2016年5月30日月曜日

ヴィヴァ・パッパ・コル・ポモドーロ

今日のお題は、「総合解説」でトスカーナで一番質素なズッパと説明されている料理。

パッパ・アル(コル)・ポモドーロです。

Pappa al pomodoro


で、逆に一番リッチと見なされているのは、黒キャベツのズッパ。

zuppa con cavolo nero


どちらも農民が考え出した料理ですが、パッパ・アル・ポモドーロの主役はパン。

という訳で、「総合解説」の記事では、まず、パンが当時の農民にとってどういうものだったかを説明しています。

昔のイタリアの農村部では、パン作りの儀式は神聖なものでした。
何時間もかけて生地を作って成形し、白い布で包んで村の共同かまどに運んで最後の発酵をさせます。
そして日曜日に焼きました。

時には肉も一緒にローストして、パンの皮に肉の焼ける香りをつけました。

そして日曜日はパンにたっぷりのおかずを添えてご馳走にし、平日は、残ったパンをやりくりして食べたのです。

トスカーナ人は、残ったパンを有効利用する才能に長けていました。
そしてそのやりくりの中から考え出されたたくさんのズッパの一つが、パッパ・アル・ポモドーロです。

冷やして食べても美味しいので、夏向きのズッパとしても知られています。

記事の中で、シエナの料理学校(webページはこちら)の先生が、外国人の生徒にこの料理を教える時は、60年代の有名なカンツオーネ、『Viva la pappa col pomodoro』も一緒に紹介する、と言ってますが、その歌がこれです。
 ↓



リアルイタちゃんがいる・・・。

作曲はニーノ・ロータだって。
世界的に大ヒットしてドイツ語やスペイン語版も作られました。
ドイツ語だと、『Ich frage meinen Papa /イッヒ・フラーゲ・マイネン・パパ』
で、しっかりドイツ語なのにこの人(リタ・パヴォーネ)が歌うと超カワイイ。

実は、パッパ・アル・ポモドーロよりもっと質素なズッパがありました。
パンコットpancottoです。
17世にトマトがトスカーナに伝わる前の、トマト無しのパッパ・アル・ポモドーロです。
さすがに、今は、作る人はほとんどいないそうです。

パンコットのリチェッタは、トスカーナ料理本の決定版、『イル・グランデ・リーブロ・デッラ・ヴェーラ・クチーナ・トスカーナ』に載っています。








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“パッパ・アル・ポモドーロ”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年6月号に載っています。
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2016年5月26日木曜日

チプリアーニ風カルパッチョ

今日は今月の「総合解説」で取り上げた地方料理の中から、イタリア料理の定番中の定番、カルパッチョの話です。

この料理は、イタリアの伝統料理にしては珍しく、誕生の経緯がはっきりしています。
とても有名な話なので、今さらと思うかもしれませんが、『サーレ・エ・ペペ』の記事で、基本的なところを再確認。

まず、考案者はハリーズバーのオーナーのジュゼッペ・チプリアーニ氏(1900-1980)。
赤い生の牛肉に黄色いソースをかけたこの料理は、ルネサンス時代のヴェネチアの大画家、ヴィットリオ・カルパッチョの絵の特徴である艶のある赤と黄色のコントラストからインスピレーションを得て、ジュゼッペによってカルパッチョと名付けられた、というのは、今やイタリア料理界の伝説。

カルパッチョは、今や日本では生肉の赤よりマグロの赤の代名詞となりましたが、今回は黄色いソースの話。
これはまあマヨネーズです。
削ったパルミジャーノではなかったんですね。
彼の自伝『l'angolo dell'Harrys Bar』によると、正確にはマヨネーズを牛乳少々で軽くしてウスターソース数滴で調味したものです。
彼はこのソースを“salsa universale/サルサ・ウニヴェルサーレ”、つまり万能ソースと呼んでいました。
しかもこのソースを肉にかける方法は、“アッラ・カンディンスキー”、カンディンスキー風、というテクニック。
カンディンスキーと言えば、抽象絵画の元祖。

これは『K』という作品だそうです。
 ↓
[ K ] Wassily Kandinsky - Line (1929)

そしてこれがハリーズ・バーのオリジナルに忠実にカンディンスキー風にソースをかけたカルパッチョ。
 ↓
Carpaccio

ん?これはひょっとして?
そうこれは、お好み焼きに芸術的にかけられたマヨネーズそっくり。
あれはまさに、西洋料理の世界ではカンディンスキー風と呼ばれる技法だったのです。
恐るべし関西人。

お好み焼き



カルパッチョも世界中に広まるにつれてオリジナルのリチェッタがどんとん姿を変えていっています。
ここらへんで、オリジナルを振り返ってみるのも面白いかも。



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“チプリアーニ風カルパッチョ”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年6月号に載っています。
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2016年5月23日月曜日

フィオーリ・ディ・ズッカ

ズッキーニのスカペーチェで始まった「総合解説」6月号ですが、次のお題は、フィオーリ・ディ・ズッカです。
華やかで、初夏のイタリア料理の女王のような食材ですね。

Fiori Di Zucca


さて、このフィオーリ・ディ・ズッカですが、日本語に直訳すると、カボチャの花。
でも、「総合解説」にもある通り、イタリアでは、市販されているフィオーリ・ディ・ズッカは、一般的にはズッキーニの花。
ところが、ズッキーニの花をフィオーリ・ディ・ズッキーニと呼ぶ人は少数派。
カボチャの花でもズッキーニの花でも、みんなフィオーリ・ディ・ズッカ。
実際には、ズッキーニとカボチャの花では、形や香りの強さが違うようですが。
まあ、イタリア人がそんな細かいこと気にするはずないですもんねー。
カボチャの花とズッキーニの花をきっちり区別したいか、どうでもいいかで、あなたの日本人のDNAの強さが分かるかも。

フィオーリ・ディ・ズッカ・フリッティ。
 ↓



ズッキーニとフィオーリ・ディ・ズッカのスパゲッティ
 ↓


このズッキーニのスパゲッティのポイントは、サフランで濃い黄色にすること。
これは野菜のパスタ全般に当てはまりますね。



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イタリア料理の基礎シリーズ、野菜編“フィオーリ・ディ・ズッカ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年6月号に載っています。
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2016年5月19日木曜日

ズッキーニのスカペーチェ


ようやく「総合解説」6月号が発売になりました。
今月は長かったー。
気が付いたら先月より10ページ以上長くなってました。

解説の最初の料理は、イタリア料理の代表的な夏のコントルノ、“ズッキーニのスカペーチェ”です。

スカペーチェはどこの地方の料理だっけ。
カンパーニアか。
地中海地方全域に普及しているスカペーチェは小魚の料理ですが、カンバーニアではなすやズッキーニもスカペーチェにしたんですね。

記事のリチェッタは、塩をして水気をしっかり抜いてから揚げて、にんにく、ミント、ビネガーでマリネにします。
初夏にふさわしい料理だなあ。

スカペーチェはアラブ、スペイン経由でナポリに伝わった料理で、スペイン語のエスカベーチェが語源と思いがちですが、ナポリの言葉にスペイン語の影響が表れるより前に、すでに『Liber de coquina』というラテン語の本にリチェッタが書かれているそうです。
なので、古代ローマ時代にすでにあったという説もあります。
でも、アラブ、スペイン、古代ローマの、どれがルーツなのか決定的な証拠はないようです。

ズッキーニのスカペーチェの“食べ方”の動画。
 ↓


この人最高!


ヴィッサーニシェフはスカペーチェのマリネ液でバッカラ(またはタラなど)をマリネして、ズッキーニはそのコントルノとして上に載せます。
 ↓



期せずしてナポリ人とグランシェフのマリネ液の使い方の違いがよくわかりましたねー。


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“ズッキーニのスカペーチェ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年6月号に載っています。
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2016年5月16日月曜日

パスタの歴史、1

このところ、過去の「総合解説」の記事を紹介する話が続いていますが、今回は、“パスタ”の話。
07/08年6月号の『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事です。

グラニャーノのパスタ

Faella Drying Spaghetti


パスタの歴史の中で、文書として明確な証拠が残っているものが紹介されています。
言い換えれば、当時のイタリアでパスタの歴史として広く認められているエピソードということになります。

まず、最初に
「パスタはパンと同じで自然発生的な食べ物だ。
そのため、最初に小麦粉と水をこねたのは誰かとか、それを干して保存や輸送ができるようにしたのは誰かということを探し出すのは不可能といってよい」
と言い切っています。

「穀物の栽培と普及は多くの古代文明で並行して起こり、気候、他の文明との交流、味覚の傾向など、様々な要素が加わって、それぞれの食習慣が形成されていった。
ただ一つ、パスタはイタリアの伝統の一つ、ということだけは疑問の余地がない」

これがイタリア人のパスタに対する基本的なスタンスではないでしょうか。

パスタにかかわらず、イタリア料理の歴史を語る時、必ず引き合いに出される本、『De re coquinario』。
全10冊に約500点のリチェッタが収録されている本ですが、著者のアピキウスの人物像はいまだに謎で、少なくとも3人の有名な“アピキウス”が違う時代に存在しているそうです。

この本には“ラザーニャ”について書かれています。
それは小麦粉がベースですが、食べるための料理というよりは、ティンバッロやパスティッチョなどのパイに蓋をするのに最適なものでした。

その後の証拠があるパスタの痕跡は、パスタを大量生産する設備についてです。
最初はシチリアでした。
1154年頃、当時のシチリアの伝統や習慣をアラブの地理学者が調査した記録、『Libro di re Guggero』の中に、
パレルモから30㎞離れたトラビーアという町に風車付きの製造所があって、ここで大量に造られた糸の形のパスタは、カラブリアだけでなく、イスラム教徒やキリスト教徒の国に輸出されている、と書かれています。

マルコ・ポーロが中国からパスタを伝えたという伝説を崩す記録もあります。
1292年に彼がヴェネチアに戻るより前の1279年、ジェノヴァの公証人、ウゴリーノ・スカルパがポンツィオ・パストーネという人物のために作成した遺言状の遺品リストの中に、“マカロニ1箱”という項目が記録されているのです。

そして1574年には、ジェノヴァでパスタ職人組合が形成されています。

パスタを最初にアメリカに輸入したのは第3代大統領のトーマス・ジェファーソンだというのは、有名な話。
フランス大使時代にイタリアにも足を延ばしてパスタに出会い、その美味しさに感心して、小さな麺用プレス器をアメリカに持ち帰ったそうです。

そして今から約10年前、パスタはイタリアの食品製造業の輸出品の中で、第3位の座を占めるまでになっていました。
総生産量の65%が輸出されていました。

パスタは世界中で生産され、イタリアの国旗の3色をイメージカラーにしてイタリア語の名前をつけたパスタが大量に販売されています。

ところが、当時はイタリア産のDOPやIGPなどの、EUの産地保証付きの製品は、まだ一つもありませんでした。
わずかに、グラニャーノのパスタだけが、唯一、IGP申請中でした。

当時はそうだったんですねえ。
メイドインイタリーの食品は、世界中に広まって、結局コピー製品が大量に出回る、というのが、この国の根深い悩みです。

でも、その後、13/14年1月号の「総合解説」では、2013年10月号に、グラニャーノのパスタが最初のIGPとして登録された、という記事を載せています。

パスタの歴史の話、次回に続きます。

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“パスタ”の記事の日本語訳は「総合解説」07/08年6月号に、“グラニャーノのパスタ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年1月号に載っています。
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2016年5月12日木曜日

あおさのゼッポレ

最近、レトルトのあおさ入りお味噌汁が気に入ってます。

今までは、あおさと言うと真っ先に思い浮かべるのは、ナポリのあおさ入りフリットでしたが、ライバル登場だなあ。

過去の「総合解説」を見ていたら、このあおさのフリットのリチェッタを見つけました。
06/07年6月号(販売終了)の解説です。
懐かしいなあ。
その時も無性に食べたくなったものですが、これを海辺のピッツェリーアで前菜として食べたりなんかしたら、気分はナポリだなあ。

10年前、イタリアでは、日本料理店が急速に増えだした頃でした。
記事よると、
「海藻を食べる、という革命的な発想は、有名店のシェフたちによってイタリアにも広まりだし」
ていました。
「海藻は、1970年代にマクロビオティックの料理と共にイタリアに伝わったが、イタリアの家庭で一般的になることはなかった。
ただし、かつてはイタリアでも海藻を食べていたことがある。
シチリア、サルデーニャ、カンパーニア、リグーリアの沿岸地方の貧しい家庭では、数十年前まで海藻を食べていた。
しかし、牛や馬の内臓と一緒で、一般的にはほとんど価値のないものと見なされていた。

ひえー、海藻は内臓と一緒かあ。
なるほどなあ。

「ドン・アルフォンソのアルフォンソ・イアッカリーノシェフは、子供のころ、親しい漁師に、よく夜釣りの船に乗せてもらったという。
漁師は岩場で採った新鮮な海藻を、アンチョビや小さなダツと一緒に船の灯火でさっと焼いて食べさせてくれた。
その味が忘れられず、店でも時々海藻料理を出している。
去年の新年には、海藻とウニのズッパを作った。
さらに、ナポリには昔から、海藻入りのビニェの一種で、ピッツェッレやゼッポレと呼ばれる揚げ物を作る習慣がある」
「イタリアには、イギリスなどの北ヨーロッパやアジアから海藻が輸入されている。
昆布(la kombu)、海苔(la nori)、ワカメ(la wakame)、ひじき(l'hiziki)など名前はそのままイタリアでも使われている」

ラ・コンブにラ・ノリか。
海藻は女性名詞なんですね。
あおさはラオサかな。
そうそう、あおさはイタリア語でなんて呼ぶと思いますか。
ラットゥーガ・ディ・マーレlattuga di mareです。
海のレタスかあ、食べる気満々じゃないですか。
ナポリだけじゃなくて、イタリア各地の沿岸で採れます。
ラットゥーガ・ディ・マーレ
 ↓



ナポリ風のあおさ入りゼッポレは、
小麦粉、あおさ、ぬるま湯て溶いた生イースト、ぬるま湯を混ぜた濃い生地に塩を加えて短時間発酵させ、スプーンですくって油に落として揚げます。
前菜としてサーブします。
ビール飲みたいなあ。

海藻入りパスタ・クレッシュータ
 ↓


あおさが入らないパスタ・クレッシュータはナポリの伝統的なストリートフードでもあります。



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2016年5月9日月曜日

なすのパルミジャーナ

今日は「総合解説」のバックナンバー(06/07年6月号、販売終了)から、“パルミジャーナ”の話です。
『ア・ターヴォラ』の記事です。

解説では、
「パルミジャーナは人気の家庭料理でありながら、レストランの創作料理に姿を変えることもできる一品。
なすという手ごろな食材をボリュームのある一品に仕立てた料理で、肉や魚料理の代わりにもなる。
ナイフを使う必要がないので、ビュッフェ料理しても人気がある。
少量を前菜にしてもよいし、焼きたてより室温に冷ましたほうがおしいので、なすが旬の夏には最適」
と説明しています。

カンパーニアが発祥地だと考えられているようですが、各地に様々なバリエーションがあります。

なすは、インド原産ですが、紀元4世紀の初めにアラブ人によってヨーロッパに伝わりました。
イタリアではまずリグーリア以外の北イタリアに広まり、トスカーナやラツィオからナポリに伝わって、さらに南イタリア全域に広まりました。
特にカラブリアとシチリアでは絶大な支持を受けます。
この地方はアラブの影響を受けた地方です。
ドルコやギリシャ、レバノン、エジプトといった国の料理になすは欠かせません。
揚げたなす、トマト、肉、チーズを重ねたムサカなどは、明らかにパルミジャーナと同じ系列の料理。

イタリアで最初に本にこの料理のリチェッタが登場したのは1781年のこと。
ナポリ料理の歴史的な本、『IL Cuoco galante』の“melanzane dette all'itliana”という料理でした。
パルミジャーナという名前が登場するのはそれから150年後のアダ・ボーニの『Talismano della felicita』という本の中でした。

カゼルタのリストランテ・レ・コロンネのシェフのなすのパルミジャーナ。




記事によると、モッツァレッラは水牛のものより脂肪と水分が少ない牛乳のものが適しています。
1、2時間前に切って水気をきっておきます。

バリエーションは、
なすを揚げる代わりにグリルする。
なすと相性の良いオレガノや唐辛子を加える。
チーズはプローヴォラやグリュイエールでも応用できる。
など。



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2016年5月6日金曜日

アンコウのポルケッタ

総合解説」13/14年5月号のリチッタの中で、一番なるほどと思ったのは、アンコウのポルケッタとうさぎ肉のポルケッタです。

その名前からして、ポルケッタは豚肉料理だと思い込んでいましたが、魚やうさぎでも、“ポルケッタ”はできるんですね。

その昔、初めてポルケッタと出会ったのは、多分ウンブリアの市場。
フィノッキエット・セルヴァティコの香りも初めて知り、強烈に印象に残りました。
トスカーナではローズマリーを使うそうですが。

それから、ローマのテルミニ駅の近くの小さなポルケッタのパニーノのテイクアウト店では、有名なガイドブックで紹介されたせいで、日本人客がやたら多くて、記念に記帳するノートまであって、日本人はポルケッタが大好き、ということを知りました。

ポルケッタの美味しさは、なんといっても柔らかくてジューシーな子豚肉と、それを長時間かけてこんがりローストした皮の香ばしさ。

イタリアからの移民によってポルケッタが伝わったアメリカでは、イタリアンローストポークと呼ばれて広く普及しました。
アメリカ人も大好き。
豚の塊肉を最高に美味しく味わうことができる料理です。
さらに、ポルケッタのテクニックは、様々な食材に応用されるようになってきています。





焼かないのかい!
という訳で、別の動画で焼き上がったポルケッタの姿をどうぞ。




子豚以外のポルケッタには、アンコウやうさぎ肉のように、切り身が肉厚で2枚合わせるとローストのような筒形になる脂が多すぎない淡白な食材が最適で、それに独自の配合のハーブをたっぷり
まぶしてからパンチェッタで巻いて皮をつくり、さらにコンベクションオーブンやフライパンで焼くなど、肉が乾きすぎないようにローストします。


アンコウのポルケッタは「日曜日のプランゾ」のメインディッシュとして紹介されています。
ポルケッタは、イタリア料理を代表する魚料理にもなれそうですね。




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“アンコウのポルケッタ”と“うさぎ肉のポルケッタ”の日本語リチェッタは、「総合解説」13/14年5月号に載っています。
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2016年5月2日月曜日

ラザーニャのお焦げとゆでないボッリート


過去の「総合解説」を見直していて、10年前の、マッシモ・ボットゥーラシェフのリチェッタに目が留まりました(06/07年5月号、販売は終了しています)。
彼は、モデナの大人気店、オステリーア・フランチェスカーナのシェフで、当時は創業10年でミシュラン2つ目の星を獲得した直後。
店のwebページはこちら
さらにこの6年後には、店はイタリアで4番目の3つ星店になりました。

その料理は、“La parte cocccant delle lasagne”。
「ラザーニャのお焦げ」と訳していました。

「焼きたてのラザーニャが家庭の食卓に登場するといつも取り合いなる部分」
なんだそうですよ。
この言葉が魔法を解く呪文であったかのように、突然、10年前にこのリチェッタを訳した時のことが蘇えってきました。
訳しながら、いったいどんな料理なんだろう、食べてみたい、と思ったものです。

こちらのwebページによると、シェフの代表作、ヒメジのリヴォルノ風と共に、オステリア・フランチェスカーナの人気料理ベスト3に入る1品だそうです。

もちろん、ただのラザーニャではありません。
パスタはエルベッテ入りの緑のパスタで、生ハムの脂身でカリッと焼きます。
パスタにかけるのは、
コロンナータのラルド、パンチェッタ、子牛のテール、豚の頬肉、サルシッチャ、骨髄、去勢鳥のブロードで作ったラグーと、
生クリームを加えてサイフォンでムース状にしたベシャメル、
その上にはおろしたパルミジャーノを薄く焼いたガレット。
パルミジャーノのチャルダのリチェッタはたくさん訳してきましたが、彼のチャルダはパルミジャーノ90g、室温のバター15g、コーンスターチ5gです。
さらにトマトはアガーを加えてゼラチン状にして添えます。
なんと、シェフがトマトが苦手なのであえてラグーには加えなかったそうです。

何一つ、凡人の頭では思いつかないものばかりを組み合わせて、料理を作り上げるのですねー。

イタリア料理を変えた100人のシェフを紹介する本
100×10』によると、
ボットゥーラシェフは、今では、現代イタリア料理のアイコンと呼ばれています。
また、偉大な伝統を通して未来を見せてくれる料理を作る彼は、世界の最も偉大なシェフの一人と考えられています。
もっとも愛している材料は“文化”で、文化と情熱がない料理に感情移入はできない、と語っています。

そしてこの本で彼が披露している料理は、“Bollito non bollito”。
「ゆでないボッリート」。
子牛のテール、子牛の頬肉、子牛の舌、キアニーナのバラ肉、ファッソーネ子牛の頭肉、モデナのコテキーノいう個性の違う6種類の肉を1つずつ、去勢鳥のブロード少々、香味野菜と一緒に真空パックして湯煎にかけ、それぞれ違う温度で違う時間加熱した肉が主役で、さらにパプリカのゼリー寄せやイタリアンパセリの泡、玉ねぎのジャム、リンゴのモスタルダという面白げな付け合わせが添えられています。

ボッリート・ノン・ボッリートを語るシェフ
 ↓



アルタ・クチーナの料理は訳しているとストレスがたまるようなものが多いのですが、彼の料理は、この先どうなるの、という好奇心が先に立って、高視聴率の連続ドラマのように楽しめました。
こういうリチェッタは、知ってから料理を食べると料理がより一層楽しめます。

ちなみ、現在販売中の「総合解説」では、ドー(ダヴィデ・オルダーニ)、カッシーニャ・クッカーニャ、ピッツェリーア・プルチネッラ、タヴェルナ・エスティアのシェフという、いずれも現在イタリアで注目されているシェフたちのリチェッタを訳しています。


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ラビオロ・アベルトは、スパゲッティ・ボンゴレのモダンバージョンになるか。

海のパスタ、2品目は“アンコウと野菜のラビオロ・アベルト”です。日本語のリチェッタは(CIR6月号、P.21)。 ラビオロ・アベルトは、マルケージが考案した革命的パスタ。 パスタにイタリアンパセリの葉をはさんで伸ばし、レースのように美しい模様にしたのが特徴で、マルケージの唯一無二...