2018年6月29日金曜日

バローロのリゾットとカヴール伯爵

今日のお題はバローロのリゾット。

この料理に欠かせないのは、
バローロとカルナローリ米。

そのどちらにも、イタリアの初代首相、カヴール伯爵が深く関わっていました。

イタリア料理史、特にピエモンテの料理史上、というか、イタリアの歴史でも欠かせない重要人物だけあって、彼がやったことはスケールが違います。
まず、米に関しては、農業大臣時代に運河を作ってヴェルチェッリとノヴァーラの水田を灌漑し、最新の稲作技術を導入して、米作発展の基礎を築きました。

米は飢饉のときに小麦に変わる作物として、栽培が広まりました。
米を作るために欠かせないのは水です。
水路を張り巡らすという大事業は、貴族など大地主の協力が欠かせないことでした。

ヨーロッパを代表する米どころ、ヴェルチェッリ~ノヴァーラの風景は、どこか懐かしい水田地方。
 ↓


そういえば、ヴェネト地方の米、ヴィアローネ・ナノは、ヴェローナの貴族の所有地の干拓によって広まり、その後は地元の修道院の修道女たちが米作を広めたのでした。
イタリアの貴族と教会には、こういう影響力もありました。

カヴール伯爵はイタリア統一の立役者でもあります。
そっくりさんが演じるドラマもありました。
 ↓



彼はバローロ造りにも取り組んでいました。
イギリス、フランス、オーストリアと通商協定を結んで近代化を推し進めたり、
イタリア統一のためにイギリス、フランスと手を組んでオーストリアと戦ったりと、
凄腕の外交能力があったカヴール伯爵が、
フランスに負けない上質の赤ワインを造るために取った策とは、
優秀なエノロゴだった将軍を自分の城、グリンザーネ城に招集するという力技。
そしてジュリア・ファッレッティ・ディ・バローロ公爵夫人と一緒に
ネッビオーロの醸造と熟成ステムを手直しして新技術を導入します。

こうしてバローロは、イタリアを代表する上質赤ワインとして生まれ変わっていったのでした。

ただし、残念ながら、バローロのリゾットはカヴール伯爵が考えだしたという説に根拠は何もありません。

それにしても、ランゲ地方の料理人のバローロのリゾットにかける情熱はすごいです。
この料理に使うバローロは、あらかじめデカンターレして澱を取り除き、
香りを開かせておくんだそうです。
さらにワインの加え方によって、リゾットの味も変わってしまうのだそうで。
詳しくは「総合解説」をご覧ください。

ちなみに、来月号の「総合解説」には、リゾットの魔術師と呼ばれている兄弟シェフのリチェッタが登場します。


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“バローロのリゾット”の記事の日本語訳は「総合解説」2018年2月号に載っています。
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2018年6月27日水曜日

『ジェラーティ』から、クレメリア・カポリネアのリチェッタ

今日はトレ・コーニ獲得のジェラテリーア、クレメリア・カポリネアのオーナー、シモーネ・デ・フェオの本、『ジェラーティ』から、リチェッタの日本語訳をどうぞ。


まずは基本中の基本、本の一番最初に載っているジェラート、

フィオルディラッテのジェラートgelato al fiordilatte

【材料】
・牛乳・・690g
・生クリーム・・100g
・グラニュー糖・・200g
・キャロブ(カッルーバ)・パウダー・・2g

・生クリームと牛乳を混ぜて火にかける。
・砂糖とキャロブパウダーを加える。
・85℃に熱する。
・増粘剤のキャロブ・パウダーが手に入らない時は卵黄3個を加えて混ぜ、85℃に熱する。
・素早く冷ましてジェラティエラに入れる。
・ジェラートメーカーがない時は製氷皿に入れて冷凍し、ミキサーにかける。
粒状になったらスプーンでクリーミーになるまで混ぜる。
・すぐに食べない時は冷凍庫で保存し、サーブする2~3時間前に冷凍庫から出す。
バリエーション;レモンの皮とバジリコ、またはシナモンとバニラとオレンジ、スターアニスとミントをミキサーにかけて牛乳に加える。

これに刻んだビターチョコレートを加えて、マンテカーレすれば、
あるいは仕上げに溶かしたチョコレートをかければストラッチャテッラのジェラートgelato alla stracciatellaになります。

基本のジェラートの後は、もう少し複雑なジェラート、ソルベット、グラニータ、セミフレッドのリチェッタが続きますが、どれもシンプルで美味しそうでどれを選ぶか迷います。

リチェッタは、キャラメル、コーヒー、チョコレート、フレッシュフルーツ、パスティッチェリアのジェラートと続きます。
中でも目を奪われたのは、水色に花柄のクラシックなデザインが美しいティーカップに盛り付けたカッサータのジェラート。
白いジェラートに宝石を散りばめたようなカッサータのジェラートは、器によっては美しさが一段と引き立って、芸術品のようです。

カッサータのジェラートgelato alla cassata

【材料】
・山羊乳と牛乳のミックスのリコッタ・・150g
・アーモンド・・20g
・グラニュー糖・・180g
・牛乳・・650g
・キャロブパウダー・・2g
・ビターチョコレート・・100g
・カンディート・・40g

・アーモンドをフライパンで数分煎ってからミキサーにかけ、粉にする。
・牛乳、リコッタ、アーモンドペースト、砂糖、キャロブパウダーを火にかけてかき混ぜ、85℃にする。
・火から下ろして素早く冷まし、ジェラテリアに入れる。
・仕上げに削ったチョコレートとカンディートを加える。


この他に、ジェラートのリチェッタが面白いのは、やはりシチリア料理の本です。

in cucina”シリーズ
『シチリア』



ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズ

『シチリア』


シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネータ

“Guido Tommasi cucina regionale”シリーズ
ラ・クチーナ・シチリアーナ


などがお勧めです。





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2018年6月25日月曜日

残したワインのお持ち帰りシステム、ブータ・ストゥーパ

今日のお題は「料理も出すエノテカ」
そもそも昔のオステリアは、ワインと、ゆで卵、チーズやサラミの盛り合わせといった簡単なツマミを出す店でした。

ヴェネチアのバカロ、ピエモンテのピオーレ、カステッリ・ロマーニのフラスケッテなどがその名残。

上質なワインと地元の上質な食材を使う料理を出すエノテカは、オステリアの精神を引き継いだ現代版オステリア。

リストランテと比べて、ワインをフルボトルで注文するという成約がない、というのは大きな魅力となっています。

同じ今月の「総合解説」のワインの記事は、“ハーフボトルとグラスワイン”というテーマ。

レストランで2種類のワインを飲みたい時、フルボトルで注文すると、値段はもちろんのこと、飲みきれなくてワインが無駄になることもある、
と、どこの国も同じ、かなり現実的な悩みがあります。

でも、最近のイタリアのレストラン業界では、高級ワインでも在庫を回転させたいという傾向が強いそうです。 
ボトルワインが残ったら、ワインに再び栓をして、店が美しくパッケージしたものを持ち帰る、“オープン・ボトルbottiglia aperta(ボッティリア・アペルタ)”と呼ばれるシステムが広まっています。

ピエモンテのオステリアでは“buta stupa(ブータ・ストゥーパ)”と呼ばれていました。

イタリア式ワインバッグ、ブータ・ストゥーパで
スタイリッシュに習慣を変えようというのがキャッチフレーズ。
 ↓


この習慣に賛同する店を集めたグループも作られています。

これはワインの販促グッズとしてワインのメーカーさんやインポーターさんがこの紙袋を作って広めれば、日本のレストランでもフルボトルを注文する機会が増えるのでは。

この運動に賛同する店は、今のところピエモンテの店が圧倒的に多いですね。
やっぱり高級ワインは残したらもったいない。

そうそう、今月の「総合解説」にはバローロのリゾットの記事もありました。
もしバローロが残ったら、リゾットでも作りますか?
次回はこの話です。

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“料理も出すエノテカ”と“ハーフボトルとグラスワイン”の記事の日本語訳は、「総合解説」2016年2月号に載っています。
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2018年6月22日金曜日

ポルタフォーリオことヴァルドスターナ

今日は「ヴァルドスターナ」の話です。
ヴァルドスターナとは、“ヴァッレ・ダオスタの”という意味の言葉ですが、
イタリアの北西の隅にあるイタリアで一番小さな州の話ではなく、
ヴァッレ・ダオスタの代表的なセコンド・ピアットの話です。
この料理は北の料理の中では珍しく、イタリアの国民的肉料理として国中に広まっています。
ただし、ポルタフォーリオという別名がつけられています。

正式名は、コストレッテ・アッラ・ヴァルドスターナ。

こんな料理
 ↓



コトレッタ・ミラネーゼにそっくりですが、中にヴァッレ・ダオスタ名物のフォンティーナとハムのスライスをはさみます。
ミラネーゼより、ある意味豪華。

総合解説」ではハムもヴァッレ・ダオスタ産を使っています。
炭火で焼くSaint-Oyenのプロシュットというのが美味しいそうです。

ヴァッレ・ダオスタは公用語がイタリア語とフランス語なので、町の名前がフランス語風だと、読めない。
セント・オイエンでしょうか。

まあ、ヴァッレダオスタのハムが手に入らなけくても、ポルタフォーリオという名前にすれば、すべて解決です。


家庭料理の秀作『マンマ・ミーア』↑には、ヴァルドスターナのバリエーションが載っています。
それによると、コストレッタは骨付きを使います。
肉に厚みがあるのでハムとチーズはこの順で、はさまずに、肉にのせます。
肉もチーズも、かなり厚めです。
チーズが溶け出したらオーブンに移して焼き上げます。
この方法だと、肉がぶ厚いまま焼き上がり、生ハムの縁がこんがり焦げて、その中にトロトロのチーズが黄色く輝いている、という、とてもボリューミーで美味しそうな姿です。
山小屋で働いている息子たちの大好物、みたいな料理です。

セント・オイエンのカーニバル
 ↓






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“ヴァルドスターナのバリエーション”の日本語訳は、「総合解説」2016年2月号に載っています。
マンマ・ミーア
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2018年6月20日水曜日

ピッツァ・アルタとピッツァ・バッサ

新入荷のスローフードのピッツァの本、『ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ』の解説その2です。


今ではピッツァの本場はナポリという説が世界中に広まりましたが、地元愛が強いイタリアでは、地方ごとに広まったピッツァのスタイルが違いました。
例えばフィレンツェ、そしてトスカーナでは、カリッと焼き上げた、縁が平らなpizza bassa が広まりました。
よく火が通ったものが好まれたのです。
ナポリのピッツァの、柔らかくて溶けるような生地に慣れていないトスカーナ人には、生焼け状態と取られて、人気がでなかったのです。
なので、フィレンツェのピッツァ・ナポレターナの中には縁の厚さが出る程度の薄くてカリッとしたピッツァを焼いて、ピッツァ・ナポレターナには生地が2倍必要だからと2倍の値段をつける店もありました。
それでも、フィレンツェでピッツェリアを開くナポリのピッツァイオーロはいました。
カンパーニア生まれ、キアンティ育ちでフィレンツェでピッツェリアを開いたジョヴァンニ・サンタルピア氏は、
「私がフィレンツェに来た時、まだフィレンツェにはナポリピッツァのファンはいませんでした。
 みんなpizza altaは重いと信じていて、麺棒で伸ばしたピッツァのほうがナポリのピッツァより重いことを知りませんでした。
私のピッツァは時間をかけて発酵させて、ナポリのアルティジャナーレの伝統通り、手で伸ばします。
でも、焼き時間を変えてみました。
若干長めにして柔らかいけれどカリッと焼き上げて地元の好みに合わせたのです」

ジョヴァンニは、キアンティで店を始めた当初は、liebito di birra(生イースト)を使っていましたが、すぐにlievito madre(天然酵母)に変えました。
そしてそれ以来、ずっと使っています。
さらに、ヴィギッツォロ・デステのピッツァ大学(webページはこちら)に通って、まったく新しいピッツァ作りに挑戦します。

そして2010年に、フィレンツェの中心部にラ・ディヴィーナ・ピッツァを開き、フィレンツェの人々の、質のよいストリートフードとしてのカットピッツァを食べたいという要求に答えていきます。

本ではさらに、ナポリピッツァが世界中に広まった21世紀の、フィレンツェ生まれのピッツァィオーロのエピソードと続きます。
本にはリチェッタも載っていますが、きょうはここまで。

小さくて居心地の良いグラツィアーノの店は、彼のオリジナリティーに満ちています。
ディヴィーナ・ピッツァ
 ↓


ナポリ・ピッツァがイタリア中に広まった背景には、興味深いエピソードが満載でした。


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ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ
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2018年6月18日月曜日

鴨のラグーのパッパルデッレ

今月の「総合解説」のパスタの記事は、“トスカーナ風パスタソース”です。
監修は、イタリア料理アカデミー会長で、フィレンツェ料理の専門家、料理書の著作もたくさんあるパオロ・ペトローニ氏。

イタリア料理アカデミーは、こんな団体。
 ↓


彼の本は、クレアパッソでも販売しています。

豪華で詳細なトスカーナ料理の本の集大成。
ペトローニ氏の代表作。

イル・グランデ・リーブロ・デッラ・ヴェーラ・クチーナ・トスカーナ



上記の本のコンパクト版『リチェッテ・デッラ・クチーナ・トスカーナ


パスタも大好きなペトローニ氏のパスタの本。
スパゲッティ・アモーレ・ミオ


本格的なものから手軽なものまで多数あります。
権威ある団体の会長を務めるだけあって、学者肌のまじめな人物。
フィレンツェ生まれで母親はフィレンツェ、父親はルッカの人。

そんな彼が監修したトスカーナ風パスタの記事は、トスカーナは肉食系の食文化だ、という話から始まります。
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナが有名ですが、トスカーナの肉料理は狩猟肉や家禽類。
そしてトスカーナ風パスタとは、手打ちパスタと家禽のソース。
代表的なのは鴨のラグーのパッパルデッレです。

1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ

によるとアレッツォの伝統料理だそうです。

ラグーは、エミリア地方のラグー、別名ミートソースとは違って、挽肉ではなくブラーチョラと呼ばれる肉の切り身から作ります。
さらにパスタにかける量は少なめ。

今月訳したリチェッタは、
■鴨のラグーのパッパルデッレ
■ペンネ・アル・コッチョ (ポルチーニ、グリーンピース、リガティーノ、黒トリュフ)
■農民のマッケローニ(マッケローニは幅広のパッパルデッレのこと)
■子羊とアーティチョークのパッパルデッレ

ペンネに使っているリガティーノとはトスカーナ版パンチェッタ。

リガティーノの天日焼き
 ↓


この話、もっと早く知りたかった。
トスカーナに行って、鴨のラグーのパッパルデッレを食べなかったなんて、残念すぎる。




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トスカーナ風パスタソースの生地の日本語訳は「総合解説」2016年2月号に載っています。
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2018年6月16日土曜日

南イタリア産の唯一のりんご

「総合解説」2月号発売しました。

まずは今月の食材。

今月は、ラ・メランヌルカです。
いったい何でしょう。
ヒントは、果物です。
産地はカンパーニア。

別名メーラ・アンヌルカ・カンパーナ(Melannurca Campana)というカンパーニアIGPのりんごです。

りんごというと北国のイメージがありますが、カンパーニアには少なくとも2000年以上前からあった品種で、西暦79年にポンペイと一緒に噴火で廃墟になった街、エルコラーノの遺跡にも描かれているそうです。
下の動画にもその壁画がちらっと登場しています。
家庭の壁画には身近な果物が描かれたので、このりんごもかなり普及していたと考えられます。 



一般的なりんごより小型で、ヘタも短くて柔らかい品種。
 収穫後に皮が赤くなるように(80~90%)、水はけを良くするための切り屑や松の葉の上に広げて熟成させます。



手作業で摘み取り、1個ずつ手作業で裏返すという、手間のかかる作業で熟成させます。

カンパーニアの沿岸部一帯に広まった、地中海に愛されたりんごです。
イタリアで最も人気のある品種とか、通好みという人もいて、別名りんごの女王様。

ミルクの次に人間が口にするのはりんご、というわけで、その優れた栄養価も注目されています。

イタリアの代表的りんごの産地の一つ、アルト・アディジェ。
カンパーニアとは全く違う環境です。




北の山のりんご比べると、カンパーニアのアンヌルカは、かなり特殊な環境で栽培されているのですね。

アンヌルカの収穫量は、イタリア全体のりんごの5%。
でも、その割には料理書に登場する機会はかなり多いです。

アンヌルカのオーブン焼き。アマレット詰め。



ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズの『カンパーニア』には、

「アンヌルカとトマトはカンパーニアのシンボル」と紹介されています。

1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ』には、



「イタリア南部で栽培されている唯一のりんごで、
カンパーニアの5つの県すべてで栽培されている。
もっとも伝統的な産地はヴェスヴィオ山のふもと。
長期間保存できるのでカンパーニア土産としてもお勧め」
と書かれています。


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“メーラ・アンヌルカ”の説明は「総合解説」2016年2月号に載っています。
新着書籍
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2018年6月13日水曜日

注目のジェラートの本

新着書籍のご案内です。

ジェラーティ』。


レッジョ・エミリアの人気のジェラテリーア、クレメリア・カポリネアのジェラートです。
ガンベロ・ロッソが初めて発表したジェラテリーアの格付け本では、37000軒あるイタリアのジェラテリーアの中からガイドに載る300軒に選ばれ、最高のトレ・コーニを獲得しました。
イタリアのグルメ情報サイト、Dissaporeでは2016年度の最優秀ジェラテリーア・イタリアーネ。
店主のシモーネ・デ・フェオ氏は今、注目のジェラート・マエストロです。




彼のジェラートに惚れ込んだ編集者が、家庭でも彼のジェラートの味を再現したい、という一心で作り上げた情熱あふれる美しい本です。

最初に、ジェラートの歴史を簡単に説明していますが、その中で、ジェラートはパスタやピッツァと同じ道を歩みつつある、と語っています。
世界中で愛されたがゆえに、本物のイタリアのジェラートが、姿を消しつつある、というのです。
ジェラートの歴史は、9~11世紀にシチリアがアラブに支配された時代に伝わった水と砂糖がベースの氷、ソルベットから始まります。
ルネサンスの時代には、フィレンツェのカテリーナ・デ・メディチの宮廷で大流行します。
彼女が後のフランス王と結婚した時、料理人とパスティッチェーレとジェラタイオをパリにつれていったと言い伝えられています。
16世後半のトスカーナ大公の宮廷では、エンジニアで建築家のベルナルド・ブオンタレンティによって牛乳、蜂蜜、卵をマンテカーレする機械が発明されて、最初の冷えたクレーマが誕生します。
イタリアのジェラートの父は、シチリアのパスティッチェーレで、1686年にパリでカフェ・プロコプを開いて氷水とジェラートで大成功したプロコピオ・デイ・コルテッリという人物だと言われています。




シモーネ・デ・フェオ氏のジェラートは、本の一番最初のリチェッタ、フィオルディラッテのジェラートが基本になっています。
基本の材料は、砂糖、増粘安定剤、油脂ですが、増粘剤にはカッルーベの粉(キャロブパウダー)を使います。
フィオルディラッテのジェラートは油脂が牛乳。
これにレモンの皮、バジリコ、シナモン、バニラとオレンジ、スターアニスとミントなど加えるものによってバリエーションは無数にできます。

他に、バリエーションは、ストラッチャテッラ、パンナ・コッタ、マスカルポーネ+いちじく、リコッタ+蜂蜜+ローズマリー、マスカルポーネ+レモン+松の実、マスカルポーネ+ケッパー+コーヒー、ヨーグルト+エキストラバージンオリーブオイル+タイムなど、本物のイタリアのジェラートを追求して、いちばん大切なのは味だと言い切るデ・フェオ氏ならではのラインナップ。
どんな味なのか、気になるものばかりです。



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新着書籍
ジェラーティ
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2018年6月11日月曜日

ウェリントン・ブーツとビーフ・ウェリントン

今日はワインの話題。
今月のテーマは「ヒレ肉に合うワイン」。
リチェッタの「ヒレ肉」の記事と連動しています。

記事の最初の料理は“フィレットのウェリントン”
 ↓


ビーフ・ウェリントンという名前で知られるイギリス料理。
初代ウェリントン侯爵、アーサー・ウェルズリーにちなんだ料理。
彼はワーテルローの戦いでナポレオンに勝つなど数々の軍功を上げている将軍で国民的ヒーローです。
このヒレ肉をパイで包んだこの料理が、彼のトレードマークのブーツに似ていたからこう呼ばれるようになったそうです。
彼のブーツはウェリントン・ブーツと呼ばれています。
 ↓


名前カッコいいけど、これはいわゆるゴム長です。

キャストが豪華なBBCのシトコム、ブラックダダーの一場面。
主役のローワン・アトキンソンとドクター・ハウスのヒュー・ローリーが超面白いけど、赤いジャケットでロングブーツの人がウェリントン侯爵です。



いけない、また横道に・・・。
ワインの話でした。

ヒレ肉は水分が多いデリケートな肉なので、白やロゼも合うんですね。
下処理
 ↓


ソムリエのお勧めの1つは、フリウラーノ。
ドライでほろ苦さのある個性的な白を組み合わせたそうです。
他にはアルバーナやヴェルディッキオなど。

フリウラーノは元々はトカイと呼ばれていましたが、ハンガリーのトカイと区別するためにトカイ・フリウラーノとなり、結局フリウラーノとなりました。

お勧めのフリウラーノはレナード・ケベル。
フリウラーノはこんなワイン。
 ↓



レナート・ケベルのぶどう畑
 ↓



鉄の侯爵と呼ばれたイギリスのヒーロー、アーサー・ウェルズリー侯爵のゴム長を思い浮かべながらヒレ肉のパイ包みを食べてみたくなりました。


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“柔らかいヒレ肉に合うワイン”の記事と“ヒレ肉”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年6月8日金曜日

最上階のゴージャスレストラン

今日は「総合解説」から注目店の紹介。
テーマは、星付きシェフたち、ですが、
この星というのはミシュランの星だけでなく、文字通り、空の星のこと。
つまり、星に近い、高層階にあるレストラン、ということ。

まずはミラノのリストランテ・ウニコ。
wjcタワーの最上階にあり、360度窓。
フェリーチェ・ロ・バッソシェフはプーリア生まれで以前はドロミテのレストランにいたという、海と山、どちらもOKという人。



彼はウニコの成功でステップアップしたようで、ウニコをやめてミラノのガッレリーアに、自らの名前を冠した店、“フェリックス・ロ・バッソ”を出しました。
こちらも眺めの良い店だそうです。



まさに今、のりにのってるシェフですね。
次は東洋かアメリカに出店したいそうですよ。

次はナポリのモダンなホテル・ロメオのルーフトップの店。
夜景が素晴らしい。
こんなゴージャスなホテルがあるなんて、ナポリはすごい勢いで変わってるなあ。



サルヴァトーレ・ビアンコシェフはマルケージ・チルドレン。
「総合解説」でリチェッタを紹介しているカンデーレは、かつお節をトッピングしています。
他に、「総合解説」によると韓国のクルトマトや中国で人気のアフィラ・クレスというスプラウトなど、世界中の食材を使いこなしています。




最後はローマの高級ホテル・パラッツォ・マンフレーディの最上階の店、リスランテ・アロマ。
コロッセオに面していて、部屋やレストランからコロッセオが眺められると言う超立地。
ルレ・エ・シャトーグループのホテルです。



こ、これはすごい。
私のお上りさんごころが激しく揺さぶられています。
ローマとナポリのホテルは、この夜景を眺めながら食事をしに、今すぐ行きたくなりましたよー。

ジュゼッペ・ディ・イオリオシェフ。







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“星つきシェフたち”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年6月6日水曜日

『ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ』

今月の新着書籍1冊目は、『ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ』

スローフード出版の本です。

この出版社の本は、とても素晴らしいものばかりなのですが、欠点は、とてもアカデミックでまじめ、ということ。

この本も、料理の写真が少な目で、ちょととっつきにくいです。
でも、これだけの内容をとっつきにくいと言う理由で読まないのは、もったいない。
最初だけ、ちょっと気合を入れて読んでみましょう。
すぐに内容に没頭できます。

ピッツァの本というと、主にナポリのピッツァを取り上げる本が多いのですが、この本は、ボローニャやピエモンテのピッツェリアも取り上げています。

ナポリのピッツァイオーロとしてこの本が一押ししているのは、エンツォ・コッチャ氏。
彼は20~21世紀のナポリのピッツァを代表する人物でピッツァ作りの限界と常識の壁を取り除いた最初の人物と評価しています。
かなり早い時期からアルバの白トリュフをピッツァにのせていた人物でもあるそうです。

この本で紹介しているもう一人のナポリのピッツァイオーロは、ジーノ・ソルビッロ氏。
ピッツァは70年以上携わっている家族の仕事で、彼の父親は21人兄弟の19番目だそうです。
しかも兄弟全員ピッツァイオーロ。
これは二の句が継げないですねえ。



彼はピッツァイオーロの中でも、トッレ・デル・サラチーノのジェンナーロ・エスポジトシェフや、ドン・アルフォンソのエルネスト・イアッカリーノシェフなどとコラボをした最初の人物で、テレビやSNS という新しいメディアを利用するのが得意なようです。

ヴェローナ県には、シェフ・ピッツァイオーロという呼び方を定着させた人物の一人、シモーネ・パドアン氏がいます。
彼のピッツァは伝統のピッツァとグルメのための料理の組み合わせ。
彼の凝り性な性格も影響しているそうです。




この本は冒頭に、ピッツァはハンバーガーに勝った、という文章が出てきます。根拠は、検索するとピッツァ関連のwebページがハンバーガー関連より3倍多いから、だそうです。
ちょっと安直だとは思いますが、ピッツァは世界で一番広まっている食べ物だと言い切る自身も、大したものです。
その自身の根拠は、イタリア移民です。
外国に移民したイタリア人の数は、イタリアに住むイタリア人の数とほとんど同じで、しかも移民の子供や孫が増えれば、イタリア料理をふるさとの味とする外国人は、増える一方です。
アメリカの新聞、USAトゥデイがアメリカの若者12000人を対象に行った調査によると、24%がピッツァを一番身近な食べ物に選んだそうです。
ピッツァはアメリカにすっかり受け入れられたようです。
同じく移民が多かった国、ブラジルにも受け入れられました。

ちょっと眺めただけでも興味深いエピソードが満載の本です。
次回はリチェッタをいくつか訳してみます。



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『ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ』の詳細はこちら
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2018年6月4日月曜日

ベルーガ・レンズ豆

今月の「総合解説」は1月号なので、毎年、10人中9人のイタリア人が年末年始に食べるというレンズ豆の話題は避けて通れません。
ほぼ全国民が食べるとは言っても、レンズ豆が脚光を浴びてスターになれるのは、年1回、この時期だけ、というのがこれまでの常識でした。
ところが、レンズ豆の世界にも次のスターが現れたようです。
このブログで最初に紹介したのは4年前のこと。
そのレンズ豆はキャビアに似ていることからレンティッキエ・ネレ・ベルーガと呼ばれる黒レンズ豆。
見た目にインパクトがあるのでパスタに、魚料理にと、年末年始にコテキーノに添えるだけではない大活躍です。



ちなみにカステッルッチョのレンズ豆の花の時期は6月初めだそうなので、ちょうど今頃ですね。

下の動画は2016年の様子です。
花は7月後半まで咲き乱れて、多くの観光客が訪れたそうです。
この年はこの後、イタリア中部を大きな地震が襲ったので、その後どうなったか心配です。
 ↓


地震直後のカステッルッチョ。
 ↓


冬は雪が積もって道も通行止めになる標高1300mの山の上で、カステッルッチョの住民たちは避難を余儀なくされて、ほぼすべてのレンズ豆農家が村を離れたのだそうです。
今年の夏に観光客を呼び戻すには5月までに種まきを終えなければなりませんが、種まきをした農家はわずか1軒。
地震前までは毎年数万人が訪れた観光客も、去年は数百人だったそうです。
去年と今年ではほとんど何も変わっていない、という住民もいます。

そうでなくても収穫量が少なくて貴重品扱いだったカステッルッチョのレンズ豆。
畑を疲弊させないように人手をかけて丁寧に作られていました。
現在も中世に広まったレンズ豆、小麦、牧草(休耕)の三圃式農業で栽培されています。
この先、ますます貴重品になりそうです。

レンズ豆はシリア原産で、約7000年の歴史があります。
人間が栽培した最初の豆とも言われています。
地中海全域に広まって、主に修道院で栽培されていました。
断食の日の肉に匹敵するたんぱく源だったのです。
レンズ豆のズッパは、イタリアのすべての州で伝統料理として作られています。

ナポリのレンズ豆のズッパ
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ところで、ベルーガは甘くて香りが良い豆で、30分ゆでてもアルデンテ。
ここ最近のブラックフードのブームも後押しして、人気が出ています。
脂肪分が少なくてタンパク質と繊維が豊富と、栄養価も注目されています。
ただ、寿司にも使われているという意味不明の説明もあったりして、まだまだ知識が広まるのはこれからのよう。

「総合解説」p.16には“カボチャとベルーガレンズ豆のスパゲッティ”のリチェッタを載せていますが、黒くてふっくらした粒粒のレンズ豆は、白っぽいパスタの色合いを締める効果もあります。



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“レンズ豆”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年6月1日金曜日

チーズの王、カステルマーニョ

今月の「総合解説」では、マスカルポーネとカステルマーニョという2つのチーズを紹介しています。
どちらもピエモンテのチーズですが、その特徴は正反対と言えます。
何しろ、マスカルポーネはチーズ臭がないチーズ。
一方カステルマーニョは熟成させるとチーズ臭しかないチーズ(個人の見解)。
初めて味見したカステルマーニョはかなり熟成させたタイプだったようで、匂いをかいだ時は、はき続けた中学生の靴下みたいな匂いがしました。
その時の印象が強烈すぎて、カステルマーニョという名前はトラウマになりました。

こんなチーズ
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こんな素晴らしい環境で造られていたなんて、知らなかったなあ。
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ピエモンテ訛にはイタリア語の字幕つき。

「総合解説」に日本語訳を載せた記事は、他にも意外な話で一杯でした。
たとえば、このチーズ、皇帝や法王と言ったVIPに愛されたんだそうです。
ピエモンテはサヴォイア家のおひざ元だけあって、王のワイン(バローロのこと)とか、〇〇の王、という王をからめた二つ名が好きです。
カステルマーニョはチーズの王だって。

さらに、記事によると管理組合に所属する造り手はわずか7軒。
生産地区はカスステルマーニョを含むたった3つのコムーネ。

60年代には消滅の危機もありましたが、今はイタリアの内外にファンが増えているそうです。
年間製造量は約4万個。
臭いチーズははまると深いのかなあ。
ただ、市場の売れ筋は3~4か月熟成のマイルドなものだそうです。

そういえば、先月の「総合解説」で取り上げたチンタ・セネーゼも、数が減りつつある豚でした。
手間暇かけた飼育方法が合わなかったのか、もっと大きくて繁殖させやすい品種に押されてしまったんだそうです。
チンタ・セネーゼが消滅の危機から立ち直りだしたりは20年ほど前。
カステルマーニョと同じぐらいの時期です。
昔のままの製造方法で作るこのチーズ、時間も他のチーズより長くかかります。
緑色のラベルの“アルペッジョ”タイプは、夏に標高1000m以上で造られたもの。
ミルクはフレッシュの牧草を与えられた牛の生乳。
青いラベルの“山”のタイプは標高600m以上。

カステルマーニョ“アルペッジョ”
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カステルマーニョは蜂蜜を少量かけてテーブルチーズとして食べるのも美味しいですが、リゾットなどプリーモ・ピアットにもぴったり。
カステルマーニョのリゾット
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地元の伝統料理、カステルマーニョのニョッキ
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カルロ・カンビの『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ』には、この料理について、こんなことが書いてありました。




「好みで粗挽き黒こしょうをかけたりアカシアの蜂蜜をたらしてもよい。
このニョッキは放牧(アルペッジョ)の伝統から生れた料理。
9月の末に、高原にはほとんど、またはまったく食べるものがなくなって、牛は平野に下りてくる。
残っているわずかなチーズ、じゃがいもなど限られた材料でこのニョッキを作るが、カステルマーニョのおかげでおいしい料理になった」

もう一度上の動画を見ると、ニョッキの味が想像しやすくなるかも。
ちなみに組み合わせるお勧めのワインはバルベーラ・ダルバ。





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“カステルマーニョ”の記事の日本語訳は「総合解説」2016年1月号に載っています。
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アサリとムール貝に合うワイン

今日はワインの話。 お題は「アサリやムール貝に合うワインは?」 味も歯ごたえも違う貝ですが、一緒に料理にすると、互いに補完し合って、厚みのある味の貝の料理を生み出します。 で、貝のミックスに合うワインはと言うと、『サーレ・エ・ぺぺ』誌のソムリエによると、イタリアの白は、様...