イタリア料理ほんやく三昧: 2018

2018年7月20日金曜日

アンディ・ウォーホルのキャンベルのスープ缶

和食のテンプラのことは、数年前からイタリアのプロの料理人たちもぼちぼち語るようになりました。
和食がメジャーになりつあることは、最近、強く感じます。
今月の「総合解説」には、抹茶が登場しました。

イタリア語ではtè matcha in polvere”とされていました。
まだ少し説明は必要なようですが、2016年に記念すべき初登場です。

リチェッタはP.6の“ラズベリーといちごのチョコレートケーキ”。
チョコレートケーキの表面を固めたビターチョコレートで覆い、その上に赤いラズベリーパウダーと一緒に振りかけて、美しく飾っています。


マッチャ・ティラミス
 ↓



今月紹介したシェフはリゾットの魔術師ことクリスティンとマヌエル・コスタルディ兄弟。
彼らが好んで使っているこしょう、サワラクのこしょうpepe di Sarawakは、昔からシェフたちのお気に入りのこしょうです。

同じく彼らのリゾット、“サフランのリゾット、バッカラ・マンテカート添え”と“アスパラガスと帆立貝の春のリゾット”に登場した“マイクロハーブ”は、初登場の食材でした。

オランダのKoppert Kress社が開発した小型のハーブです。
このまま料理のトッピングにすると、とても美しいです。
独特の香りもあるようです。



日本にも提携先があるので、もう出回っていそうですね。

とろこで、マイクロハーブを料理に使ったコスタルディ兄弟ですが、
彼らがリゾットの魔術師と呼ばれるのは、リゾットの作り方の理論をまとめたから。

例えば米を炒めるのは、米の気泡を熱で開けるため。
こうすると味を吸い込みやすいので、こうなってから米に塩、こしょうで調味します。

これは、母親やおばあちゃんの調理方法を受け継いでそのまま再現するのが中心だった家庭料理から生まれたイタリア料理の世界では、珍しい発想です。
天才が料理を体系立てて弟子に伝えてきたフランス料理的な考え方です。
マンマがこうしていたからではなく、こうするとこうなる、という合理的で科学的なアプローチ。



彼らにかかれば玉ねぎのソッフリットもワインも必ずしも必要ありません。
詳細は「総合解説」に訳を載せました。

彼らの名物料理が、アンディ・ウォーホルの作品で有名なキャンベルのトマトスープ缶に注いだトマトのリゾット。



トマトスープを使うのではなく、缶を使うというぶっ飛んだアイデアです。
トマトソースは4時間かけてトマトと香味野菜を煮て作っています。
そういえば、ウォーホルを有名にしたのはトマトスープじゃなくて缶の絵でした。
しかも、トマトスープと書いてある缶の絵は左上の1個だけ。



凡人はみんな思ったはず。
これのどこが芸術なの?

文字通り、新世代の料理人です。



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“クリスティアン&マヌエル・コスタルディ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年3月号に載っています。
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2018年7月18日水曜日

イワシのチェタレーゼ、カルピオーネ、スカペーチェ、イン・サオール

キリスト教の四旬節の断食は、キリストの厳しい修行に思いを馳せて行う修行で、肉などの動物性脂肪を断つ、というもの。
金曜日もdi magroの日でした。

そもそも古代や中世の習慣ですが、キリスト教が広まった当初の掟はもっと厳しく、9世紀になって、魚を食べることが許されました。
魚でも、高価でゴージャスなものでは修行にならないし、四旬節は40日も続くので、質素な魚を使った日持ちのする料理が求められました。
大トロやキャビアは論外です。

21世紀になっても断食を守る人なんているのでしょうか。
四旬節の間に魚の消費量が増えるという事実が、みんな守っているということを物語っています。

でも、イタリアの断食の魚料理は、ポレンタとニシンなど徹底的に質素なのです。
総合解説」2016年3月号P.14~で訳した料理は、確かに質素な断食の魚料理ですが、野菜をたっぷり組み合わせるなどとてもボリューミーでよく工夫されています。

1品目のイワシのチェルタレーゼは、コラトゥーラの産地として知られるチェターラのイワシ料理です。
アマルフィ海岸沿いの、カタクチイワシの魚醤を現代に伝える漁業の町の断食料理は、パン、ペコリーノ・ロマーノ、卵、フィノッキエット・セルヴァティコというボリュームたっぷりな具をイワシにはさんでワインをかけてオーブンで蒸し焼きにした1品。

2品目のタコのブッリダは、サルデーニャの伝統料理。
ブッリダはリグーリアやプロヴァンスの魚のスープがルーツ。
タコのブッリダはタコとじゃがいもを一緒に蒸し煮にした料理。

リグーリア料理のコウイカのブリッダ



1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ


によると、リグーリアのブリッダBuriddaは、
リグーリアのズッパ・ディ・ペッシェで、数種類の魚を使います。
最も伝統的なのはストッカフィッソだけを使ったストッカフィッソのブリッダ。
陶器の鍋に入れて、野菜、トマト、アンチョビ、きのこ、松の実、じゃがいもなどを加えて3~4時間かけて煮込みます。

やはり断食の魚料理の代表的な魚は干ダラのバッカラやストッカフィッソ。
さらに、カルピオーネは、魚を日持ちさせるという点からもぴったりの調理方法です。
カルピオーネはピエモンテやロンバルディアの料理として知られていますが、スカペーチェとイン・サオールも、同じ調理方法です。
上述の『1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ』によると、
スカペーチェはスペイン語のescabecheが語源。
スペイン料理がルーツだとしたら、南蛮漬けと訳した日本語は、まさにぴったり。
イン・サオールはヴェネチア料理の代表的な前菜。
トリエステ湾で捕れた新鮮で若いイワシの料理を使ったトレエステ料理としても知られています。



北イタリアのカルピオーネ、南イタリアのスカペーチェ、北東イタリアのイン・サオール。
どれも夏にぴったりです。

カルロ・クラッコの本、『カルロ・クラッコの地方料理

の中に、サルデ・イン・サオールのリチェッタがありました。
訳してみます。

SARDE IN SAOR/サルデ・イン・サオール

伝統的な庶民料理で、ヴェネチアのオステリア、バカーロでは必ず出す1品。
“カルピオーネ”や“スカペーチェ”同様、とても歴史の古い料理で、ルーツはわかっていないが、魚をマリネして日持ちさせる料理として世界中に広まっている。
手をかけて作れば美味しい料理になる。

材料/4人分
 イワシ・・24尾(1人6尾)
 玉ねぎ・・2個
 サルタナ・レーズン・・40g
 煎った松の実・・40g
 ローリエ・・1枚
 ジュニパー・・2粒
 白ワイン(ゲヴュルツトラミネル)・・100g
 バター・・70g
 赤ワインビネガー・・100g
 コルベッツォロ(ヤマモモ)の蜂蜜・・大さじ1(約30g)
 塩、こしょう

・玉ねぎを同じ幅の薄切りにしてバターでしんなり炒める。
・しんなりしたらローリエ、ジュニパー、サルタナレーズン、松の実を加える。
・白ワイン、赤ワインビネガーの順でかける。蜂蜜を加えて水で覆う。
・弱火で玉ねぎがジャム状になるまで煮る。
・塩、こしょうで調味し、甘味より酸味をひきたたせる。
・イワシの鱗、頭、背骨を取り除く。
・よく冷えたガス入りミネラルウオーター、小麦粉、卵で日本式の天ぷらの衣を作る。
・イワシに衣をつけてたっぷりの高温の油で揚げる。(イワシはよく冷やしておき、火が通り過ぎないで、フリットの香りがつきすぎないようにする。イワシの温度が低いと外側はカリッと、中はやや柔らかく揚がる)
・衣でなく小麦粉をまぶすだけでもよい。
・フリット用のシートを敷いた皿に盛り付ける。玉ねぎのジャムは小皿に入れて添える。
ここに手で取った魚を浸して食べる(またはイワシにのせる)。

クラッコシェフは、私が知る限り、日本のテンプラにこだわることを文字にした最初のイタリア人シェフでした。


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“断食の魚料理”の記事の日本語訳は、「総合解説」2016年3月号に載っています。
1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ
カルロ・クラッコの地方料理
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2018年7月16日月曜日

鉄砲伝来と断食

今月の「総合解説」には、欧米の食文化にはキリスト教が深く関わっていると感じる記事がありました。
“断食の魚料理”という記事です。

“断食”と聞いてすぐに思い浮かぶのは、イスラム教のラマダン。
約1ヶ月間、日の出から日没まで飲食を断つことによって、信仰心を清める修行、だそうです。

文字通りの断食ですね。

キリスト教の場合は、木曜はニョッキ、金曜は魚、というローマの言い回しが知られているように、曜日によって肉を食べることが禁じられた日がありました。
金曜日は“mangiare di magro”の日と呼ばれていました。
断食といっても肉を食べない、ということです。
金曜日はキリストが死んだ日と信じられていたそうです。

マーグロmagroというのは、イタリア料理の用語としても定着しています。
例えば、具に肉が入らないほうれん草とリコッタのラビオリなとどは、代表的なラビオリ・ディ・マーグロです。

キリスト教の主な断食は、カーニバルと復活祭の間の40日間(クアレジマ)、キリストが荒野で断食したという苦行を思って“動物性脂肪、主に肉を食べない”、という修行です。

キリスト教の初期の頃は、戒律を破ると死刑だったそうですよ。

9世紀になると魚は肉より浄化されているとしてクアレジマの間に食べることが許されました。

それからというもの、40日間、イタリア中、山の中でも魚料理を美味しく食べるために、工夫が重ねられました。
そして庶民的なイワシやタラを中心に、塩漬けやスモークという長期保存技術も発達して、イタリアの伝統料理に魚料理が加わっていったのでした。

現在でも、クアレジマの間はイタリアの魚の消費量は増えているそうなので、敬虔なイタリア人は断食の掟を守っているようですね。

断食とバッカラについての話は以前このブログでも取り上げました。
(こちら)
やはり、断食料理の王様は干ダラでしょうか。

国民的イタリア料理には、どんな魚料理があるかなあと思って、
グランディ・クラシチ


を見てみましたが、

カッチュッコ、アンコナ風ブロデット、タコのルチアーナ、メカジキのシチリア風、バッカラのヴィチェンツァ風などと、肉に比べてごく少数。
しかも漁師町の料理が多いですね。

では、定番の家庭料理にはどんな魚料理があるのかなと、今度は『マンマミーア』を見てみました。


するとこちらにはたくさんありました。
最初の1品はマトウダイ(サン・ピエトロ)でしたが、あとはイワシが多いですねえ。

他は、マグロやクロダイ、ムール貝、エビ、メカジキ、ホウボウなど、地方料理から全国区になった代表的イタリア料理が多いです。

おもしろいことに、最近では魚が贅沢な高級品になってきて、魚、肉という区別ではなく、高級品というくくりで断食すべきという意見もあるそうです。

現代では魚の保存や輸送の技術も向上して、魚料理の選択肢も豊富になりました。
あとは調理次第です。

魚をボリューミーにする手段の一つ、テンプラは、ポルトガル人の宣教師によってヨーロッパに逆輸入されました。
これを異文化の出会いから生まれた素晴らしい成果の1つだと、鉄砲伝来とテンプラ伝来を同レベルで語る人もいます。

断食の期間に食べる、大衆魚を保存のきく方法で調理した料理、その実例が何品か、今月の「総合解説」に載っています。
他にもあるので、次回はその料理の紹介です。


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“断食の魚料理” の日本語訳は、「総合解説」2016年3月号に載っています。
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2018年7月13日金曜日

パッション・フルーツの花

総合解説」2016年3月号、発売しました。


今日のお題は“今月の食材”から、パッションフルーツです。
イタリア語だとIL FRUTTO DELLA PASSIONE。
きっと情熱的な味の果物なんだろうなあ、なんてお気楽に思っていましたよ。
なんて勘違い、あー恥ずかしい。

実は昔、シチリアで初めてフィコディインディアを見た時、パッションフルーツと完璧に勘違いするという、ドジな過去もありました。

いやあそれにしても、パッションフルーツというトロピカルな名前に、宗教的な意味があったとは、全然知らなかったです。

情熱とは全然関係ない、キリストの受難のことだそうで。

そう言えば、ありましたね、パッションというメル・ギブソンのキリストの映画。




まさかあの、どうやって食べるのか見当もつかないトロピカルフルーツが、キリストの受難などという大層な名前を背負っていたとは、この歳まで知らなかったよー。

この果物の花の雄しべが十字架、雌しべが釘、その他、茨の冠やムチや槍に見えたのだそうです。
中南米に初めて上陸したイエズス会の宣教師が名付けたのだそうですよ。
超真面目なネーミングだったんですねえ。
でも、この果物の花が咲く様子を見ると、彼らの気持ちも分かります。

パッションフラワー
 ↓


し、衝撃的な咲き方。
受難のネーミング、ちょっと納得。

パッションフルーツの果汁の絞り方。
 ↓


あまり美味しそうに見えないけど、飲んでは見たい。


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 パッション・フルーツが載っている“今月の食材”は「総合解説」2016年3月号に載っています。
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2018年7月9日月曜日

プラネータのアサリのパスタとシェリー・ブリュレ

今日のお題は『シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ
です。



シチリア料理の本として、とても出来が良いお勧めの本です。
今月の「総合解説」2012年2月号にリチェッタの翻訳を載せています。

本の各章は、
メンフィとサンブーカ・ディ・シチリア
ヴィットリア
ノート
エトナ
カーポ・ミラッツォ

と、シチリアを代表するワイナリーで貴族の家系のプラネータ一族が、
創業の地メンフィから、島の各地へと拡大していったぶどう畑のある地を訪れながらシチリアを食べ歩いているような構成です。



豊かで個性的なシチリア各地の地方料理を、飾ることなく自然なプラネータ家の家庭料理として、世界中からの顧客をもてなすために出している料理です。

写真が豊富な本なので、南イタリアの太陽を感じさせる料理の素朴な盛り付けがよく分かります。

「総合解説」で訳した料理は、
カポナータ
ナスのコトレッタ
ズッキーニとミントのパスタ
パスタ・アッレ・ヴォンゴレ
アンチョビとパン粉のパスタ
イワシのベッカフィーコ
牛ステーキの赤ワインソース
ビアンコマンジャーレ
など。

スラスラ訳せて読みやすいのにびっくりしました。
ナスのコトレッタは、米ナスの輪切りに小麦粉、溶き卵、パン粉をつけて揚げたもの。
簡単なのに、写真がとても効果的で、ため息が出そうなくらい美味しそうです。

ズッキーニとミントのパスタも、アンチョビとパン粉のパスタも、超庶民的なのに、シチリアの香りがぷんぷんしそうです。

アサリのパスタは、訳していて見慣れないフランス語に惑ったリチェッタです。
アサリにシェリー・ブリュレをかけて熱するとありました。
何気なくさらっと“シェリー・ブリュレ”とフランス語で言うところに、シチリア貴族の血を感じますねー。
要はアルコールを煮切ったシェリー酒のことだったのですが、先日BSで観たヴィスコンティ監督の『山猫』を思い出しましたよー。
バート・ランカスター演じるシチリア貴族は、確かドンナフガータに領地がありました。
時代の流れにどれだけ翻弄されても、フランス系の由緒正しい貴族の家系だということに強烈なプライドを抱いていましたよね。

シェリー・ブリュレをかけたヴォンゴレのパスタ、食べてみたいなあ。




今回はドルチェは訳せなかったのですが、この本のレモンのグラニータの立体的な盛り付けや、カッサータの芸術品のような飾りは、素晴らしいの一言です。

来月号では、絶版になった南イタリア料理の本の傑作を訳しました。



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“『シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネータ』”
総合解説
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2018年7月6日金曜日

ポレンタのケーキ

今日のお題はスイート・ポレンタ。
とうもろこしの粉のドルチェです。

とうもろこしの粉にはグルテンがないのが大きな特徴ですが、グルテンがないので、そのままでは小麦粉のようにはつながりません。
バター、卵、コーンスターチなど他の粉を加えてとろみをつけます。

ポレンタの本場と言えば、ヴェネト。
とうもろこしのドルチェもたくさんあります。

ビスコッティのザレッティ、ドライフルーツ入りのエピファニアのケーキ、ピンツァ、ポレンタのフリッテッレのフリトレなど。
ピンツァ
 ↓



総合解説」の1つ目のリチェッタは、白いとうもろこしの粉を使ったケーキ。最初にとうもろこしの粉をミキサーにかけて細かくしてから使います。
2つ目はコーンフラワーとりんごとアーモンドのケーキ。
3つ目はコーングリッツとチョコレートのケーキ。

番外編はアモール・ポレンタ。
別名ドルチェ・ディ・ヴァレーゼとも呼ばれるロンバルディアのドルチェ。
細かいとうもろこしの粉とアーモンドパウダー入りのプラムケーキ。
材料をただ混ぜて、独特のとい型に入れて焼くだけ。
ざらざらした舌触りは、モディカのチョコレートに似ているかも。

とうもろこしを料理に使う伝統がある地方はヴェネト、ピエモンテ、ロンバルディアなどの北イタリア。

ピエモンテのとうもろこしの粉のビスコッティ、パスタ・ディ・メリガは、
甘口ワインやザバイオーネに添えます。

ポレンタのドルチェで有名なのはベルガモのポレンタ・エ・オゼイ。



北イタリアにもこんなに素朴なドルチェがあるんですね。


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“スイート・ポレンタ”のリチェッタの日本語訳は「総合解説」2016年2月号に載っています。
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2018年7月4日水曜日

オリスターノのカーニバル

今日はサルデーニャの話。
オフシーズンに、つまりバカンスの季節以外にサルデーニャに行ったら、何をするか、
という話です。
その一つが、オリスターノのカーニバル。
街の2つの職人組合(農民と家具職人)の117人の騎手が時代装束で繰り広げる儀式は、サルデーニャに夏の太陽を求める北イタリアの人々をも魅了します。




オリスターノはサルデーニャの西側中央部の海沿いの街。
海と街の間は、ピンクフラミンゴの生息地として知られるカブラスのような広い沼地。
灌漑事業によって、この地方は米の産地になりました。
主にアルボーリオ米が栽培されています。
ウナギやボラのボッタルガも特産品。




オリスターノの北にはアルゲーロがあります。

ここのオマールやイセエビはイタリアでも最高と言われて、サルデーニャ料理のシンボルになっています。

クレアパッソで販売しているサルデーニャ関係の本
トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ2


残念ながら絶版になってしまった本ですが、発売当初から大人気の、取材内容が素晴らしい豪華な本です。
現在は中古本がある時のみ販売しています。



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“オフシーズンのサルデーニャ”の記事の日本語訳は「総合解説」2016年2月号に載っています。
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2018年7月2日月曜日

ケツァルコアトルの贈り物、モディカのチョコレート

今日はモディカのチョコレートの話。
このブログでも度々取り上げているモディカのチョコレートですが、
中米生まれのチョコレートがシチリアに伝わったのは歴史の必然だったのかもしれません。

まず、チョコレートの歴史を語るときのキーワードは、
アステカ。

アステカでは、カカオはケツァルコアトルという神の贈り物、という神話が語り継がれていていました。
ケツァルコアトルと言えば、その中二病のような名前がカッコイイ、羽の生えた蛇の姿の神様。
でも、カカオを盗み出して神々の怒りをかい、サボテンの酒で酔わされてアステカを追われたんだとか。

アステカでは、カカオが大事に育てられました。
カカオは生産できる地区がとても限られた植物です。

アステカはどこにあったかというと、現在のメキシコです。

神話によると、ケツァルコアトルが逃げるときに通ったのは中米の太平洋側で、その途中にあった街、タバスコに最後のココアの種を伝えたそうです。
タバスコは現在、メキシコのカカオの一大生産地です。

そう言えば、シチリアはサボテンが雑草のように道端に生い茂っています。
メキシコと環境が似ているのでしょうか。

1521年、アステカ帝国は、スペインによって滅亡します。
アステカの都市はスペイン風に再建築され、植民地となります。
そして300年の支配を耐えて独立したのがメキシコです。

アステカ滅亡時、スペインは繁栄の時代を迎えていました。
シチリアもスペインに支配されていたのです。
そして、スペイン人によってカカオがモディカの伯爵領に持ち込まれました。
アステカのカカオをすりつぶしてペーストにする技術も、シチリアの修道院に伝わりました。
そして1746年以降、モディカのドルチェリアで、カカオのペーストにブラウンシュガー、バニラ、シナモンなどが加えられるようになりました。

モディカのチョコレートの砂質の舌触りは、カカオペーストを低温で練る、コンチングという作業を行わないので、あの、普通のチョコレートとは全く違うものになります。

コンチングの技術を考案したのはスイスのリンツ・チョコレートのロドルフ・リンツさんです。

コンチングを行わないと、砂糖が溶けないで粒状のままなので、あの独特のざらざらした舌触りになるのですね。

カカオからチョコレートまで
 ↓


普通のチョコレートは、発酵、乾燥、袋詰までは昔ながらの方法ですが、
ヨーロッパのピカピカの工場についた途端に現代的な製法に変わります。

コンチングをしないモディカのチョコレートは、ピカピカの過程なしで、昔ながらの伝統的な製法で作られています。
このアステカの味が癖になるんですよ。

今日のお勧め本
“Guido Tommasi cucina regionale”シリーズ
ラ・クチーナ・シチリアーナ




モディカのチョコレートを使った豚肉料理のリチェッタがあります。
チョコレートを溶かしながら肉を焼き、マルサラでフランベして煮ます。

余談ですが、先日、BSで『山猫』を放送していましたね。
ティンバッロが、“山猫のティンバッロ”と呼ばれてとても有名になった映画(もちろん原作も)です。
シチリアの貴族とイタリア統一時代の島の空気がヴィスコンティ監督の美しい映像で伝わってきて、相変わらず素晴らしかった~。



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“モディカのチョコレート”の記事の日本語訳は、「総合解説」2016年2月号に載っています。
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2018年6月29日金曜日

バローロのリゾットとカヴール伯爵

今日のお題はバローロのリゾット。

この料理に欠かせないのは、
バローロとカルナローリ米。

そのどちらにも、イタリアの初代首相、カヴール伯爵が深く関わっていました。

イタリア料理史、特にピエモンテの料理史上、というか、イタリアの歴史でも欠かせない重要人物だけあって、彼がやったことはスケールが違います。
まず、米に関しては、農業大臣時代に運河を作ってヴェルチェッリとノヴァーラの水田を灌漑し、最新の稲作技術を導入して、米作発展の基礎を築きました。

米は飢饉のときに小麦に変わる作物として、栽培が広まりました。
米を作るために欠かせないのは水です。
水路を張り巡らすという大事業は、貴族など大地主の協力が欠かせないことでした。

ヨーロッパを代表する米どころ、ヴェルチェッリ~ノヴァーラの風景は、どこか懐かしい水田地方。
 ↓


そういえば、ヴェネト地方の米、ヴィアローネ・ナノは、ヴェローナの貴族の所有地の干拓によって広まり、その後は地元の修道院の修道女たちが米作を広めたのでした。
イタリアの貴族と教会には、こういう影響力もありました。

カヴール伯爵はイタリア統一の立役者でもあります。
そっくりさんが演じるドラマもありました。
 ↓



彼はバローロ造りにも取り組んでいました。
イギリス、フランス、オーストリアと通商協定を結んで近代化を推し進めたり、
イタリア統一のためにイギリス、フランスと手を組んでオーストリアと戦ったりと、
凄腕の外交能力があったカヴール伯爵が、
フランスに負けない上質の赤ワインを造るために取った策とは、
優秀なエノロゴだった将軍を自分の城、グリンザーネ城に招集するという力技。
そしてジュリア・ファッレッティ・ディ・バローロ公爵夫人と一緒に
ネッビオーロの醸造と熟成ステムを手直しして新技術を導入します。

こうしてバローロは、イタリアを代表する上質赤ワインとして生まれ変わっていったのでした。

ただし、残念ながら、バローロのリゾットはカヴール伯爵が考えだしたという説に根拠は何もありません。

それにしても、ランゲ地方の料理人のバローロのリゾットにかける情熱はすごいです。
この料理に使うバローロは、あらかじめデカンターレして澱を取り除き、
香りを開かせておくんだそうです。
さらにワインの加え方によって、リゾットの味も変わってしまうのだそうで。
詳しくは「総合解説」をご覧ください。

ちなみに、来月号の「総合解説」には、リゾットの魔術師と呼ばれている兄弟シェフのリチェッタが登場します。


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“バローロのリゾット”の記事の日本語訳は「総合解説」2018年2月号に載っています。
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2018年6月27日水曜日

『ジェラーティ』から、クレメリア・カポリネアのリチェッタ

今日はトレ・コーニ獲得のジェラテリーア、クレメリア・カポリネアのオーナー、シモーネ・デ・フェオの本、『ジェラーティ』から、リチェッタの日本語訳をどうぞ。


まずは基本中の基本、本の一番最初に載っているジェラート、

フィオルディラッテのジェラートgelato al fiordilatte

【材料】
・牛乳・・690g
・生クリーム・・100g
・グラニュー糖・・200g
・キャロブ(カッルーバ)・パウダー・・2g

・生クリームと牛乳を混ぜて火にかける。
・砂糖とキャロブパウダーを加える。
・85℃に熱する。
・増粘剤のキャロブ・パウダーが手に入らない時は卵黄3個を加えて混ぜ、85℃に熱する。
・素早く冷ましてジェラティエラに入れる。
・ジェラートメーカーがない時は製氷皿に入れて冷凍し、ミキサーにかける。
粒状になったらスプーンでクリーミーになるまで混ぜる。
・すぐに食べない時は冷凍庫で保存し、サーブする2~3時間前に冷凍庫から出す。
バリエーション;レモンの皮とバジリコ、またはシナモンとバニラとオレンジ、スターアニスとミントをミキサーにかけて牛乳に加える。

これに刻んだビターチョコレートを加えて、マンテカーレすれば、
あるいは仕上げに溶かしたチョコレートをかければストラッチャテッラのジェラートgelato alla stracciatellaになります。

基本のジェラートの後は、もう少し複雑なジェラート、ソルベット、グラニータ、セミフレッドのリチェッタが続きますが、どれもシンプルで美味しそうでどれを選ぶか迷います。

リチェッタは、キャラメル、コーヒー、チョコレート、フレッシュフルーツ、パスティッチェリアのジェラートと続きます。
中でも目を奪われたのは、水色に花柄のクラシックなデザインが美しいティーカップに盛り付けたカッサータのジェラート。
白いジェラートに宝石を散りばめたようなカッサータのジェラートは、器によっては美しさが一段と引き立って、芸術品のようです。

カッサータのジェラートgelato alla cassata

【材料】
・山羊乳と牛乳のミックスのリコッタ・・150g
・アーモンド・・20g
・グラニュー糖・・180g
・牛乳・・650g
・キャロブパウダー・・2g
・ビターチョコレート・・100g
・カンディート・・40g

・アーモンドをフライパンで数分煎ってからミキサーにかけ、粉にする。
・牛乳、リコッタ、アーモンドペースト、砂糖、キャロブパウダーを火にかけてかき混ぜ、85℃にする。
・火から下ろして素早く冷まし、ジェラテリアに入れる。
・仕上げに削ったチョコレートとカンディートを加える。


この他に、ジェラートのリチェッタが面白いのは、やはりシチリア料理の本です。

in cucina”シリーズ
『シチリア』



ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズ

『シチリア』


シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネータ

“Guido Tommasi cucina regionale”シリーズ
ラ・クチーナ・シチリアーナ


などがお勧めです。





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2018年6月25日月曜日

残したワインのお持ち帰りシステム、ブータ・ストゥーパ

今日のお題は「料理も出すエノテカ」
そもそも昔のオステリアは、ワインと、ゆで卵、チーズやサラミの盛り合わせといった簡単なツマミを出す店でした。

ヴェネチアのバカロ、ピエモンテのピオーレ、カステッリ・ロマーニのフラスケッテなどがその名残。

上質なワインと地元の上質な食材を使う料理を出すエノテカは、オステリアの精神を引き継いだ現代版オステリア。

リストランテと比べて、ワインをフルボトルで注文するという成約がない、というのは大きな魅力となっています。

同じ今月の「総合解説」のワインの記事は、“ハーフボトルとグラスワイン”というテーマ。

レストランで2種類のワインを飲みたい時、フルボトルで注文すると、値段はもちろんのこと、飲みきれなくてワインが無駄になることもある、
と、どこの国も同じ、かなり現実的な悩みがあります。

でも、最近のイタリアのレストラン業界では、高級ワインでも在庫を回転させたいという傾向が強いそうです。 
ボトルワインが残ったら、ワインに再び栓をして、店が美しくパッケージしたものを持ち帰る、“オープン・ボトルbottiglia aperta(ボッティリア・アペルタ)”と呼ばれるシステムが広まっています。

ピエモンテのオステリアでは“buta stupa(ブータ・ストゥーパ)”と呼ばれていました。

イタリア式ワインバッグ、ブータ・ストゥーパで
スタイリッシュに習慣を変えようというのがキャッチフレーズ。
 ↓


この習慣に賛同する店を集めたグループも作られています。

これはワインの販促グッズとしてワインのメーカーさんやインポーターさんがこの紙袋を作って広めれば、日本のレストランでもフルボトルを注文する機会が増えるのでは。

この運動に賛同する店は、今のところピエモンテの店が圧倒的に多いですね。
やっぱり高級ワインは残したらもったいない。

そうそう、今月の「総合解説」にはバローロのリゾットの記事もありました。
もしバローロが残ったら、リゾットでも作りますか?
次回はこの話です。

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“料理も出すエノテカ”と“ハーフボトルとグラスワイン”の記事の日本語訳は、「総合解説」2016年2月号に載っています。
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2018年6月22日金曜日

ポルタフォーリオことヴァルドスターナ

今日は「ヴァルドスターナ」の話です。
ヴァルドスターナとは、“ヴァッレ・ダオスタの”という意味の言葉ですが、
イタリアの北西の隅にあるイタリアで一番小さな州の話ではなく、
ヴァッレ・ダオスタの代表的なセコンド・ピアットの話です。
この料理は北の料理の中では珍しく、イタリアの国民的肉料理として国中に広まっています。
ただし、ポルタフォーリオという別名がつけられています。

正式名は、コストレッテ・アッラ・ヴァルドスターナ。

こんな料理
 ↓



コトレッタ・ミラネーゼにそっくりですが、中にヴァッレ・ダオスタ名物のフォンティーナとハムのスライスをはさみます。
ミラネーゼより、ある意味豪華。

総合解説」ではハムもヴァッレ・ダオスタ産を使っています。
炭火で焼くSaint-Oyenのプロシュットというのが美味しいそうです。

ヴァッレ・ダオスタは公用語がイタリア語とフランス語なので、町の名前がフランス語風だと、読めない。
セント・オイエンでしょうか。

まあ、ヴァッレダオスタのハムが手に入らなけくても、ポルタフォーリオという名前にすれば、すべて解決です。


家庭料理の秀作『マンマ・ミーア』↑には、ヴァルドスターナのバリエーションが載っています。
それによると、コストレッタは骨付きを使います。
肉に厚みがあるのでハムとチーズはこの順で、はさまずに、肉にのせます。
肉もチーズも、かなり厚めです。
チーズが溶け出したらオーブンに移して焼き上げます。
この方法だと、肉がぶ厚いまま焼き上がり、生ハムの縁がこんがり焦げて、その中にトロトロのチーズが黄色く輝いている、という、とてもボリューミーで美味しそうな姿です。
山小屋で働いている息子たちの大好物、みたいな料理です。

セント・オイエンのカーニバル
 ↓






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“ヴァルドスターナのバリエーション”の日本語訳は、「総合解説」2016年2月号に載っています。
マンマ・ミーア
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2018年6月20日水曜日

ピッツァ・アルタとピッツァ・バッサ

新入荷のスローフードのピッツァの本、『ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ』の解説その2です。


今ではピッツァの本場はナポリという説が世界中に広まりましたが、地元愛が強いイタリアでは、地方ごとに広まったピッツァのスタイルが違いました。
例えばフィレンツェ、そしてトスカーナでは、カリッと焼き上げた、縁が平らなpizza bassa が広まりました。
よく火が通ったものが好まれたのです。
ナポリのピッツァの、柔らかくて溶けるような生地に慣れていないトスカーナ人には、生焼け状態と取られて、人気がでなかったのです。
なので、フィレンツェのピッツァ・ナポレターナの中には縁の厚さが出る程度の薄くてカリッとしたピッツァを焼いて、ピッツァ・ナポレターナには生地が2倍必要だからと2倍の値段をつける店もありました。
それでも、フィレンツェでピッツェリアを開くナポリのピッツァイオーロはいました。
カンパーニア生まれ、キアンティ育ちでフィレンツェでピッツェリアを開いたジョヴァンニ・サンタルピア氏は、
「私がフィレンツェに来た時、まだフィレンツェにはナポリピッツァのファンはいませんでした。
 みんなpizza altaは重いと信じていて、麺棒で伸ばしたピッツァのほうがナポリのピッツァより重いことを知りませんでした。
私のピッツァは時間をかけて発酵させて、ナポリのアルティジャナーレの伝統通り、手で伸ばします。
でも、焼き時間を変えてみました。
若干長めにして柔らかいけれどカリッと焼き上げて地元の好みに合わせたのです」

ジョヴァンニは、キアンティで店を始めた当初は、liebito di birra(生イースト)を使っていましたが、すぐにlievito madre(天然酵母)に変えました。
そしてそれ以来、ずっと使っています。
さらに、ヴィギッツォロ・デステのピッツァ大学(webページはこちら)に通って、まったく新しいピッツァ作りに挑戦します。

そして2010年に、フィレンツェの中心部にラ・ディヴィーナ・ピッツァを開き、フィレンツェの人々の、質のよいストリートフードとしてのカットピッツァを食べたいという要求に答えていきます。

本ではさらに、ナポリピッツァが世界中に広まった21世紀の、フィレンツェ生まれのピッツァィオーロのエピソードと続きます。
本にはリチェッタも載っていますが、きょうはここまで。

小さくて居心地の良いグラツィアーノの店は、彼のオリジナリティーに満ちています。
ディヴィーナ・ピッツァ
 ↓


ナポリ・ピッツァがイタリア中に広まった背景には、興味深いエピソードが満載でした。


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ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ
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2018年6月18日月曜日

鴨のラグーのパッパルデッレ

今月の「総合解説」のパスタの記事は、“トスカーナ風パスタソース”です。
監修は、イタリア料理アカデミー会長で、フィレンツェ料理の専門家、料理書の著作もたくさんあるパオロ・ペトローニ氏。

イタリア料理アカデミーは、こんな団体。
 ↓


彼の本は、クレアパッソでも販売しています。

豪華で詳細なトスカーナ料理の本の集大成。
ペトローニ氏の代表作。

イル・グランデ・リーブロ・デッラ・ヴェーラ・クチーナ・トスカーナ



上記の本のコンパクト版『リチェッテ・デッラ・クチーナ・トスカーナ


パスタも大好きなペトローニ氏のパスタの本。
スパゲッティ・アモーレ・ミオ


本格的なものから手軽なものまで多数あります。
権威ある団体の会長を務めるだけあって、学者肌のまじめな人物。
フィレンツェ生まれで母親はフィレンツェ、父親はルッカの人。

そんな彼が監修したトスカーナ風パスタの記事は、トスカーナは肉食系の食文化だ、という話から始まります。
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナが有名ですが、トスカーナの肉料理は狩猟肉や家禽類。
そしてトスカーナ風パスタとは、手打ちパスタと家禽のソース。
代表的なのは鴨のラグーのパッパルデッレです。

1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ

によるとアレッツォの伝統料理だそうです。

ラグーは、エミリア地方のラグー、別名ミートソースとは違って、挽肉ではなくブラーチョラと呼ばれる肉の切り身から作ります。
さらにパスタにかける量は少なめ。

今月訳したリチェッタは、
■鴨のラグーのパッパルデッレ
■ペンネ・アル・コッチョ (ポルチーニ、グリーンピース、リガティーノ、黒トリュフ)
■農民のマッケローニ(マッケローニは幅広のパッパルデッレのこと)
■子羊とアーティチョークのパッパルデッレ

ペンネに使っているリガティーノとはトスカーナ版パンチェッタ。

リガティーノの天日焼き
 ↓


この話、もっと早く知りたかった。
トスカーナに行って、鴨のラグーのパッパルデッレを食べなかったなんて、残念すぎる。




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トスカーナ風パスタソースの生地の日本語訳は「総合解説」2016年2月号に載っています。
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2018年6月16日土曜日

南イタリア産の唯一のりんご

「総合解説」2月号発売しました。

まずは今月の食材。

今月は、ラ・メランヌルカです。
いったい何でしょう。
ヒントは、果物です。
産地はカンパーニア。

別名メーラ・アンヌルカ・カンパーナ(Melannurca Campana)というカンパーニアIGPのりんごです。

りんごというと北国のイメージがありますが、カンパーニアには少なくとも2000年以上前からあった品種で、西暦79年にポンペイと一緒に噴火で廃墟になった街、エルコラーノの遺跡にも描かれているそうです。
下の動画にもその壁画がちらっと登場しています。
家庭の壁画には身近な果物が描かれたので、このりんごもかなり普及していたと考えられます。 



一般的なりんごより小型で、ヘタも短くて柔らかい品種。
 収穫後に皮が赤くなるように(80~90%)、水はけを良くするための切り屑や松の葉の上に広げて熟成させます。



手作業で摘み取り、1個ずつ手作業で裏返すという、手間のかかる作業で熟成させます。

カンパーニアの沿岸部一帯に広まった、地中海に愛されたりんごです。
イタリアで最も人気のある品種とか、通好みという人もいて、別名りんごの女王様。

ミルクの次に人間が口にするのはりんご、というわけで、その優れた栄養価も注目されています。

イタリアの代表的りんごの産地の一つ、アルト・アディジェ。
カンパーニアとは全く違う環境です。




北の山のりんご比べると、カンパーニアのアンヌルカは、かなり特殊な環境で栽培されているのですね。

アンヌルカの収穫量は、イタリア全体のりんごの5%。
でも、その割には料理書に登場する機会はかなり多いです。

アンヌルカのオーブン焼き。アマレット詰め。



ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズの『カンパーニア』には、


「アンヌルカとトマトはカンパーニアのシンボル」と紹介されています。

1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ』には、



「イタリア南部で栽培されている唯一のりんごで、
カンパーニアの5つの県すべてで栽培されている。
もっとも伝統的な産地はヴェスヴィオ山のふもと。
長期間保存できるのでカンパーニア土産としてもお勧め」
と書かれています。


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“メーラ・アンヌルカ”の説明は「総合解説」2016年2月号に載っています。
新着書籍
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2018年6月13日水曜日

注目のジェラートの本

新着書籍のご案内です。

ジェラーティ』。



レッジョ・エミリアの人気のジェラテリーア、クレメリア・カポリネアのジェラートです。
ガンベロ・ロッソが初めて発表したジェラテリーアの格付け本では、37000軒あるイタリアのジェラテリーアの中からガイドに載る300軒に選ばれ、最高のトレ・コーニを獲得しました。
イタリアのグルメ情報サイト、Dissaporeでは2016年度の最優秀ジェラテリーア・イタリアーネ。
店主のシモーネ・デ・フェオ氏は今、注目のジェラート・マエストロです。




彼のジェラートに惚れ込んだ編集者が、家庭でも彼のジェラートの味を再現したい、という一心で作り上げた情熱あふれる美しい本です。

最初に、ジェラートの歴史を簡単に説明していますが、その中で、ジェラートはパスタやピッツァと同じ道を歩みつつある、と語っています。
世界中で愛されたがゆえに、本物のイタリアのジェラートが、姿を消しつつある、というのです。
ジェラートの歴史は、9~11世紀にシチリアがアラブに支配された時代に伝わった水と砂糖がベースの氷、ソルベットから始まります。
ルネサンスの時代には、フィレンツェのカテリーナ・デ・メディチの宮廷で大流行します。
彼女が後のフランス王と結婚した時、料理人とパスティッチェーレとジェラタイオをパリにつれていったと言い伝えられています。
16世後半のトスカーナ大公の宮廷では、エンジニアで建築家のベルナルド・ブオンタレンティによって牛乳、蜂蜜、卵をマンテカーレする機械が発明されて、最初の冷えたクレーマが誕生します。
イタリアのジェラートの父は、シチリアのパスティッチェーレで、1686年にパリでカフェ・プロコプを開いて氷水とジェラートで大成功したプロコピオ・デイ・コルテッリという人物だと言われています。




シモーネ・デ・フェオ氏のジェラートは、本の一番最初のリチェッタ、フィオルディラッテのジェラートが基本になっています。
基本の材料は、砂糖、増粘安定剤、油脂ですが、増粘剤にはカッルーベの粉(キャロブパウダー)を使います。
フィオルディラッテのジェラートは油脂が牛乳。
これにレモンの皮、バジリコ、シナモン、バニラとオレンジ、スターアニスとミントなど加えるものによってバリエーションは無数にできます。

他に、バリエーションは、ストラッチャテッラ、パンナ・コッタ、マスカルポーネ+いちじく、リコッタ+蜂蜜+ローズマリー、マスカルポーネ+レモン+松の実、マスカルポーネ+ケッパー+コーヒー、ヨーグルト+エキストラバージンオリーブオイル+タイムなど、本物のイタリアのジェラートを追求して、いちばん大切なのは味だと言い切るデ・フェオ氏ならではのラインナップ。
どんな味なのか、気になるものばかりです。



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新着書籍
ジェラーティ
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2018年6月11日月曜日

ウェリントン・ブーツとビーフ・ウェリントン

今日はワインの話題。
今月のテーマは「ヒレ肉に合うワイン」。
リチェッタの「ヒレ肉」の記事と連動しています。

記事の最初の料理は“フィレットのウェリントン”
 ↓


ビーフ・ウェリントンという名前で知られるイギリス料理。
初代ウェリントン侯爵、アーサー・ウェルズリーにちなんだ料理。
彼はワーテルローの戦いでナポレオンに勝つなど数々の軍功を上げている将軍で国民的ヒーローです。
このヒレ肉をパイで包んだこの料理が、彼のトレードマークのブーツに似ていたからこう呼ばれるようになったそうです。
彼のブーツはウェリントン・ブーツと呼ばれています。
 ↓


名前カッコいいけど、これはいわゆるゴム長です。

キャストが豪華なBBCのシトコム、ブラックダダーの一場面。
主役のローワン・アトキンソンとドクター・ハウスのヒュー・ローリーが超面白いけど、赤いジャケットでロングブーツの人がウェリントン侯爵です。



いけない、また横道に・・・。
ワインの話でした。

ヒレ肉は水分が多いデリケートな肉なので、白やロゼも合うんですね。
下処理
 ↓


ソムリエのお勧めの1つは、フリウラーノ。
ドライでほろ苦さのある個性的な白を組み合わせたそうです。
他にはアルバーナやヴェルディッキオなど。

フリウラーノは元々はトカイと呼ばれていましたが、ハンガリーのトカイと区別するためにトカイ・フリウラーノとなり、結局フリウラーノとなりました。

お勧めのフリウラーノはレナード・ケベル。
フリウラーノはこんなワイン。
 ↓



レナート・ケベルのぶどう畑
 ↓



鉄の侯爵と呼ばれたイギリスのヒーロー、アーサー・ウェルズリー侯爵のゴム長を思い浮かべながらヒレ肉のパイ包みを食べてみたくなりました。


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“柔らかいヒレ肉に合うワイン”の記事と“ヒレ肉”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年6月8日金曜日

最上階のゴージャスレストラン

今日は「総合解説」から注目店の紹介。
テーマは、星付きシェフたち、ですが、
この星というのはミシュランの星だけでなく、文字通り、空の星のこと。
つまり、星に近い、高層階にあるレストラン、ということ。

まずはミラノのリストランテ・ウニコ。
wjcタワーの最上階にあり、360度窓。
フェリーチェ・ロ・バッソシェフはプーリア生まれで以前はドロミテのレストランにいたという、海と山、どちらもOKという人。



彼はウニコの成功でステップアップしたようで、ウニコをやめてミラノのガッレリーアに、自らの名前を冠した店、“フェリックス・ロ・バッソ”を出しました。
こちらも眺めの良い店だそうです。



まさに今、のりにのってるシェフですね。
次は東洋かアメリカに出店したいそうですよ。

次はナポリのモダンなホテル・ロメオのルーフトップの店。
夜景が素晴らしい。
こんなゴージャスなホテルがあるなんて、ナポリはすごい勢いで変わってるなあ。



サルヴァトーレ・ビアンコシェフはマルケージ・チルドレン。
「総合解説」でリチェッタを紹介しているカンデーレは、かつお節をトッピングしています。
他に、「総合解説」によると韓国のクルトマトや中国で人気のアフィラ・クレスというスプラウトなど、世界中の食材を使いこなしています。




最後はローマの高級ホテル・パラッツォ・マンフレーディの最上階の店、リスランテ・アロマ。
コロッセオに面していて、部屋やレストランからコロッセオが眺められると言う超立地。
ルレ・エ・シャトーグループのホテルです。



こ、これはすごい。
私のお上りさんごころが激しく揺さぶられています。
ローマとナポリのホテルは、この夜景を眺めながら食事をしに、今すぐ行きたくなりましたよー。

ジュゼッペ・ディ・イオリオシェフ。







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“星つきシェフたち”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年6月6日水曜日

『ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ』

今月の新着書籍1冊目は、『ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ』


スローフード出版の本です。

この出版社の本は、とても素晴らしいものばかりなのですが、欠点は、とてもアカデミックでまじめ、ということ。

この本も、料理の写真が少な目で、ちょととっつきにくいです。
でも、これだけの内容をとっつきにくいと言う理由で読まないのは、もったいない。
最初だけ、ちょっと気合を入れて読んでみましょう。
すぐに内容に没頭できます。

ピッツァの本というと、主にナポリのピッツァを取り上げる本が多いのですが、この本は、ボローニャやピエモンテのピッツェリアも取り上げています。

ナポリのピッツァイオーロとしてこの本が一押ししているのは、エンツォ・コッチャ氏。
彼は20~21世紀のナポリのピッツァを代表する人物でピッツァ作りの限界と常識の壁を取り除いた最初の人物と評価しています。
かなり早い時期からアルバの白トリュフをピッツァにのせていた人物でもあるそうです。

この本で紹介しているもう一人のナポリのピッツァイオーロは、ジーノ・ソルビッロ氏。
ピッツァは70年以上携わっている家族の仕事で、彼の父親は21人兄弟の19番目だそうです。
しかも兄弟全員ピッツァイオーロ。
これは二の句が継げないですねえ。



彼はピッツァイオーロの中でも、トッレ・デル・サラチーノのジェンナーロ・エスポジトシェフや、ドン・アルフォンソのエルネスト・イアッカリーノシェフなどとコラボをした最初の人物で、テレビやSNS という新しいメディアを利用するのが得意なようです。

ヴェローナ県には、シェフ・ピッツァイオーロという呼び方を定着させた人物の一人、シモーネ・パドアン氏がいます。
彼のピッツァは伝統のピッツァとグルメのための料理の組み合わせ。
彼の凝り性な性格も影響しているそうです。




この本は冒頭に、ピッツァはハンバーガーに勝った、という文章が出てきます。根拠は、検索するとピッツァ関連のwebページがハンバーガー関連より3倍多いから、だそうです。
ちょっと安直だとは思いますが、ピッツァは世界で一番広まっている食べ物だと言い切る自身も、大したものです。
その自身の根拠は、イタリア移民です。
外国に移民したイタリア人の数は、イタリアに住むイタリア人の数とほとんど同じで、しかも移民の子供や孫が増えれば、イタリア料理をふるさとの味とする外国人は、増える一方です。
アメリカの新聞、USAトゥデイがアメリカの若者12000人を対象に行った調査によると、24%がピッツァを一番身近な食べ物に選んだそうです。
ピッツァはアメリカにすっかり受け入れられたようです。
同じく移民が多かった国、ブラジルにも受け入れられました。

ちょっと眺めただけでも興味深いエピソードが満載の本です。
次回はリチェッタをいくつか訳してみます。



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『ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ』の詳細はこちら
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2018年6月4日月曜日

ベルーガ・レンズ豆

今月の「総合解説」は1月号なので、毎年、10人中9人のイタリア人が年末年始に食べるというレンズ豆の話題は避けて通れません。
ほぼ全国民が食べるとは言っても、レンズ豆が脚光を浴びてスターになれるのは、年1回、この時期だけ、というのがこれまでの常識でした。
ところが、レンズ豆の世界にも次のスターが現れたようです。
このブログで最初に紹介したのは4年前のこと。
そのレンズ豆はキャビアに似ていることからレンティッキエ・ネレ・ベルーガと呼ばれる黒レンズ豆。
見た目にインパクトがあるのでパスタに、魚料理にと、年末年始にコテキーノに添えるだけではない大活躍です。



ちなみにカステッルッチョのレンズ豆の花の時期は6月初めだそうなので、ちょうど今頃ですね。

下の動画は2016年の様子です。
花は7月後半まで咲き乱れて、多くの観光客が訪れたそうです。
この年はこの後、イタリア中部を大きな地震が襲ったので、その後どうなったか心配です。
 ↓


地震直後のカステッルッチョ。
 ↓


冬は雪が積もって道も通行止めになる標高1300mの山の上で、カステッルッチョの住民たちは避難を余儀なくされて、ほぼすべてのレンズ豆農家が村を離れたのだそうです。
今年の夏に観光客を呼び戻すには5月までに種まきを終えなければなりませんが、種まきをした農家はわずか1軒。
地震前までは毎年数万人が訪れた観光客も、去年は数百人だったそうです。
去年と今年ではほとんど何も変わっていない、という住民もいます。

そうでなくても収穫量が少なくて貴重品扱いだったカステッルッチョのレンズ豆。
畑を疲弊させないように人手をかけて丁寧に作られていました。
現在も中世に広まったレンズ豆、小麦、牧草(休耕)の三圃式農業で栽培されています。
この先、ますます貴重品になりそうです。

レンズ豆はシリア原産で、約7000年の歴史があります。
人間が栽培した最初の豆とも言われています。
地中海全域に広まって、主に修道院で栽培されていました。
断食の日の肉に匹敵するたんぱく源だったのです。
レンズ豆のズッパは、イタリアのすべての州で伝統料理として作られています。

ナポリのレンズ豆のズッパ
 ↓


ところで、ベルーガは甘くて香りが良い豆で、30分ゆでてもアルデンテ。
ここ最近のブラックフードのブームも後押しして、人気が出ています。
脂肪分が少なくてタンパク質と繊維が豊富と、栄養価も注目されています。
ただ、寿司にも使われているという意味不明の説明もあったりして、まだまだ知識が広まるのはこれからのよう。

「総合解説」p.16には“カボチャとベルーガレンズ豆のスパゲッティ”のリチェッタを載せていますが、黒くてふっくらした粒粒のレンズ豆は、白っぽいパスタの色合いを締める効果もあります。



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“レンズ豆”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年6月1日金曜日

チーズの王、カステルマーニョ

今月の「総合解説」では、マスカルポーネとカステルマーニョという2つのチーズを紹介しています。
どちらもピエモンテのチーズですが、その特徴は正反対と言えます。
何しろ、マスカルポーネはチーズ臭がないチーズ。
一方カステルマーニョは熟成させるとチーズ臭しかないチーズ(個人の見解)。
初めて味見したカステルマーニョはかなり熟成させたタイプだったようで、匂いをかいだ時は、はき続けた中学生の靴下みたいな匂いがしました。
その時の印象が強烈すぎて、カステルマーニョという名前はトラウマになりました。

こんなチーズ
 ↓



こんな素晴らしい環境で造られていたなんて、知らなかったなあ。
 ↓


ピエモンテ訛にはイタリア語の字幕つき。

「総合解説」に日本語訳を載せた記事は、他にも意外な話で一杯でした。
たとえば、このチーズ、皇帝や法王と言ったVIPに愛されたんだそうです。
ピエモンテはサヴォイア家のおひざ元だけあって、王のワイン(バローロのこと)とか、〇〇の王、という王をからめた二つ名が好きです。
カステルマーニョはチーズの王だって。

さらに、記事によると管理組合に所属する造り手はわずか7軒。
生産地区はカスステルマーニョを含むたった3つのコムーネ。

60年代には消滅の危機もありましたが、今はイタリアの内外にファンが増えているそうです。
年間製造量は約4万個。
臭いチーズははまると深いのかなあ。
ただ、市場の売れ筋は3~4か月熟成のマイルドなものだそうです。

そういえば、先月の「総合解説」で取り上げたチンタ・セネーゼも、数が減りつつある豚でした。
手間暇かけた飼育方法が合わなかったのか、もっと大きくて繁殖させやすい品種に押されてしまったんだそうです。
チンタ・セネーゼが消滅の危機から立ち直りだしたりは20年ほど前。
カステルマーニョと同じぐらいの時期です。
昔のままの製造方法で作るこのチーズ、時間も他のチーズより長くかかります。
緑色のラベルの“アルペッジョ”タイプは、夏に標高1000m以上で造られたもの。
ミルクはフレッシュの牧草を与えられた牛の生乳。
青いラベルの“山”のタイプは標高600m以上。

カステルマーニョ“アルペッジョ”
 ↓


カステルマーニョは蜂蜜を少量かけてテーブルチーズとして食べるのも美味しいですが、リゾットなどプリーモ・ピアットにもぴったり。
カステルマーニョのリゾット
 ↓


地元の伝統料理、カステルマーニョのニョッキ
 ↓



カルロ・カンビの『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ』には、この料理について、こんなことが書いてありました。




「好みで粗挽き黒こしょうをかけたりアカシアの蜂蜜をたらしてもよい。
このニョッキは放牧(アルペッジョ)の伝統から生れた料理。
9月の末に、高原にはほとんど、またはまったく食べるものがなくなって、牛は平野に下りてくる。
残っているわずかなチーズ、じゃがいもなど限られた材料でこのニョッキを作るが、カステルマーニョのおかげでおいしい料理になった」

もう一度上の動画を見ると、ニョッキの味が想像しやすくなるかも。
ちなみに組み合わせるお勧めのワインはバルベーラ・ダルバ。





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“カステルマーニョ”の記事の日本語訳は「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年5月30日水曜日

レモンのティラミスとババミス

ここのところ毎週水曜日にはクレアパッソで販売しているお勧め本を紹介しています。
今日は、そろそろカンパーニアのドルチェが食べたくなる季節になったので、アマルフィの有名パスティッチェーレ、サルヴァトーレ・デ
リーゾの本、『ドルチ・デル・ソーレ』の紹介です。



この本は、サルヴァトーレのレトロな子供時代や美しい地元の写真が、美味しそうなドルチェの間に満載で、眺めていると、アマルフィでバカンスを過ごしている気分になります。

前回のブログのテーマがマスカルポーネだったので、アマルフィのティラミスはどんなドルチェだろうと思って見てみたら、やっぱりというか当然と言うか、レモンのティラミスでした。
今気が付いたけれど、マスカルポーネは自家製ですねー。

スポンジ生地の代わりにナポリ名物のババを使うのと、ババミスだって。
真面目に言うから頭から離れなくなったー!



彼のサヴォイアルディのリチェッタは以前紹介しています。
こちら

レモンのティラミスは、マスカルポーネクリームにレモンクリームと自家製リモンチェッロを加えます。
シロップもリモンチェッロとレモン汁のシロップ。

彼のドルチェの重要な主役、アマルフィのレモン
 ↓


動画に登場するレモンの有名な生産者、ルイジ・アチェート氏は本にも登場します。
カンパーニアに行ったら、地元産のレモンを味見することをお勧めします。
分厚い皮に覆われた大きなそのレモンは、今まで知っていたレモンの味とは全然違います。
酸っぱいだけでなく、コクがあって甘く、おやつにレモンを食べる感覚が理解できます。

カンパーニアの名物チョコレートケーキ、トルタ・カプレーゼも、彼の手にかかれば美味しそうなレモンケーキに変身します。

粉の材料はチョコレート、アーモンドとヘーゼルナッツ、コーンスターチで、グルテンフリーなので、小麦アレルギーの人も食べられるケーキです。



このケーキの醍醐味は粉糖をふりかけて作るステンシル模様だと個人的に勝手に思っていますが、
このガラはちょっと普通ですね。
本のデザインはもっと素敵で、店のレモンのカプレーゼと同じです。
こちら

さらにもう一つ、決定的な違いがあります。
本のカプレーゼはホワイトチョコレートで作るので、ケーキが黄金色なんです。
なのでレモンが一層強調されています。
レモンはチョコレートと一緒に皮のすりおろしを加えます。

アマルフィのレモンツアーはバギーで巡ります。
 ↓





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『ドルチ・デル・ソーレ』のページはこちら
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2018年5月28日月曜日

マスカルポーネ

現在発売中の「総合解説」には、2種類のチーズが取り上げられています。
マスカルポーネとカステルマーニョです。
 あ、正確に言うと、マスカルポーネはチーズではなく、
 un derivato del latte, anzi della panna/牛乳の、いや生クリームの副産物
です。

ホームメイド・マスカルポーネ
 ↓


上質の生クリームが手に入るシェフは、マスカルポーネも手作りしてこだわっているんですね。

 ↑
手作りフレッシュチーズの本、
によると、マスカルポーネの材料は、

生クリーム500mlにレモン汁大さじ2
これだけ。

作り方は、
・生クリームを湯銭にかけて80℃に熱し、レモン汁を加えます。
・数分かき混ぜて濃度を出し、サラダボウルに入れて冷蔵庫で6~10時間休ませます。表面に軽くホエイが浮かびます。
・ガーゼで覆ったざるかシノワに入れて冷蔵庫で最低12時間水気を切ります。
・密閉容器に入れます。冷蔵庫で5日程度保存できます。

なるほど、生クリームに酸を加えて固めて、レモン汁のクエン酸をホエイと一緒に排出して出来上がり。

レンネットではなくクエン酸で固めます。
チーズ臭さのないチーズです。
昔はもう少し酸味が残っていたけれど、時代と共に、酸味はほとんど消えたのだそうです。
傷みやすいので、1970年代までは寒い季節にだけ造られていたというのも納得。

「総合解説」ではリチェッタもドルチェ、サラート各種紹介していますが、その中に、マスカルポーネのジェラートというのがあります。
原材料が生クリームなら、マスカルポーネのジェラートが簡単にできるのも納得です。
リチェッタも色々ありそうですが、ザクロのシロップとカボチャの種のプラリネ添えというのは、さすがにイタリア人でないと思いつかないだろうなあ。
チコリにマスカルポーネがベースの詰め物をしてオーブンで焼くチコリのグラタンも、マスカルポーネとパルミジャーノでマンテカーレしてくるみを散らす白いリゾットも、発想
はかなり上級なイタリアン。

記事ではマスカルポーネの名前の由来もさらっと説明していますが、かなりさらっとなので、きっと諸説あるんですね。

発祥地ローディには、アルティジャナーレのマスカルポーネの伝統があります。
 ↓

こ、これは美味しそうですねー。
プーリアのアンドリアでブッラータが美味しいと評判の店に行った時のことを思い出しましたよ。
買う前に、店員や他のお客に、しつこく「冷蔵庫には絶対入れるな」と念を押されたのです。
アルティジャナーレのチーズの世界では、冷蔵庫は天敵か何かかと思いましたが、上の動画を見る限り、冗談じゃなかったみたいです。
ローディに行ったら、アルティジャナーレの(大量生産のじゃないですよ)マスカルポーネを味見しないと。
ただし旬は冬。
店のwebページはこちら


次はカテルマーニョの話です。




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“マスカルポーネ”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年5月25日金曜日

スパゲッティの盛り付け方

今月号の「総合解説」で、



訳していて一番印象に残ったのは、『サーレ・エ・ぺぺ』の“シックなスパゲッティ”の記事の1品目のリチェッタ、「ポロねぎのフォンドゥータ、ヘーゼルナッツ、黒トリュフのスパゲッティ」の盛り付け方の説明文。

...unite gli spaghetti formando un torchon con la pinza.

スパゲッティをピンツァ(ピンセット型トング)でtorchonの形にして加える。

torchonですと?
初めて目にした言葉です。
そもそもこれ、フランス語だし・・・。
でも、なんの説明もないので、イタリア人なら理解できる言葉なのでしょうか。
フランス語でtorchonトルションとは、布、布巾、キッチンクロスなどという意味。
料理用語の場合は、フォアグラ・オ・トルションなど、フォアグラの調理方法を表す時に使う表現。
フォアグラをテリーヌ型ではなく布で包んで調理したもの。
ひょっとして料理人なら、知ってて当たり前の言葉?

トルション調理中
 ↓
The making of the Torchon
photo by Nick Dawson

とにかく私は布巾という言葉で勝手に納得しました。
そして料理の写真を見たら、皿の上に巻いたナプキンが置かれているような形をしています。
今月のパスタのテーマは、いつものスパゲッティをちょっとゴージャスに、です。
スパゲッティをヘーゼルナッツ入りの黄金色のバターであえてポロねぎのフォンドゥータの上にトルションに盛り付け、黒トリュフを散らしたこのパスタは、かなりゴージャスに見えました。
ちょっと太めのパスタはトルションの盛り付けがよく合います。
スパゲッティの盛り付け方でよく使われるのは、nidi/巣という言葉。
フォークでくるくる巻いて作る形です。

スパゲッティのニーディ
 ↓



ピンツァとレードルで盛り付け
 ↓


抜き型を使った盛り付け
 ↓



ピンツァを使った一般的な盛り付けは円錐形になりますが、トルション型は長さがあるので円筒形になり、料理に奥行きが生まれます。

この盛り付けはトルション型ではありませんが、イメージは伝わるかも。
 ↓



トルションに盛り付けると言うテクニックを知ってから、トップシェフによるパスタの料理集、『パスタ・レボリューション』を見てみると、



やはり円形の盛り付けが主流ですが、中には奥行きのある盛り付けをしている人もいます。
中でも、アレッサンドリアのドゥエ・ブオイのアンドレア・リバルドーネ・シェフの”スパゲット・ミラノ”の盛り付けはとても美しいです。
これはリゾット・ミラネーゼをスパゲッティにしてしまった活気的なパスタです。

超シンプルなソースのパスタほど、この盛り付けは生えますねー。

リバルドーネ・シェフのスパゲット・ミラノ。
ピンツァで盛り付けてますね。
 ↓



ピンツァを上に抜くか横に抜くかだけで、こんなにも違う姿になるんですね。


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“シックなスパゲッティ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年5月23日水曜日

『アマトリチャーナ』

新着書籍のご案内です。
今日は『アマトリチャーナ』。


2年前、アマトリーチェに起きたことを覚えていますか?
いつかはアマトリーチェに行って本場のアマトリャーナを食べてみたいと思っていたのですが、たくさんの建物が崩壊した街の映像を見て、この夢も、もうかなうことはなくなったなあと思ったものでした。

あれから2年。
アマトリーチェはどうなっているのでしょうか。

地震から2年後のアマトリーチェの姿。
いまだに衝撃的。
 ↓


地震の4日前のアマトリーチェ。
 ↓


復興途中のアマトリーチェ。
 ↓


芸術や建築物だけでなく、アマトリーチェには貴重な食文化もありました。
国民的パスタソース、アマトリチャーナの産地には、イタリアが失いたくない食の伝統もあったのです。
アマトリーチェのグアンチャーレは食生活のベースになる食材で、復興のシンボルの1つ。
 ↓



震災を受けた町の復興には様々な方法があるでしょう。
一番周囲を動かすのは住民の情熱のような気がします。

『アマトリチャーナ』は、イタリアが世界に誇るパスタソースの産地のために、ALMAという国際イタリア料理学校が中心となってイタリア料理業界に呼び掛け、それに賛同したシェフたちが地元のシェフたちと一緒に作り上げた本です。
イタリア語と英語の完全2か国語表記で、世界中の人にアマトリチャーナを伝えて残したい、という情熱が伝わってきます。

ALMA
 ↓


本の中には、この料理はローマ料理ではなく、羊飼いの料理だと書かれています。
グアンチャーレ・アマトリチャーナの重要性など、
正直言ってこの本を読むまでまったく知りませんでした。

グアンチャーレ・アマトリチャーナ
 ↓


アマトリーチェが元気を取り戻したら、行ってみたいな、と思える場所です。

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2018年5月21日月曜日

アンナ・マッツェル シェフ

先月号の「総合解説」の記事ですが、シェフの記事で紹介したのは、アンナ・マッツェルさんでした。

アルト・アディジェで唯一の星つき女性シェフだそうです。



店はツム・レーヴェン。webページはこちら



店のある南チロル地方は、第一次大戦後、オーストリアからイタリアに割譲された地方。
イタリアとは思えないドイツ系イタリアの文化圏。



アンナはウィーンでマッサージ師になる勉強をしましたが、手打ちパスタを出すトラッリアをやりたいという昔からの夢を実現させた人。
夫の祖母が切り盛りしていた古い店を受け継いで、全部一人でやってきました。

店を始めて2年後には娘が生まれています。
その娘も、今はオーストリアのワインアカデミーに通ってソムリエを目指しながらホールを手伝っているそうです。

ミシュランで最初の星が付いた時、厨房はアンナ一人だったそうです。
その後4年間星をなくしますが、8年前に新しく星がつきました。
その当時のことを、情熱はあったけれど、経験が足りなかった、多分、最初の星は早すぎたんです。と謙虚に語っていますが、この間も勉強を続けて、ホテル学校に通い、有名シェフの元で短期間働き、たくさん読んでたくさん食べたそうです。

アンナが得意なのは内臓料理とドルチェ。
特にトリッパ、胸腺、腎臓についてはたっぷり学んだそうです。
今回紹介したリチェッタの中にはリードヴォーの前菜と腎臓の料理があります。




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“アンナ・マッツェル”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月18日金曜日

シチリアの月桂樹の祭り

総合解説」1月号の、今月の食材から。
ローリエの話です。



地中海が似合うハーブではありますが、この葉っぱの香りが、1月の地中海の典型的な香りだったとは知りませんでした。
まして、ローリエが主役の祭りがイタリアにあるというのも初耳です。
シチリアのメッシーナ県、トルトリーチのサン・セバスティアーノの祭り(1月20日)です。

サン・セバスティアーノはトルトリーチの守護聖人で、ペストの守護聖人としても知られ、数々の名画や名曲や三島由紀夫の小説のモチーフにもなっているとても有名な聖人。
彼は柱に縛られて矢で射られて迫害され、殉教したと伝えられています。
月桂樹は彼の象徴のような存在。
祭りの起源は1682年に起きた洪水だそうです。

祭りは2つに分かれています。
最初は祭り直前の日曜日、月桂樹の行進
 ↓


次は祭り当日
 ↓


白装束に裸足、女性は白いスカーフを頭にかぶって行進。
なんとも荘厳で美しい祭りですね。

おまけの動画
トスカーナ風のフレッシュのローリエのフリッタータ。
 ↓


ローリエのみじん切りを加えた薄焼きフリッタータにセージのフリットを添えた1品。
地中海のハーブの香りが満載。

シチリア風インヴォルティーニ
 ↓


パンのクラム、刻んだピスタチオとサラミ、おろしたチーズ(カチョヴァッロ)、オレンジとレモンの果汁というシチリアの名産品を混ぜて豚ロース肉で巻き、オーブンで焼くインヴォルティーニ。
ローリエは先端に1枚刺すだけだけど、かなり効果的。



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“今月の食材”の日本語訳は「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年5月16日水曜日

新年の開運食材

総合解説」2016年1月号発売しました。

1月号は、当然ながら、新年の料理の話題が多いです。
毎年1月号には、年末年始に食べる縁起物の話題が登場するのですが、今年は“年越しのホームパーティーメニュー”という記事の中に、縁起物をどうやって食べるのか、そのサーブ方法が写真付きで語られていました。
年が変わる瞬間を祝うというのは、日本もイタリアも共通ですが、その瞬間を遠出して祝う人と、家庭で迎える人がいるというのも日本と一緒。
海辺や広場に繰り出すのも楽しそうですが、都会の住民は、家庭に友人を集めてちょとお洒落してパーティー、というのもありだそうで。
今回訳した記事は、ミラノの中心部の住民の新年の迎え方、というもの。
プチゴージャスで、ちょっとだけ伝統的、という、典型的な都会に暮らす現代のイタリア人の暮らしぶりを再現しています。
さて、新年の縁起ものですが、ぶどう、ざくろの粒、塩味のアーモンド、オリーブ、蜂蜜とローズマリーでカラメッラートしたくるみを、それぞれ小鉢に盛り付けてテーブルに並べておきます。
客はスプマンテがベースのカクテルを飲みながら、これらの縁起物を取り分けてつまむビュッフェスタイル。

『サーレ・エ・ペペ』誌には毎号イタリアの都会や田舎の暮らしが分かるような美しい写真がたくさん載っています。
雑誌の定期購読もお勧めです。

開運のザクロのカクテル
 ↓


イタリアの新年に欠かせない開運食材は、ざくろとレンズ豆。
ワインにざくろの粒を入れるだけでもOK。
 ↓


ぶどうは年が明けた夜中に12粒食べます。
1粒が1ヵ月分。
ドライいちじくと栗も縁起物。
さらにスパゲッティ、スプマンテに大ウナギも。
細長い麺は長寿を連想させるからだそうです。
年越しスパゲッティもありかも。

えーと、今は5月でしたっけ。
最近は、春だか夏だか分からない陽気で、
完璧に季節感を失っています(汗)。



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“年越しのホームパーティーメニュー”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年5月14日月曜日

去勢鶏のボッリート

クリスマスの主役の鳥、七面鳥と鶏ですが、七面鳥は雌のほうが味がマイルドで柔らかいと言われています。
一方鶏は、雄を去勢しして、大きくて締まった肉にします。
なので、ボッリートのようなリチェッタが向いています。



元々は卵のために飼育されるようになった鶏ですが、
雄同士を一緒にするとケンカする、という訳で、去勢するようになりました。

鶏のボッリートはイタリアのクリスマス料理の定番。
ボッリートが名物の地方と言えば、ピエモンテですね。
去勢鶏(カッポーネ)の産地としても、ピエモンテは知られています。

カッポーネの産地として有名なのはクーネオ県のモロッツォ。



ボッリートに欠かせない付け合わせは、モスタルダ。
香味野菜と一緒にゆでたカッポーネに付け合わせを添えるだけでOK。
総合解説」の去勢鶏のボッリートでは、ボッリートに野生りんごのマントヴァ風モスタルダとラディッキオ・トレヴィジャーノ(タルディーヴォ)を付け合わせにしています。


マントヴァ風りんごのモスタルダ。
 ↓


下の動画はヴェネトの去勢鶏。



ラディッキオ・トレヴィジャーナはヴェネトの名物野菜なので、ヴェネトのクリスマス料理には欠かせないようですね。

カッポーネのゆで汁はトルテッリーニ・イン・ブロードに。




ブルーノ・バルビエーリシェフはかなりテレビ向き。
トルテッリーニ・イン・ブロードのブロードは、もちろん去勢鶏のブロード。

最後はモロッツォの去勢鶏と栗のロースト
 ↓



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“七面鳥と去勢鶏”のリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月11日金曜日

フランス王の披露宴の七面鳥

発売中の「総合解説」2015年12月号で、訳していて一番記憶に残った話は・・・。

フランス王シャルル9世の結婚披露宴のメイン料理は七面鳥で、王は一番美味しいと言われている部位を食べたと語り継がれている、

というもの。
さーて、当時のフランスの宮廷では、どこの部位が一番美味しいと言われていたのでしょうか。

その前に、シャルル9世って誰?
この人、メディチ家からフランス王家に嫁いだカテリーナ・デ・メディチの息子です。

カテリーナはイタリアの宮廷の食文化をフランスに伝えた人、とイタリアでは信じられていますが、フランスでは、カトリックとプロテスタントの対立の黒幕とも考えられています。

イタリア目線のカテリーナ・デ・メディチ像。
カテリーナ・デ・メディチとフランス料理
 ↓


カテリーナがフランスに嫁がなかったら、今のフランス料理はなかった、というのがほとんどのイタリア人が信じている説。
でも実際には、あまり根拠はないみたい。
私たちが知る歴史の話はだいたいこのあたりまでの話。

カテリーナはフランス王妃となってカトリーヌ・ド・メディシスとなりました。
彼女は王の死後、幼い長男の執政としてフランスの国政を担うことになります。
ところが当時、カトリックとプロテスタントの対立がフランスでも勃発して、カトリーヌはカトリックの黒幕的存在になります。

アレクサンドル・デュマの小説のヒロインで、イザベル・アジャーニ主演で映画化もされた『王妃マルゴー』は、カトリーヌの娘の話。
聖バルテルミーの虐殺と呼ばれるカトリックがプロテスタントを大量虐殺した事件。
カトリーヌはその黒幕とも言われています。

『王妃マルゴー』の一場面。
カテリーナ・デ・メディチもちらっと登場。
女優さん、イメージぴったり。
 ↓


カテリーナ・デ・メディチのドラマもありましたー。
でも、冷血女と呼んでます。
歴史は生き残った者が書き残すのよ。
すごい悪女設定。
 ↓


で、七面鳥ですよ。
さーて、どの部位が一番美味しいのでしょうか。
答えは「総合解説」をご覧ください。
ちなみに、「総合解説」に載せた七面鳥のリチェッタは、七面鳥のローストのパネットーネ詰め。
クリスマスにぴったりの1品です。


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“七面鳥と去勢鶏”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月7日月曜日

マカロニのティンバッロ

ティンバッロの話は度々取り上げてきましたが、いつもシチリアの“山猫のティンバッロ”のことでした。
今日は、ナポリのクリスマス料理としてのティンバッロの話です。
総合解説」2015年12月号から。

『サーレ・エ・ペペ』の短い記事でしたが、ナポリのパスタの歴史がさらっと語られていました。
面白かったのは、ナポリのパスタの硬さについて。
かなり昔からナポリのパスタは硬かったのですね。
でも、記事を読む限り、ナポリの庶民のパスタはゆで時間が短くてとても硬く、金持ちや貴族のパスタは長時間ゆでたとても柔らかいものだったそうで、パスタの硬さにまで貧乏人と金持ちの暮らしの差が出ていたのかと思うと、ちょっと気がめいります。

ティンバッロと言えばシチリアの貴族のティンバッロを連想していましたが、ナポリの庶民のティンバッロはタルト生地で包まないで、パン粉で覆います。
そしてクリスマスなどのご馳走のティンバッロはタルト生地で包んでいました。

シチリアの山猫のティンバッロ
 ↓



タルト生地で包まないティンバッロの動画を探したのですが、見つかりません。
ひょっとして、今どきは見た目がゴージャスなフランス貴族風のティンバッロでないと視聴回数が増えないとか、あるかなあ。
とにかく、タルトで覆わないティンバッロは貴重なようです。

「総合解説」で、ティンバッロを出す店(要予約)として紹介されている店はこちら。

via Santa LUcia 56のダ・エットーレ
 ↓


コルニチョーネの作り方。

2軒目はリストランテ・ヴェリタス。
 ↓







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“マカロニのティンバッロ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月4日金曜日

パスタ・リピエーナ

今日はアニョロッティの話。
ピエモンテの人にとってはクリスマスや重要な席には欠かすことの出来ない料理。
でも、思い入れの全くないよそ者は、アニョロッティ・デル・プリンのことをぼんやりと思い浮かべる程度。
多分、プリンという響きが何やら可愛い、という理由で。

アニョロッティはラビオリのこと。
だからラビオリ・デル・プリンと言う人もいます。
『サーレ・エ・ペペ』誌によると、ピエモンテでラビオリのことをアニョロッティと呼び始めたのは紀元1000年頃。
現在は、アペニン山脈の麓ではラビオリ、モンフェッリーナの丘ではアニョロッティと、地区によって呼び方も変わります。
地区ごとに、詰め物やソースも微妙に違います。
今月の「総合解説」では、アレッサンドリア風やカザーレ風のアニョロッティのリチェッタを紹介しています。



確かに、詰め物は地区によって違います。
カルロ・カンビの『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ(伊・英版)

によると、伝統的なアニョロッティは3種類の肉の詰め物で作る家庭料理のご馳走だが、肉の詰め物のパスタの一般的な呼び方、“トルテッリ”とは別の物、とのことです。
ラビオリ、アニョロッティ、トルテッリと、すでに似たようなパスタが3種類登場しました。
詰め物入りパスタは、パスタの大量生産化に伴って種類が増えたパスタです。
スローフードのスクオラ・ディ・クチーナ”シリーズ
パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ

によると、詰め物入りパスタは、詰め物のタイプによって大きく2つに分けることができます。
肉(ロースト、煮込み、ボッリート、1種類、数種類、内臓入り、サルシッチャ入り、サルーミ入り)と、ディ・マーグロ(フレッシュチーズ、じゃがいも、野草、葉野菜)の2種類です。

さらに、形でも分けることができます。
正方形、長方形、三角形、円形、半円形のラビオリ、トルテッリ。
カッペッレッティ、カッペッラッチ、アニョロッティ、トルテッリーニ、トルテッローニの帽子型。
そしてカッターなどで特殊な形に切り分けるカルツォンチーノ、ファゴット、クレスタ・ア・ガッロ、カラメッラ、コーダ、コルドンチーノ、スピゲッタ、トレッチャ、ピッツィコット。

以上は伝統的なパスタに限った話です。
形や詰め物が作る人の感性次第で自由自在のパスタなだけに、現在は数多くのシェフが独自の詰め物入りパスタを創り出しています。
魚の詰め物はその代表例。

詰め物入りパスタの生地は、軟質小麦粉と卵の薄くて丈夫な生地が基本。
セモリナ粉は滅多に使わないので主に北イタリアに広まりました。
詰め物を閉じ込めやすいように、タリアテッレやタリオリーニより柔らかくて薄い生地です。

アニョロッティは詰め物入りパスタの中でもシンプルな長方形をした基本のパスタです。
トリノの四角い詰め物入りパスタはアスティ県のモンフェッラートから伝わり、そのルーツは同じ形のパスタがあるリグーリアとの境の山間部と考えられています。
1720年にサルデーニャがサルデーニャ王国となってトリノのサヴォイア家の支配下に入ると、サルデーニャの“クルルジョネス”という詰め物パスタが“アンジョロットゥス”と呼ばれてピエモンテにも広まったそうです。



半月型は、正しいかどうかは別としておおむねイスラムの影響というのが一般的な意見です。
ヨーロッパは度々オスマン帝国と戦いますが、その度に、オスマン帝国の旗に描かれた三日月がヨーロッパに広まったようです。

1453年、東ローマ帝国の首都で現在のイスタンブールの前身、コンスタンティノープル陥落。



1683年の第2次ウイーン包囲は、オスマン軍にウイーンが包囲されると言う歴史的な戦い。



この包囲戦、結局はヨーロッパが勝ったのですが、この時のオスマン帝国の旗、三日月がよほど衝撃的だったらしく、この時生まれたのがクロワッサンだと言い伝えられています。

詰め物パスタには、ドッピア・キウズーラと呼ばれるものもあります。
長方形や三角形に閉じた後に、角を合わせて再び閉じるものです。
ゆでている間に開かないように念には念を入れた閉じ方ですが、これがヴィーナスのおへそと呼ばれるほど美しかったのでした。
カッペッレッティやトルテッリーニなどがあります。
トルテッリーニ
 ↓


カラメッレ
 ↓


トンルテッリ・コン・ラ・コーダ
 ↓





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“アニョロッティ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月2日水曜日

『カルニ・ロッセ』

新入荷の本、『カルニ・ロッセ』の紹介です。



カルニ・ロッセ、赤肉は、牛肉の代名詞。
正確に言えば、赤い色の肉全般のことで、羊肉や馬肉もこの分類に入ります。
でも、羊肉を指す時に、わざわざ赤肉とはあまり言いません。
やはり、牛肉です。

でも、イタリアンの牛肉料理は、ちょっとマイナー。
そもそも、古代ローマ文明では、肉と言えば、野生の動物を狩りで仕留めた狩猟肉のこと。
イタリアで牛肉が狩猟肉にとってかわったのは、ゲルマン民族の大移動以降の話です。
中世になっても、領主など権力者は牛肉を食べることができましたが、農民にとってはお祝いの日など特別な機会に食べる特別な料理。農民が牛肉を食べるようになったのは、なんと第2次大戦後のことです。
さらに、戦後の好景気の時代を経て、庶民の食事にも牛肉が広まっていきます。

牛肉と言えばステーキですが、イタリア語でステーキはbistecca/ビステッカ。
語源は英語のbeef steak。
ビステッカという言葉が広まったのは、一説によると19世紀。
トスカーナに移り住んだイギリス人がロース肉をスライスした切り身を地元の肉屋に注文する時にその切り身をこう呼んだのが広まったのだそうです。
別の説によると、16世紀のメディチ家の時代のフィレンツェでは、サン・ロレンツォの日の夜に広場で子牛肉のローストを焼いて食べる習慣があり、この祭りに参加したイギリス人の騎士が、フィレンツェの肉屋にビーフ・ステーキの肉のカットの仕方や名前を教えたのだそうです。
いずれにせよ、イタリアで牛は主に労働用で、フィオレンティーナは牛肉が主役の珍しい地方料理と言うことができます。

でも、面白いことに『カルニ・ロッセ』にはビステッカのリチェッタが15点も紹介されています。

“ビステッカ・アッラ・アッラビアータ”や、“ビステッカ・アッラ・ピッツァイオーラ”など、ありそうで初めて聞くようなステーキもあります。

アメリカでは、ステーキとイタリアンが出会って、ステーキとパスタの店が誕生しました。
 ↓


特大のステーキとパスタやピッツァの組み合わせが、アメリカで人気にならないわけがない。


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2018年4月30日月曜日

春の前菜、プリーモ

快晴のゴールデンウイーク序盤には、なんとなくウキウキ分で春めいたイタリアンなんか食べたくなります。
そこで、季節ごとに料理を紹介するの本をぺらぺらめくりながら、コース料理を選んでみました。
オステリアやトラットリアのガイド本、“マンジャロッツォ”でおなじみのカルロ・カンビ氏の本、『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ』には、


英語とイタリア語の完全2か国語表記で、内容もぐっと読みやすくなった豪華仕様版があまりす。


この本から選んでみましょうか。
まず前菜は、アンチョビ料理なんてどうでしょう。
アンチョビは海深くにいて、産卵期になると海面近くに上がってきます。
この時期のアンチョビが一番美味しい。
イタリアでは春から夏です。

春の代表的アンチョビ料理は、リピエーネのフリットやマリネ。
リピエーネのフリットは、ジェノヴァの伝統料理。
そこでニュートンのクチーナ・イタリアーナシリーズの『リグーリアの魚料理』を見てみると、


料理写真の一番最初に、詰め物で丸々と太ったイワシの香ばしそうなフリットの写真が。
アンチョビの詰め物は“acciughe ripiene”。
aから始まるから、一番最初でした。
ジェノヴァの海辺の地区、フォーチェのリストランテ・ドゥエ・パッシ・ダル・マーレの名物料理はアンチョビのリピエーナ。
 ↓


印象的な店名の“ドゥエ・パッシ・ダル・マーレ”は「海から2歩(すぐ前)」という意味。
ベーシックなリチェッタなのでバリエーションは無数にありそうです。
一方、アンチョビのマリネは、美味しい旬のアンチョビを味わう最善の方法。

次はニョッコ・フリット。


モデナの名物料理です。
モデナでは前菜として、サラミやクラテッロ、ラルド、生ハムと一緒にランブルスコで味わいます。
生ハムやサラミと一緒にニョッコ・フリットを食べると病みつきになりますよね。

新野菜の季節は野菜のフリット・イン・パステッラの盛り合わせも美味しいですよね。
カルロ・カンビさんは『ミリオーリ・リチェッテ』の中で、日本の天ぷらに激しいライバル心を燃やしています。
でも、もちろんカルロさんに言わせればイタリア料理の勝ちです。
そういえば、カルロ・クラッコシェフの本にも天ぷらの衣についての解説がありました。
イタリア人のグルメたちは、寿司の次に天ぷらを発見して、徹底的に研究したようです。

プリーモは、トスカーナのアクアコッタから始まって、ヴェネトの鴨のビゴリ、グリーンピースのクレーマ、ムール貝のパッケリ、チェーチのピーペ・リガーテ、イカ墨のリゾット、ゴルゴンゾーラのリゾット、ツナのスパゲッティ、タリアテッレ・パリア・エ・フィエノ、ワイルドアスパラガスのタリアテッレ、じゃがいも、ムール貝、米のティエッラなど。

鴨のビゴリ
 ↓


イカ墨のリゾット
 ↓


この盛り付けは子供はウキウキしそうですね。
それではBuon golden week!!


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