長してトータルで12冊届くようにしていますが、ご不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

最初の記事は今月の食材。
今回も面白い食材がありましたよ。
まずは質問です。
“梨(ナシ)”はイタリア語でなんと言うでしょう。
peraじゃないですよ。
これは日本語にすると洋梨。
Gute Luise
Gute Luise / www.fotoARION.ch


知りたいのは日本の普通の梨。
梨
梨 / ketou-daisuki


答えは「総合解説」P.2を御覧ください。
ナシは中国原産で3千年前から栽培されているんだそうですよ。
知ってました?
イタリアの雑誌でこういうことを知るのはとても楽しい瞬間でした。
イタリアに入ったのは最近で、PERA-MELAという名前でも販売されているそうです。

ナシは、今後、どうなっていくでしょうか。

次の食材はイタリアでは有名ですが、外国にはほとんど知られていない鶏。
ガッリーナ・パドヴァーナ。


このゴージャスな姿で、肉は締まった赤身でマイルドな味、イタリアで最高とも言われる鶏。

「総合解説」ではパドヴァのレストランで流行っている料理として紹介している
ガッリーナ・パドヴァーナのイン・サオールGallina padovana in saor”。




・玉ねぎ1個、にんじん1本、セロリ1本、にんにく1かけ、粒こしょうを加えた熱湯でガッリーナ・パドヴァーナをトロ火で2時間ゆでる。
・鶏が冷めたら皮を取り除いて手で肉を骨から外しながら粗くほぐす。
・玉ねぎ1個を薄切りにしてオリーブオイルで5分ソッフリットにする。
・白ワインで戻したレーズンとワイン、松の実、ビネガーを加えて5~6分煮る(サオール)。
・オーブン皿にサオールと鶏肉を交互に重ねて冷蔵庫で最低24時間マリネする。



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“今月の食材”は「総合解説」2017年1/2月号に載っています。
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2019年3月22日金曜日

冬のプリモ、チチェリ・エ・トリアと春のプリモ、クレープ

カルロ・カンビ著の『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ』は、

庶民的な地方料理の四季のリチェッタを集めた本。

冬のパスタの1つとして「総合解説」P.48にリチェッタの訳を載せたのは、“チチェリ・エ・トリアciceri e tria”。
プーリア料理です。


チェーチのタンパク質とセモリナ粉のトリアの炭水化物の組み合わせ。
チチェリ(チェーチ)をチチリと呼ぶ人も多いようです。
本のリチェッタによると、チェーチを香味野菜を入れた湯でゆでて、パスタを打つ時にこのゆで汁を加えてチェーチの香りを加えるなどのバリエーションもあります。

この他の冬のプリーモは、ナポリ風ラグーとは一味違うチレント風ラグーのフジッリ、粉質でないじゃがいもで作るソレント半島のアサリのニョッキ、定番中の定番、ラザーニャ・ボロニェーゼ、ロマーニャ地方の冬の定番料理、パッサテッリ、粉サフランではなくホールのサフランで作るリゾット・ミラネーゼ、太陽が登る海、アドリア海の海の幸を使ったスパゲッティ・アッラ・マリナーラ、お上品な印象のピエモンテの素朴なパスタ、ポロねぎのタヤリンなどなど、面白い解説とともに、数々のプリーモ・ピアットが載っています。

この本の春のプリーモは、例えば、ほうれん草とリコッタのクレープ。
この料理は農民の結婚式の披露宴の前菜の定番だったのだそうです。
今ではシンプルな美味しいプリーモとして定着しています。


リコッタは羊のリコッタがお薦めですが、厳禁なのはホエイを入れること。
味が薄まって重くなるのだそうです。
ナツメグなどのスパイスは、質素な料理を華やかにするポイント。

ほうれん草のクレープCrescpelle agli spinaci
クレープ;
  卵・・2個
 小麦粉・・50g
 牛乳・・1カップ
 バター、砂糖、オリーブオイル、塩
 
リピエーノ;
 リコッタ・・500g
 ゆでたほうれん草・・200g
 パルミジャーノ・・50g
 生クリーム・・10ml
 イタリアンパセリのみじん切り

ソース;
 ベシャメル
 ハム
 パルミジャーノ

・衣を作る。卵、小麦粉、塩、砂糖一つまみ、溶かしたバターを混ぜる。
・ホイッパーで混ぜながら牛乳を少しずつ加えて濃すぎない生地にし、2時間休ませる。
・薄く油を引いたフライパンに生地を少量ずつ広げて両面を弱火で焼く。
・リコッタ、搾って細かく刻んだほうれん草、塩、こしょう、ナツメグ、生クリーム、パルミジャーノ、卵、イタリアンパセリをフォークで潰して混ぜる。
・鉄板にオーブンシートを敷く。クレープにクリームをのせて巻き、シートに並べる。
・ベシャメルをかけて小さく切ったハム、たっぷりのパルミジャーノを散らし、250℃のオーブンで15分焼く。
・パルミジャーノの代わりによく熟成させたヴィッソ(マチェラータ)のペコリーノを散らすともっと辛口になる。

リコッタとほうれん草は定番なので、今回は、アスパラガスのクレープのリチェッタをどうぞ。

スローフードの“リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズの『パスタ』からです。


アスパラガスのクレープCrespelle di asparagi 
チルコロ・ラ・トッレ/グラニャーノ・トレッビエンセ(ピアチェンツァ)のリチェッタ

材料/4人分
衣;
 00番の小麦粉・・大さじ4
 卵・・2個
 牛乳・・2カップ
 バター、塩
リピエーノと仕上げ; 
 アスパラガス・・2束
 ポロねぎ・・1本
 野菜のブロード
 ロビオーラ・・150g
 グラナ・パダーノ・・40g
 バター、EVオリーブオイル
 塩、こしょう

・卵と牛乳を混ぜ、低温で溶かしたバターを加えて小麦粉を振り入れる。塩味を整えて冷蔵庫で休ませる。
・アスパラガスは硬い部分を取り除いて短く切る。ポロねぎも輪切りにする。
・これらを油少々で炒めて塩、こしょうし、レードル1杯のブロードをかけて30分煮る。
・小さく切ったロビオーラとおろしたグラナパダーノを混ぜ、冷めたアスパラガスのスーゴをかけてよく混ぜる。
・フライパンで生地を焼いてクレープにする。
・リピエーノを塗って巻き、オーブン皿に並べてバターの小片をのせる。
・180℃のオーブンで膨らみ出すまで焼く(15~20分)。
・軽く休ませてサーブする。


 


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カルロ・カンビの“チチェリ・エ・トリア”のリチェッタは「総合解説」2016年11/12月号に載っています。
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2019年3月20日水曜日

トリノ人が生み出した世界的トリノ名物の数々

今月はグルメ旅がもう1つ。
2つ目の街はトリノです。
トリノはカフェ文化が花開いた街です。
まずは、トラメッツィーノ(サンドイッチ)が考案されたと信じられている小さなカフェ・ムラッサーノ。

ムラッサーノは1907年にできて以来、経営者の移り変わりに伴って店もスタイルを変えてカフェになり、1926年にオーナーになったアメリカ帰りの一家によって、アメリカ製の新型のトースターが導入されて、そのトースターで焼いたサンドイッチが人気になったと言われています。
ということは、ホットサンドだったんでしょうか。
でも、下の動画ではホットじゃないサンドイッチを紹介しています。


まあ、老舗なのは間違いないようです。

次はベルモット。
カクテルに入ってるお酒という程度の認識しかないですが、トリノでは現代版のヴェルモットがイタリアで最初に造られて以来、独自の進化を遂げていたのですね。
ベルモットの原型はドイツで造られた薬効のある草、ニガヨモギの酒。
ニガヨモギが豊富に自生していたイタリアでは、サヴォイア家の宮廷で、同じ名前のよく似た酒が造られるようになり、やがてイタリア産のベルモットは世界中に知られるようになって、トリノはベルモットの街になったのでした。
ちなみに、トリノのベルモットの考案者はアントニオ・ベネデット・カルパノ。


次のトリノの発明品は、ピングイーノです。
説明は下の動画をどうぞ。


チョコレートでコーティングされて、スティックがさしてあって歩きながら片手で持って食べることができるジェラートです。
トリノはジェラートにも革命を起こしていたのでした。
ピングイーノを考案したのはジェラテリーア・ペピーノ。
最新作はベルモットメーカーとコラボしたベルモット風味のノンアルコールのピングイーノ。
トリノに行かないと食べれないのでしょうか。
 ↓

トリノの商人は、やり手ですねー。
ピエモンテのドルチェは世界的に知られた、イタリアのドルチェの3本柱の1本。
お勧めの本は、お手頃価格で知られるニュートン・クチーナ・レジョナーレ・ドルチェシリーズの『ピエモンテ・ドルチェ』。




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“グルメ旅~トリノ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2016年11/12月号に載っています。
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2019年3月18日月曜日

パスタ作りの伝統が生むモデナの粉物

今月のグルメガイド1つめは、「難しく考えないで生きる」がモットーのモデナ。
そしてモデナ料理として紹介したのが“ボルレンギBorlenghi”、1枚だとボルレンゴです。


モデナの庶民の古い伝統料理だそうで、友人同士で作りながら食べるクレープのような料理。
粉物を鉄板を囲んで焼きながら食べる食文化があるなんて、モデナの高感度がぐんと上がりました。


総合解説」にはボルレンゴの日本語のリチェッタを載せています。

モデナの食文化って、素晴らしいですねー。
ランブルスコ飲みたくなりました。
 ↓

モデナのストリートフードの傑作、ニョッコ・フリット。
生ハムのおとも。
モデナは粉物天国でした。


モデナで生ハムと言えばサルメリア・ジュスティ。


モデナを代表する料理人、マッシモ・ボットゥーラシェフのビストロ、
フランチェスケッタ58


その他まだまだあるグルメ情報は「総合解説」を御覧ください。


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“グルメ旅~モデナ”の記事の日本語訳は「総合解説」2016年11/12月号を御覧ください。
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2019年3月15日金曜日

「難しく考えないで生きていく」理系の街、モデナ

今日はモデナの話。
小さいけれど、歴史と文化がギュッと詰まった、豊かな街です。


フェラーリとバルサミコ酢とエステ家の街。
大聖堂、グランデ広場、ギルランディーナの塔は世界遺産。

『ラ・クチーナ・イタリアーナ』のモデナのグルメガイドの記事は、
モデナの紋章には、“Avia pervia”というラテン語が記されている、という話から始まります。
観光でちょっと立ち寄ったことがあるだけの私には、初耳でした。
これがモデナの紋章です。

確かに書かれていますねー。
どういう意味なんでしょう。
街のモットーだけあって、様々なスポーツチームの名前などに使われていますが、記事でも詳しく解説しているように、イタリア人でも意味を理解するのは少々難しい言葉のようです。
記事の説明を短くまとめると、「難しく考えないで生きていく」あたりがしっくりするかな。
これはラテン系の人々のモットーと言ってもいいのでは。
いい言葉だなあ・・・。

ところで、モデナの名産品を見ていて気がついたのですが、ぶどうの果汁を酢酸菌で酢酸発酵して作るのがバルサミコ酢で、牛乳を乳酸発酵させて作るのがパルミジャーノ、酵母が糖分をアルコールと炭酸ガスに分解して生まれるのがランブルスコだそうで、モデナの人は理系に違いないですね。

下の動画はモデナを代表する有名シェフ、マッシモ・ボットウーラシェフの店、『ラ・フランチェスカーナ』。



この黄色い料理の名前は、“おっと、レモンのクロスタータを落とした!”だそうで。
ドイツの現代アートの巨匠、ヨーゼフ・ボイスの影響を受けているのだとか。
この動画を見てふと感じたのが、マルケージのミラノの店に似ている、ということ。
料理を現代アートに例えたのは、マルケージの代表作の一つ、ドリッピング・ディ・ペッシェが20世紀を代表する抽象画家のジャクソン・ポロックの“ドリッピング”技法にインスパイアされてのこと、というのが有名。
ボットゥーラシェフはマルケージチルドレンではないそうですが、彼の料理は、マルケージがやってきたことによく似ているような・・・と感じてしまいます。

ドリッピング・ディ・ペッシェ
 ↓

今日のブログのタイトルは、「難しく考えないで生きていく」理系の街、モデナですが、重要なことを忘れていました。
「難しく考えないで生きていく」、レズドーラに育てられた理系の街、でした。
レズドーラはパスタの麺打ちが得意で家事をバリバリこなすスーパー主婦で、地元の食文化の継承者のことです。

レズドーラとマッシモ・ボットゥーラシェフが作るモデナのトルテッリーニ
 ↓

ホントの親子みたい。
ボットゥーラシェフの実際のお母さんはどんな人だったのか、興味ありますねー。
親から子へと伝わる家庭料理では、その一家ならではの技術や配合が受け継がれますが、ボットゥーラシェフが作るようなアルタクチーナは、感性の表現の仕方が師匠から弟子へと受け継がれます。

モデナの感性を高めたのはエステ家。
モデナを含むエミリア・ロマーニャ地方の感性が生み出したランブルスコ。



エミリア・ロマーニャ地方の料理のお勧め料理本は、“グリバウド・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズの『エミリア・ロマーニャ』


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“グルメ旅~モデナ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2016年11/12月号に載っています。
クレアパッソで販売している書籍
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2019年3月13日水曜日

シチリアのパン粉のパスタ

前回はシチリアのカンティーナ、プラネタの料理本を紹介しましたが、
クレアパッソでは、お勧めのシチリア料理本が、もう1冊あります。
グイド・トンマージの地方料理シリーズの『シチリア』です。

このシリーズも写真が秀逸で、シチリアでオステリアを営んでいる家庭にホームステイでもしているような気分になって、読み返すと、あの時は楽しかったなあ、なんて、かつてのシチリア旅行の思い出が蘇ってくるような本です。

一方、プラネタの本は世界中から観光客が押し寄せる豪華なホテルレストランで世界各国から集まった若者たちと一緒にスタージュでもしてるかのような、素敵なワクワク感に満ちています。

どちらの本にも載っている1品が、この本の違いもよく表しているようなので、ちょっと紹介してみます。

それは、シチリア名物、パン粉のパスタです。

シチリアに行くまで、チーズの代わりにパン粉を散らす、というパスタの存在は、うっすら聞いたことはあるけど、実際に食べたことはありませんでした。
でも、パレルモのオステリアはそれが普通のようで、すぐに慣れました。
チーズの代わりどころか、パン粉がソースのメインの食材という、パン粉のパスタの存在を知ったのは、ずっと後のこと。


それではグイド・トンマージの『シチリア』の
パン粉のパスタ/PASTA CON LA MOLLICAをどうぞ。

材料/4人分
 スパゲッティかブカティーニ・・400g
 にんにく(できればヌビアの赤にんにく)・・4かけ
  塩漬けアンチョビ・・4枚
 (セモリナ粉のパンの)パン粉・・200g
 EVオリーブオイル・・大さじ5
 塩

・大きなフライパンでにんにくを油でソッフリットにする。きれいにしたアンチョビを加えて潰してほぐし、火から下ろす。
・別の大きなフライパンでパン粉を木べらで強火で炒める。すぐに焦げるので絶えずかき混ぜる。きれいな栗色になったら取り出す。
・スパゲッティをアルデンテにゆでる。
・アンチョビのフライパンにスパゲッティを加えてなじませ、パン粉をたっぷり散らしてサーブする。
※パン粉を炒める時に油大さじ1を加えても良い。しっとりしたパン粉になる。

外見上は、ソースはパン粉だけの、ザ・漢の料理みたいなパスタです(P.27)。
盛り付けも、皿のリムの内側いっぱいにどどっと広がっています。
パスタとパン粉がほぼ同じ色なので、小麦粉オン小麦粉感が半端ない。

これを、貴族料理がルーツの世界的に成功したパスタメーカーのリゾートホテルでは、どんな料理にするのでしょうか。
それでは『シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ』のパン粉のパスタをどうぞ。


アンチョビとパン粉のパスタ/PASTA CON ACCIUGHE E MOLLICA

材料/4人分
 スパゲッティ・・400g
 パン粉・・200g
 アンチョビ・・6枚
 白ワイン・・1カップ
 塩抜きしたケッパー・・20g
 唐辛子・・1本
 EVオリーブオイル・・大さじ3

・パスタをゆでる。その間にパン粉を少量の油で炒める。
・別のフライパンでアンチョビ4枚を、唐辛子のみじん切り、ケッパーのみじん切りと一緒に油で溶く。
・ワインをかけてアルコール分を飛ばし、5分煮る。
・アルデンテにゆでたパスタと残りのアンチョビを加えてマンテカーレし、パン粉をたっぷり散らしてサーブする。

見た目は、こちらはアンチョビと赤い唐辛子の小片がアクセントになっています。
それをこんもりと高く、小さめに盛り付けるので、とても繊細に見えます(P.55)。
ケッパーも入っているので、かなり食べやすそう。

アンチョビとパン粉は基本の材料。
これに唐辛子やケッパーが加わると、劇的に漢臭さがマイルドになるんですね。
これはぜひ写真を見比べてほしい料理です。





グイド・トンマージの『シチリア』も、男前な料理だけじゃないです。
例えば、“マッコ”は、一度食べるとやみつきになるとても美味しい乾燥ソラマメのピューレですが、生のソラマメで作ると、乾燥ソラマメを使ったものより色が美しくなるのだそうで、本ではとても美しいソラマメ色のピューレを紹介しています(P.52)。


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総合解説
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2019年3月11日月曜日

プラネタ家の料理本、『シチリア』

お勧めの再入荷本、

シチリア/クチーナ・ディ・カーサ・プラネタ


のご案内です。

この本は、シチリア料理の本の中でも、シチリアを代表するカンティーナで貴族の家系でリゾートホテルレストランも経営するプラネタの料理を紹介するという、異色の大型本。
写真はとても美しく、ページをめくっていると、舌がシチリアになって、プラネタのワインを用意したくなる、魅力あふれる本です。


ちょとシチリア行ってくるわ、みたいな気分になりますねー。

最初のメンフィとサンブーカ・ディ・シチリアの章に載っている料理は、
肉のアランチーネとチーズのアランチーネ、
カポナータ、
パーネ・クンツァート、
ナスのコトレッタ、
パネッレ、
パニーニ・クレッシュート、
パンツェロッティ、
ティンバッレッティ・フリティ、
ペスト・トラパネーゼのブジアーティ、
テネルーミのミネストラ、
ズッキーニとミントのパスタ、
パスタ・アッレ・ヴォンゴレ、
アンチョビとパン粉のパスタ、
パプリカのリピエーニ、
リコッタとサルシッチャのラビオリ、
ラグーのアネッレッティのティンバッロ、
アッグラッサート、
牛フィレットの赤ワインソース、
オレンジのサラダ、
タラのミルク煮、
ポルペットーネ、
サルデ・ア・ベッカフィーコ、
サルデ・ア・キアッパ、
トリッパ・フィンタ、
ビアンコマンジャーレ、
カンノーリ、
カッサータ、
コーヒーのジェーロのホイップクリーム詰め、
レモンのグラニータ、
モンテ・ビアンコ・・・
といった品揃え。

貴族の料理はどれだけお高くとまってるまのかと思えば、想像以上に庶民的。
殆どが、一度は聞いたことがあるシチリア料理の代表選手。
しかも、適度にディープなシチリア料理も混じっていて、一度は食べてみたい、と思っていた料理がいっぱい。
さすがは世界中からファンがやってくるプラネタ社とそのリゾートホテル。

マルケージシェフが、ミラノの店の次に挑戦したのが、大手ワイナリーと手を組んだ高級ホテルレストランだったことを考えると、象徴的です。
世界中にファンがいるカンティーナは、食文化の伝道師でもありました。
その昔、メディチ家のような巨大勢力が、フィレンツェの文化を発展させたように、イタリア料理はイタリアワインの造り手によって、世界中に広まっていくのだなあ、と感じます。

ワイナリーに高級リゾートホテルレストランを作って、トップシェフを呼んで、ワインをサーブしながら世界中の顧客に暖かい地元流のもてなしを体験してもらうのは、今やカンティーナが成功した証。


その料理は、確かに家庭料理なのですが、わざわざ飛行機に乗って、ブランド店も有名観光地もないぶどうの産地までやってくるグルメな顧客たちを満足させる、本物で、洗練された料理です。



シチリア料理のパトロンとしての活動も、相変わらず絶好調のようです。


舌がシチリア料理になって、喉がプラネタになりました。

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2019年3月8日金曜日

マルケージシェフの残したもの

今日はグアルティエーロ・マルケージシェフの話。
このブログでも度々取り上げ、2017年12月に亡くなった時は、世界中で報じられたイタリアを代表するグランシェフ。
今月の「総合解説」では、ガンベロ・ロッソが創刊30周年に際して彼を取り上げた記事を訳しました。
おそらく世界で一番有名なイタリア料理人ですが、知らない人のために記事の冒頭をここで紹介。

「マルケージ・シェフは1970年~80年台にかけて、イタリア料理を変えた人物だ。
ガンベロ・ロッソの最初の格付け本では、彼のミラノの店はダントツの1位だった。
彼によって現代イタリア料理の扉は開いた。
マルケージはイタリア料理のブランドを作り、イタリアンスタイルの豊かなライフスタイルと美食を世界に広めた」

私に取っての彼のイメージは、バブリーの最先端なシェフ、でした。
せっかくミラノの店で食事したものの、卓上のアーティスティックなオブジェや店のゴージャスな雰囲気にのまれて、料理のことは見事に何も覚えていないのでした。

でも、今になって思うのです。
もし、当時一世を風靡していたマルケージシェフが、バブルの申し子でもう少しえげつない人だったら、イタリア料理は今とは違ったものになっていたかもしれない。
マルケージチルドレンを筆頭に、今のイタリア料理には、彼のナイーブでハイセンスな感性が受け継がれています。

彼の代表作、リーゾ・オーロ・エ・ザッフェラーノ。
初めて世に出たのは1981年。


彼はヌーベルキュイジーヌと一緒に語られることとが多い人ですが、記事には、彼自身はヌーベルキュイジーヌの限界をすぐに感じていた、という話もあります。
シンプルな料理の美しさと美味しさの関係に魅せられていたマルケージシェフは、食材自身が持つ美しさを、料理を遊びすぎてゆがめてはいけない、と語っています。
確かに、彼の代表作は、シンプルなのに強烈なインパクトをもつものばかり。
「総合解説」には代表作4品の写真も載せました(P.36)。
Raviolo Apertoも、Dripping di pesceも、料理を見れば誰もが彼の料理と知っているもの。
こんな人、世界中探してもそういません。

彼の功績を理解するには、ヌーベルキュイジーヌというキーワードを消し去る必要があるかもしれません。
イタリア人の代名詞だったラテン系の情熱に満ちたおふくろの味より、彼の知性や芸術性が溢れた料理に、世界中が魅せられたのでした。

これはそれまで、イタリア人の誰にもなしとげられなかったことでした。
母から娘へと受け継がれてきたとても曖昧で広大なイタリア料理の姿を、彼は自らの判断できっちりと整理して、アイデンティティーを確立させたのです。
でも、無名の母親ではなく、天才料理人の料理を弟子が受け継ぐというスタイルは、フランス料理の典型。
このあたりにヌーベルキュイジーヌをイメージさせる要素があるのかも。

イタリア料理にマンマ以上の影響を与えた唯一のシェフです。

マグロのグーラシュ(2011)



彼の目指した料理の思想を受け継ぐシェフたちの団体、レ・ソステの本、『グランディ・リストランティ・グランディ・シェフ





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“グアルティエーロ・マルケージ”シェフの記事の日本語訳は「総合解説」2016年11/12月号に載っています。
クレアパッソの「書籍リスト
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2019年3月6日水曜日

マントヴァのトルタ・ズブリゾローナ

今日は、マントヴァのドルチェ、トルタ・ズブリゾローナsbrisolona。

イタリアの基本のドルチェの一つで、英語で言えばクランブル。
語源はかけらという意味のブリーチョラbriciolaの方言。

マントヴァはロンバルディア南部の世界遺産の街。
ルネサンス期のその支配者ゴンザーガ家の時代が最盛期。

こんな街。
 


マントヴァと言えば、カボチャとトルテッリ・ディ・ズッカ。
 


そしてドルチェの名物がズブリゾローナ。



 『クチーナ・イタリアーナ』の記事によると、16世紀のマントヴァの農民が作っていたそうで、アーモンドの安価版代用品のヘーゼルナッツや、卵の代わりに白ワイン、バターでなくラードを加えたものが、本格的な農民風。
一方、ゴンザーガ家の宮廷のリチェッタでは、スパイスや香料、アーモンドを加えたそうです。

お勧めの本『カルロ・クラッコの地方料理』によると(P.77)

このドルチェの最初の姿は小麦粉とラードだけの質素なもので、塩味でした。
そこに時代と共に小麦粉、ナッツ、バター、砂糖が加わり、リッチで香ばしいドルチェになりました。
食後にサーブしてもいいですが、私は午後のお茶に添えるほうがふさわしいと思います。
ズブリゾローナを作る時は、大きくしすぎないことが大切です。
分厚いズブリゾローナを見るとうんざりします。
逆に手で割れるような薄いズブリゾローナは素晴らしいと思います。
トルタ・ズブリゾローナはナイフで切るトルタではありません。
私は伝統的なそぼろ状で香ばしいズブリゾローナが好きです。
(とうもろこしの粉が入っているので独特の風味になります。)
あるいは、パスタ・フロッラのベースの上に各種のフルーツをのせて全体にブラウンシュガーを散らす洗練されたアレンジも気に入っています。

この本のズブリゾローナの写真を見ると、手で割ったズブリゾローナが3片に、真っ白のリコッタクリームのクネルが添えてあります。
クラッコのドルチェと思えないほど大胆で素朴。
でもどことなく高貴。

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“ズブリゾローナ”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年11/12月号に載っています。
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2019年3月4日月曜日

レズドーラとロールパスタ

今日はエミリア風ロールパスタの話。
12月号の「総合解説」に、毎年必ず登場するパスタは、トルテッリーニなどの詰め物入り手打ちパスタが定番ですが・・・、
今年は趣向を変えたのか、ロールパスタが登場しました。
ロールパスタって、考えてみると最近では珍しいパスタです。

下の動画は「総合解説」のロールパスタと同じではありませんが、とりあえず。


「総合解説」のエミリア風ロールパスタは、典型的なロールパスタだと思いますが、この動画が一番近いかも。

このパスタのリチェッタが写真付きであった本は、お勧め本の1冊、『イル・グランデ・リーブロ・デッラ・パスタ


人気のロングセラーの本ですが、表紙のデザインを何度も変えながら重版をしているので、どの表紙の本が手に入るかは、注文してみないとわからないという、かなりイタリア式マインドが必要な大型本です。
扱っているパスタと写真の多さが特徴。

生パスタの基本は、麺棒で伸ばす板状の生地です。
イタリアでこの作業のマイスターとみなされているのが、エミリア地方の主婦たちです。
このブログでも度々登場していますが、彼女たちはレズドーラrezdoraと呼ばれています。
家事は料理でもなんでもバリバリこなすスーパー主婦のことですが、もちろん生麺を薄く均一に伸ばせる男性も普通にいます。

パスタは乾麺と生パスタで、別々の道を歩んできました。
主材料はどちらも粉と水。これが、工場での大規模生産か、人手によるアルティジャナーレな製品かによって、明確に2つでに別れました。
乾麺のパスタは、製品の保存と輸送を確実にして世界中に広まりました。
そうなるためには、大都市などの人口の多い大きな消費地と、鉄道や船などの輸送手段が発達していることが必要です。
大量生産によって価格が下がり、ゆでるだけという簡単な調理方法のおかげで、特別な技術がなくても、裕福でなくても、忙しい人でも、誰でも食べることができるとても民主的な食べ物になり、世界中の人々に受け入れられました。

一方、生パスタは、スローな道を選びました。
その製造技術は母から娘へと口伝で受け継がれ、人や場所によって様々な形が考え出され、どんどん個性的で複雑になっていきました。
北イタリアで栽培が広まった軟質小麦triticum aestivum またはvulgare)は、硬質小麦triticccum durumまたはtrugidum)より白くて細かい粉になり、なめらかで人の手による細かい細工がしやすい小麦だったのも幸いでした。

レズドーラはエミリア地方だけではなく、北イタリア各地の家庭を切り盛りするベテラン主婦の呼び方ですが、エミリア地方では生パスタを薄く均一の広い板状に伸ばす女性職人の名前として広まりました。
農家のレズドーラはその家で一番早く起きて家族が畑に出かける準備をし、家族が出払ったら今度は家畜の世話をします。
ある意味、農家の女性の暮らしは男性よりきつかったかも。

薄い布にのせたパスタをソフトに巻くのは、熟練が必要な技ですが、レズドーラのパスタの秘密は、全部口伝で伝えられてきました。
量もきっちり図るのではなく、目分量。
例えば、パスタを麺棒で伸ばすと、パスタマシンで伸ばしたときより表面がザラザラになって、ソースが絡みやすい麺になります。
打ち粉をセモリナ粉と軟質小麦粉のミックスにするのも同じ効果が得られます。

下の動画はボローニャで開かれたパスタ打ち教室。
麺棒でパスタを伸ばす教室です。
今時のイタリア人女子と男子が受講しています。


今月の「総合解説」のロールパスタのリチェッタは、P.16です。

生パスタのことを詳しく知りたいなら、スローフードの『パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ』がお勧め。


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“エミリア風ロールパスタ”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2016年11/12月号に載っています。
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2019年3月1日金曜日

お勧めピエモンテ料理の本

料理雑誌の11月号と12月号を訳していると、この時期はピエモンテが光り輝いていると感じます。
白トリュフ、ワイン、ボッリート・ミスト、カルドゴッボなど、「総合解説」で訳したリチェッタも、ピエモンの特産品が活かされたものばかりです。

クレアパッソで販売しているピエモンテ料理の本のお勧めは、
まず、グリバウドのグランデ・クチーナ・レジョナーレ・タリアーナシリーズの『ピエモンテ』。

ピエモンテの代表的な料理を幅広く網羅して、写真もそれなりにあるので、ぱらぱらとめくっているだけでピエモンテ料理の大まかな姿が見えてくる、とてもコンパクトで便利な本です。
他の州も全部こんな調子で、全集揃えるのがお勧めで、イタリアの代表的地方料理がほぼコンプリートできます。

ニュートン・クチーナ・レジョナーレシリーズは、さらに詳しく、ピエモンテのプロヴィンチャごとにリチェッタをたくさん集めています。


11~12月に旬を迎えるピエモンテは、正確には、ランゲ、モンフェッラート地方が主役。ピエモンテの料理を語る上で、クーネオ、アスティ、アレッサンドリアにまたがるランゲとモンフェッラートという地区は、最初に覚える地区のはず。
イタリアを代表するワインの産地として名高く、世界遺産でもあります。
世界中の人がイメージするピエモンテの姿が、この季節のランゲ・モンフェッラートにあります。


ピエモンテはワインとトリュフだけじゃない。
世界一の米とミネラルウオーターもあります。


北の人も南の人と同じくらい地元愛が強烈なんですね。
その強烈な地元愛がよく分かるお手頃価格の本が、ニュートンのシリーズです。
長く愛されているロングセラーで、リチェッタの数はすごいけど、写真が殆どないのが欠点。

逆に写真が素晴らしいのが、『トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ』。


1巻は北イタリア、2巻は南イタリアの有名レストランの料理を中心に紹介していますが、1巻はピエモンテ料理から始まります。
たとえば、1巻P.21の“赤パプリカのリピエーノ”は、肉厚のパプリカがとても美しい1品です。
その左隣のページの写真は、チラッと見ると、何の変哲もないオーブンでパプリカを焼いている写真ですが、中央の写真のパプリカが焼く前で、下段の写真は同じように見えますが、よく見るとパブリカがぺしゃんこに潰れています。
パプリカがこの状態になるまで焼く、というのが、この店(リストランテ・ダ・グイド)の焼き方なんです。
それがわかった時、大抵の人は二度見しますよ、この何の変哲もない写真を。
さらに、記事には美味しいパプリカの選び方も書いてあります。

ページをめくると、今度は生の卵黄が具のラビオリ。
さらに次のページをめくると、ドーンと見開きの2ページを使って、今まさに生の卵黄にパスタをかぶせる写真が。
次の料理も歴史的な名物料理です。
アニョロッティのナプキン包み。
アニョロッティを皿ではなくナプキンの上に盛り付けてサーブする、てどういうこと?
となりますよね。
実はこの料理、名前はとても有名で時々聞いていたのですが、その由来やサーブされる姿を始めて見ました。
おそらく写真に残された最後の姿なのでは。
生の卵黄のラビオリもナプキンのアニョロッティも、グイドのシェフのリディア・アルチャーティというピエモンテでとても愛された、ピエモンテ料理の1時代を築いた女性シェフが作り出しましたが、彼女は2010年に亡くなっています。
本にはリディアさんがどういう人で、どうしてこんなに尊敬される料理人なのかが書かれています。

リディア・アルチャーティさん。
 ↓

この本は、こんな調子で、すべてのページが貴重な情報に満ちています。
イタリアであっという間に売り切れたのも納得です。

もう少し若い世代のピエモンテ料理の旗手たちの料理を中心に知るなら、スローフードのに関わりの深い店の本、『オステリエ・ディ・イタリア新版』がお勧めです。


ブラのボッコンディヴィーノの次に紹介されているのはトリノのコンソルツィオ。
 ↓





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北と南の米料理

まず、リゾットの作り方は、使う米によって違います。 南イタリアは硬質小麦とトマトが根付いたことで、ピッツァを生み出しました。 北イタリアでは米が育ちました。 リゾットがピッツァに匹敵する北イタリア生まれの素晴らしい料理だと言っても、ピンとこないかもしれませんね。 でも、...