2022年11月30日水曜日

アドリア海を象徴する料理、ブロデットは煮汁を味わう料理。トマトが普及して煮汁は金色から赤に変わった。

今日のお題はズッパ・ディ・ペッシェです。(CIR)12月号のP.8を見てください。
ズッパ・ディ・ペッシェは漁師が売れ残った魚で作るごった煮のイメージがありましたが、これはなかなか美しいズッパ・ディ・ペッシェです。
ズッパ・ディ・ペッシェはアブルッツォはペスカーラの名物。別名ブロデットとも呼びます。『イタリア・イン・クチーナ

によると、アブルッツォの沿岸部で一番晩有名なズッパ・ディ・ペッシェだそうです。売り物になりにくい魚を使った質素な料理で、アブルッツォでは安価な料理として大人気。レストランのセコンド・ピアットの定番になっています。あん肝入りやパプリカ入りなどもあります。中でもバストのブロデットは有名。
でも、煮汁がメインの料理なので、見た目はさほど・・・。


『イタリア・イン・クチーナ』によると、ブロデットはローザ・エ・オーロとも呼ばれていました。つまり、金と赤。赤というのはおそらく、アメリカから伝わったトマトと唐辛子が普及して、この地方のブロデットは赤くなった、ということです。つまり、もともとは白“ビアンコ”だったのです。というか、トマトが入らないと金色、ということでしょうか。
それでは次に(CIR,P.16)の料理を見てください。魚のスペッツァティーノspezzatinoという料理名ですが、これはズッパ・ディ・ペッシェです。しかも、金でも赤でも、白でもなく。薄緑です。
ズッキーニのクリームを敷いているのです。
ズッパ・ディ・ペッシェは煮汁を味わう料理なのでかなり大胆なアレンジ。
ちなみに現在はロッソが人気。
一緒に飲むワインはトレッビアーノ・ダブルッツォ。

下の動画はバストのブロデット。


この料理を作るには、漁師や魚屋さんともお馴染みになっておかないと。
魚より野菜が身近な地方だったら緑色のズッパ・ディ・ペッシェもありかも。

バストの漁師。ブロデットじゃなくてブルデッタだって。何言ってるのかほぼわからないけどバストのお母さんたちとはばっちりコミュニケーション取ってる。




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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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2022年11月29日火曜日

タコのゆで汁で作るタコのマヨネーズ。テレビの有名パーソナリティーのアイデア。

今日の料理は(CIR12月号、p.6)の料理です。
“スカンピのアッラ・ピッツァイオーラscampi alla pizzaiola”
全然気が付かなかったのですが、今月『クチーナ・イタリアーナ』がフィーチャーしたシェフは、テレビで活躍しているカンパーニア出身のアントニオ・カンナヴァッチュオーロシェフで、この料理も彼のオリジナルとして有名な1品だそうです。
ヴォイエッロのCMのシェフ

どうりで、この料理、まじめに訳していたら、キサンタンガムを使うし、タコのマヨネーズなるものも登場するし、ちょっと斜め上を行ってる料理でした。
普通の人がイメージするスカンピのアッラ・ピッツァイオーラ↓

ピッツァイオーラは、そのリチェッタも歴史も、はっきりしたことは不明の料理。
その名前から、ピッツァ職人には欠かせないトマト、オレガノ、にんにくのソースがかかっている、というのが大体のイメージ。
そもそも肉料理のリチェッタ。
ルチアーノ・ピニャタロさんのナポリ料理の本、『リチェッタ・ディ・ナポリ』によるとカルネ・アッラ・ピッツァイオーラは貧しい料理で、ローストの切り落としや内臓を使った料理の残り物とトマトを使って翌日作る料理。パスタのソースやセコンド・ピアットにしました。
本のリチェッタは、
Carne alla pizzaiola/カルネ・アッラ・ピッツァイオーラ;材料/4人分
肉の切り身・・4枚
ミニトマト・・300g
EVオリーブオイル
にんにく・・1かけ
唐辛子、オレガノ、バジリコ、塩

・フライパンに刻んだトマト、油少々、にんにくのみじん切り、オレガノ、好みでバジリコを入れて10分ソッフリットにし、肉を入れて焼く。熱いうちにサーブする。

できあがりです。
トマトのソースに肉を入れて焼くという超シンプルな料理。
スカンピにかけるタコのマヨネーズは、タコのゆで汁にはタコのたんぱく質が溶け出ているので卵の代わりになる、ひまわり油を少しずつ加えてハンディミキサーで乳化させる、というアイデア。
スカンピのピッツァイオーラの場合はスーゴに増粘剤のキサンタンガムを加えて固める、という直球。
ノバーラのビストロ・カンナバッチュオーロ


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2022年11月28日月曜日

バーニャ・カウダの主役は生で美味しく食べれて、かつ冬の間保存もできるように軟白栽培したカルドン。

今日のお題は前回のバニェット・ヴェルデにも関連がある、バーニャ・カウダBagna Caôdaです。
リチェッタは今月の(CIR)のP.8に載っています。
アンチョビ、にんにく、リグーリア産EVオリーブオイルでできているこのソース。ピエモンテのアンチョビの行商人がプロバンス地方から伝えたという説が有名です。
バーニャ・カウダ。

寒い季節の野菜をたっぷり食べる農民料理です。仲間が大勢集まってバルべーラやノベッロのような若いワインを飲みながらワイワイ賑やかに時間をかけて取る食事でした。バーニャ・カウダは大勢参加すればするとほど美味しい料理。
2019年のアスティのバーニャ・カウダ・デイ。

それと同時に、カルド・ゴッボというニッツァ・モンフェッラート特産の野菜、カルドンを味わうソースでもありました。
ニッツァ・モンフェッラートのカルド・ゴッボ。

一見するとセロリですが、冬のために野菜を保存する方法として考え出された軟白栽培で、9月半ばに1個ずつ地中に埋めて育てます。カルドンは葉緑素がなくなってアイボリーホワイトになり、甘く、柔らかくなって生で食べるのに最適の状態になります。みんなこれを味わっているのです。

アスティの注目レストランはリストランテ・ダ・バードン。

創業者のジュゼッペ・バードンがトラットリアを開いたのは1891年。現在キッチンには4代目の曾孫が立っている。



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2022年11月26日土曜日

農民料理とフランスの影響を受けたサボイア家の宮廷料理、そしてリグーリアの産物がピエモンテ料理のベース。

今日のお題はピエモンテのソース、バニェット・ベルデです。ピエモンテ名物のボッリート・ミストに添えるソースですが、今月の(CIR)ではポルチーニのフリットに添えています(リチェッタはP.4)。
トスカーナ風ポルチーニのフリット。

ピエスモンテ風ボッリート・ミスト。

ピエモンテ風ボッリート・ミストは7種類のソースと7種類の牛肉の部位を使うと言われているが、数に定説はない。
ピエモンテ風ボッリート・ミストの本場、クーネオはカル―の人気店、トラットリア・ヴァッシェッロ・ドーロ。

ボッリート・ミストのワゴンサービス。

ピエモンテのご馳走ということは、サボイア家の宮廷の料理がルーツ。ピエモンテ料理は農民の伝統料理とフランスの影響を受けたサボイア家の宮廷料理から生み出されています。
バニェット・ベルデは緑色のソースという点ではリグーリアのペーストに似ていますが、バジリコではなく、イタリアンパセリのソース。

ビネガーに浸したパンの代わりにじゃがいもを使って軽くしたモダンなバニェット・ベルデ。

海のない、さらにはオリーブオイルに縁のないピエモンテ州のソースなのにアンチョビとオリーブオイルを使うという、隣のリグーリアからの食材がなければできないソースでした。
ただ、ピモンテでは、アンチョビはスペイン産がベスト、と昔から信じられていました。オリーブオイルはデリケートなリグーリア産が最高と言われています。
アンチョビはリグーリアの塩漬けアンチョビを行商して回る人たちがピエモンテにはいました。アスティあたりからフランスの海岸伝いに旅をして塩やアンチョビを仕入れていました。彼らがフランス料理の伝統や食材を伝えたケースもあったでしょう。例えば、バーニャ・カウダはバッサ・ピエモンテ地方の料理ですが、正確には中世にプロバンス地方で生まれました。
オリーブオイルはピエモンテでは生産地を名乗れるほどの量は造られていません。でも、隣のリグーリアではオリーブオイルは特産品です。そのオイルは世界中に知られてました。こんな話があります。20世紀初頭、アメリカに渡るためにジブラルタル海峡を通過する人たちが最後に目にしたヨーロッパは、サッソのオリーブオイルの巨大なポスターだったそうです。
サッソのオリーブオイルのCM


ピエモンテではオリーブオイルはごく一部で使われるとても高価なものでした。場合によってはくるみ油で代用したりしていました。にんにくはたっぷりありました。畑の所有者はにんにくを栽培することが法律で決められていたそうです。ちなみに、あまりに大量ににんにくが入っている料理は上流階級には敬遠されました。
ピエモンテ料理は、農民と、フランスの影響を受けたサボイア家の宮廷料理、そしてリグーリアの農作物がベースです。



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2022年11月25日金曜日

ゴンザーガ家の宮廷から受け継がれてきたルネッサンスの味、カボチャのトルテッリ。

今日のお題はクリスマスイブの料理、カボチャのトルテッリtortelli di zuccaです。
ゴンザーガ家の宮廷で、イザベラ・デステ侯爵夫人の料理顧問だったクリストフォロ・メッシスブーコCristoforo Messisbugoの本にこの料理が初めて登場したのは1549年のことでした。
ちなみにこのメッシスブーコさんはエステ家の宮廷料理人としてルネサンスの宮廷料理や食文化を本に書き表して広めたイタリア料理史の重要人物の一人です。

この料理のリチェッタは、パルマやクレモナの宮廷料理人やパスタ職人が移り住んだ街に広まりました。トルテッリと言うのはどこにでもあるパスタで、マントバではクリスマスイブの夜にはどこの家庭でも食べる料理だそうです。甘いカボチャ、モスタルダ、アマレッティの詰め物は、場所によって若干のバリエーションがあるそうなので、ルネサンスの味を体験がてら、様々な町で食べ比べてみるのも面白いかも。ちなみにこの料理の発祥地はマントバとフェッラーラの間で争われています。
ソースは農家の自家製溶かしバターとセージが最も一般的ですが、濃いトマトソースをかける地方もあります。カボチャやアマレットの甘みとトマトの酸味の組み合わせです。
今月の(CIR)の記事(P.31)にもある通り、詰め物入りパスタはポー河沿岸の名物です。この地方の特産品、硬質チーズも入ります。
詰め物のベースはカボチャですがトラットリアなどでは適したカボチャがある時期ならイブでなくてもいつでも作る人気料理です。詰め物が柔らかすぎる時はパン粉を加えて調節します。前日に作っておくと余分な水気が飛んで味が強くなります。
生地は詰め物のデリケートな味が生かせるように、できるだけ薄く伸ばして短時間でゆで上げます。
マントバの、カボチャのトルテッリが名物のトラットリア、ドゥエ・カヴァッリーニ↓

残念ながらリチェッタの動画が見つからなかったので店のリチェッタではありませんが、とりあえず、カボチャのトルテッリの動画をどうぞ。



tortelli di zuccaカボチャのトルテッリ。
材料/
マントバ・カボチャ・・500g

・カボチャを半分に切って種を取り、幅3㎝に切る。皮を切り落として小さく切り、シートを敷いた天板に広げる。170℃のオーブンで20~30分焼き、ポテトマッシャ―で潰す。
・潰したカボチャに粉にしたアマレッティ25g、刻んだりんごのモスタルダ50g、おろしたパルミジャーノ50g、レモンの皮1/2個のすりおろし、たっぷりのナツメグ、塩、こしょうを加えて必要ならパン粉を加え、ラップで覆って冷蔵庫で8時間休ませます。
・0番の小麦粉360gをフォンタナに盛り、塩を加えて溶いた卵4個を加えて混ぜはじめ、5~6分こねて弾力のある生地にします。丸めてラップで覆い、冷蔵庫で30分休ませます。薄く伸ばして5~6㎝角に切り、詰め物を少量ずつのせます。生地を半分に折って長方形にし、詰め物の周囲を抑えて閉じます。
・フライパンでバターとセージを熱します。
・トルテッリを1~2分塩ゆでして取り出し、セージバターのフライパンに入れてなじませます。
・皿に盛り付けてセージバターをかけ、パルミジャーノを散らします。

相性が良いワインは地元のランブルスコ。
マントバのアンティカ・オステリア・アイ・ラナーリもカボチャのトルテッリが有名な小さなオステリア。








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2022年11月24日木曜日

エミリア・ロマーニャ地方のパスタの厚さや大きさを決めるのは、ベテラン主婦ことレズドーラ。

カボチャのリゾット、ニョッキの次は、カボチャのパスタです。
今日のお題は、カボチャのトルテッリtortelli di zucca。
北イタリアの人はナポリの人をからかう時に、葉っぱを食べるmangiafogliaと言ってからかうほど野菜を食べません。でも、カボチャはミラノやマントバ周辺ではたっぷり栽培とされていました。カボチャがこの地方の特産品の米と結びついたのが、カボチャのリゾット。ニョッキも北イタリアでは人気の料理。この場合はカボチャはじゃがいもの代わりにを務めます。
 そしてカボチャのトルテッリ。詰め物入りパスタは、正直言って北イタリアの食べ物。最大のポイントは、薄く均一に伸ばした生地。
詰め物入りパスタと言えば、手打ちパスタの本場、ボローニャなどエミリア・ロマーニャ州の名物。
この地方では乾麺に欠かせない硬質小麦は育たなかったので、軟質小麦のパスタが広まりました。
硬質小麦のパスタは複雑な形を作るのは苦手で、薄ーく伸ばして詰め物にかぶせて複雑な形にしながら中身が出ないようにしっかり閉じる詰め物入りパスタには適さないのでした。なので南イタリアには詰め物入りパスタはあまり普及しなかったのです。
今月の(CIR)の記事(P.31)にもあるとおり、エミリア地方の主婦、レズドーラは、軟質小麦粉のパスタを薄く伸ばす技を究極に高めました。

レズドーラの傑作、詰め物入りパスタ

そんな条件でもカボチャのトルテッリは人気になりました。カボチャの特徴はその甘くてマイルドな味。酸味と組み合わせるとルネサンスの人気の味として知られるアグロドルチェな味になります。カボチャは様々な食材と組み合わせて複雑な味を生み出すことができました。
詰め物入りパスタには様々な形がありますが、形や生地の厚みを決めたのはレズドーラ。

マントバのカボチャのトルテッリ。

詰め物入りパスタの代表はビーナスのおへそことボローニャのトルテッリーニですが、

カボチャのトルテッリは妊娠中のマリアのお腹。

カボチャのトルテッリと同じ生地のバリエーションの代表は、エルベッテのトルテッリ。パルマの伝統料理。



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2022年11月22日火曜日

イタリア料理の地理的分類は、北と南、山と海とポー河。

このところ取り上げているのはマントバ・カボチャことズッカ・マントバーナ。
日本でいういわゆる西洋カボチャで、その甘さが特徴。
代表的なリチェッタは、トルテッリ、リゾット、ニョッキなど、カボチャの甘味を活かしたもの。
イタリアの地方料理を分類するときは、まず、北か南に分けます。次は山か海。この分け方が一般的だと思いますが、カボチャを語るときは、もう1つのイタリアならではの特殊な地理が登場します。それはポー河です。アルプスからアドリア海まで、イタリア北部を横断するイタリア最長の河で、その流域を豊かに肥えた農業に適した土地にしながら流れていきました。
ポー河の流域↓

カボチャのトルテッリについては今月の(CIR)の特集記事の一つ、“ポー河添いのラビオリ”で詳しく説明します。
今日のお題はカボチャのリゾットです。ポー河流域は、米の産地としても知られています。というか、むしろポー河を象徴する食材が米です。ポー河だけでなく、ミラノとロンバルディアを象徴する食材でもあります。
グイド・トンマージの地方料理書『クチーナ・ミラネーゼ

によると、北イタリアの米の栽培は16世紀後半にマントバとパビアの間で始まりました。そしてベルチェッリやノバーラといった代表的米の産地へと広がっていき、ミラノの伝統料理に欠かせないものとなっていきます。
マントバのカボチャはミラノの米料理、つまりリゾットと結びつきました。この地方の米は、リゾットに適していることを目的に作り出されました。
それは、アミロースの含有量が多い米です。でんぷんが多い米はマンテカトゥーラを助け、バターやチーズの量を減らすことができました。
マンテカーレ

マンテカトゥーラはリゾットだけでなくパスタにも欠かせないテクニック。油脂を利用するのが一般的ですが、甲殻類の殻や貝も利用できます。

クリーミーさとマイルドさを追求する料理、リゾットにカボチャはぴったりでした。

マントバカボチャのリゾット

カボチャのニョッキ


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2022年11月21日月曜日

マントバはカボチャ、とゴンザーガ家の街。

今日の料理は今月の(CIR)から2品目。“カボチャのグリルとパプリカの前菜”(P.3)。
そしてテーマはこの料理の主要な食材、ズッカ・マントバーナzucca mantovanaです。
ロンバルディアの街、マントバにとっては街を象徴する野菜ですが、広く出回っている西洋カボチャの一種。甘いのが特徴。
ズッカ・マントバーナ↓
ゴジラやゴーヤが生まれてきそうだけど、中身は甘くて乾いたカボチャ。

マントバはロンバルディア州の街。

マントバはロミオとジュリエットに登場したり、ベルディのオペラの舞台になったりと、歴史のある都ですが、一番有名なものはカボチャ、かも・・・。
あっそうだ、マントバの繁栄を築いたゴンザーガ家もいました。マントバにルネサンス文化を広めたゴンザーガ家よりへたすると有名かもしれないのがマントバ・カボチャです。
なんでこんなに有名なのか、特にクリスマスの季節になると、人気の詰め物入りパスタ、カボチャのトルテッリがイタリア中の家庭で作られて、イタリアの若者が、カボチャのトルテッリを食べないとクリスマスが来ない、なんてマンマの味を語るのです。このトルテッリに使うのがマントバ・カボチャ。さらにカボチャのニョッキも人気の1品。

今月の(CIR)では“ポー河添いのラビオリ”という特集記事にリチェッタが登場します。カボチャは、マントバやポー河周辺の食材、パルミジャーノやアマレットなどとよく合いました。
その傑作がカボチャのトルテッリですが、今月のリチェッタでは、マントバカボチャをグリルしてイタリア風に調味し、パプリカのサラダと組み合わせて鮮やかなご馳走風のサラダにしています。
カボチャのトルテッリとゴンザーガ家のマントバ↓

カボチャのグリル

材料/4人分
カボチャ・・600g
EVオリーブオイル・・大さじ5~6
イタリアンパセリ・・1房
にんにく・・1かけ
塩、唐辛子

・カボチャを厚さ3~4㎜にスライスして片面3分ずつグリルする。
a.油、塩、にんにく、イタリアンパセリをハンディミキサーで攪拌して皿に少量敷く。
・その上にカボチャのグリルを並べて残りのaをかけ、ラップで覆って冷蔵庫で数時間なじませる。

カボチャのアリアータagliata di zuccaはシチリア風。カボチャを油で揚げて黒オリーブやミント風味、甘酢(アグロドルチェ)風味にする。
クチーナ・シチリアーナ
のリチェッタは、
材料/4人分
カボチャ・・800g
黑オリーブ・・20~25粒
ビネガー・・大さじ2
EVオリーブオイル・・大さじ2
砂糖・・大さじ1
ピーナッツ油(揚げ油)、塩

・カボチャを5㎜のスライスにし、たっぷりのピーナッツ油で揚げてシートに取る。
・フライパンの油もふき取る。
・ビネガーに砂糖を溶き、カボチャを揚げたフライパンに入れる。オリーブオイル、オリーブ、塩小さじ1/2を加え、沸騰しだしたらカボチャにかける。
※ミント風味のカボチャのアリアータは、オリーブの代わりにミントとにんにくのみじん切りを加える。




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2022年11月19日土曜日

ナポリではない街でナポリの伝統ピッツァを造るフランコ・ペペは、上品で知的で繊細な指を持つピッツァイオーロ。

きのうはスカローラの話がおもしろくて、うっかり忘れるところでした。
ピッツァ・ディ・スカローラの話。
こっちが本題でした。
スカローラがのっかったピッッァのことと思ったら大外れ。
こんな食べ物です。(日本語のリチェッタはCIR12月号P.2)
ナポリを代表するピッッァイオーロの一人、フランコ・ペペが作るスカローラのピッツァスカローラ↓
それにしてもこんなに上品な指のピッツァイオーロ初めて見ました。

ナポリのピッツァイオーロたちに果敢に取材している力作本、「ピッツァ・アルバ・ペゾーネ

によると、彼はパン屋の家系のピッッァイオーロ。家族が経営するピッツェリアを継ぎましたが、店は正確にはナポリではなく、カイアッツォというナポリからちょっと離れた町にあります。ナポリにはなくてもそのスピリットを宿した彼のピッツァは評判になり、今では遠くから食べに大勢やってきます。確かに動画で見る限り、知的で穏やかでエレガントと、ステレオタイプのナポリ人とは違うタイプの人です。それにしてもこんなに上品な指のピッツァイオーロ初めて見ました。動作の端々まで素敵でした。
彼のスカローラのピッツァはスカローラ・リッチャを生のままカルトッチョにして蒸し煮にします。スカローラ、オリーブ、ケッパー、アンチョビを詰めたカルツォーネです。ちなみにアンチョビはチェターラのものでした。
ピッツァを焼くかまどは高温になるようにお父さんが設計したそうで、高く、口が狭くなっています。おが屑で焼くので温度が調整しやすく、シンプルで軽く、具1つ1つの味がはっきり分かるそうです。
それでは一応、世界的なピッッァイオーロではなくナポリの普通の主婦らしき人が家庭で作るスカローラ・リッシャのピッツァもどうぞ。

プロと素人の違いがよく分かりました。

スカローラとバッカラのカルツォーネ。
それでは元気に言ってみましょう~。この魚屋の呼び込みみたいな早口と威勢のよさとしゃべりすぎて声が枯れてるのがナポリのピッッァイオーロ。




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2022年11月18日金曜日

ピッツェリアでは売ってないナポリのイブの名物、スカローラのピッツァ。


クチーナ・イタリア・レジョナーレ、12月号の最初の料理はナポリのクリスマスイブまたは冬の定番料理、“スカローラのピッツァ”です(P.2)。
ナポリ料理の大家、ルチアーノ・ピニャタロは、その有名な著書、『リチェッテ・ディ・ナポリ』で

ナポリでは12月24日と12月31日にスカローラのピッツァを食べます。つまり豪華なディナーが控えている日の昼食の腹ごなし、といった料理。と書いています。
ちなみに本にはオーブン焼きとフリットの2つのパターンのリチェッタがあります。
でも、おいしいので今では一年中、食べたいときに食べる料理です。
探すとスカローラのリチェッタはこの本の中でもいくつか見つかります。かなりナポリではおなじみの野菜のようです。
ピッツァという名前でもピッツェリアには売ってません。どちらかと言うと惣菜店で売っている食べ物です。

スカローラはエンダイブやチコーリアという名でも知られています。レタスに似ていますが、ラディッキオの仲間でチコーリアの一種。

この料理の主役、スカローラは冬野菜。カルロ・クラッコの地方料理の本、『クラッコの地方料理
には、スカローラはカンパーニアのシンボルのような野菜の1つ。北イタリアの野菜のシンボルは縮緬キャベツですが、スカローラは南の縮緬キャベツです。と説明しています。

私は初めて訪れたプーリアでチコーリアと出会い、歯ごたえがよくて食べ応えがあり、いかにも健康に良さそうなほろ苦さもあるこの野菜が忘れられなくなりました。しかも、ソラマメのピューレのような甘みのある付け合わせやオリーブオイルとよく合うのです。ただ、ナポリのスカローラはレタスの一種かと勘違いしていて、チコーリアとは思わなかったなあ。
火を通すと生まれ変わる野菜です。スカローラのピッツァはスカローラが具ですが、スカローラは詰め物をするのに適した野菜。生食用スカローラはリッチャ、加熱用はリッシの2種類があります。
チコーリアは別名カタローニャ。その芽はプンタレッレと言います。

カタローニャ。

スカローラの下ごしらえとスカローラのストゥファータLa Scarola Stufata。

・下ごしらえしたスカローラを鍋に入れて火をやや弱め、20分蒸し煮にする。
・フライパンで油、にんにく、アンチョビ、黒オリーブをソッフリットにし、水気を切ったスカローラを加える。こしょうとケッパーを加え、蓋をしてなじませる。

スカローラの詰め物料理はスカローラ・インボッティータと言いますが、ナポリ方言になると、Scarole 'mbuttunateと書くようです。

プーリアのソラマメとチコーリア。


詰め物入りスカローラのリチェッタは次回。



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2022年11月17日木曜日

(CIR)12月号発売しました。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)12月号発売しました。
クリスマス特集号。12月のリチェッタはクリスマスのプランゾとイブのチェノーネ向きの料理と、詰め物入りパスタや各地のドルチェの特集などです。
世界中、どこでも同じようなことが起きている、クリスマス。



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2022年11月16日水曜日

チロル料理はドイツ、オーストリア、ハンガリー、地中海料理のミックス。パスタはラビオリが主流。

スローフードのパスタの地方料理の傑作本、パスタ・フォルメ・デル・グラノ

にほんのわずかな可能性にかけて、トレンティーノに乾麺の伝統料理はないか探してみましたが、やっぱりありませんでした。
その代わり生麺のパスタはいくつか見つかりました。
どれも聞いたことがないものばかり。
動画を探してみました。
ROFIOI;山の食材を使ったラビオリ。ロフィオイ。



そしてシュルツクラプフェンSCHLUTZKRAPFENはチロル料理のライ麦粉のラビオリ・ディ・マーグロ。イタリアとオーストリアの国境地帯の料理。詰め物はほうれん草の他に、ビーツ、ベルザ、クラウティなど。

『パスタ・フォルメ・デル・グラノ』のリチェッタ;シュルツクラブフェンschlutzkrapfen

材料/6人分
《パスタ》
ライムギ粉・・200g
小麦粉・・300g
卵・・2個
EVオリーブオイル・・大さじ1、塩

《詰め物》
ほうれん草・・700g
イタリアンパセリ・・大さじ3
玉ねぎ・・小1個
小麦粉・・大さじ1
牛乳・・2カップ
パルミジャーノ、バター
塩、こしょう、ナツメグ

小麦粉・・一握り
パルミジャーノ、バター、塩

・パスタの材料とぬるま湯をこねて締まった弾力のある生地にする。
・丸めて覆いをし、1時間休ませる。
・ほうれん草を塩ゆでして絞り、イタリアンパセリと一緒にミキサーにかける。
・玉ねぎのみじん切りをバター少々でソッフリットにし、小麦粉を振りかける。熱した牛乳を加えてよく混ぜ、煮詰める。ほうれん草、塩、こしょう、ナツメグ、パルミジャーノ大さじ1を加えて冷ます。
・パスタを薄く伸ばし、丸い型かグラスで抜く。詰め物を小さじ1ずつのせ、半分に折って縁を押して閉じる。
・熱湯で5分塩ゆでして取り出し、パルミジャーノを散らして黄金色の溶かしバターをかける。

ラビオリだけど、完全にドイツ料理。
このラビオリの誕生の地はパッシ―リア渓谷↓
イタリアの北の端、サン・レオナルド・イン・パッシ―リアの風景。

この地方のゴージャスなホテルは雪山の中の湯気が立つプールが売り。
この地方の料理のベースは、スペック、牛乳、バター、かぶ、ザワークラウト、じゃがいも、ライムギ、ハーブで、そこにまずパダノ平野の食材、さらに地中海の食材、パスタ、米、野菜と料理、ピッツァやトマト、なす、オリーブオイルが加わります。
地中海料理だけでなく、ドイツ、オーストリア、ハンガリー料理のエッセンスまで入っています。

庶民の宿泊施設gasthof のレストラン。

北の料理には見事なまでにトマトが入っていないけど、パルミジャーノはなんの疑問もなく散らしてる。


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生ハムの一番美味しい部位はガンベレットこと端っこ。

生ハムやパルミジャーノを、パルマの食文化の観点で見ると・・・。 食の都パルマのシェフが語るパルマの食文化 これはアルタ・クチーナとしてのパルマ料理ですね。 もう少し庶民的な、パルマの日曜日の家庭のプランゾの場合、スタートは、クラテッロ、パルマの生ハム、コッパ、ストロルギーノなどの...