2021年12月28日火曜日

リコッタのパスタは卵の代わりにリコッタを使ったカルボナーラのアレンジの一種。

きのうはリコッタの話でしたが、(CIR)のリチェッタは、パプリカ、ソラマメ、リコッタのエリケでした。
リコッタのパスタか、というわけで、とりあえず、リコッタ作りが盛んなシチリア料理のリチェッタを探してみました。
リコッタのパスタ

すると、ブランカートのミニシチリア料理シリーズ

の中に、ソラマメとリコッタのパスタというのがありました。
あれ、これもソラマメとリコッタの組み合わせ。
リコッタは熱いパスタとあえるだけで溶けて簡単に他の具をつなぐソースになります。
upされている動画の多さからもシチリアでは人気のパスタとわかります。

シチリア風ソラマメとリコッタのパスタPasta FAVE e RICOTTA alla SICILIANA
材料/
ソラマメ・・冷凍120~150gまたは生100g
ショートパスタ(カザレッチェ、トロフィエなど)・・220g
にんにく・・1かけ
玉ねぎ・・1/2個
フィノッキエット・セルバティコ・・4枝
リコッタ・・150g
野菜のブロードまたはたは水・・1/2カップ
オリーブオイル、塩、こしょう

・ソラマメをゆでて薄皮をむく。
・玉ねぎのみじん切りとにんにくを油でソッフリットにし、フィノッキエットと野菜のブロード、ソラマメを加えて5分なじませる。
・パスタをゆでる。
・リコッタに塩、こしょうを加える。
・パスタ、ソラマメ、リコッタを混ぜて皿に盛り付け、リコッタのクネルとフィノッキエットで飾る。

リコッタが入らないソラマメのパスタというのもあります。この場合はソラマメの最強の相棒、ペコリーノを加えます。

ソラマメとリコッタのスパゲッティ。

ここまでくると、カルボナーラまではあと一息。カルボナーラのアレンジ的パスタ。

・パスタをゆでる湯でソラマメをゆでて取り出し、薄皮をむく。
・同じ湯でパスタをゆでる。
・フライパンで潰した皮つきにんにくをソッフリットにし、ソラマメとゆで汁少々を加えてなじませる。
・リコッタにレモンの皮のすりおろしを加える。
・ソラマメが柔らかくなったらこしょうを加えてにんにくを取り除く。
・火を弱めてリコッタを加える。パスタのゆで汁を加えてクリーム状に溶き、パスタを加えてマンテカーレする。
・トングとレードルを使って巻いて皿に高さを出して盛り付ける。揚げたパスタで飾り、こしょうを散らす。


ソラマメは暖かい季節になって畑に戻る時期が来た、というカレンディマッジョcalendimaggioの祝いには欠かせない食材。
イタリアでは、毎年この日(5月1日)を中心に、膨大な量のソラマメが消費されます。

さらに、もう一つ、リコッタとソラマメに相性抜群の食材があります。
サラミです。
この組み合わせはピッツァでも定番。

2021年12月27日月曜日

リコッタのオーブン焼き。

(CIR)4月号、ブリーモ2品めは、“パプリカ、ソラマメ、リコッタのエリケ”。
このリチェッタの面白いところは、リコッタです。
リコッタをオーブンで焼いてからソラマメ、パプリカと一緒にパスタに加えます。

リコッタはチーズを作るときにできるホエイが主役のフレッシュな乳製品。
ミルクにカードを加えて固め、ホエイを分離して再び熱したものですが、産地によってさまざまなタイプが作られています。
原料のミルクは牛、山羊、羊、水牛のミルクから作ります。

シチリアの羊飼いが作るリコッタ。

リコッタ・ピエモンテーゼは、かつては羊のミルクから作ったけれど、今は牛乳のみから作っています。
リコッタ・ロマーナは羊のミルクのみから作られます。
リコッタ・フレスカのほかに、リコッタに塩をまぶして保存できるようにしたリコッタ・サラータもあります。水分が抜けたリコッタ・サラータは、かなり違う姿になります。


リコッタをオーブンで焼くリコッタ・アル・フォルノはシチリアやカラブリアの名物リコッタ。

リコッタのオーブン焼き、唐辛子風味ricotta al forno con peperoncino

前菜やアペリティーボになります。

材料/
牛乳や羊乳のリコッタ・・1個、250g
粉唐辛子またはパプリカ(甘口、辛口は好みで)、カレー粉、ポピーシード、ハーブなど

・水気を切ったリコッタに粉唐辛子をまぶし、180℃のオーブンで20分焼く。
・冷めたら切り分けてサーブする。

焼いたり塩を加えたりして固めたリコッタはおろして使うことができるので、パスタにかけるなどの使い方が可能になります。
今月のリチェッタでは、ほぐして小さな粒にしたリコッタをオーブンで焼きます。ソラマメやパプリカとほぼ同じ大きさにしてショートパスタと組み合わせた1品。

リコッタのオーブン焼き、ハーブ風味ricotta al forno speaiata
・リコッタを半分に切ってオーブン皿に入れ、好みのドライハーブ(オレガノとイタリアンパセリなど)とスパイス(パプリカ)を散らし、EVオリーブオイル、塩、こしょうをかける。
・180℃のオーブンで1時間焼く。

2021年12月26日日曜日

スカンピのエッセンスは身ではなく殻の中にある。ハリーズバーのスカンピのビスク。

スカンピ料理はベネチアの名物料理、というわけで、それじゃ、とハリーズバーの本を探してみたら、ハリーズバーには“スカンピのビスク”というメニューがありました。
そしてこんな文章が添えられていました。
「スカンピの味のエッセンスは身ではなく殻の中にある。」

まずは基本のリチェッタ、クルマエビとスカンピのビスクBisque di mazzancolle e scampiの動画をどうぞ。

・エビは殻を取って苦みがある目を取り除く。
・発色をよくするために、油を回しかけてタイムと塩を散らし、よく混ぜる。
・180℃のオーブンで10分焼く。
・玉ねぎ、にんじん、セロリ、トマト2個、トマトペーストをバターでソッフリットにし、オーブンで焼いた殻を加える。白ワインとアルマニャックをかけてアルコール分を飛ばす。
・ブロード・ディ・ペッシェと氷(殻500gに対してブロード500g、氷500g(発色をよくするため)、トマト、タイム、塩、こしょうを加えて45分煮る。
・ハンディミキサーで撹拌し、濾して殻を全部取り除く。
・パスタのソースなどにする。

それではハリーズ・バーのスカンピのビスクBisque di scampiのリチェッタをどうぞ。
材料/6人分
スカンピの殻・・450g
オリーブオイル・・30ml
玉ねぎのみじん切り・・1個
セロリのみじん切り・・2本
にんじんのみじん切り・・小1本
小麦粉・・50g
ブランデー、白ワイン
粉サフラン・・小さじ1
熱したブロード・ディ・ペッシェ・・2ℓ
イタリアンパセリ・・1房
ローリエ・・1枚
バター・・30g
生クリーム・・250ml
卵黄・・1個
カイエンヌペッパー・・小さじ1、塩

・スカンピの殻をむいて4つに切る。
・ビスクを作る間、スカンピは冷蔵庫に入れておく。
・大鍋に弱めの火で油を熱し、スカンピの殻をピンク色になるまで炒める(5分)。
・玉ねぎ、セロリ、にんじんを加えて5分ソッフリットにし、小麦粉を散らしてよく混ぜる。
・蓋をせずに2~3分熱し、ブランデー大さじ2でフランベする。
・火が消えたら白ワインをかけて1分煮る。
・熱したブロードでサフランを溶く。
・殻にブロード少々、塩、カイエンヌペッパー、イタリアンパセリ、タイム、ローリエを加えて沸騰させ、火を弱めて蓋をして30分煮る。
・スカンピを加えて2~3分熱してピンク色にする。残りのブランデーでフランベし、汁ごとズッパに加える。
。サーブする直前に塩味を整えて生クリームと卵黄でつなぐ。
・熱しスープ皿に注ぎ、すぐにサーブする。

スカンピとエビのビスクのスパゲッティSpaghetti con Scampi e Bisque di Gamberi e Crostacei


・アルデンテにゆでたスパゲッティを熱したビスクに入れてマンテカーレし、仕上げにマリネしたスカンピとゆで汁少々を加えてさらにマンテカーレする。
・トングとレードルで巻いて皿に長く盛り付け、スカンピで飾ってこしょうをかける。

2021年12月25日土曜日

クリスマス料理定番でもあるベネチアのスカンピのスパゲッティ。

新しい(CIR)から、今日はアンティパスト。
スカンピのグラティナーティscampi gratinatiです。
スカンピは、動物性脂肪を食べないマーグロなクリスマスイブの料理としても普及しています。
ビーチリゾートのレストランの定番メニューというイメージのスカンピのグラティナーティに、グレープフルーツという定番とは違う柑橘果実を組み合わせたもの。

基本のグラティナーティは、
・スカンピを半分に開いて背ワタを取り、天板に並べる。
・パン粉、塩、ガーリックパウダー、油、イタリアンパセリ少々を混ぜてスカンピに詰め、油を回しかける。
・180℃のオーブンで10分焼く。

グレープフルーツ風味にするには、パン粉にグレープフルーツの皮のすりおろしを加えて焼き、焼きあがったらグレープフルーツの汁をかける。

スカンピのパスタの定番は、ベネチアのスカンピのスパゲッティことアッラ・ブーザラ。


Spaghetti alla Busaraスパゲッティ・アッラ・ブーザラ

グイド・トンマージの地方料理シリーズの『クチーナ・ディ・ベネチア

によると、
スパゲッティなどの乾麺はベネチアではあまり一般的ではなく(例外はビゴリ)、この料理は比較的最近になって普及した。材料に唐辛子やトマトがあるのもその表れだとか。
上の動画では、この料理はトリエステかイストリア地方の料理、と説明しています。ブーザラとはブジーア(嘘)のことで、魚やスカンピの切り落としなどの部位から作るのが由来だそうです。または、漁師が漁船でこの料理を作るときに使う鍋の名前が語源、という説もあります。

材料/
トマトのパッサータかホールトマト・・200g
イタリアンパセリ
にんにく
オリーブオイル
唐辛子
スカンピ・・300g
スパゲッティ・・300g

・ナイフかはさみでスカンピの背を開く。
。パスタをゆでる。
・フライパンに油大さじ2と唐辛子、にんにく2かけを入れて2分ソッフリットにする。
・にんにくに色がついたら取り除き、火を弱めてスカンピを入れ、1分炒める。
・白ワイン1/2カップをかけてアルコール分を飛ばし、イタリアンパセリを散らす(火を通しすぎない)。
・スカンピの頭を外してフライパンに戻す(頭の出汁は次に加えるトマト用)。
・胴は身を殻から出して後で加える。火が入りすぎないようにする。トマトと塩を加えて2分煮る。
・ゆであがる直前のパスタとスカンピの身を加えてなじませる。頭は取り除かない。イタリアンパセリのみじん切りを散らしてゆで汁を加え、強火で1分マンテカーレする。


2021年12月24日金曜日

春の組み合わせ、ヤギのチーズとアボカドのスプーマと桃のカクテル、ベッリーニ。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2020年4月号発売しました。




春の号のアペリティーボ1品目は、“アボカドとカプリーノのスプーマspuma di avocado e caprino”
アボカドとカプリーノの薄緑色のクリームに鮮やかな赤いドライトマト、ミックスナッツ、細く切ってトーストしたパン、さらにこの季節ならではのカクテル、ベッリーニbelliniを添えます。4月のディナーにふさわしい華やぎのあるスタート。

イタリアでも山羊のミルクの野性味が苦手な人は多かったようですが、現在では生産者はあらゆる過程を見直して、誰からも受け入れられるチーズに改良したそうです。

山羊は山の生き物。標高の高い北の山で飼育されている。
チーズの味の決め手は春なら野草。冬なら干し草。
一方ドライトマトは南ならではのもの。
南イタリアの太陽をたっぷり浴びて作られる。

ベッリーニは言うまでもなく、ベネチアのハリーズ・バーの名物カクテル。
洗練された都会的なイタリアの一面が凝縮した飲み物。

店の経営者一族の自伝的本、『ハリーズ・バー』によるとこのカクテルは、長い間桃が旬の7月にしか作らないカクテルだった。あの美しいバラ色はこの時期にしか出せなかったのだ。

リチェッタは、白桃の果汁・・1/4
プロセッコ・ディ・コネリアーノかスプマンテ・・3/4


=====================================

2021年12月23日木曜日

ウンブリアのパスタだけど、トスカーナのピチの仲間、ウンブリチェッリ。

今日の記憶に残るウンブリア料理はパスタです。
ウンブリアならではの名物パスタというと、“ウンブリチェッリumbricelli”というのがあります。
地方料理のパスタの本、『パスタ・フォルメ・デル・グラノ

には、
名前からしても、どう考えてもウンブリアのパスタですが、実は歴史的にはウンブリアとの結びつきは全然ない、と言われている乾麺のスパゲットーニです、とあります。
パスタメーカーがウンブリアっぽいとこの名をつけたらしいのですが、
どうやら歴史的にはピチpiciの仲間のようです。
ウンブリアのレストランではピチよりウンブリチェッリのほうが人気があったようで、今ではトリュフのシーズンにはノルチャの黒トリュフのウンブリチェッリがウンプリア料理としてすっかり有名になりました。

ウンブリチェッリumbricelli

材料/4人分
0番の小麦粉・・400g
水・・適量、塩

・小麦粉をフォンタナに盛り、水と塩を加えて10分こねてなめらかな締まった生地にする。
・布巾で覆って1時間休ませる。
・少量取って手で転がしながら伸ばし、太いスパゲッティ状にする。

黒トリュフを練り込んだ乾麺のパスタを使った料理。
ウンブリアの黒トリュフのパスタpasta al tartufo nero umbro


材料
黒トリュフ
上質のEVオリーブオイル
にんにく
セモリナ粉のパスタ(ピチ、チリオーレ、ストロッツァプレーティなどに似たパスタ)

・トリュフを細かい目ですりおろす。
・パスタをゆでる。
・フライパンにたっぷりのオリーブオイルとにんにく2かけを熱し、オイルをトリュフにかける。
・ゆで上がったパスタを加えてあえる。

白トリュフ料理のタヤリンやフェットッチーネもトリュフによく合うけど、ピエモンテやアルバ色やが濃すぎるのが欠点。

トリュフのスパゲッティの動画があったけど、ゴージャス感は半減。

定期購読いただいている(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2020年4月号、本日発送します。郵便物の配達日数がこれまでより若干かかるようになっています。ご了承ください。お問い合わせはいつでもどうぞ。
=====================================

2021年12月22日水曜日

ウンブリアのネロ・プレジャートとオリーブオイル。

ペルージャの記憶に残る料理、その3はトリュフのパスタです。
初めて食べたトリュフのパスタは、トリュフ風味のオイルを垂らしただけのシンプルなものでしたが、その時以来、その香りは忘れられないものになりました。
帰国後にさっそくトリュフオイルを買い込み、パスタを再現してしばらくトリュフにハマっていました。
ペルージャでトリュフといえば、黒。ウンブリアは黒トリュフの王国です。
中心地はノルチャNorciaやヴァルネリーナValnerina。
黒トリュフの旬は1〜2月。11月頃から上質のものが出回りだすそうです。
イタリアの黒トリュフは、フランスでペリゴールと呼ばれるタルトゥーフォ・ネロ・プレジャート、タルトゥーフォ・ネロ・エスティーボ、別名スコルゾーネなどがあります。

ネロ・プレジャート発見。

白トリュフは栽培できないので天然物しかありませんが、黒トリュフは栽培が可能。そのため値段も白より手頃。

ノルチャ風スパゲッティやフリッタータ、ステーキ、マスや子羊料理といった伝統料理だけでなく、トリュフのペーストと上質のウンブリア産オイルのクロスティーニはレストランの人気の1品。
そうそう、ウンブリアは上質オリーブオイルの産地でした。

ウンブリアのオリーブの収穫

トリュフとオリーブオイルの共演、トリュフのクロスティーニ

トリュフ入りフリッタータ

クロスティーニにもフリッタータにも欠かせないのが市販のトリュフペースト。

瓶詰めのトリュフで作るトリュフのソースsalsa al tartufo nero

材料
黒トリュフ・・25g
上質のEVオリーブオイル・・大さじ2.5、塩

・トリュフをシートに取って水気を切り、乾かす。
・トリュフをすりおろす。目の間にはさまったものも全部集める。
・トリュフにオリーブオイルと塩を加えて混ぜる。
・密閉ビンに入れて表面をオイルで薄く覆って保存する。

次回は黒トリュフのパスタのリチェッタです。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2020年4月号は近日中に発売予定です。

2021年12月21日火曜日

中部イタリアの傑作ストリートフード、ポルケッタは、神殿に捧げられた生贄がルーツ。

今日のお題はペルージャの美味しいもの、その2。
ポルケッタです。
ポルケッタporchettaはイタリア中部の代表的名物料理で、ウンブリア、ラツィオ、マルケ、アブルッツォあたりが本家に立候補しています。
イタリアでは、古代ローマ時代にはすでに豚の飼育が広まっていました。なので、エミリア・ロマーニャやベネトにもポルケッタは広まっていました。
やがて、イタリアを代表するストリートフードとみなされるまでになります。
ポルケッタは小型の若い豚や野生の豚の内蔵を取って調味し、丸ごとを縛って薪で串焼きにする、またはオーブンでじっくり焼くローストです。
外側はこんがりとカリカリで肉は柔らかくてジューシーで風味豊か。
このローストをスライスしてセコンド・ピアットとしてサーブしたりパニーノの具にします。
焼き立てが美味ししいので、焼いたその日に地元の赤ワインを添えていただきます。
ペルージャなど中部イタリアの各地では、8月の末などに伝統のポルケッタ祭りが開催されます。
コッレダーラcolledara(アブルッツォ)のポルケッタ祭り

初めて食べるとその美味しさに衝撃を受けて一生記憶に残るので、なるべく美味しいのを食べてほしいなあ、と思います。美味しさのポイントはやっぱり豚肉。

ローマのカステッリ・ロマーニ地方のアリッチャAricciaもポルケッタの伝統で知られる街。
ポルケッタは古代ローマのジュピター神殿の生贄の豚の伝統から生まれた料理と語り継がれています。生贄の信仰が伝えられていたカーボ山のジュピター神殿の遺跡。


あるいはアリッチャが貴族の避暑地だったことから、貴族の狩りの獲物を美味しく食べる料理を領民が考え出して子孫たちに代々伝えたという説もある。
アリッチャのポルケッタは柔らかくて風味が豊かな雌豚(ポルケッタは女性名詞)から造られる。
香ばしく焼けた表面、柔らかい肉のローズマリー、こしょう、にんにくの香りが特徴。

アリッチャのポルケッタ祭り↓

アリッチャのポルケッタ


ストリートフード・アッラ・イタリアーナ

アリッチャのポルケッタPorchetta di Aricciaのリチェッタがあったので訳してみます。

材料/8〜10人分
下処理した乳飲みの子豚・・1頭(約3kg)
白か赤ワイン・・500ml
フィノッキエット・セルバティコ・・80g
ローズマリー・・3枝
皮むきにんにく・・5かけ
ナツメグ・・1個
粗挽きこしょう・・10〜15g
塩・・10g

・にんにく、フィノッキエット、ローズマリーの葉をみじん切りにして塩、たっぷりのこしょう、ナツメグを加える。
・中と骨を取った豚肉を洗って水気を拭き取る。
・作業台に広げて内側にハーブを均一にまぶす。
・棒か串をまっすぐに通し、余分な筋を切り落とす。皮に脂の出口用の小さな包丁目をつける。糸で縛る。
・大鍋の縁に棒を渡してのせ、180℃のオーブンで裏返しながら最低3時間焼く。最初はワインをかけ、次第に焼き汁を塗りながら焼く。
・皮がこんがり琥珀色に焼けたらオーブンから出してテーブルに丸ごと運ぶ。
・スライスして焼き汁をかけてサーブする。


2021年12月20日月曜日

ペルージャの名物バーチは手作りするとめちゃかわいい。

今日は(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2020年2月号から、
ウンブリアの州都ペルージャのグルメガイドです。

ペルージャの名物はオイル、ワイン、チョコレート、生パスタ、トリュフなど。
トリュフが採れて上質のオリーブオイルができ、地元のカンティーナからは上質のワインが造り出され、チョコレートのイベント、ユーロチョコレートの開催地という、なかなかなグルメな街です。街の中心部はマッジョーレの噴水がある11月4日広場、メインストリートは広場へと続くバンヌッチ通り。
バンヌッチ通りCorso Vannucci

この通りには、ペルージャで一番有名で重要なもの、チョコレートメーカー、ペルジーナのフラッグショップ、カーサ・ディ・チョッコラートがあります。

ヨーロッパ最大のチョコレートのイベント、ユーロチョコレート

さらに。ペルージャ市民の憩いのカフェ、老舗のパスティッチェリーア・サンドリも。

ペルジーナはネスレの傘下で、ペルジーナの製品は、空港でお土産に買うバーチしか知らないのですが、キットカットも作っているそうです。
バーチは1922年生まれで、今でも当時と同じリチェッタで、上質のカカオとジャンドゥイヤで造られています。
ドルチェ&ガッバーナと提携したリミテッド・エディション。

超かわいい手作りバーチ。

バーチ・ペルジーナbaci Pergina

材料/8個分
バター・・10g
ミルクチョコレート・・50g
ヘーゼルナッツクリーム・・50g
刻みヘーゼルナッツ・・50g
ホールヘーゼルナッツ・・8粒
ビターチョコレート・・100g

・バター10g、ミルクチョコレート50gを湯煎にかけて溶かす。
・ヘーゼルナッツクリームと刻みヘーゼルナッツを加える。
・冷凍庫で15分冷やす。
・少量ずつ丸めてオーブンシートに並べる。
・てっぺんに丸ごとのヘーゼルナッツを載せて軽く埋め込む。
・冷凍庫で30分冷やす。
・ビターチョコレートを湯煎にかけて溶かす。
・ヘーゼルナッツをのせたバーチをチョコレートでコーティングする。
・オーブンシートに並べて冷蔵庫で乾かす。

手作りのバーチは思ってたよりかなり簡単。しかも名前がバーチって・・・。

2021年12月19日日曜日

エミリア・ロマーニャ地方のシンボル、金色のワイン、アルバーナは白のドレスを着た赤とも言われる。

今日は(CIR)3月号からワインのお題です。
ワインはアルバーナalbana。
アルバーナ・ディ・ロマーニャと言ったほうがピンとくるかも。
エミリア・ロマーニャ地方の上質白ワインです。
エミリア・ロマーニャの象徴的ワインです。アルバーナという名前はラテン語で白という意味だそうですが、このワインの色は、白というより金色と形容されます。
そもそも、紀元400年頃にこのワインを飲んだ皇帝の娘が、このワインにはテラコッタの盃(当時はテラコッタのカップでワインを飲むのが一般的だった)より金の盃が相応しい、と言ったという逸話が長年語り継がれています。
それにぶどう自体も琥珀黄金色をしています。


アルバーナは糖度の高い(アルコール度の高いワインになる)ぶどうで、収穫の時期によって辛口ワイン、甘口ワイン、さらにはパッシートになる(貴腐のカビは収穫の最終段階のまだぶどうが樹についている間に、日中は暑くて湿度が高く、夜に気温が突然大幅に下がるなどの特殊な条件が整うと生える)。皮にはタンニンが多く含まれているので組織のあるワインになり、白のドレスをまとった赤ワインとも形容される。
白ワインはぶどうをソフトに圧搾して皮とモストを分離して醸造する。この方法だと少量の果肉からも汁が取れ、皮からタンニンがモストに移るのを防ぐことができる。
ソフトな圧搾の白ワインからは海の幸に合うドライでボディーのある白ワインができるので、マイルドな野菜の前菜にも合う。

パッシート用のアルバーナ

エミリア・ロマーニャの街、リミニが誇る名物は、ピアディーナとフェリーニ監督、ワインはサンジョベーゼとアルバーナ↓

帽子の花がトレードマークのリミニのピアディーナの人気店、デッラ・レッラ。

2021年12月18日土曜日

ニコ・ロミートシェフのカペッリーニはイタリアのアルタ・クチーナの常識を打ち破って家庭にまで広まった。

(CIR)3月号の記事“新作パスタ”は、「ニコ・ロミートシェフがカステル・ディ・サングロのリストランテ・レアーレのメニューに、Capellini laccati ar porriを載せたのは2009年だった。」
という一文で始まります。
ニコ・ロミートシェフは、アブルッツォのカステル・ディ・サングエの3つ星リストランテ、レアーレのシェフで、この店は世界のベストレストラン50にも選ばれていて、彼は今やイタリアを代表するシェフの一人です。
レアーレ↓

バリバリ・アバンギャルドな最先端に立っているシェフということはこの動画だけでもよくわかります。極限までシンプルな料理に思考をぎゅぎゅぎゅっと詰めているのが彼の料理。見た目のシンプルさが一口食べると大きく裏切られて、おっとこれは!と目を見開くことになります。


問題は、動画の彼も食べているカペッリーニ。
当時のイタリアで、パスタは安くてお手軽な食材の代表で、高級レストランでだす料理ではない、と思われていました。
彼はこの常識を打ち破りました。
そして質素でシンプルな食材を使った料理が彼のスタイルとなります。
初めて作ったのは一人のシェフでしたが、これが家庭にまで広まってトレンドになり、シェフのクリエイティビティが発揮されたパスタは大流行したのです。
天才シェフたちのこのような発想が、パスタの世界と可能性を広げました。

そんなシェフたちのパスタを集めた本が『パスタ・レボリューション』です。

この本にはロミートシェフのパスタのリチェッタも紹介されています。
“バッカラとトマトのスパゲットーネ・マンテカート”です。

この料理は、日常的な食材をご馳走に変える、という彼の本領が発揮されています。
バッカラは、イタリアでは魚の中でも最も大衆的な魚で、海から遠く離れた地方でも手に入る魚です。
パスタはデンプンを利用し(デンプンを利用できるのは低温で長時間乾燥させるアルティジャナーレのグラニャーノのパスタならでは)、トマトの強い酸味を利用したエレガントでミニマリスト的料理。
ニーコ・ロミートシェフのバッカラマンテカート・パプリカ・じゃがいものグラニャーノのパスタ↓。

ニコ・ロミートシェフのペーストのフェットゥチーネ。
ペーストは色が黒くならないように氷を加えて撹拌するのがポイント。さらに仕上げにオリーブオイルを加えて乳化させてソースをクリーミーにする。
グラニャーノのパスタはゆで汁にデンプンが溶け出るのでペーストを加えてマンテカーレするとさらにクリーミーに仕上がる。

=====================================

2021年12月17日金曜日

この十数年でパスタは量より質の時代になった。品質の追求から古代小麦が再発見され、あらゆる小麦製品のアプローチが変わった。

今日のお題は(CIR)3月号から(P.32)“新作パスタ”です。
実はこの記事、一押しのパスタの本、『パスタ・レボリューション
の内容がベースになっている、という異色の記事なんです。
私もこの本を初めて読んだ時は衝撃的な面白さでしたが、イタリアでも注目されていたようです。
パスタが食の世界で起こした革命的出来事について検証しているこの本は、そもそもパスタは大衆的な庶民の食べ物で、アルタ・クチーナの世界では全然受け入れられていなかった、という事実が大前提。

何度も紹介してきたフェリーニ監督の傑作CM。バリラのリガトーニ“上流社会”。


このCMを理解するには、イタリアでパスタは家庭的な庶民の食べ物で、高級店でフランス語でサーブされながら食べるものではないと考えられていたことを知っている必要があります。

そしてこの本では、小麦がイタリアに伝わって以来、パスタが大衆的な食べ物になっていった過程と、アルタ・クチーナの世界で起きた革命によって食材や製法に気を配ってシェフのクリエイティビティーが発揮されたパスタが大流行してパタスの新しいトレンドになり、家庭にまで影響が及び、毎日食べる量産型のパスタにも取り入れられるようになったことが無数の写真と共に紹介されています。

量より質の時代の到来です。パスタにはメーカーの哲学が込められるようになりました。
パスタの質は小麦粉、水、空気、地理的な要因に左右されます。
グラニャーノのように上質のパスタ作りのために造られた街もありましたが、現在は、カンパーニアから遠く離れた場所にあるメーカーも存在します。
さらに、乾燥パスタは、有機栽培された単一品種の小麦粉から造るので畑の場所も重要です。
品質の追求はいわゆる古代小麦の再発見につながり、あらゆる小麦製品のアプローチが変わりました。
現代では、パスタメーカーはパスタの社会的な地位の向上より、産地へのこだわりを追求しています。

生物多様性の本場シチリアでは多くの品種の古代小麦が栽培されている↓

古代小麦とは、生産量を増やすための自然な交配が行われていない小麦。その大部分はグルテンの含有量が低く、消化しやすく、風味が強いが一般的な小麦と比べて収穫率がとても低い。
そのため価格も高くなる。

小麦粉と水をこねた生地はダイスを通して成形しますが、ダイスの発明はパスタの歴史上の大革命でした。ダイスを通すことによって、パスタの形は無限になりました。製造時間も大幅に短縮されました。ブロンズのダイスを通したパスタは多孔質になって肉やクリームのソースによく合い、テフロンのダイスを通したパスタは魚のスーゴに合う、というようなこともわかってきた。
スパゲッティやメッゼ・ペンネのようにすでに完璧に完成しているパスタの形を新しくするのは難しいが、それでも毎年新作パスタは生まれている。
パスタのデザインは天才的デザイナーのフード・デザインの分野での活躍の場となっている。
パスタの形とソースの組み合わせは永遠のテーマ。

新作パスタの一つ、ベズービ    vesuvi
カンパーニアのシンボル、ベズビオ山のパスタ。

こちらはフィレンツェのシンボル、ユリの花をデザインしたジーリgigliというパスタ。

パスタの形はなんでもありな状態になってますが、生き残れるのはたぶんわずか。



2021年12月16日木曜日

イタリア版パンケーキ、ファリナータはジェノバのピッツァ。お客は全員顔見知りという人情に厚い街ストリートフードの傑作。

チェーチには、他の豆にはない大きな特徴があります。
それは粉の利用です。

豆からチェーチの粉↓

各地のチェーチの粉の料理は、チェチーナcecina(トスカーナ)、ファリナータfarinata(リグーリア)など、名前は様々ですが、どれも甘くない薄焼きケーキ、パンケーキのようなもの。

イタリアのストリートフードの定番で、お祭り用の派手な鉄板まである。
ストリートフードは工業化によって生まれた大企業の労働者たちが多く暮らす大都会で、女性が家事をする時間が減った結果生まれた食生活。
チェーチの粉は、水、塩と混ぜて鉄板で焼くだけで美味しパンケーキになった。
ナポリのピッツァに匹敵する料理だが、もっと簡単で誰でも作れた。


ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ』 
によると、“アンティカ・シャマッダAntica Sciamaddaの現店主ウンベルトが19世紀末に誕生したと言われているこの、一番古いファリナータの店を継ぐ決心をしたのは1998年、13歳の時だった。

ジェノバのアンティカ・シャマッダ。
店名のシャマッダは、ジェノバの言葉で炎、という意味。薪の炎で強火で焼くのがファリナータの特徴。店の奥にあるかまどの炎は通りからでも見ることができて、この店の名物になった。ファリナータは冬にだけ作るメニューだったが、ビーチでもよく売れた。

ファリナータを作る店主のウンベルト

『ストリートフード・アッラ・イタリアーナ』のリチェッタを訳してみます。
Farinata di Antica Sciamaddaファリナータ
/5人分
水・・750ml
チェーチの粉・・250g
EVオリーブオイル・・150g
塩・・15g

・大きなボールにチェーチの粉をふるい、水400mlを少しずつ加えてホイッパーで10分溶く。
・残りの水を少しずつ加えてダマのない生地にし、室温(20〜25℃)で時々かき混ぜながら5〜6時間休ませる。
・表面の泡を取り除き、EVオリーブオイル大さじ4を加えて塩味を整える。
・直径50cmの丸い天板に油をたっぷり塗り、生地を厚さ0.5cmに流し入れる。250℃のオーブンで20分焼く。


チェチーナcecinaはピサなどトスカーナでのファリナータの名物。
リボルノにはチンクエ・エ・チンクエというファリナータの仲間がある。
リボルノのチンクエ・エ・チンクエ。
チンクエというのは値段が50リラだったことからつけられた。
ファリナータよりやや厚いのが特徴。

シチリアのパーネ・エ・パネッレpane e panelle
チェーチの粉と水の生地を揚げたパネッレをパンに挟むパーネ・エ・パネッレ。一番美味しいパネッレはパレルモの市場にある、というのが定説。中でも、Kalsa da Chiluzzoの売店が有名らしい。

パレルモの市場は、若い頃はおっかなくて足を踏み入れられなかったけど、シチリアの人々の素顔が分かる場所。外国人の観光客はみんな腰が引けてる。


=====================================

2021年12月15日水曜日

トスカーナのズッパ・ディ・チェーチにはマルタリアーティ、ナポリはラガネ。

南イタリア各地のチェーチのパスタを見てきましたが、
チェーチは安くて保存できて栄養価が豊富な農村部の冬の貴重な食材。

農村のチェーチ料理の基本はズッパ・ディ・チェーチzuppa di ceci。

材料/4人分
乾燥チェーチ・・300g
にんじん・・1本
セロリ・・1本
玉ねぎ・・1/2個
ポロねぎ・・1/2本
EVオリーブオイル・・大さじ3
ローズマリー・・2本
塩、こしょう
ローリエ・・2枚
野菜のブロード・・1.5㍑
トマトのパッサータ・・60g

・乾燥チェーチを12時間水で戻す。
・セロリ、にんじん、玉ねぎ、ポロネギのみじん切りを油大さじ3でソッフリットにする。
・野菜のブロードを熱し、レードル1杯をソッフリットにかける。
・野菜が柔らかくなったらチェーチを加えてなじませる。
・縛ったローズマリーとローリエを加えて野菜のブロードで覆い、色づけのトマトのパッサータを加える。蓋をして、時々ブロードを足しながら2〜2.5時間煮る。豆が固くなってゆでる時間が長くなるので塩は最後に加える。
・ハーブを取り除いて塩味を整える。
・トーストしたパンを添え、こしょうをかけてサーブする。

※じゃがいも、パスタ、黒キャベツなどの冬野菜を加えてもよい。豆の一部をミキサーにかけてピューレにしてもよい。
チェーチに組み合わせるトスカーナの定番パスタはマルタリアーティ。
ナポリではラガネというパスタを組み合わせる。下の動画ではクアドルッチを加えてます。
ラガネは言葉がラザーニャに似てるけど、料理はボローニャのラザーニャとは全くの別物。
チェーチとマルタリアーティのズッパ

次回はチェーチの粉の料理。


=====================================

2021年12月14日火曜日

冬の地中海の定番パスタ、ラガネ・エ・チェチ。

調べれば調べるほど。チチェリ・エ・トリアは冬にぴったりのパスタだとわかりました。
しかも、南イタリアのセモリナ粉のパスタとチェーチは相性ぴったり。
今日は、ひよこ豆のパスタのレシピを探してみます。
まずは南イタリア(カンパーニア、バジリカータ、カラブリア)のひよこ豆のパスタの定番、ラガネ・エ・チェチLagane e ceci。

ラガネはカンパーニア、プーリア、カラブリアにも広まっているパスタで、チェーチのラガネは地中海を代表する料理と言えます。

カラブリア風ラガネ・エ・チェチlagane e ceci

材料/4人分
セモリナ粉・・400g
水・・約200ml
ラルド・カラブレーゼ・・1枚
乾燥チェーチ・・400g
ローリエ・・2〜3枚
にんにく・・1かけ
唐辛子・・1本
オリーブオイル、塩

・チェーチを一晩水で戻す。
・水を切って新たな水で覆い、ローリエ2枚と塩(ゆで上がる直前に加える)を加えて2時間ゆでる。
・ラガネを作る。セモリナ粉をフォンタナに盛り、水を少量ずつ加えながらこねてなめらかな生地にし、ラップで覆って1時間休ませる。
・生地を薄すぎない程度に伸ばし、巻いてラガネに切る。完璧に揃えない。打ち粉をした台に広げておく。
・大鍋にたっぷりの油、にんにくの薄切り、種ごとの唐辛子を入れて数分ソッフリットにし、小角切りにしたラルドを加える。水気を切ったチェーチとラガネを加えてマンテカーレする。
※ミニトマトやパッサータを加えたり、豆の一部を潰すリチェッタもあります。

プーリアのムール貝とチェーチのカヴァテッリCavatelli ceci e cozze

材料/
カヴァテッリ・・400g
下ゆでしたひよこ豆・・350g
ムール貝・・800g
トマトのパッサータ・・500g
にんにく・・2かけ
イタリアンパセリ・・1束
バジリコ
EVオリーブオイル
塩、唐辛子

・フライパンに油、イタリアンパセリの茎、にんにくを入れてソッフリットにし、ムール貝を入れて蓋をして熱する。貝が開いたら汁を濾し、殻から出す。
・フライパンに油、唐辛子、にんにくをソッフリットにし、パッサータ、貝の汁、バジリコ、チェーチを加える。仕上げに塩を加える。
・カヴァテッリをゆでてソースに加える。
・ムール貝を加えてなじませ、イタリアンパセリを散らす。
セモリナ粉のパスタとムール貝の組み合わせとくればプーリア料理。プーリアのセモリナ粉のパスタの定番はオレッキエッテだけど、これは短いカヴァテッリとの組み合わせ。
プーリアでは、カヴァテッリとひよこ豆、チチェリとトリア、トロッコリといんげん豆、オレッキエッテとレンズ豆といった具合に伝統的に相性の良い組み合わせがある。

セモリナ粉と水の生地にチェーチの組み合わせのパスタは南イタリアの人気の組み合わせ。

ラガネは小麦粉と水の薄く伸ばした丸い生地を熱した石で焼いて細く切る、という歴史の古いパスタで、豆(特にチェーチ)のズッパに入れるためのパスタ。現在では、パッパルデッレ(幅広のタリアテッレ)で代用される。幅が何cmといった厳密な決まりはなく、むしろ不揃いに切るのがポイント。

ラガネは冬の定番パスタ、ボローニャのラザーニャによく似た名前ですが、カンパーニアやナポリでも広まって、ご当地パスタとして知られています。両者の違いは生地に卵が入っているかどうか。卵は北イタリアのパスタには欠かせないものですが、ナポリのパスタに卵は入っていません。

詳しくは次回に。


=====================================


2021年12月13日月曜日

小麦に次ぐ南イタリアの農民の主要な食物、ひよこ豆。

チチェリ・エ・トリアは揚げパスタ入りひよこ豆のスープでした。
イタリアの冬のパスタの代表的料理です。
パスタと豆のスープも冬の代表的プリーモ・ピアット。

ひよこ豆のこと、あまり知らないことに気が付きました。
そこで今日のお題はひよこ豆です。
ひよこ豆はいんげん豆より一回り小さな豆で、潰すとペースト状になるのは一部のいんげん豆と同じ。
ひよこ豆はアジア原産で、地中海地方では広く普及しました。
ひよこ豆などの豆は小麦に次ぐ南イタリアの農民の主食でした。
カンパーニアのサレルノ県にはチチェラーレという海辺の小さな村があります。いかにもひよこ豆ceci(チェーチ)と関係がありそうな村の名前ですが、どうやらこの地でひよこ豆はよく育ちました。
そして地元の植物と交配してできた小粒の品種が今に至るまで盛んに栽培されています。
ちなみにこの村の守護聖人はきのうも登場したキリストのお父さんこと聖ジョルジョ。

チチェラーレのチェーチ祭り

ひよこ豆の栽培と乾燥、脱穀はなかなか手間がかかるようです。

ひよこ豆の収穫

一粒ずつ集めるのはせっかちな人にはできない作業ですねー。のんびり見てください。

チェーチを煮る。

・チェーチを洗って不純物を流し、一晩水に漬ける。
・翌朝、水を替えて新しい水でたっぷり覆って火にかけ、蓋をしてアクを取りながら中火で2時間ゆでる。
・チェーチのズッパは皿にフリゼッレを敷いてチェーチとゆで汁をかけ、潰したにんにく、唐辛子少々、塩、EVオリーブオイル、オレガノなどを加える。またはリーゾ・エ・チェーチ、ラーガネ・エ・チェーチ、チェーチのポルペッテなどにする。

次回はチェーチのパスタです。



2021年12月12日日曜日

揚げるパスタといえば、イタリアで唯一無二のチチェリ・エ・トリア。その背景には慈愛に満ちたお祭りがありました。

ゆでる以外の方法で加熱するパスタを見てきましたが、ゆでる以外の最もシンプルな方法、“揚げる”、が今日のお題です。
イタリアのパスタで、揚げると言えば、その代表は、というかこの料理以外知りませんが、プーリアのチチェリ・エ・トリアciceri e triaです。
記事の日本語訳は、(CIR)2月号P.27にあります。
チチェリはチェーチ(ひよこ豆)のこと。トリアはアラブから伝わったパスタの原型と考えられている幅広の平たいパスタのこと。

チチェリ・エ・トリアciceri e tria

材料/4〜6人分
乾燥ひよこ豆・・200g
水・・1㍑
重曹・・小さじ1/2
セロリ・・1本、ローリエ・・1枚、にんにく・・1かけ
セモリナ粉・・250g


・豆を水と重曹で一晩戻す。
・水気を切って鋳鉄の鍋に入れ、熱湯で覆ってゆでる。最初は蓋をせずにアクを取りながらゆでる。
・香味野菜を加え、蓋をして弱火で2時間ゆでる。半ばで湯を加え、最後に塩を加える。
・豆をゆでている間にパスタを作る。
・セモリナ粉とぬるま湯を5〜10分こねてなめらかな生地にし、ボールをかぶせて30分休ませる。
・打ち粉をして麺棒で厚さ2mmに伸ばし、生地を巻いて幅1〜2cmに切る。
・広げて長さ10〜15cmに切る。
・豆から香味野菜を取り除いて1/3を別にする。フォークで潰して鍋に戻す。
・パスタの1/3を油で揚げる。パスタの切れ端を油に入れてすぐに浮かび上がる温度が適温。
・残りのパスタは塩を加えた湯で2分ゆでる。
・豆の鍋にゆでた麺と揚げた麺を加えて混ぜる。
・皿に盛り付けて揚げた麺を添え、塩少々とこしょう、油をかけてサーブする。


パスタを揚げるという調理方法は、『パスタ・エ・スーゴ

によると、中国から伝わり、前衛的なシェフが駆使するテクニックで、現在では、カリッとした歯ごたえを楽しむ方法の一つとなっています。主にスパゲッティに用いられています。
パスタを揚げるとデンプンに“メイラード”反応が起きます。
さらに、水分が飛ぶので、スープに入れるとスープを良く吸います。
油を使うのでボリューミーという特徴もあります。
イタリアではまったく広まらなかった手法ですが、何故かプーリアのサレント地方では、“チチェリ・エ・トリア”として広まり、宗教儀式にも取り込まれて名物料理になりました。

サン・ジュゼッペという貧しい職人や庶民の守護聖人で、キリストの養父で父性のシンボルとされている聖人の日3月19日に食べます。
かなりの重要人物なので、キリスト教国では大切な祝日で、すぐあとにある春分の日3月21日や父の日と結びついて、南イタリアでは大切な儀式として受け継がれてきました。
この日は貧しい人を村中でもてなす日。
動物性脂肪のない大量のマーグロな料理が13品用意されます。
ランパッショーネのビネガー風味やバッカラ、チチェリ・エ・トリアが並ぶディナーのテーブル。

料理は村中で作ります。

硬質小麦粉と水の生地のパスタって、大きなテーブルで姑さんたちに教わりながら造るのがピッタリのパスタですねー。



=====================================

マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...