2020年9月30日水曜日

今月の食材。プンタレッレとクラテッロ。バッサ・パルメンセ地方の肉屋は、「11月には霧が出ますように」と祈る。

「総合解説」2019年1/2月号発売しました。
年始の冬の号です。
季節柄、北イタリア料理とトリュフの話がだいぶ増えてきました。
それにしても、トリュフ人気は勢いがありますねえ。
アルタ・クチーナの料理としてだけでなく、庶民の生活の中にも広まってきていることを感じます。

最初に訳した記事は、例によって『クチーナ・イタリアーナ』のリチェッタです。
アンティパストの1品目は、カリフラワーのカルパッチョ、サルサ・ヴェルデ
食材は、カリフラワー、プンタレッレ、クラテッロの組み合わせ。
プンタレッレとクラテッロは新年のちょっとしたご馳走にふさわしい食材なんですね。

ローマの名物野菜プンタレッレ↓
スパゲッティと同じで常に複数形です。プンタレッラとは言わない。
カタローニャ菜(ローマではチコリオーネと呼ぶ)のほろ苦い芽の部分。
細く切って氷水に晒してカールさせるまでが下ごしらえ。
ローマの旬は冬から春で、クリスマスや復活祭などの様々なローマ料理に使われているご馳走の食材。
この時期にローマに行くなら、プンタレッレは食べとかないと。



アンチョビ、にんにく、白ワインoビネガー、オリーブオイルのソースがローマの定番。

一方、クラテッロはエミリア地方のポー河流域の貴重な名物。
ジベッロのクラテッロが有名。豚のももの最も貴重な部位、霜降りのお尻の肉から造る洋梨型の、しっとりした甘い生ハム。


クラテッロはこの地方の独特の気候と人間の職人技が作り出す傑作。
今月の「総合解説」のタリアテッレの記事でも言っていますが、この地方の湿度のせいでクラテッロはこの地方ならではのカビで覆われ、食品はゆっくり乾燥し、その間に酵素がタンパク質を分解して味が強まります。
この過程は、日本酒なら杜氏と呼ばれるルベテラン職人たちの仕事。
クラテッロは、カットした後の保存の仕方によっても味が落ちてしまうとてもデリケートな食材で、かなり高価ですが、職人たちの手が随分かかっていることを考えると納得です。
生ハムとはレベルが違う。
世界一高価なハム、とも呼ばれていますが、ハムのつもりでむしゃむしゃ食べるともったいないかも。
ジベッロ↓

クラテッロの産地、バッサ・パルメンセ地方は霧の地方と呼ばれる。
寒い季節にポー河の南側を覆う霧をこの地方の肉屋は待ち焦がれている。
「11月には霧が出ますように」が彼らの願いだ。
ちなみに、トリュフの話をするとロッシーニの名前が必ず上がるが、クラテッロの話の時は、ヴェルディの名前が欠かせない。ロシアの宮廷にもクラテッロを持参したという話が伝えられている。
バッサ・パルメンセ地方の肉屋の祭り。↓
祭りが開催される11月は豚肉のサルーミが出荷される季節でもある。
この地方に行くなら11月。



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総合解説
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2020年9月28日月曜日

ナポリの注目店。今どきのナポリのレストランのトレンドは伝統と革新。貧しさや庶民とは無縁のキラキラした世界。

今日は、voielloの『ナポリの黄金』企画で取り上げられたナポリのレストランの一部を動画で紹介。
1944年創業の老舗のナポリ駅のそばの超有名店ミミ・アッラ・フェッロビア↓
一生に一度は食べるべきと言われる名物料理はペペローニのリピエーニ、ナスのパルミジャーナ、サルトゥ・ディ・リーゾなど。
webページはこちら


若者たちが経営する若い店、リスランテ・パラッツォ・ドミニチ。↓
高級ホテルのリストランテ。店のwebページはこちら
店のモットーは伝統と革新。

次も2007年にできた若い店、パラッツォ・ペトルッチ。↓
webページはこちら
オーナーの一人はグルメな会計士。
かなり儲かってるみたいですね。
この店も伝統と革新を提供すると謳っています。
別の場所で9年営業して2008年にナポリで最初のミシュランの星を獲得後、ポジリポに移転。現在は洗練さのさらなるアップグレードを目指しています。

シェフはナポリ出身。今どきのナポリ料理はオサレだね~。ロブスターのスパゲットーニ。

次はポンペイの遺跡に近くて広い駐車場もあるミシュランの星付き店、プレジデンテ↓
1986年創業。2018年には2軒めオープン。シェフは家族経営のリストランテの2代目。
世代交代までに伝統を受け継いだとシェフは語っています。
伝統のベースができてから改革に取り組んだそうで。
スペチャリタはナポリの定番、カンデーレのジェノベーゼ。
落ち着くいい店だなあ。

最後はア・フェネステッラ。
ナポリの隣の漁師町、ポジリポの有名店。
店のwebページはこちら
店の窓のことがカンツォーネで歌われたことで有名になった店。窓はこれらしい。

ア・フェネステッラ↓

ポジリポはナポリの隣の小さな漁師町で、ナポリの人にとっては夏のちょっとしたビーチリゾート、超美味しい魚料理を出す店が一杯ある。
ポジリポ漁協のPV。漁協のPVになぜイケメンが出てくるのか意味不明。
ひょっとして漁協ブランドの服売ってるとか?

美女がでてくるPVもあった。
ナポリ人の考えてること、やっぱりさっぱりわからない。


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2020年9月27日日曜日

ナポリのカラヴァッジョの行きつけの店の卵が入らないフリッタータ、スカンマロ。

voielloの『ナポリの黄金』シリーズ。
今日は、ナポリの中心部でディープなナポリ料理を伝える店、ラ・ロカンダ・デル・チェリッリオの“ヴェルミチェッリのスカンマロscammaro”。
店はナポリのかなりディープな場所にある。
なんと、ローマで殺人事件を起こしてナポリに逃亡した画家のカラヴァッジョが、さらにそこで暴漢に襲われた場所として知られているやばい場所でした。
この店に足繁く通ったせいで、行動が読まれていたんですね。
今はカラヴァッジョの店として知られ、大勢のナポリ市民が通っています。


店のwebページはこちら

ロカンダ・デル・チェリッリオの料理は、“スカンマロscammaro”です。
ナポリ料理に詳しいこちらのサイトによると、この料理はナポリで四旬節の間に食べた料理。
四旬節は大雑把に言うと、復活祭の前の肉食を断つ期間。
スカンマロはナポリ名物のパスタのフリッタータの、卵や動物性油脂を使わないバージョン。
ナポリでは料理研究家で食通として知られる偉人、ブオンヴィチーノ公のイッポリート・カヴァルカンティが考え出したと言われています。
しかもある神父の要望で、動物性の食材が入らなくても、満足できるような料理にしたのだそうです。
こういうアレンジは、ナポリ人の得意分野でした。
参考動画


それでは、ロカンダ・デル・チェリッリオのスカンマロlo scammaroのリチェッタです。

材料/4人分
ヴォイエッロNo.105のヴェルミチェッリ・・320g
にんにく・・1かけ
EVオリーブオイル・・100ml
種抜きガエタオリーブ・・100g
松の実・・50g
レーズン・・50g
塩抜きしたケッパー・・30g
イタリアンパセリ
アンチョビ(好みで)
塩、こしょう

・にんにくを油で炒め、焼き色がついたら取り除く。松の実、オリーブ、レーズン、アンチョビ、イタリアンパセリ、パスタのゆで汁少々を加える。火を弱めてソッフリットにする。
・パスタをゆでる。
・フライパンにアルデンテにゆでたパスタを加えて両面を焼く。

多分、みんなが思ったこと、アンチョビは加えていいんかい!?
質素すぎて肉や魚のうちに入らなかったのかな。


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「総合解説」
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2020年9月26日土曜日

ナポリ、サンタ・ルチア地区の人気店、リストランティーノ・デル・アッボカートのアンチョビクリームとコラトゥーラのフィデリーニ。


ナポリの人気店のヴォイエッロのパスタのリチェッタを紹介する『ナポリの黄金』から、今日は、サンタ・ルチア地区で典型的なナポリ料理を出す人気店、“リストランティーノ・デッラッボカート”。
webページはこちら
シェフは父親と息子。
上質の地元の食材にこだわった伝統料理を出しています。
メニューがバッカラから始まってました。
やっぱりナポリの庶民の魚の代表はバッカラとアンチョビでしょうか。

料理はアンチョビ・クリームとコラトゥーラのフィデリーニ、アーティチョークのチップスとタラッロ・ナポレターノ添えFidelini con crema di alici la sua colatura, chips di carciofi e tarallo napoletano
料理の写真とリチェッタの原文はこちら

材料/4人分
ヴォィエッロNo.102フィデリーニ・・400g
新鮮なアンチョビ・・500g
チェターラのイワシのコラトゥーラ・・25g
アーティチョーク・・1個
タラッリ・ナポレターニ・スーニャ・エ・ペペ・・1個
じゃがいも・・2個
EVオリーブオイル
にんにく・・1/2かけ
イタリアンパセリ

・アンチョビは骨を取る。
・じゃがいもは薄くスライスする。
・アーティチョークは中央部分だけにしてスライスし、レモン水にさらす。
・にんにく、アンチョビ、じゃがいもを油と水少々でソッフリットにする。
・冷ましてミキサーにかけてクリーム状にする。
・たっぷりの湯と少量の塩でパスタをアルデンテにゆでる。
・パスタをいわしのクリームとコラトゥーラでマンテカーレする。
・アーティチョークを揚げる。
・アンチョビを塩と砂糖でマリネする。
・皿にパスタを盛り付けてアンチョビとアーティチョークのチップスを加え、砕いたタラッリを散らす。油と粗挽きこしょうをかける。

   
タラッリ・スーニャ・エ・ペペTaralli sugna e pepe↓
タラッリはナポリやプーリアなど南イタリアのリング型のスナック。
ナポリ風はアーモンドとイースト入りのサブレ生地のようなスナック。
普通はタラッリと複数形にするが、リチェッタで使うのは1個なのでタラッロと単数形。
下の動画ではメルジェッリーナ地区を散歩する時に食べたり、冷えたビールのつまみにする、と言っています。
スーニャはラードのこと。


ちなみにメルジェッリーナとはこんな地区。
カプリなどの島へ行くフェリーの発着する港があり、ちっょと高級なイメージで美しいナポリの定番の散策コース。↓


おまけのリチェッタ。
昨日紹介したブアッタのシェフの
ナポリ湾のアンチョビとアマルフィ海岸のレモンのパスタをどうぞpasta con le alici。


・アンチョビを開いて骨を取る。
・フライパンににんにく1かけ、唐辛子1片、オリーブオイルを入れてソッフリットにし、軽く焼き色がついたら火を止めてアンチョビ、イタリアンパセリ、レモンの皮のすりおろしを加える。
・ゆでたパスタを加えてなじませる。
・皿に盛り付けてレモンの皮の千切りとイタリアンパセリを散らす。

ナポリ湾のアンチョビ漁↓
メルジェッリーナの目の前の世界。

アマルフィ海岸のレモン↓






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2020年9月25日金曜日

ナポリの人気トラットリア、ブアッタのジェノベーゼのリガトーニ。

ヴォイエッロ版『ナポリの黄金』から、
パスタメーカーヴォイエッロが創業135周年を祝った大プロジェクトです。
ナポリのアルティジャナーレな企業と、9ヶ所から選ばれた50人のシェフの作品を美しい写真で紹介するイベントです。
原文はこちら

ナポリのヴォメロ地区の女性シェフの大人気店、トラットリア・ブアッタtrattoria buattaは、
genovese con baccalàバッカラ入りジェノベーゼのリガトーニ
を収録しています。

材料/4人分
ヴォイエッロN.124リガトーニ・・300g
モントーロの玉ねぎ・・2kg
小さく切った子牛肉・・200g
おろしたペコリーノ・ロマーノ・・80g
サン・マルツァーノのホールトマト・・50g
白ワイン・・1/2カップ
EVオリーブオイル・・100ml
塩抜きしたバッカラ・・400g
セロリ・・1本
にんじん・・1本
塩、こしょう

・深さのある鍋に玉ねぎ、セロリ、にんじんのみじん切り、小さく切ったトマト、子牛肉、ワイン、塩、こしょうを入れて煮る。
・別の鍋でバッカラを油と水少々で蓋をして15分煮る。
・その間にパスタをゆでる。
・パスタ、バッカラ、ジェノベーゼをよく混ぜる。
・皿に盛り付けてペコリーノを散らす。

ジェノベーゼはリグーリアのジェノバとは何の関係もない料理で、玉ねぎがベースのナポリの代表的ソース。

ナポリでは、モントーロ平野(アベリーノ県)で栽培される玉ねぎが人気のよう。
モントーロの玉ねぎ↓

ジェノベーゼ・ナポレターナというこんがらかりそうな呼び方がなぜか人気。


玉ねぎをたっぷり使うこの料理を作ると、玉ねぎの匂いが数日消えないので、玉ねぎを切った後、酢や挽いたコーヒーを手につけるなどしています。

ブアッタのリチェッタは仔牛肉の一部をバッカラで代用したもの。
バッカラはイタリア中に広まったお手頃価格の魚。
生の魚が採れるナポリでも広まって、様々なナポリ料理に使われている。
ということは、生魚より安かったということですね。



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2020年9月24日木曜日

バリラグループとボローニャ種苗業者組合が生み出した南伊に適した新しいパスタ用小麦。グラノ・アウレオ。

ヴォイエッロがどんなパスタメーカーか、ちょっとおわかりいただけたでしょうか。
webページ(こちら)によると、タガンログ消滅後は、最高のパスタを目指して、2009年に誕生したイタリア産のアウレオという小麦100%で製造しているそうです。
アウレオ小麦はバリラグループとボローニャの種苗生産者組合が中心となって作り出した、イタリア南部の気候に適した上質の品種。イタリアのパスタ産業が本気になって取り組んだパスタの国産小麦化の一大プロジェクトから生まれた新しい小麦のようです。
タンパク質の質も量も、他の小麦より優れているそうです。
グラノ・アウレオ↓
これまでの、アリゾナの砂漠で栽培された小麦に変わるパスタ用小麦だそうです。
砂漠で小麦を育てるには大規模な灌漑設備が必要ですが、南伊で栽培されるこの品種は天然の水で育つのでCo2の排出も抑えられます。
輸送距離も短くなります。

イタリアのパスタが北米産の小麦で作られていた時代は終わるのでしょうか。


バリラグループが、農家やパスタメーカーを巻き込んだこの一大企画に、カンパーニアのパスタメーカーの代表として選んだのがヴォイエッロでした。
確かに、品質を追求するその姿勢は、カンパーニアでも一目置かれています。
ヴォイエッロはカンパーニアのパスタ文化を広めるために、“ナポリの黄金プロジェクト”というものを展開しています。
ナポリを代表する9人のシェフにヴォイエッロのパタを使ったリチェッタを提案してもらい、本にしました。
その詳細は次回に。

北の大資本と、ボローニャのアルティジャナーレ精神に満ちた企業と、ナポリの美味しいパスタを情熱的に追求するパスタメーカーが手を組んだ、素晴らしいビジネスの始まりです。
今後のイタリア産パスタはどう変わるか、楽しみです。

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2020年9月23日水曜日

ヴォイエッロが教えてくれたパスタの歴史。タガンログはナポリのパスタ産業に革命を起こしたと言われるロシアの小麦だが、本物の革命で消え去ってしまった。

今日は以前見つけて気になっていた本から。
カンパーニアの有名パスタメーカー、ヴォイエッロが作ったパスタの本です。
まずはヴォイエッロの歴史をさらっと。
webページはこちら
ナポリには、イタリアで最初の鉄道があります。
その時、アウグスト・ヴァンヴィッテルというスイス人のエンジニアがナポリにやってきました。
彼は製麺業で栄えた街、トッレ・アンヌンツィアータの製麺業者の娘と結婚します。
ナポリがピエモンテと合併したことによりイタリア王国が建国され、
(こうホームページには書かれています。両シチリア王国とピエモンテの立場を、南イタリアの人はこう考えていたという典型のような上から目線)
これを機会にヴァンヴィッテルは名前をヴォイエッロと変えます。
そして1879年、アウグストの息子のテオドロは、会社をトッレ・アンヌンツィアータの北にあるコントラーダ・マレスカに移し、アンティカ・パスティフィーチョ・ジョヴァンニ・ヴォイエッロを創業したのです。
ヴォイエッロはパスタには理想的とされ、この地方のパスタ産業に革命を起こしたと言われているロシアの小麦、タガンログを使いました。
それ以来、最高の品質を追求したパスタメーカーとしてその名を轟かせています。
ナポリの歴史に詳しいこちらStorie di Napoliのサイトによると、
タガンログは19世紀にはイタリアのパスタの70%以上に使われていた小麦です。
20世紀初頭まで、ロシアは小麦の世界最大の輸出国で、イタリアは大輸入国でした。最高の小麦、技術革新によるブロンズのダイスの普及、グラニャーノやトッレ・アンヌツィアータのパスタのゆっくりした乾燥に最適の気候、これらの好条件に恵まれて、ナポリのパスタはどんどん品質が上がっていきました。
ところが10月革命によってタガンログは消滅します。
ロシアは食糧不足になり、硬質小麦より軟質小麦の栽培が優先されました。
ヴォぃエッロはその代わりに、プーリアの最高の農家の小麦、カペッリとサンゴッラを使うようになります。

タガンログはパスタの歴史を調べていると必ず出てくる名前です。
フィリピンの小麦と勘違いしそうですが、少し調べると、ロシアの地名だとわかります。

トッレ・アンヌンツィアータ↓

ロシアの港湾都市、タガンログ。発音がかっこいい↓


ヴォイエッロのパスタは、ちょっとお高い高級パスタのイメージがあるけど、パスタの値段は味とかなりシビアに結びついている、ということはイタリアではよく知られているので、値段だけでパスタを選ばないで、たまには高いパスタを買ってみては、なんて入門者向けのアドバイスを時々見かけます。
高いパスタを食べる度に思い出すアドバイスです。

この情熱のナポリ人と精密なスイス人の結婚から生まれたのがヴォイエッロのパスタだと、ホームページでは誇らしげに宣言しています。

ヴォイエッロのPV↓



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2020年9月22日火曜日

エンジニアもアルティジャナーレなボローニャ魂。

最近、ボローニャのある工業学校の話を知って、昔の話ですが、あるイタリアの大手ジェラートマシンメーカーの若いエンジニアが、仕事で日本にやってきた時に感じたことを思い出しました。
そのエンジニアは、ごく普通のイタリアの若者だったのですが、イタリア人なのにシャイで、しかも巻き舌ができない人で、同じく巻き舌ができない私は、眼鏡とそばかすの彼が気になって気になって、彼の日本出張の間、何かとおせっかいを焼いていました。
そしてその間に、日本のいわゆる下町ロケット系のエンジニアとは、なにか違うなあ、と常に感じていたのです。

ボローニャの話をする時は、料理の話題以外気にしたことがなかったのですが、この街は精密機械の中小製造業も盛んだそうです。
あのジェラートマシンメーカーもボローニャにありました。
料理の世界でアルティジャナーレと言えば、代々続く人間の手作業を極めていく職人のこと。腕だけじゃなく、その生き様や思想も独自のもので、そこが多くの若者を惹きつけています。
ボローニャは、そういう職人を目指す若者たちを育てることにも力を入れていました。
ボローニャの職人の卵たちが学ぶ、アルディーニ・ヴァレリアーリ工業専門高校では、ボローニャの工業の未来や可能性、さらには起業精神についてまで、一流の講師たちが熱く教えています。↓

アルティジャナーレは、何も食の分野だけの話ではないのですね。
巻き舌ができない彼は、一人で異国にいても、立派に自分の会社を背負っていました。
機械の操作方法を教えに来ただけじゃなく、見てるとちょっとハラハラしちゃうのに、なんの迷いもなく、自信を持って楽しげに仕事をこなしていました。
彼の生き様が魅力的で、そのジェラートまで、なんとも魅力的でした。
その自信の根拠は、多分独創性だろうと今は感じています。
まさに彼はアルティジャナーレのエンジニアだったのです。

彼が務めるジェラートマシンメーカーのジェラート大学。

もし、あなたの店にやってきたジェラートマシンのイタリア人エンジニアが巻き舌できなかったら、優しくしてやってね。



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2020年9月21日月曜日

 最近シチリアで生産量が激増しているカルーベcarrubeって何?宝石の1カラットはいなご豆1個の重さと大きさに匹敵する。可能性無限大のさやがなる木。

現在のところ、私にとって、フィーコ・ディンディアに次いで謎なシチリアの食材は、カルーベです。
モディカのカルーベの樹↓


シチリアの南東部、ラグーザやモディカ周辺ではよく見る植物のようです。
乾燥に強い樹で地中海でよく育ち、実は焦げ茶色でソラマメのさやを平らにしたような形。内側にはガム状の甘みのある果肉があり、その中にスイカのタネのような種子、カラートが入っている。
いなご豆と呼ばれるのは、さやがイナゴに似ているから。
カラートはカラットの語源で、種子の大きと重さが常に一定なため、宝石のサイズを図る基準に使われたと言われている。

タオルミーナを観光していたら、ガイドさんがある大木の下で、欧米の観光客に何やら解説している光景に出会いました。
そう言えば、思い返してみれば、黒っぽいさやが垂れ下がっていたいたような。
カルーベはさやがなる木とも言われています。
欧米人はみんな当然のように知っている木なのに、私は始めて見る名前も知らない謎の樹、それがカルーベでした。

カルーベの木、カルーボは寿命の長い樹で、芽が出てから数十年たってようやく実をつけ、樹齢50年で一人前。
水も肥料も多くは必要とせず、空気中の窒素を栄養源にする。


シチリアのカルーベの75%がラグーザ県で生産されている。
収穫は8~9月。
カルーベの生産量はここ数年で急激に増えている。
80%は家畜の餌になるが、人間用は最近の5年で3倍に爆増。

カルーベは薬からドルチェまで、幅広い分野で使われている。
主な製品は粉とシロップ。

果肉は粉にして消化薬や胃腸剤に加えられている。
タンパク質を多く含み、ビタミンやミネラルが豊富。脂肪やナトリウムは少なく、粉には食物繊維とペクチンも多い。
カカオの代わりにドルチェにも使うことができる。

カルーベの種子の粉は水分を40%も吸い込めるほど粘着性があるため、凝固剤としてソースや肉の缶詰、マヨネーズ、腸詰め、チーズ、パンなどに使われている。
ジェラートをなめらかに凍らせる働きもある。
果肉から作られるシロップは、食品の香料や化粧品に使われる。

モディカはシチリアのカカオの中心地でもある。
アステカ人と同じ製法で作られるモディカのチョコレートは、スペインのアラゴン王国の船が16世紀にアメリカから立ち寄った際に伝わった。
オーブンで焼いて発酵を止めたカルーベはチョコレートに味が似ていたので板チョコのようにそのまま食べた。

なんとも使い道の多い食材ですね。
どのような出会いをするかで使われ方も分かれそう。
料理には、粉をコーンスターチのようにつなぎとして使える。

シチリアが誇る食材のようですが、知名度はかなり低い。
モディカに行ったらチョコレートだけでなくカルーベも探してみて。

おまけの動画、ラグーサの力作PV。モンタルバノ警部がいた。




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2020年9月20日日曜日

ナポリのクラフトビール

   シチリアのサボテン地ビールの次はナポリのクラフトビールなんてどうでしょう。
去年ナポリの卵城で開かれたクラフトビール祭りのPV

ピッツァにはビールというのは、ナポリでビールがワインより安い、つまり一番安い飲み物だった時代に言われだしたことでしたね。
クラフトビールがまだ広まっていない時代の話。
かつては、イタリアのビールと言えば、昭和の香りが漂うナストロ・アズーロでした。
ナストロ・アズーロはペローニ社の世界で一番売れているイタリアビール。
それが現代になると、こんな風になるんですね。
ペローニが新しく売り出したのは、硬質小麦やモルトなど、カンパーニアの食材だけを使ってビッラ・ナポリが造る今どきのナポリビール↓

さらにピエモンテのクラフトビールメーカー、グランダを買収して造り出したのが、もっと今どきのシレーナ。

やっぱり昭和生まれはモレッティ。

それでは、ブオナ・ヴァカンツァ。

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2020年9月19日土曜日

アンチエイジング効果があるエトナ山のうちわさぼてんの実、フィーコディンディア。サボテンの地ビールまである。

エトナのザクロを取り上げたら、もう一つのアンチエイジング効果が期待できる食材、
フィーゴディンディアの話もしとかないと。
エトナ山の麓の西から南にかけて栽培されているウチワサボテンです。
サラセン人がシチリアに伝えて、痩せこけた土地でも、石が多くて太陽が照りつける土地でも、自然と根付き、無農薬で育ち、腎臓や肝臓の働きを助け、新地代謝をよくし、強い酸化防止効果があり、パレルモ大学の研究によると、毎日500gを15日間食べ続けたらストレスが大幅に減少したという、夢のような食べ物です。
赤いサングイーネ(はっきりした味で種が多い)、黄色いスルフィリーナ(もっとも数が多く、締まった実で風味が良い)、白いムスカレッダ(甘くてデリケートな味)の3色があります。
最初の旬は8月始めから11月始め。2回花がつきます。1個100~160g、糖度は13度以上。
皮も食べられます。

下ごしらえ。
水に約1時間さらして皮をむく。

太い棘だけでなく、目に見えない産毛も棘なので、素手で触りまくると後で手が1日中チクチクする。
種はシチリアの人は慣れてるから全部食べちゃうんだって、すごい数なのでスイカみたいに1個ずつ吹き出すのは無理。都会っ子用に解説しとくと、種の行く末の心配はご無用。
サボテンの皮は家畜の餌に。
サボテンの皮で育った豚肉なんて、アンチイジングが期待できそう。


サボテンから造ったシチリアの地ビールも登場。

造ったのはシチリアの古代小麦を使ったクラフトビールメーカー、イリアス。



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2020年9月18日金曜日

富と長寿をもたらす、赤くて縁起がよい食材、ザクロ。新年にレンズ豆と一緒に食べとかないと。

今月の「総合解説」は11/12月号でした。
リチェッタの最後のお題はザクロmelagranaです。
ザクロは赤くて種がたくさんあるところから、豊かさと長寿をもたらす縁起のよい食べ物とみなされて、富をもたらすレンズ豆と共に、イタリアの新年には欠かせない食べ物です。
年越しの乾杯用のスパークリングワインのグラスにザクロの粒を入れる、といった簡単なものから、コテキーノに添えるバリバリの伝統料理まで、食べ方は様々です。

ザクロの粒の簡単なとり方は、裏返して叩く。

エトナ山麓のザクロの果樹園。ザクロって美しい・・。


シチリアのザクロジュース

ザクロのグラニータla granita al melagrana。
材料は水、砂糖、ザクロの果汁、レモン汁。


「総合解説」で紹介しているリチェッタは、サーモンのザクロマリネ(P.27)やヤリイカとべーコンのザクロマヨネーズ添え(P.27)、ザクロ入りラグーのパスタ(P.28)など、ザクロの赤色やピンク色がアクセントの料理各種。




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2020年9月17日木曜日

スカロッピーネのバリエーション。ローマ風のサルティンボッカ、ボローニャ風のボロネーゼ、ナポリ風のピッツァイオーラ。

スカロッピーネのリチェッタを調べていたら、バリエーションの基本スタイルがいくつか見えてきました。

まずはクラシックなマルサラ風味。
すべてのスカロッピーネの基本。
ジューシーで柔らかく仕上げるのがポイント。

スカロッピーネのマルサラ風味scaloppine al marsala

・子牛のロースの薄い切り身500gから余分な脂身を取り除く。
・オーブンシートをかぶせて叩き、薄くして小麦粉をまぶす。
・フライパンにEVオリーブオイルとバターを熱する。
・切り身の両面を焼く。
・マルサラ1カップをかけてアルコール分を飛ばす。
・塩、こしょうしてイタリアンパセリのみじん切りを散らし、5分熱する。乾きすぎる時は水を足す。
マルサラは白や赤ワイン、ブランデーなどでも応用可。

次はサルティンボッカ・アッラ・ロマーナsaltimbocca alla romana
生ハムとセージが加わってマルサラは白ワインに。
下の動画はローマの人気店、ケッキーノ・ダル・1887のリチェッタ。

・子牛肉は1人前2枚に塩少々、乾燥セージ少々(生のセージが苦手な人もいるので)を散らす。
・各肉に生ハムを1枚のせて楊枝で止める。
・フライパンにオイルとバターを熱する。
・肉に小麦粉をまぶし、生ハムを上にしてバターが焦げないように弱火でさっと焼く。
・裏返して白ワインをかけ、アルコール分を飛ばす。
・皿に盛り付けて焼き汁をかける。

ここから先が大きなターニングポイントで、ボローニャ派とナポリ派に別れます。
ボローニャ派alla bolognese/アッラ・ボロニェーゼは生ハムとチーズのトッピング。

まずはボローニャ風、アッラ・ボロニェーゼです。
仔牛肉専門店の動画から、どうぞ。
スカロッピーネのボローニャ風scaloppine alla bolognese

材料/
厚さ1cmの仔牛肉のスカロピーネ・・500g
卵・・2個
バター・・大さじ2
生ハム・・8枚
スライスグリュイエール・・2枚
白ワイン
チキンブロス・・1/2カップ

・肉を叩いて平らにする。卵を溶き、フライパンにバターを熱する。
・切り身に卵をまぶしてバターで焼く。切り身を温めた皿に取り出し、生ハムとスライスチーズを1枚ずつのせる。
・焼き汁を白ワインでデグラッサーレし、チキンブロスを加えて半分に煮詰める。
・切り身を戻し、蓋をしてチーズが溶けだすまで熱する。
・切り身を取り出して焼き汁をかける。

仔牛肉は鶏胸肉や七面鳥肉、豚肉でも代用できます。

ナポリ派alla pizzaiolaアッラ・ピッツァイオーラは、その名の通り、料理上手のピッツァイオーロがピッツァに使っているソースとよく似ている1品。
牛肉や豚のリブロースでも代用できます。
下の動画のスカロッピーネ・アッラ・ピッツァイオーラscaloppine alla pizzaiola
トマトの加工品メーカーのリチェッタ。

・フライパンにバター75gを熱して塩、こしょうする。
・牛肉や仔牛肉の薄い切り身300~350gに小麦粉をまぶし、バターで肉の両面を焼く。
・切り身を取り出して保温する。
・焼き汁にトマトのパッサータ300gとドライオレガノを加える。蓋をして10分煮る。
・切り身を入れて両面になじませ、スライスしたモッツァレラをのせる。
・蓋をして2~3分熱する。

マルサラも生ハムも使わない、かなり経済的な基本中の基本、レモン風味。
スカロッピーネのレモン風味scaloppine al limone。
材料/4人分
仔牛のスカロッピーネ・・8枚、430g
レモン汁・・50g
塩、こしょう、00番の小麦粉
バター・・40g

・肉を叩いて繊維を切り、柔らかくすし、小麦粉をまぶす。
・フライパンに弱火でバターを熱し、肉を入れて強火にする。片面1分ずつ焼いて塩、こしょうする。
・レモンの汁を搾り、焼き上がる2~3分前に切り身にかける。クリーミーなソースにしたい時はコーンスターチを少量レモン汁で溶く。



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総合解説
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2020年9月16日水曜日

スカロッピーネのマルサラ風味をイタリア中の家庭に広めたのはアルトゥージ。サルティンボッカは具をはさんだポルタフォーリオに進化。

今日のお題はスカロッピーネです。
リチェッタは「総合解説」2018年11/12月P.24~。
スカロッピーネはフランス語で肉や魚の薄切りという意味の、エスカロープが語源。
この料理がイタリアの家庭やレストランの定番料理になるまで広まったのは、アルトゥージが、マルサラ風味のスカロッピーネを紹介して以来、と言われています。
シンプルで簡単で美味しい、まさにイタリア料理の入門編の1品。

定番はマルサラ風味ですが、「総合解説」ではここにいくつか工夫を加えていつもとちょと違う、風味をもっとシチリア風にアップさせた1品に仕上げています(リチェッタはP.24)。
マルサラだけでなく、オレンジの皮のすりおろしと果汁でデグラッサーレし、さらに肉にまぶすコーンスターチにアーモンドパウダーを加えています。
スカロッピーネのオレンジ風味。
オレンジはシチリアの赤いブラッドオレンジ。

スカロッピーネの基本はマルサラ風味、レモン風味、白ワイン風味など。
応用編はサルティン・ボッカ・アッラ・ロマーナ、アッラ・ピッツァイオーラ、アッラ・ボロニェーゼ、ポルタフォーリオと、とてもバリエーション豊か。
サルティンボッカ

基本のサルティンボッカは生ハムとセージをのせますが、「総合解説」の応用料理はハムとチーズのせ(リチェッタはP.26)。
下の動画のスカロッピーネは北イタリアのヴァッレ・ダオスタの料理。
チーズはフォンティーナですが、「総合解説」(P.26)ではこれをスカモルツァにしてやや南イタリア風に。

スカロッピーネの基本はマルサラ風味、レモン風味、白ワイン風味。
応用編はサルティン・ボッカ・アッラ・ロマーナ、アッラ・ピッツァイオーラ、アッラ・ボロニェーゼ、ポルタフォーリオなどと、とてもバリエーション豊か。
大きくて薄い切り身で具を挟んだポルタフォーリオは、家庭料理の風合いがぐんとアップ。

「総合解説」にはサルティンボッカのバリエーションのハムとチーズのせスカロッピーネ(P.26)がありますが、具をのせる代わりにはさむと、ポルタフォーリオになります。

仔牛肉のポルタフォーリオcarne al portafoglio

・子牛のもも肉の薄くて広い切り身に小麦粉をまぶし、ハムとスライスチーズをのせる。
・半分に折って両脇を金串で具がはみ出さないように閉じ、全体に粉をまぶす。
・バターで両面を焼き、白ワイン1カップをかけてアルコール分を飛ばす。
・ブロード1カップを加えて煮る。
・皿に盛り付けて煮汁をかける。じゃがいもを添えると完璧な家庭料理。

スカロッピーネの話、次回に続きます。

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総合解説
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2020年9月15日火曜日

アックアラーニャのトリュフ展示会のPVでウンブリアの高級ファッションブランドを知る。

今日のお題はイタリアのトリュフ王国の一つ、アックアラーニャです。
そう言えば以前、トリュフ好きで知られるロッシーニのお気に入りは、アックアラーニャのトリュフだと、何かで読みました。

トリュフは一年中採れ、まず黒で始ます。
まず黒にまり、次に白、ビアンケット、黒のサマートリュフことスコルゾーネと続きます。
そして11月は白トリュフ、マニャトゥム・ピコの最盛期。
10~11月は各地で品評会が開かれ、バイヤーだけでなく、観光客も大勢訪れます。
アックアラーニャはモンテフェルトロと呼ばれる地方の一部で、その中心地はウルビーノ。
この地方はトスカーナ、ウンブリア、エミリア・ロマーニャの3つの州の境界線に囲まれているため、これらの地方の影響を強く受けてきました。

2019年のアックアラーニャのトリュフのフィエラのPV。
最後に登場した人たちは、見事にこの地方を代表する人たち。
おそらくマルケを代表する成功者。

まずブルネロクチネリはマルケじゃなくてウンブリアの高級ファッションブランド。
中部イタリアの自然からインスピレーションを受けたようなPV。
こちらのページによると、労働者の尊厳を守る企業理念がブランドの価値を高めていることで知られる企業。
 ブルネロクチネリ↓


そしてマルケを代表する3つ星の料理人、マウロ・ウリアッシ。
セニガッリアの海沿いに1990年にオープンしたリストランテ・ウリアッシのシェフ。
軽くてモダンな料理を作りますが、マルケのストリートフードの専門家としても知られています。
ホテルの厨房で育ち、フェラン・アドリアから影響を受けた、と語っています。
マルケ料理はマーレ・エ・モンティの料理。
店は海から5mの場所にあるが、振り返れば丘陵地帯だ。
魚も出せばジビエも出す。
リストランテ・ウリアッシ↓

モンテフェルトロの中心ウルビーノとグッビオはアックアラーニャから車ですぐ。
トリュフを味わうついでに訪れるのにはピッタリ。
ウルビーノはイタリアのルネサンスの中心地でラファエロの出身地。
ウルビーノ。


グッビオは陶器の町として知られている。


この地方の料理は、野菜、肉、チーズが主役。
チーズの中ではマルケで一番古いチーズと言われるカショッタ・ディ・ウルビーノが知られている。
羊のミルクがベースの短期熟成チーズで、ミケランジェロはこのチーズが大好きで、ローマでも食べることができるように農場を買い取って送らせていたほどだった。

この地方の旅はアグリトゥーリズモがお勧め。

カショッタ・ディ・ウルビーノ


いつかこの地に行く時のために情報を集めようと思っていたら、広がりすぎてとりとめがなくなってきました。
ブルネロクチネリは覚えた。

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総合解説
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2020年9月14日月曜日

マルケのブロデットもトリュフも、苦労してやっとたどり着けるご馳走。

きのうのストッカフィッソのアンコナ風から、今日はマルケの食べ歩きガイドです。
総合解説」2018年11/12月号P.40。
マルケのグルメガイドに需要があるのか、一抹の不安はあるけど。

そう言えば、きのうのストッカフィッソの記事は
「海と結びついているアンコーナの名物料理なのに、マルケの他の海沿いの街のブロデットのように、アドリア海の海の幸をベースにしていない」という軽い皮肉から始まっていました。
アドリア海の海の幸どころか、北極圏の海でとれたタラですもんね。

やっぱり、マルケと言えば、ブロデットことズッパ・ディ・ペッシェ。

アドリア海を眺めながら夏のビーチリゾートで仲間たちと食べると最高な料理。
海も山も街も素晴らしいマルケ。

ちなみにマルケ出身で一番の有名人はグルメでトリュフ好きとして知られるロッシーニ。


アンコナ風ブロデットBrodetto all'anconetana


魚は11種類入れると言ってます。
・玉ねぎ1個のみじん切りを油で炒め、にんにくとタリアンパセリのみじん切りを加える。
・粗く切ったトマト1個も加えて炒め、魚、塩、こしょう、水少々を加えてなじませる。
・蓋をして約30分煮る。小ヒメジ、小カサゴ、小鯖などのズッパ用小魚は2~4つに切って頭も加える。
・魚がほぐれたら裏漉しする。この作業で小骨を全部取り除いたら汁を鍋に戻し、小ダコ、小ヤリイカ、エビ、小スカンピ、半分に切ったシャコ、他の魚、ビネガー1/2カップを加え、蓋をして15分煮る。
・魚介を皿に取り出し、ブロードをかけてクロスティーニを添える。イタリアンパセリのみじん切りを散らしてEVオリーブオイル少々を回しかける。

アドリア海の一番美味しい魚料理はブロデットだとして、今月のマルケのグルメガイドは、いきなり、普段あまり聞いたことのない地名から始まりました。

ゴーラ・ディ・フルロ
アドリア海とアペニン山脈を結ぶ古いフラミニア街道の一部で、かつては山賊が横行する危険な場所でした。
現在では自然保護区となっています。

ちなみにフラミニア街道はローマのポポロ広場が出発点。
マルケのこんな奥地に何があるかと言うと、トリュフの王国、アックアラーニャがあります。
アックアラーニャのトリュフ。

アックアラーニャは1年中トリュフが採れる街、がキャッチフレーズ。
住民の約1割が、トリュフの採取許可書を持ち、毎年数百トンのトリュフを出荷しています。

マルケのビーチリソートにアンコーナからブロデットを食べに行って、バスが4時で終わってたことを知った時は、オワタと思いました。

海も山も秘境に行く覚悟が必要ですよ、マルケで車がない時は。


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2020年9月13日日曜日

バッカラの語源はスペイン語でストックフィッシュの語源はドイツ語。イタリア中の家庭に広まったが、戻すのが面倒すぎて、今はリストランテで食べる料理に。

きょうの料理はストッカフィッソのアンコナ風「総合解説」2018年11/12月号P.37。
アンコーナはマルケ州の街。

アンコーナはそもそも印象の薄い街ですが、そんな街でいちばん有名な料理が、このストッカフィッソのアンコナ風。
下の動画で料理を披露している店、ジーノは、ストッカフィッソのアンコナ風を食べるならお勧めの店の1軒。駅の近くで父親と娘がやっている店。

ストッカフィッソはノルウェーのロフォーテン諸島で昔ながらの製法で乾燥させたタラ。
ノルウェーのバッカラがイタリアで広まった経緯は有名ですが、ストッカフィッソとバッカラは別々に伝わったんだそうです。
そもそも、バッカラもストッカフィッソも干したタラの保存食。
バッカラはスペイン語のbacalaoが語源で、ストッカフィッソはドイツ語のstock fishが語源。バッカラは塩漬けにしてから干したタラで、ストッカフィッソは塩漬けにしないで天日と風で乾燥させたタラ。

北欧の人は、タラは生かスモークして食べる。
一方地中海では北国から様々な魚の保存食が輸入されていた。
特に海洋共和国として強大な力を持っていたベネチアは、北欧から大量の魚の保存食を輸入していた。さらにカトリックの金曜と四旬節の間は肉を食べないという教えもあり、どんな海のない内陸にも運べて保存ができ、安価なバッカラは、国民食になっていた。
ところが、皮肉なことに、戻すのに手間のかかるバッカラは、次第に家庭では敬遠され、現在ではトラットリアやリストランテで食べる料理になっている。


イタリアにノルウェーのスッカフィッソを広めたのは、ベネチア人のピエトロ・クエリーニという人物だということは、イタリアではよく知られている。
彼は1431年にノルウェーのロフォーテン諸島で遭難した。そこでストッカフィッソを知り、故郷に戻る際に持ち帰ったところ、イタリアにすぐに広まったのだそう。
それ以来、ロフォーテン諸島とイタリアの間の貿易が盛んに行われるようになり、ロフォーテン諸島で生産されるストッカフィッソの90%がイタリアに輸出されている。
でも、ストッカフィッソがイタリアに普及したのはこれより後のこと。伝えたのもフラマン人のバルサタル・ファン・デル・ゴーズと、全くの別人。
どんなに有名な料理でも、その由来が不明なものが多いイタリアで、これだけ詳細に歴史が伝わっている食材は、かなり異例。

ストッカフィッソには、上質のものには特別な呼び方がある。
その一つが“ラーニョragno”で、もう1つは“ヴェストレ・アンコナwestre ancona”。
最上質のストッカフィッソにアンコナの名がついているのはアンコナの人々の誇りだ。

ロフォーテン諸島のストッカフィッソ。


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総合解説
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2020年9月12日土曜日

像の耳は大流行したが、肉よりパン粉を味わう料理などとディスられる。

肉料理の話。ピエモンテーゼの料理の動画が何かないかなあと探していたら、ピエモンテーゼのカレを使った象の耳の動画を見つけました。
コトレッタ・ミラネーゼの象の耳Cotoletta alla milanese: orecchie di elefanteです。
上質の肉を叩いて広げるという、どこから見ても家庭料理の象の耳のカツレツを、一流レストランではどんな料理にするんでしょうか。

材料/2人分
子牛のカレ・・2.5kg
溶き卵・・5個
グリッシーニ入りパン粉
チェリートマト・・400g
レモン・・1個
シャトーに切って下ゆでしたじゃがいも・・500g

・フィレットはあばら骨2本分を切り取り、中央から開いて1枚にする。
シートで挟んで薄くなりすぎない程度に広げる。
・じゃがいも、半分に切ったトマト、タイム、にんにくに油と塩をかけてオーブンで焼く。
・肉に溶き卵とパン粉をまぶす。骨にはつけない。
・澄ましバターを熱して肉をさっと焼く。
焼き色がついたら火を止めてマルドン塩を散らす。
・肉を取り出してし、トマト、オーブンで焼いたじゃがいも、レモンをのせる。

この料理は大きさを追求すると、ご馳走だけど家庭料理のノリになるよね。
多分このサイズは世界最大級。
ウイーンのウインナーシュニッツェルが元祖と言われるこの料理。
19世紀にイタリアに伝わり、元々は肉の厚さは骨の幅と同じな料理だった。
実際にはもっと前から北イタリアに広まっていた料理とも言われている。
肉を叩いて大きく広げてからパン粉を付けて揚げるのという、人気店が始めたリチェッタが大流行し、その形から象の耳、と呼ばれるようになった。
この方法だと肉が薄すぎてパン粉の味しかしないなんて事も言われる。
若い人だと、こっちが元祖だと思っちゃうかも。


本家はもちろん1mmも薄くしない。肉は熟成具合にもこだわった上質の肉。


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総合解説
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2020年9月11日金曜日

コスタータはフィオレンティーナの弟分。イタリアの牛肉の部位、入門編。コスタータのステーキ。

ここのところお題はキアニーナとピエモンテーゼですが、
キアニーナは、過去に何度も取り上げたし、そもそもフィオレンティーナに特化した肉で、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナは料理名がすべてを語っているような料理なので、あまり付け加えることもないかも・・・。
今月の「総合解説」によると、優秀な肉屋は、ランプやロースといった人気のある部位だけでなく、内臓や骨を含むあらゆる部位を勧めることができなくてはならないのだそうです。
精肉店の専門学校で学ぶ未来のマチェッライオ。

日本にはマグロの解体ショーはあっても、牛肉の解体を目にすることはないなあ。

今回の「総合解説」で肉のことを教えてくれるのは、ガンベロ・ロッソチャンネルでも肉の番組を持つファブリツィオ・ノニスさん。

いい機会なので、イタリアの牛肉の部位について、簡単に見てみましょうか。

まずは牛肉の、人気のある一般的な部位について。
最初はscamoneスカモーネ、ランプですね。
ロースからももへと続く部位ですが味はよく、ロースと比べて値段がかなり安いので人気がある。
さしは少ない部位なので、熟成によって肉の柔らかさを引き出す。
そのため品質を判断するには管理具合と目利きが重要。

次はノーチェnoce。
ももの大きな部位。
スライスしてスカロッピーネ、ビステッカ、インボルティーニ、丸ごとをロースト、ブラザートなど、各種の料理に適している。
赤身の部位なので長期の熟成(最低18~20日)が必要。

そしてレアーレ・ディ・ボビーノreale di bovino、肩バラ。
ちなみに12ヶ月齢以上はbovino牛肉で、12ヶ月齢以下はヴィテッロvitello子牛肉と呼ぶ。
 レアーレは牛の前半分の首からロースに続く部分。
よく動く部位なので結合組織や脂肪が多く、これらが加熱によって溶けることによってとても柔らかくなる。
スライスした切り身はコスタータcostataと呼ばれ、フィオレンティーナの弟分とみなされている。
経済的で美味しい部位。

それではフィオレンティーナの弟分のステーキを、フライパンで焼く料理をどうぞ。
コスタータのステーキ。
牛肉のコスタータcostata di manzo arrostita。

材料/
牛の骨付きコスタータ・・1kg
バター・・100g
タイム
にんにく・・1かけ
EVオリーブオイル
塩、こしょう

・前の晩に肉に塩を散らし、肉から出た水分を吸うようにキッチンペーパーで挟んで冷蔵庫に入れる。
・肉を焼く1時間前に冷蔵庫から出して室温に戻す。
・底の厚い高温になるフライパンに、発煙温度が高い油を熱し(オリーブオイルは低い)、この時点で味は重要ではない。
・フライパンが十分熱くなったら肉を、長くて片面1分焼く。昨晩肉に塩を降って16時間経っているので肉は塩を吸ってしっかり味がついている。
・焼き色がついたら裏返してさっと焼く。
・肉を取り出して、またはとろ火にし休ませる。レアの場合、休ませた肉の内部の温度は最高48~50℃になるようにする。フライパンの油を漉す。
・フライパンに肉を戻し、発煙温度の低い(100~110℃)上質のバター、潰した皮つきにんにく1かけ、タイムを肉にのせ、バターをかけながら休ませると、外はこんがり、中はレアに焼き上がる。
・フライパンを肉ごと230℃のオーブンに入れて5分焼く。
・肉を取り出し、一番端の部分と骨を切り取り、中央部分をスライスして熱した皿に盛り付ける。
・塩、焼き油、こしょうを散らしてサーブする。

訳している間に口がすっかりステーキになっちゃった。


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2020年9月10日木曜日

イタリアの2大ブランド牛、キアニーナとピエモンテーゼ

今日のお題はキアニーナとピエモンテーゼ「総合解説」P.33。
イタリアが誇る2大ブランド牛です。
キアニーナ

ピエモンテーゼ


白くて巨大なところはそっくり。大きくても脂肪の割合は少ない。
世界最大級の牛と言われるキアニーナは、ほぼビステッカ用に特化されている。

ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ

ピエモンテーゼは様々な料理に使われている。

牛肉の味の違いは与える餌によって生まれる。
乳離後の子牛は地元の干し草や牧草を与えられる。
両者の値段の違い(言い換えると、キアニーナの値段の高さ)は、このあたりにあるのだそうだ。
キアニーナの放牧地↓

元々は農耕用の牛だったキアニーナは、特別な育て方をするわけではなく、長い年月をかけて農民が情熱を注いで育ててきた。
下の動画にちらっと映った猫が狸みたいにコロコロでした。
きっと、この農場の動物はみんなフクフクになるんだろうなあ。


フィレンツェにやって来る人は、多分、全員、ビステッカ・フィオレンティーナを食べよう、と思っているはず。
かくいう私も、フィレンツェで食べたフィオレンティーナが、今までで食べたステーキの中で一番美味しくて、未だにあの味は忘れられません。
でも、ビステッカはフィレンツェじゃなくても食べられます。
キアニーナの料理も、フィオレンティーナだけじゃないです。
もちろん一番人気なのはフィオレンティーナでしょうが、例えばローストにもします。
リチェッタは「総合解説」2018年11/12月号p.35にあります。

次回はビステッカ同様イギリス人がかわっているローストビーフについて。


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総合解説
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2020年9月9日水曜日

新しい食材の伝統的な形のパスタ。ひよこ豆のキタッラ、ライ麦のガルガネッリ、キノアのカプンティ。おまけのリチェッタはモロッツォの去勢鶏のブロード。

今月の「総合解説」のパスタは、“パスタ・コンテンポラリー”(P.30)というテーマです。
形は古く、伝統的で、素材は最新のもの、というのがイタリア人が感じるもっとも現代的なパスタだそうです。
かなり上級編のパスタになります。
形は、キタッラのタリオリーニ、ガルガネッリ、カプンティの3種類。
キタッラのマッケロンチーニ


アブルッツォ名物のキタッラの道具は、タリオリーニとタリアテッレの2種類の太さの麺ができるようになっています。

今回のリチェッタでは、粉はセモリナ粉とひよこ豆のミックス。
ソースは黒キャベツのペーストとヒメジ。
爽やかな黄緑色とヒメジの赤い色が鮮やかなパスタです。
リチェッタと写真はP.30。

ガルガネッリはロマーニャ地方のショートパスタ。

パスタの形が鶏の気管に似ているから気管という意味のガルガネルという名前になったパスタ。
去勢鶏のブロードでゆでるイン・ブロードが定番。
綜合解説」ではライ麦粉と1番の小麦粉のミックス。
ソースはロックフォールのフォンドゥータ。

去勢鶏のブロードBrodo di cappone

材料/
去勢鶏・・約3kgが1羽
にんじん・・1本
玉ねぎ・・1個
セロリ・・2本
塩、こしょう
粗塩・・2つかみ
水約3L

・去勢鶏は内蔵と脂身を取り除く。
・腹の中に塩、こしょうし、長時間煮るうちに崩れないようにタコ糸で縛る。
・大鍋に去勢鶏、皮を取って半分に切ったにんじん、半分の深さまで十文字の切込みを入れた玉ねぎ、約3つに切ったセロリを入れて水で鶏を覆う。
・蓋をして強火にかけ、アクを取りながら沸騰させる。
・沸騰したらとろ火にして軽く沸騰させながら約3時間ゆでる。火は強めない。鶏は裏返さない。
・ゆで上がる30分前に塩を加え。蓋をして再びことこと煮る。
・鶏を取り出し、サルサ・ヴェルデを添えてセコンド・ピアットとしてサーブする。
・ブロードは細い目で漉して冷まし、室温になったら冷蔵庫に入れて24時間寝かせる。
・表面にゼラチン状に固まった脂を全部取り除く。

去勢鶏(カッポーネ)の産地として知られるピエモンテ、クーネオ県の街、モロッツォ。
モロッツォのカッポーネ

別のブログでも昔から去勢鶏を取り上げています。
以前の記事はこちら

最後はカプンティ。
プーリア名物のオレッキエッテを始めとする指で引っ掻いて成形するセモリナ粉のパスタの仲間。
今回はキノア粉とセモリナ粉のミックス。

キノアはグルテンフリーなため、イタリアに多いセリアック病の人にも注目されている食材。

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2020年9月8日火曜日

白トリュフのタヤリン。リチェッタは家庭ごとに違い、卵黄が少ないバージョンもある。トリュフのリゾット。

アルバのシェフのトリュフ料理、次はタヤリン。
アルバ近郊のトラットリア・リソルジメントのマリア・セッティマのリチェッタです。
総合解説」11/12月号P.18
店のwebページはこちら



タヤリンは家庭料理として広まったピエモンテの代表的な手打ちパスタで、家庭の数だけリチェッタがあります。
今では日曜日に食べるご馳走で、世界中に広まりました。
卵がたくさん入ることが知られているパスタで、伝統に忠実な人なら小麦粉1kgにつき30~40個卵黄を加えますが、マリアのリチェッタは1kgあたり15個と、比較的少ない“レッジェーリ版”。
卵のレクチンは生地の加工しやすさをアップさせて煮崩れをしにくくする作用があります。

卵黄40個のタヤリン

ロッディーノのタヤリンの名人として知られるオステリア・ダ・ジェンマのリチェッタ
トリュフのタヤリンTajarin al al tartufo
材料/10人分
バター・・200g
白トリュフ・・150g
小麦粉・・1kg

・小麦粉をフォンタナに盛って卵を割り入れる。
・卵を溶きながら小麦粉を少しずつ加える。さらに手でこねて均質の生地にする。
・麺棒で厚さ2mm程度に伸ばして細く切る。
・パスタをゆでて溶かしバターをかける。
・白トリュフを削りながら散らす。

白トリュフはリゾットやニョッキも合う。
トリュフのリゾットrisotto al tartufo

材料/
カルナローリ米・・300g
エシャロット・・2個
白トリュフ(1~4月に採れるビアンケット)・・60g
鶏のブロード
おろしたパルミジャーノ・・80g
EVオリーブオイル・・大さじ4

・汚れを落としたトリュフを薄く切って油に入れ、香りをつける。火にかけて高温にならないように温める。
・鍋に油を引いて米を炒める。トリュフは火から下ろす。
・米が透き通ってきたらエシャロットの薄切りを加える。焦げないように米と一緒には加えない。
・沸騰したブロードを少しずつかけながらリゾットに煮る。煮上がったらトリュフの薄切り少々を加えて塩味を整える。
・火から下ろし、パルミジャーノ少々ととトリュフを浸したオイルを加えてマンテカーレする。
・皿に平らに盛り付けてトリュフオイルを回しかける。



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2020年9月7日月曜日

世界中から食通が集まるアルバのシェフたちの料理には、地元の食材と新しい調理方法の研究の成果が注ぎ込まれている。温泉卵のアルバの白トリュフがけ。

ランゲ地方は、ワインと白トリュフを目当てに世界中から舌の肥えたグルメが集まる場所。
料理人も才能に溢れた優秀な人材が集まります。
今月の「総合解説」(P.16)で紹介しているランゲの若手料理人の一人、フランチェスコ・オベルトシェフは、クーネオ県ケラスコのリストランテ・ダ・フランチェスコのシェフ。
店のwebページはこちら

店内は18世紀の素晴らしいフレスコ画で覆われています。
料理はランゲ地方の伝統とシェフのモダンなインスピレーションを活かしたもの。
今回、興味を引いたのは、「総合解説」で彼が披露した料理。温泉卵の白トリュフ、フォンドゥータ、カルドン添え。

温泉のある国イタリアで、温泉卵の料理はないのか、一度探したことがあるのです。
その時は殆ど見かけなかったのですが、今回始めて、イタリアのアルタ・クチーナのシェフが作る温泉卵のリチェッタに出会いました。
組み合わせたのは地元の特産品。
ラルバの白トリュフとニッツァ・モンフェッラートのカルド・ゴッボ。
ゴッボはせむしのこと。
折って土をかぶせる独特の軟白栽培で、白くて柔らかくてシャキっとして甘いカルドンになります。

ピンツィモーニオには欠かせない野菜。
手間がかかるせいか生産量が少なく、地元以外にはあまり出回っていない。
ランゲ地方に行ったら味わうのを忘れずに。

オベルトシェフの温泉卵は、温泉卵がミシュラン1つ星の料理になるとこうなる、というお手本のような料理。
まずは温泉卵はイタリア語でなんて言うのか。
ウオヴォ・テルマーレuovo termale だそうです。
記事では低温で卵をゆでる日本のテクニックと紹介していました。
その卵に散らすのは、昨日のブログで紹介したジャンニのトリュフ犬学校を卒業したトリュフ犬が探しだしたトリュフ。
アルバの白トリュフの定番の組み合わせは卵とタヤリン。
そのパスタのソースにもなるトリュフと組み合わせる定番のソースはフォンドゥータ。
定番のパスタはタヤリン。

目玉焼きもアルバの有名シェフたちには独自のリチェッタがある。

アルバのピアッツァ・ドゥオモのエンリコ・クリッパシェフの卵は、ベースは目玉焼きだが、そこにかなり手をかける。
まず、にんにくとセージ風味の焦がしバターにアンチョビ入り生クリームを加えたソースにタピオカの粉を加えてつなぐ。
これをシルパットに薄く広げてオーブンで5、6時間乾かしてパスタのような生地にする。

皿をカルドン、アンチョビ、ヘーゼルナッツと、地元の特産品のソースで飾り、中央に目玉焼きを盛り付けたら焦がしバターと削った白トリュフをかけ、その上にアンチョビクリームの生地をかぶせる。

地元の特産品をいかに美味しく、特別な料理にするか、アルバのシェフたちは腕を競っています。

オベルトシェフは温泉卵という、イタリアでは殆ど知られていないテクニックと、カルド・ゴッボ、ラスケーラという地元の食材を組み合わせました。
ラスケーラは、標高900m以上で作られているクーネオの高原の赤カビチーズ。
溶けやすくて甘く、デリケートで強すぎない味が特徴。

今回の料理では、フォンティーナと一緒に溶かしてフォンドゥータにしました。
ラスケーラのフォンドゥータFonduta di raschera。

・小角切りにしたラスケーラを鍋で溶かし、牛乳と卵黄を加えてよく混ぜる。弱火にかけてかき混ぜながら溶かす。
・溶けたら器に流し入れ、クロスタータを添えて、またはタルトゥーフォを散らしてサーブする。

次回は、トリュフと組み合わせるランゲ地方の定番パスタ、タヤリンについて。


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総合解説
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2020年9月6日日曜日

エミリア・ロマーニャ原産のラゴット・ロマニョーロはポー河の水鳥の猟犬からトリュフ犬としての才能を認められて新天地を見つけた。

今日のお題は、アルバであと2週間ほどで解禁になる白トリュフ。
総合解説」P.16では、ベテランのトリフォラウ(ランゲ地方のトリュフハンターの呼び方)が、
「私が一番好きなトリュフは、数が少なくてデリケートな柳の木に共生した白トリュフだ」と、一生に一度は言ってみたい通なセリフを語っています。

彼はアルバのトリュフ犬の学校の創設者。

トリュフ犬の訓練

子犬たちは生後約4ヶ月。
ラゴット・ロマニョーロとポインターのミックス。両親も優れたトリュフ犬。
ラゴット・ロマニョーロはエミリア・ロマーニャ地方原産の犬種。
ポー河の湿地帯で猟の獲物の水鳥を回収していたが、嗅覚が優れていたためトリュフ犬として訓練されるようになった。
訓練すると生後11週の子犬もこうなる。

エミリア・ロマーニャとアルバの思いもかけないつながり。

アルバの森で仕事中のトリュフ犬




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2020年9月5日土曜日

エミリア・ロマーニャの豚肉料理は、ゲルマンとローマの境目の名残。リチェッタはナポリのブラチョーラ・ディ・コテカ。

今日はエミリア・ロマーニャのセコンド・ピアット。
タリアテッレやラザーニャがエミリア・ロマーニャ料理の女王だとしたら、王様は豚肉です。

総合解説」で紹介したのも豚肉料理(P.15)でした。


イタリアの地方料理の本、『イタリア・イン・クチーナ』には、
ボローニャ大学で中世史を研究する食品学者、マッシモ・モンタナーリ教授によると、ボローニャに豚肉文化を伝えたのは、ゲルマン民族の大移動で知られる、ゲルマン系のランゴバルド人。
ロンバルディアという名前に名残が見られるけれども、やがてイタリア半島に同化して姿を消した民族です。
ゲルマン民族に征服されるまでの地中海の家畜といえば、羊でした。
エミリア・ロマーニャより北に羊が広まらなかったことを考えても、この地方は地中海式食生活の国境地帯になったようです。

イタリアの豚肉料理で最もポピュラーなのはブラチョーレ、つまりポークチョップ。
フライパンで焼くのが一般的だけど、今回の「総合解説」のリチェッタは、a vapore。
水分を加えてオーブンで蒸し焼きにします。

エミリア・ロマーニャ地方の農家では、豚肉料理は日曜日のご馳走でした。

基本のリチェッタ、豚肉のフライパン焼き、ローマ風、Braciola di maiale in padella alla romana

・肉に塩、こしょう、フェンネルシードかローズマリーを散らしてなじませる。
・フライパンに油を熱し、肉の両面をさっと焼く。
・白ワインをかけてアルコール分を飛ばす。

ナポリにもブラチョーレという豚肉料理があるのですが、豚の皮の料理でした。
ブラチョーラ・ディ・コティカbraciola di coteca


ナポリ料理の人気の本、『リチェッテ・ディ・ナポリ』によると、リチェッタは
材料/4人分
豚皮・・4枚
にんにく・・1かけ
イタリアンパセリ
パルミジャーノ
EVオリーブオイル
塩、こしょう

・下ごしらえした豚皮ににんにくとイタリアンパセリのみじん切り、パルミジャーノ、塩、こしょうをのせて巻き、タコ糸で縛る。
・沸騰したトマトソースに入れて弱火で2~2.5時間煮る。
 
素朴で質素な料理だけど、移民したイタリア人にとっては貧しい時代をたくましく生き延びた家族の思い出と重なる特別な料理。

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2020年9月4日金曜日

フェラーラの農民の麦わら帽子の形をしたパスタ、カボチャのカッペッラッチ。

今月の「総合解説」で紹介したエミリア・ロマーニャ料理は、ピアディーナ、カッペッラッチ、ブラョーレ・ディ・マイアーレの3品でした。
カッペッラッチは、フェラーラの名物料理です。
そう言えば、フェラーラもエミリア・ロマーニャ地方の街でした。

フェッラーラの食

カッペラッチ(リチェッタは「総合解説」11/12月号P.14)はカボチャの詰め物入りパスタ。
こちらのページによると、
エステ家の宮廷で生まれました。
よく比べられるのがトルテッリ・ディ・ズッカ。

カッペッラッチ・ディ・ズッカ。

両者は外見はまったく違うパスタ。
共通点は詰め物のカボャ。
カボチャはマントバの名物。
でもマントバはゴンザーガ家が支配したロンバルディア州の街。
ゴンザーガ家とエステ家は同盟関係にありました。
カッペッラッチという名前は、形が農民がかぶる麦わら帽子に似ているところから。
ハロウィン料理としてポピュラーになりつつあるちょっと今どきの料理。

マントバのカボチャ


もう一つ、明確な違いがあるんですが、わかるかな。
ヒントは詰め物です。
フェラーラのカッペッラッチは肉が入らないマーグロな料理でした。
ソースにはラグーをかけることもあるようです。


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総合解説
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2020年9月3日木曜日

ボローニャのお勧め店。

ボローニャはヨーロッパで最古の大学があり、「学問の都」と呼ばれる。
ボローニャの学生たちは昔から大学だけでなく、オステリアにも足繁く通ってきた。

私は、ボロニェーゼの本場ということ以外何も知らずにこの古い大きな街に足を踏み入れて、結局、どこで何を食べたらいのかまったくわからず、街をさまよい歩いて学問の都の雰囲気だけ感じてすごすご退散しました。
一生に一度の機会に、もったいないことしました。

そこで、今日はちょっと古いけど、「総合解説」2012年12月号から、ボローニャのグルメガイドを紹介します。


まずは歴史的な店、カンティーナ・ベンティボーリオ。
店のwebページはこちら


ワインが400種類以上あるのが自慢ですが、ジャズのライブハウスにもなっています。
ボローニャのベンティボーリオ家はフィレンツェのメディチ家みたいな存在のボローニャの支配者だった一族。今では一族の館は殆ど残っていませんが、この店はそんな貴重な建物の中にあります。
タリアテッレは店のスフォリーナが打ったもの。
モルタデッラ料理の盛り合わせや、熱いティジェッレもあります。

リストランテなら例えばカミネット・ドーロ。
webページはこちら

中心部の小さな店。両親が料理を作り、子供たちがサービスをする店。
去勢鶏のブロードのトルテッリーニ・イン・ブロードがお勧め。
伝統的なボローニャ料理の店なら、トラットリア・アンナ・マリア。
webページはこちら
アンナ・マリアのラグー

女主人は麺打ちの名人で、毎日何キロものパスタを作る。
ラグーは1日に5kgは作っている。
料理は昔ながらの日曜日のご馳走を再現したような味。
名物はもちろんラグーのタリアテッレ。

ボローニヤ市民に人気の伝統料理の店、トラットリア・メロンチェッロ。
webページはこちら
タリアテッレ、トルテッリーニ、ラザーニャなどのパスタは自家製。


ボローニャ料理の話をしていたら、無性にトルテッリーニ・イン・ブロードが食べたくなりました。
始めて食べた時の衝撃を、また体験したい!

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2020年9月2日水曜日

タリアテッレ、ラザーニャ、トルテッリーニ。ボローニャ料理の傑作にしてイタリアの国民的料理。

パスタの話が、想像以上に理系の話だったので、実は、きのうの翻訳は、かなり疲れました。
エミリア・ロマーニャを代表する料理はパスタ・フレスカのタリアテッレだとずっと言っていますが、正確にはタリアテッレとラザーニャ、でも、さらにまだまだあります。

ラザーニャはエミリア地方の家庭の味の定番です。
エミリア地方のラザーニャは、コクがあって香りが強く、イタリアでこの味のラザーニャを作ることができる街はボローニャだけだ言われています。
美食の街ボローニャで、そのシンボルと言われる料理なのです。
イタリア料理を最初に1つにまとめた料理書の作者、ペッレグリーノ・アルトゥージはエミリア地方出身で、エミリア地方の料理の賛美者でした。
彼の本の大部分はエミリア地方のパスタ・フレスカに費やされています。
このパスタ作りの伝統を受け継いできたのは、レズドーラと呼ばれるベテラン主婦たち。
さらに、麺打ち職人も女性で、スフォリーナと呼ばれています。

ボローニャのパスタ・フレスカのもう一つの重要な料理は、トルテッリーニ。
1個2gに満たない重さで、しかもその大部分が詰め物、というトルテッリーニは、パスタ・フレスカを麺棒で薄く伸ばす、という技が生み出した小さな傑作です。

生地を詰め物を包んでも破れないぎりぎりまで薄く伸ばすには、熟練の職人技が要求されます。
さらに、ビーナスのおへそがモデルと言われるトルテッリーニは、小さければ小さいほどよいとされ、同じタイプの詰め物入りパスタの中で、生地が一番薄くて小さいパスタ。

エミリア地方の料理は豪華で残り物の料理とは違う、と書きましたが、実は、トルテッリーニの具は残り物を有効利用した料理。
それでも、パルミジャーノのようなチーズがあって、去勢鶏のブロードを作る伝統のある地方なら、こんなにおいしい料理ができるんですねー。

タリアテッレもラザーニャもトルテッリーニも、基本はパスタ・フレスカを薄く伸ばしたパスタ・リッシャ。
パスタ・フレスカは、リマチナートのセモリナ粉と小麦粉を混ぜて打ち粉にすると、伸ばした時、生地がザラザラになって、表面に凹凸ができてソースが絡みやすくなる。
生地をこねる時は、脈拍のように力強く、リズミカルに。

麺棒でパスタを伸ばす↓

とにかく、ボローニャに行って、タリアテッレもラザーニャもトルテッリーニも食べなければ、何しに行ったの?てこと。

ボローニャのパスタ・フレスカの店。

ボローニャ・スフォリーナ協会の会長が本を宣伝がてらその技を伝授。

小麦粉をフォンタナに盛り、中央に溶いた卵(粉1kgにつき卵10個)を入れ、
フォークで混ぜながら粉を少しずつ混ぜ込む。
粉を全部混ぜ込んだら手でこねてなめらかな生地にする。
・ラップで包んで、または2枚の皿ではさんで30分休ませる。
・麺棒で中央から外側に向かって、常に生地を回転させてて裏返しながら薄く伸ばす。
・ボローニャには、サン・ルーカが見えるほど薄く伸ばす、という言い回しがあるそうです。
サン・ルーカは街はずれの丘の上にある教会。




・ボローニャの中心部から、この教会が見えるくらい薄く伸ばしたら、空気が通るように下に麺棒を置いてかぶせて麺台に広げて乾かす。
乾燥させすぎると割れるので、パスタもパンのように触ってその時々の状態を確認することが必要。
・生地を筒型に巻いて好みの幅にカットする。

ちなみに今月の「総合解説」のエミリア・ロマーニャ料理の記事(p.14)で取り上げているのは、カボチヤのカッペッラッチ。
あえて定番を外したと見た。

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2020年9月1日火曜日

ラグーのためのパスタ、タリアテッレは、麺棒で薄く伸ばすことを追求した軟質小麦粉ならではのパスタ。グルテン、でんぷん、レクチンが生み出した軟質小麦粉と卵のパスタ。

スローフードのスクオラ・ディ・クチーナ”シリーズのパスタ・フレスケ・エ・ニョッキ』から、

パスタ・フレスカ入門編です。
オレッキエッテはプーリアのチーメ・ディ・ラパのソースのためのパスタ、トロフィエはリグーリアのペースト・ジェノベーゼのためと、各パスタには最適の地元の産物を使ったソースがあります。
それでは、エミリア・ロマーニャのパスタとソースは何でしょう。

エミリア・ロマーニャは、農産物が豊富で、交通の要所でもあったので輸送網が発達し、各都市には支配者の大公たちが力を競う宮廷がありました。
つまり、イタリアの他の地方と違って、貧しくて質素な家庭料理という要素はそれほど重要ではなく、残り物を工夫してやりくりするより、毎日市場で新鮮な食材が手に入るという、とても恵まれた豊かな地方です。

この地方のご当地ソースはラグーです。

ラグーには、硬質小麦そしてパスタ・セッカの産地、カンパーニアのものと、軟質小麦つまりパスタ・フレスカの産地、ボロニェーゼの2種類が知られています。

ラグー・ボロニェーゼのためのパスタは、エミリア・ロマーニャの主婦が麺棒で伸ばすパスタ・リッシャのタリアテッレです。

タリアテッレはラグーのためのパスタです。

タリアテッレを知るには、北イタリアの主流、軟質小麦粉のパスタを知る必要があります。

硬質小麦粉と水をこねた生地は、グルテンのおかげで加工しにくい安定した形の、煮ても形を保つ生地になります。 
軟質小麦粉と水の生地はグルテンが少ないく、でんぷんがゆで汁に溶け出るので柔らかくて粘つく生地になります。
基本的に、煮崩れても問題ないミネストラなどの、もっとも質素で原子的な料理以外には使われません。
水ではなく湯を加えるてこねると、でんぷんがゼリー化し,生地に腰が出ます。米の麺などオリエントの料理でよく使われている製法です。
軟質小麦粉と湯をこねた生地は、製法が複雑で家庭料理に取り入れにくい欠点があります。


軟質小麦粉と卵の生地は、卵黄のレクチンのおかげで形を変えやすく、煮崩れしにくい生地になります。クーネオのタヤリンなど、卵白は加えずに卵黄だけをたくさん加えるパスタもあります。

軟質小麦粉のパスタは、軟質小麦と水や湯をこねて作る白くて曲げやすい、弾力のある生地のパスタです。ニョケッティのようなシンプルな形の、薄すぎないパスタが適しています。香りはほぼなく、ゆでると膨らんで弾力が増し、ソースがからみにくくなります。

軟質小麦粉と卵のパスタは、鮮やかな色でなめらかな手触りで、加工しにくいけれど、薄く伸ばすことができるのでどんな詰め物でも包むことができ、ゆでてもアルデンテを保つ、卵の強い香りの麺になります。麺棒で伸ばすと表面がざらざらになる、という特徴もありました。

北イタリアでは、このタイプの生地が普及します。
エミリア・ロマーニャのパスタもまさにこのタイプです。
南イタリアのセモリナ粉の乾麺は、麺の表面をざらざらにするために、つるつるになるテフロンではなく、ブロンドのダイスを通して麺を成形しました。
北イタリアではパスタマシンを通したつるつるの麺ではなく、木製の麺棒と台で伸ばしてザラザラにしました。

パスタ・フレスカの基礎知識はまだまだありますが、長くなったので今日はここまで
タリアテッレ

オステリア・ダ・ジェンマのタヤリン



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パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ

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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...