2021年9月30日木曜日

冬野菜の主役、キャベツ。キャベツのオレッキエッテ。

きょうの料理は冬野菜のラザーニャのパスティッチョ(リチェッタは今月のCIR、P.5)。

パスティッチョpasticcioというのは、ラザーニャやパイのような、生地と具とベシャメルを重ねてオーブンで焼く、ムサカのような料理です。
古代ローマ時代のリチェッタも残っていますが、基本的に、北部を除くイタリア全域に広まったバリエーション豊富で豪華でボリュームのあるパーティー料理です。
今月のリチェッタでは、冬野菜の具で造っています。
イタリアの冬野菜とは、どんなものがあるのでしょうか。

冬の畑に育つ野菜↓


リチェッタに使われている野菜は、
スイスチャードcoste colorate、カリフラワーcavolfiore、ロマネスコvroccolo romanesco、カルドンcardo、チーメ・ディ・ラパcipe di rapa、アーティチョークcarciofi、ポロねぎporro、ラディッキオradicchioと、なかなか面白そう。

畑を耕しながらレストランを経営するシェフ、ジョルジョーネの本、『オルト・エ・クチーナ

は、季節ごとの収穫物とその料理の本。
冬の章には、
「冷たい雨が振る冬の畑の主役はアブラナ科のキャベツ。
さらに、大きな葉や棘や外皮で低温に耐える丈夫で頑丈な植物たちだ。
5月末に種を蒔き、たっぷりの水と肥えた土壌さえあればゆっくり成長していく。
私の畑の冬の王様はアーティチョークだ。
キャベツcavoloは寒さに強い野菜だが、唯一、cavolaia(カボライア/青虫)には注意が必要だ。
カボライアはモンシロチョウのことで、キャベツの葉が大好きなグルメで、その名からもキャベツ農家の天敵であることは明白。青虫の防除にはトマトの葉の抽出液が有効なので、トマトが生い茂る夏の間に造っておく。
キャベツにはたくさんの種類があるが、私が料理に使うのが好きなのはカリフラワーだ。白いカリフラワーは甘く、緑のものつまり美しいダイヤモンド型のロマネスコは香りがデリケート。黒キャベツcavolo neroはアロマが強い。柔らかいチーメ・ディ・ラパは、甘くてほろ苦い。葉が波打っているサボイキャベツverzaは、姿がユニーク。
さらに球形の紫キャベツcavolo rossoにキャベツcavolo cappuccioは、生でも加熱しても美味しく、ビタミンや食物繊維が豊富でアロマもとても良い。ヘルシーなキャベツは畑の柑橘果実だ。

すごい人気。
ジョルジョーネの4種のキャベツのオレッキエッテOrecchiette ai 4 cavoli↓

4種のキャベツは、ブロッコリー、ロマネスコ、サボイキャベツ、黒キャベツで、正確にはアブラナ科の野菜のこと。
ソースはカンナーラの赤玉ねぎ、レーズン、松の実、潰したトマト、ワイン、小さく切ったキャベツ類の蒸し煮をパスタのゆで汁でつなぎ、仕上げにペコリーノ・ロマーノを散らしたもの。

ジョルジョーネの畑↓

サボイキャベツの名が出てたところで、次回はサボイキャベツが大好きな地方の話題。

2021年9月29日水曜日

ポルケッタはうさぎ肉で作っても立派なモンハン焼きになる。

うさぎ肉のリチェッタ、その2(リチェッタは今月のCIR、P.4)
今日は“ポルケッタ”porchettaです。
リチェッタは『メイド・イン・イタリー

からどうぞ。

うさぎ肉のポルケッタ、フィノッキエット風味coniglio in porchetta al finocchietto。

材料/
《マリネ》
うさぎ・・1羽、1.2kg
にんにく・・1かけ
白ワイン・・300g
ローリエ・・2枚
ローズマリー・・1枝
塩、こしょう
・うさぎはレバーを別にする。洗って水気をふき取り、にんにくをこすりつけて塩、こしょうし、ワイン、ローリエ、ローズマリーでマリネする。

《詰め物》
生ハム・・50g
ベーコン・・40g
フィノッキエット・セルバティコ・・1房
にんにく・・2かけ
EVオリーブオイル、塩、こしょう
・フィノッキエットの緑の部分、にんにく1かけ、水1/2㍑を小鍋で20分煮る。
・にんにくを取り除き、フィノッキエットは取り出してみじん切りにする。煮汁は濾して取っておく。
・生ハム、ベーコン、レバーを刻み、ソテーパンで油大さじ2とにんにく1かけのみじん切りでソッフリットにする。フィノッキエットを加えて5分なじませ、塩、こしょうする。

《肉》
白ワイン・・200ml
EVオリーブオイル
・マリネ液から肉を出し、《詰め物》を詰めて縫って閉じる。または串で閉じる。
・油を塗って天板にのせ、170℃のオーブンで30分焼く。肉にワインをかけてアルコール分を飛ばし、フィノッキエットの煮汁をかけながら40分焼く。時々肉を裏返す。
・肉を切り分けて焼き汁をかけてサーブする。


こんな解説も付け加えられていました。
「マルケは肉をよく食べる地方だ。マルキジャーナと呼ばれる牛肉でも知られる。マルキジャーナは元々は農耕用の牛で、19世紀末に地元の農家が農耕にも肉にも適した品種を作ろうと、土着のポドリコ牛とキアニーナを交配させて作り出した。」
マルキジャーナ↓
素人が見ても立派な牛ですねー。

うさぎのポルケッタの本家はマルキジャーナのポルケッタ。
焼いている時からその豪快さで人目を引く↓

上級編のうさぎの丸焼き風ポルケッタ↓
フィノッキエット・セルバティコは葉じゃなくて太い茎を使ってロールの芯にします。

うさぎ肉は牛肉というより鶏肉の系列。
そこでおまけの料理はウサギ肉と鶏肉のトスカーナ風フリットPollo e coniglio fritto alla toscana

初級編なので肉は肉屋でカットしてもらいます。

2021年9月28日火曜日

ウサギ肉のラグーのフジッリ

今月の料理、次はプリーモ・ピアット。
1品目はうさぎ肉のラグーのフジッリ。
うさぎ肉は農家が庭で飼う家禽の一種。
他には、豚、鶏、ガチョウ、雉、などがいますが、その代表は、鶏。
原則放し飼い。
農家の朝↓

こちらの農家ではホロホロ鳥も飼ってますねー。↓

こんなかわいいうさちゃん見たあとでなんですが、ウサギ肉のソースの乾麺のパスタって、ちょっと珍しいんですよ。
イタリアでうさぎ料理といえば、アナウサギが多数生息していたイスキア島の名物料理として知られるイスキア風、マルケやウンブリアのポルケッタ、サンレモ風など、イタリア各地に名物料理があります。
ジビエの野ウサギlepreと違って家禽なので、イタリア中で飼育されています。
味が強い野ウサギは、詰め物入りパスタの具にも適していますが、家禽のうさぎは白くてデリケートな肉。ラグーにしてパスタにかけるには、それなりの工夫が必要のようです。
『la Cucina Italiana』にはこんなアドバイスがありました。
“リチェッタではラグーを1時間煮る、としているが、味を強くしたい時は、蓋をしてとろ火で2時間煮て味を凝縮させる”とあります。

イスキア島↓

シンプルな中にイスキア島の風味を全部閉じ込めた料理、
うさぎ肉のイスキア風Coniglio all'Ischitana di zia Giose

リチェッタは『クチーナ・ディ・ナポリ

からどうぞ。

材料/4人分
切り分けたアナウサギ・・1羽、1.2kg
ポモドリーニ・デル・ベスビオ・・10〜12個
白ワイン(イスキア島のビアンケッラ)・・2カップ
にんにく・・2かけ
EVオリーブオイル・・1/2カップ
ピーナッツ油(揚げ油)
マジョラム、タイム、または好みでバジリコ
好みで唐辛子、塩

・ウサギ肉の水気を拭き取り、揚げ油かオリーブオイルで少量ずつソッフリットにする。
・両側に焼き色がついたら肉に穴を開けずに網で取り出す。
・陶器の浅鍋にEVオリーブオイルを入れ、潰したにんにくと唐辛子を軽く炒める。ここに肉を加える。
・ワインをかけて火を強め、アルコール分を飛ばす。火を弱めてトマト、ハーブ、塩を加える。とろ火で時々かき混ぜ、必要なら湯を足しながら1時間煮る。

うさぎ肉のポルケッタ↓


畑で野菜、庭で家禽を育てるシェフ、ジョルジョーネの『ジョルジョーネ/オルト・エ・クチーナ』の本には、もちろん家禽料理も。

   家禽と言えば鶏ですが、本には、珍しくフライドチキンのリチェッタもあります。
ジョルジョーネはガンベロ・ロッソチャンネルの大人気シェフ↓

うさぎ料理のリチェッタは次回に続きます。



2021年9月27日月曜日

トロペアの赤玉ねぎ、ンドゥーヤ、唐辛子はカラブリアの美しいビーチにも負けないくらい観光客を惹きつける。

きょうの(CIR)の料理はアぺリティーボの2品目。
“赤玉ねぎのカラメッラート、ラズベリービネガー風味”です(リチェッタは今月のCIR-P.3)。

このリチェッタ、原文では玉ねぎはcipolle rosse、となっています。
直訳すれば赤玉ねぎですが、日本では、紫玉ねぎ、と言うので何色と訳すか、いつも迷います。
玉ねぎの色にこだわるのはイタリア人も一緒で、白か赤か黄色(dorata)か、いつもきっちりさせたがります。
市場では、玉ねぎくださいというと何色の?ときかれるので、自分が何色の玉ねぎを買いに来たのか、買う前にはっきりさせとかないといけないのです。
なのでイタリアの皆さんは玉ねぎの色による特徴の違いをよくご存知です。

今回使う玉ねぎは赤玉ねぎ。イタリアの赤玉ねぎと言えば、一番有名なのがチポッラ・ロッサ・ディ・トロペアcipolla rossa di Tropea。赤玉ねぎと言えば、たいていこれです。
この名前、多分、聞いたことありますよね。
で、トロペアってどこ?
カラブリアです。
トロペア↓
想像していたのとだいぶ違う美しい場所
玉ねぎ食べに行こうかな、なんて気にもなるなあ。

トロペアの赤玉ねぎは、独特の土壌と気候の元で栽培されて、甘くてマイルドなのが特徴。

甘くて赤い玉ねぎの定番の調理方法がカラメッラート。

さらに今回は玉ねぎをブラザーレする前にラズベリービネガーでマリネしています。

アグロドルチェ風味のカラメッラートはフレッシュチーズにも熟成チーズにも合うので、プリーモサーレとパルミジャーノなど、熟成状態の違うグルメなチーズの盛り合わせにもバッチリ。パンにのせてクロスティーニにして添えれば、立派なアペリティーボ。さらに野菜のクリームスープと軽いパスタがあれば軽い夕食になります。
トロペアの赤玉ねぎのカラメッラート↓

カラブリアにはンドゥーヤに唐辛子という名物もありました。
カラブリアの特産品、
トロペアの赤玉ねぎ、ンドゥーヤ、カチョカバッロのスパゲッティspaghetti 'nduja, cipolla ei Tropea e caciocavallo


材料:
トロペアの玉ねぎ・・3個
EVオリーブオイル・・大さじ4
・トロペアの玉ねぎ3個のみじん切りを油大さじ4でソッフリットにし、レードル1杯の湯をかける。ンドゥーヤ80gを加えてほぐし、火を止める。
・スパゲッティ360gをゆでて玉ねぎのフライパンに加えてあえ、カチョカバッロに少量ずつ入れてあえる。
カチョカバッロはグリルしたり炙って熱して溶かして食べるチーズ。それを皮だけ残して器にするというすごい料理でした。

ンドゥーヤはトウガラシ入りの塗れるサラミ↓

カラブリアの食文化は、普通のイタリアンを軽く超えています。

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2021年9月26日日曜日

チップスのコーヒー風味

今日から日本語解説(CIR)の1月号の話に入ります。
まずは1月のリチェッタ。
1品目(P.2)はaperitivoアペリティーボ“チップスのコーヒー風味”。
ベジタリアンでグルテンフリーな料理です。
それにしても、“チップスのコーヒー風味”って、流石に聞いたことないなあと思ったのですが、
イタリアには、コーヒーに対して異常なまでの愛情を注いでいる地域がありました。
これは多分、この地方の住民が考えた料理なのでは・・・。
その地域とは、もちろんナポリ。

そしてナポリ人はコーヒーに対するこだわりがすごい。コーヒーをいれる道具はモカで、うんちくを語りだすと止まらない。↓

この情熱は、濃いコーヒーへの渇望と言い換えることができる。
モカの水を入れるところにコーヒーの粉をスプーン1杯入れておく、と言ったのは、確か映画監督でナポリが誇るナポリ人のヴィットリオ・デ・シーカ。


ナポリのカフェ文化の殿堂、『カフェ・ガンブリヌス



チップスのコーヒー風味のリチェッタは、写真(こちら)を見る限り、チップスに軽くコーヒーの粉を振りかける程度で、むしろポイントなのが一緒に散らすsale in fiocchiことマルドン塩↓
イタリア料理のリチェッタには最近よく登場する塩です。




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2021年9月25日土曜日

ピエモンテはバローロだけでなく、ベルモットが生まれた地でもある。

バローロりブラザートならぬバルベーラのブラザートは、若手シェフの代表格、ダヴィデ・オルダーニシェフの野心的イタリア地方料理の本、『メイド・イン・イタリー

にもリチェッタが紹介されていました。
どうやら、お手軽な値段のバルベーラを使うのが今どき風のよう。
カリスマ性抜群のオルダーニシェフ↓

さらに、ピエモンテのワインについても、こんな考察が書かれています。
「ピエモンテと言えば、ワインだ。ストゥファートstufatoやブラザートbrasatoといった煮込み料理にもふんだんに使われる。
ピエモンテのワインについて概要を説明すると、
カレーマCaremaのネッビオーロから造られるバローロやバルバレスコ、

ネッビオーロの栽培に特化した地区、ネッビオーロ・ディ・カレーマ↓。
その発展をバックアップしたのはオリベッティや繊維業界。
美味しいワインは造れても売り方を知らなかったワイン農家をバックアップしたのはアメリカのマーケット。

ノヴァーラやベルチェッリの丘陵地帯のぶどうをブレンドしたブラマテッラBramaterra 、ボーカBoca、レッソーナLessona、ゲンメGhemme、ガッティナーラGattinara、そして他の品種のワイン、ドルチェットDolcetto、グリニョリーノGrignolino、フレイザFreisa、ドルチェ・ブラケットBrachetto、
さらに生産量が少ない白ワイン、アルネーズ・デイ・ロエーリAreneis dei Roeri、エルバルーチェ・ディ・カルーソ・パッシートErbaluce di Caluso passito、コルテーゼ・ディ・カビCortese di Gaviはほんの一例。
さらにアスティ地区から世界に輸出されているスプマンテ   spumanteやモスカートmoscatoの伝統もある。
ネグローニやマルティーニMartiniといったカクテルの誕生によって世界中に知られるようになったラタフィアRatafia やベルモットVermouthegroni の故郷でもある」


マンチーノ・ベルモット↓

まだまだピエモンテの美味しいワインは他にもありますが・・・。



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2021年9月24日金曜日

バルベーラ煮込みでもいいじゃないですか。

バローロのブラザートの話をするなら、ピエモンテ料理の達人に聞こうと思い、大人気だった本、『テイスト・アンド・トラディション』

(あいにく本は売り切れです)の北イタリア版を読んでみました。
すると、こんなことが書いてありました。
ピエモンテの老舗の名店、リストランテ・デル・ベルボ・ダ・バードンristorantedel Belbo da Bardon(webページ)の4代目で現シェフのジーノ・バルドーネの言葉です。
ランゲのトップレストランの第10位に選ばれています。↓


「“仔牛肉のバルベーラのストラコットStracotto di vitello braato al Barbera”レストランのメニューや料理書でよく見かける料理は、“バローロのストラコット”となっているだろう、とジーノは言うが、彼自身はバルベーラの大ファンだ。
バローロという名前は、あなたがこの料理にどれだけ惜しげもなく資金を投入したかを物語っている。だが。ストラコットはバルベーラでも美味しくできる。
バローロのストラコット↓

ただもちろん、仔牛肉は地元のファッソーネ・ピエモンテーゼの肉が大前提。
ファッソーネ・ピエモンテーゼ↓

Stracotto di vitello brasato al Barbera/仔牛肉のバルベーラ煮込みby Del Belbo da Bardon

材料:6人分
にんじんのみじん切り・・3本
セロリのみじん切り・・2本
軽く潰したにんにく・・3かけ
子牛肩肉・・約4.5lb(2kg)
白ワイン・・1カップ
赤ワイン(バルベーラ・ダスティ)・・8カップ、または好みでバローロ一振り
リグーリアのEVオリーブオイル・・1/3カップ
無塩バター・・大さじ8
シナモンスティック・・1本
クローブ・・12個、塩

・肉が入る大きさの鍋にバターと油を熱し、にんじん、セロリ、にんにく、肉を加えて中火で最低15分炒める。肉の表面全体に焼き色がついたら白ワインを加え、火を強めて4〜5分アルコール分を飛ばす。
・赤ワインを注ぎ、シナモンとクローブ、塩を加える。蓋をしてとろ火で最低3時間煮る。
・その間にポレンタを作る。
・3時間後に肉を,取り出して保温する。シナモンとクローブを取り除く。
・焼き汁を裏漉ししてピューレにし、スライスした肉2枚に添えてポレンタと一緒にサーブする。



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2021年9月23日木曜日

バベットの晩餐会でイタリアワインを出すなら、あのワインしかない。

おまたせしました。(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)の日本語解説、2020年1月号を発売しました。
定期購読分も発送しました。
今月から2020年版に突入です。翻訳も1ヶ月ごとに戻りました。
初回は1月号。

新年のイタリア料理にはどんなものがあるのかがよく分かる号です。
1月は、クリスマスの名残をあちこちに残しながら、次第にお祭り気分から冬を迎える季節です。

さて、話はちょっと戻って、前号、11・12月号について。最後の記事のお題は、『バローロ』でした。
バローロのキャッチフレーズは、王のワインにしてワインの王。
重要なセコンド・ピアットに合うイタリアワインの代表格です。

バローロの収穫期↓

バローロが代表的イタリアワインに選ばれる時、必ず言及されるのがバルバレスコ。
どちらもぶどうはネッビオーロ。
というわけで、記事ではバローロをネッビオーロのワインと言い換えています。
バローロとバルバレスコ↓

訳した記事のテーマは、バベットの晩餐会のためにイタリアワインを選ぶとしたら、でした。
バベットの晩餐会は、1987年公開でアカデミー外国語映画賞も受賞した傑作のデンマーク映画です。主人公はフランスから亡命してきて牧師の家庭で家政婦として働くようになった女性。料理人が主役の映画の最高峰です。この映画の中で効果的に使われているのがワイン。
一流のシェフが恩返しのためにお金に糸目をつけずに作るその料理とワインは、田舎の閉じた暮らしでカチコチに固まった村人の心をとろけさせます。
食材選びも、料理やワインをサーブするタイミングも、一切手を抜かないバベットの晩餐会は、最後には食事に来たみんなを開放してしまいます。映画を見ているだけなのに、パリの一流料理店で食事するとはこういうことかと感じる、人生が豊かになる映画でした。
ワインはフランスの一流どころがたくさん出て来るのですが、正直言ってシャンパン以外は知らなかったです。
『バベットの晩餐会』↓


この名作にイタリアワインを登場させるなら、という野心的なお題で、イタリアを代表するワインとして名前が上がったのは、キアンティ、サグランティーノ、モンテプルチャーノ、アマローネなど。
そして選ばれたのがバローロ。
バローロのぶどう畑↓

バローロはターナロ河右岸のクーネオとアスティの県堺にあります。
バローロはビンテージや生産地区によって特徴が変わるワインですが、ネッビオーロの畑はあらゆるところにあります。つまりバローロも無数にあるというわけです。
ネッビオーロのワインはコクと強いタンニンが特徴で、脂肪分が多い料理や繊維が詰まった、味が持続する料理によく合います。
ジビエの場合は、バローロを使った料理だと、肉の組織にもワインが溶け込むので、一層効果的。(リチェッタはP.54〜)

リチェッタは次回に。

一流シェフのグループ・“レ・ソステ”の本、
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2021年9月22日水曜日

グランシェフたちにキャビアよりゴージャスとみなされているのが地元の伝統の食材。

今日のお題はキャビアcavialeです。
キャビアはヨーロッパの宮廷文化と結びつきが深い食材で、日本に住んでると、ほとんどご縁がないなあ。私も今まで生きている間に食べたキャビアは数粒(www)。
魚卵が大好きな日本人でも、さすがにヨーロッパの宮廷の食文化はなじみないよね。
まずは基本情報。そもそもキャビアは、カスピ海あたりに棲んでいるチョウザメの卵で、ロシアが有名。

カスピ海は中央アジアと東ヨーロッパの間にある世界最大の湖。

現在カスピ海にいるチョウザメは5種類が知られていて、一番上質なキャビアがとれるのはベルーガという種類。
ベルーガは塩漬けの期間が30〜60日と短く、生キャビアという意味の“マロッソル”と呼ばれます。
現在最も珍重されているのはイラン産のもので、粒の大きさが揃っていて、1粒ずつよくほぐれているのが特徴。

カスピ海のイラン沿岸部はロシア側より深く、メスのチョウザメが河に登り始める前の、卵がちょうどよく熟した時に捕ることができるからだと言われている。

カスピ海へのベルーガの放流とそれを見守る沿岸国のリーダーたち。↓
なんか迫力のメンツですね。

キャビアは冷蔵庫で-3℃で保存するが、一度蓋を開けたらすぐに使い切る。容器がとても小さいのでさほど難しいことではないだろう。
サービスする時は砕いた氷を入れた器の上に瓶を入れる。スプーンは金属製のものを使うと味が損なわれるので、貝の内側の真珠層のものか象牙のスプーンを使う。


キャビアの食べ方は、イタリアでもブリニが典型的。今月の(CIR)には、イタリアならではのチーズ、カプリーノのクリームとキャビアをのせるイタリア風アレンジのリチェッタを紹介しています(P.50)。

じゃがいものブリニのカプリーノのクリームとキャビアのせ↓

スパゲッティのキャビアは少数派。

グランシェフたちの革新的なパスタの本、『パスタ・レボリューション
にもキャビアを使っているシェフはいないけれど、地元の貴重な食材のほうがキャビアよりずっと価値があり、クリスマスに相応しい贅沢な食材、とみなしている傾向があります。
豪華で特別な食材として最近人気があるのはマザーラのガンベロ・ロッソ。
マザーラのガンベロ・ロッソとピスタチオのスパゲッティ↓


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2021年9月21日火曜日

ヨーロッパ宮廷文化の黒い真珠、キャビアを抱いて河を遡上するチョウザメの姿は、王の帰還と呼ばれる。

今日のお題はイタリア産キャビアです(日本語訳は今月の(CIRP.49〜)。
ちなみに、次号の2020年1月号は近々発売予定です。

年末年始の料理には欠かせないゴージャスな食材と言えば、キャビア、牡蠣、フォアグラ、トリュフ・・・。

ヨーロッパのVIPの食材として人気のキャビア。
野菜と組み合わせればマーレ・エ・モンティの特別なプリーモ・ピアットにもなる。
2万年間生態が変わっていない魚、チョウザメの卵。
チョウザメstrioneは海で暮らし、産卵のために河を遡る遡上魚です。
昔はポー河やローマのテベレ河にもいましたが、ダムによって遡上ができなくなり、汚染や乱獲のせいで数が減りました。
一方で、キャビアの養殖技術は年々進化しています。

イタリアにキャビアを食べる文化が伝わったのは、ルネサンス時代のフェラーラの宮廷だそうです。エステ家の宮廷料理人、クリストフォロ・メッシスブーゴが卵の保存方法を書き残しています。
やっぱりヨーロッパの宮廷の食べ物なんですね。
かつては、河を遡上して戻ってきたチョウザメを王の帰還と呼んで歓迎していました↓

現在イタリアでは最大規模のチョウザメの養殖が行われていて、キャビアの約90%が輸出されていて、中国、ロシアに次いで世界3位のキャビア輸出国。
イタリアのチョウザメはアドリア海からポー河に入ってきます。

ロンバルデイアのブレッシャにあるカルヴィジウス社がイタリア最大手のキャビアメーカー↓

キャビアの塩漬けには塩分濃度などが厳しく定められていて、熟練の職人業が必要で、イクラ感覚で家庭で簡単に作れるものではないらしいです。
イタリアにいる職人はイラン出身の人が多いそうです。

イタリアの河原産のチョウザメを養殖しているメーカーもいる↓

リチェッタは次回に。

ミラノの魚と言えば、川魚。ミラノ料理の本『クチーナ・ミラネーゼ

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2021年9月20日月曜日

ミラノの湿気とアメリカの配給したから小麦粉から生まれたパン、ミケッタ。

今月の(CIR)のリチェッタから、今日は、“ホームパーティー、家族と祝うクリスマス”(リチェッタはP.42〜)から、ウエルカム・パネットーネです。
クリスマスのドルチェの定番のミラノのドルチェ。
パネットーネはミラノだけでなくイタリア中に広まっています。
パネットーネ作り↓



“グイド・トンマージ”の『クチーナ・ミラネーゼ

にはこんなことが書いてありました。

クリスマスのパネットーネは、お祝いや健康を祈る意味を込めて家長が切り分けて客に配る。

そう言えば、以前パンのジンクスについて、“人を食事に招いた時、最初に席についてみんなのためにパンを切り分けると長生きする”なんて話を訳したことがありました。
確か、パンを切り分けるのは家長の役目なんですよね。

ウエルカム・パネットーネは、デザートのパネットーネにハムやチーズを挟んで、いわゆる“バネットーネ・ガストロノミコ”という甘くない前菜にしたものを細かく切り分けたもの。
パンをキリストの血肉とみなすキリスト教では、クリスマスにはパンを切り分けて振る舞うという行為にも意味が生まれるようで、このスタイルのパネットーネもイタリア中に広まりました。
ちなみにパネットーネの語源は一説によると“Pan de ton”、重要なパン、という意味。家長がサーブする大切なパンという古い伝説に基づいた名前だそうです(諸説あり)。
“ウエルカム・パネットーネ”というネーミングは初めて目にしました。ちなみに、イタリア語だとpanettone benvenuto。


『クチーナ・ミラネーゼ』には、パネットーネが全国区のドルチェになったのは、南イタリアで受け入れられたから、とあります。もちろん・アンジェロ・モッタのおかげでしょうが、南北の垣根を超えると、本当のイタリアを代表するドルチェになるんですね。



最近では、クリスマスの時期以外にも一年中パネットーネを食べるようになりつつあるそうです。
ミラノのパンと言えば、ミケッタmichetta↓


パンくずという意味のmiccaが語源。オーストリア・ハンガリー帝国にミラノが占領された時に伝わったしっとりしたパン(kaisersemmel)ですが、ミラノの湿気のために夜になるとべっちょりしてしまうため、いっそのこと中身をくり抜いてしまえ!と、して生まれたパン(本にも上の動画でもこう言ってるけど、多分諸説あるよね)。
動画によると、戦後、寒さに強い小麦がカナダのマニトバから入ってきて、このグルテンが多いマニトバ粉でミケッタを造ったら、柔らかくてクラムがない皮がカリッとした、オリジナルのカイザーゼンメルに近いミケッタができたのだそうです。


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2021年9月19日日曜日

詰め物入りパスタのパスタにはパンの役割が。

今月の(CIR)で定番イタリア料理に選ばれたパスタは、タリアテッレ・ボロニェーゼ、トルテッリーニ・イン・ブロード、ブカティーニ・アマトリチャーナ、スパゲッティのフリッタータ、ソレント風カネロニというラインナップでした。
さりげなくマニアックな選択(汗)。
その最たるものがトルテッリーニ・イン・ブロード(リチェッタはP.35)。
食べたことがある日本人は少ないのでは↓
イタリア料理の辞典のような入門書、1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ

には、世界で一番有名な詰め物入りパスタ、と誇らしげに書いてあります。
ボローニャからモデナにかけての一帯では、誰もがそう信じていますが、日本では、その地位はどう考えても餃子のもの。
でも、ボローニャでは、この料理を中心に、立派な食文化が形成されています。
餃子の影響力を想像すると、それも納得できます。
トルテッリーニ用の生地を打つ職人はスフォリーナと呼ばれる専門職↓

ブロードは伝統的には去勢鶏、または去勢鶏と牛のブロード。
ボローニャでなければ味わえないものをたっぷり使う料理。
去勢鶏のブロード↓

ダビデ・オルダーニシェフの現代版地方料理書、『メイド・イン・イタリーには、

この場合のパスタは具の料理を包むためのもの。これはパスタでなければパンが担っていた役割だ、と書かれている。クリスマスのご馳走よりも、貧しい農民の節約料理として見ると、個性的な家庭料理書、『マンマミーア
に、こう書かれていることも納得する。
「もし詰め物をチーズ、パン、卵だけにするなら、パンは2、3日経ったものがよい。これをおろして振るい、少しずつ詰め物に加えて十分締まった堅い詰め物にする。冷めたら卵とパルミジャーノを加える」
一方で、豪華版の具は、生ハム、モルタデッラ、バターでローストした豚のロース肉といった具合。これは見事にボローニャあたりの名物ばかりだが、ピエモンテなど他の地方では、パン粉やおろしたチーズの具も珍しくない」
アニョロッティ・デル・プリン↓


2021年9月18日土曜日

ボローニャの玉ねぎのソース、フリッジョーネ。

今月の日本語解説(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)から、
今日からのお題は、世界中に広まった定番イタリア料理です。
イタリア料理の代表的1品は、まずはボロニェーゼ、bolognese(リチェッタはP.34)。
正確に言うと、タリアテッレ・コン・ラグー・アッラ・ボロニェーゼ、またの名をラグー。
外国人をからかう時の決り文句は、スパゲッティ・ボロネーゼ(www)。

でも大半の人が、からかわれているとは気が付かない。
それどころか、今じゃ、こっちのほうが正解になるくらい広まっちゃった。
タリアテッレ・ボロニェーゼは、古代ローマからの長い歴史と、ポー河沿いの独特の地形から生まれたエミリア・ロマーニャの名物です。
スパゲッティ・ボロネーゼには実はボローニャならではのものはたいして入ってない。


イタリア料理アカデミーの本、『スーゴとソース

によると、
イタリアの地方料理は、地域の農民の暮らしから生まれました。つまりこの地域で豊富に生産されていたものを使って造られた料理です。
ボロネーゼのベースとなる食材は、ざっくり言うと、玉ねぎと肉。
豚肉は豚を屠殺した時だけ手に入るちょっと特殊な食材。
で、肉が入らない玉ねぎのソースがこの地方にはあるのです。フリッジョーネfriggioneといいます。
イタリア料理の基本のラグーのさらにベースとなるソースです。
本によると、ボローニャの東の平野は中世から玉ねぎの産地として知られていたそうです。この地域の料理にも玉ねぎはしっかり取り入れられていました。ボローニャのレストランでは、クリスマスの季節の料理、ボッリートのソースとしてサルサ・ベルデ・ボロニェーゼとこのフリッジョーネをサーブするのが定番。

ボローニャ風玉ねぎのソースfriggione alla bolognese

材料:
玉ねぎ・・2kg
カットトマト・・400g
粗塩・・小さじ1
砂糖・・小さじ1
バター(オリジナルのリチェッタではラード)

・玉ねぎを薄くスライスして粗塩と砂糖をまぶし、覆いをして時々混ぜながら最低3時間休ませて水分を出す。
・玉ねぎを汁ごと鍋に入れて火にかけ、バターを加える。バターが溶けたら蓋をしてとろ火にし、最低2時間煮る。1時間煮たら蓋をずらす。2時間後にトマトを加え、蓋をずらしてのせて玉ねぎが煮崩れるまで1時間30分煮る。
ボッリートに添えてソースにもする。
ボローニャの隣のグルメシティー、モデナのグラン・ボッリート・ミスト↓

スパゲッティは硬質小麦が育つ南イタリアの食べ物で、北イタリアでは軟質小麦の食べ物が広まった。タリアテッレはその代表格。都会では乾麺のスパゲッティが主婦や労働者の強い味方となったが、ボローニャでは、手打ち麺は女性の職業としても広まった。そしてこのタリアテッレのために生まれたソースがラグーだった。
   ボローニャ・スフォリーナ協会のタリアテッレ作りの動画↓


手打ち麺の料理で、代表的イタリア料理に選ばれたのはもう1品、トルテッリーニ・イン・ブロードです。
詳しくは次回。

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2021年9月17日金曜日

フードバレーは造り手たちの上質を目指す情熱と先進の考え方を受け入れる思想から生まれた。

パルマはパルミジャーノだけじゃない。生ハムの造り手たちも、バリバリの熱き実業家たちでした。
火事で85000本の生ハムが灰になった老舗、フラテッリ・ガッローニは、1分も止まらなかったそうです。なんと、従業員と顧客のためにその日のうちに出荷を再開して最新の設備の工場の再建を始め、新製品まで造りました。ガッローニがあるのはランギラノという街。
フラテッリ・ガッローニの生ハム↓

ランギラノの住民の生ハムへの情熱は熱い!


工場の火災からの大復活↓

地元の古い品種の黒豚を放し飼いにして生物多様性の考えを取り入れて古代小麦やロマニョーラの鶏などを育てているローザ・デル・アンジェロ↓も注目されている生ハムやクラテッロの造り手。

農場の見学は大人気↓

フードバレーは、いいものを作りたいという農家の情熱が集まって生まれたということをなんとなく知りました。
この地方で頭一つ抜き出るということは、簡単なことではない。
こだわりの店が集まっているために研究心も俄然高い地域。

モデナ出身でイタリアを代表するシェフの一人、マッシモ・ボットゥーラシェフは、この地方の産物の偉大な保護者。マッシモ・ボットゥーラ・パルミジャーノ



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2021年9月16日木曜日

バリバリの実業家と誇り高き酪農家たちが作るパルミジャーノ。

パルマの話、続けます。(記事は『クチーナ・イタリアーナ2019年12月号』より、

日本語訳は(CIRP.31))。
この地方の約330軒のチーズ製造所の中でも外国にも知られる老舗として名前が挙げられたのは、ベルティネッリとジェンナーロ。
ベルティネッリ↓

自慢のチーズは出来のよいビンテージのワインという意味の“ミッレジマートmillesimato”という名前。
授乳期間の最初の90日間の、カルシウムやカゼインなどの栄養価が最も高いミルクだけを使い、地元の飼料に含まれる乳酸菌や香りを傷めないようにデリケートに加熱して造ったパルミジャーノです。
さらに、分野ごとに細分化されたパルミジャーノの製造過程のすべてを把握する数少ない造り手だそうです。
ベルティネッリの社長さんは、ネットの動画を見る限り、キレッキレの経営者って感じです。

ベルティネッリのライバルがジェンナーリ。

こちらの社長もバリバリのやりてのようで、チーズを販売している店舗はパルマの中心部を含めて3軒あります。

ジェンナーロの新製品は“バッケ・ロッセ・リゼルバ”。
パルミジャーノになるミルクを出す牛の品種は、主に最も伝統的なフリゾーナ、ミルクの量は少ないけれど、とても質が良いブルーナ・アルピーナ、そしてレッジャーナ・ロッサ。脂肪分が高くて長期熟成が可能なミルクを出します。パルミジャーノをゆっくり熟成させるにはレンネットの量を少なくしなければなりません。レンネットが多いと味が強すぎて、風味が閉じたチーズになります。ちなみにパルミジャーノは24ヶ月以上経つと、口に含むと柔らかくて甘く、風味が持続するチーズになります。
ジェンナーリは酪農農家に働きかけてパルミジャーノに最適のミルクを安定供給できるシステムを作り上げました。
チーズは塩水漬けにしますが、どんな塩水でもいいわけではなく、この塩水には、地元の香りが50年間受け継がれてきました。地元の風味を長年かけて受け継いで作り上げたのがパルミジャーノ・レッジャーノなのです。
バッカ・ロッサ↓
ミルクの量は少なくても病気に強くてたくましく、長生きする品種だそうです。


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2021年9月15日水曜日

パルマの肉屋は立派な実業家。

今月のグルメガイドはパルマparmaです(記事の日本語訳は今月の日本語ガイド(CIRP.31))。

パルマは、言わずと知れた生ハムやパルミジャーノの産地で、その生産者が多く集まっていることから、フードヴァレーと呼ばれているほど、美味しいものがたくさん造られている街です。

ちらっと衝撃的な光景が映ってましたが、食料品店のパルミジャーノと生ハムの売り場がエグイ?!
パルマの歴史地区。
食べ歩きも楽しいけど、歴史的な名所もたくさんあります↓

パルマは芸術家ヴェルディの生まれ故郷。
肉屋だったシェフのマッシモ・スピガローリがこの地の古い農場を改装した星付きレストランで高級ホテル、アンティカ・コルテ・ディ・パッラヴィチーナ・ディ・ポレジーネ・パルメンセ。今ではシェフは、パルマの食と観光業界の大立者。
下の動画で語っている人です。
豚の飼育、無農薬の畑で野菜の栽培、クラテッロの博物館とカンティーナも切り盛りしています。
クラテッロのカンティーナとは、ワインと同様で、クラテッロを熟成させる倉庫です。ここには有名シェフやセレブのクラテッロが熟成されています。
この地では豚肉もワインも実業家が育てています。

ガンベロ・ロッソでイタリア最高のトラットリアにノミネートされたパルマのアイ・ドゥエ・プラターニ↓
 店のwebページ
名物のワゴンでサーブするジェラート↓

こちらも名物の、注文が入ってから詰め物をするトルテッリーニ↓


ガンベロ・ロッソの『プレミアーテ・トラットリエ

今日はこのくらい。パルマの話、明日に続きます。



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2021年9月14日火曜日

かちこちのビスコッティは南イタリアの農民の倹約精神の現れ。ナポリのアマレーナのビスコッティ。

今日の地方料理のビスコッティは、ナポリのビスコッティです。
リチェッタは(今月のCIRP.29)。
ビスコッティ・ディ・アマレーナです。
ナポリのアマレーナのビスコッティですと?
あまり聞かないなあ。
一応念の為、豊富な写真つきでこういう時に頼りになる本、『クチーナ・ディ・ナポリ
でも、探してみるかな、と思ってぱらっとめくってみたら、あっさり見つかりました。
ビスコッティについてはこう書かれています。

「アマレーナのビスコッティは、ナポリのパスティッチェリーアのもったいない精神に満ちたドルチェだ。前の週の残り物のフロッラ生地やスポンジ生地と、残り物のシロップ漬けのアマレーナの柔らかい詰め物のビスコッティで、これを作るためにわざわざ残り物を出すくらい美味しい」

ナポリ料理界の有名ジャーナリストの本、『リチェッテ・ディ・ナポリ』にももちろん載っています。そしてこんなことが書かれていました。

イルピニア地方や南イタリア全域のドルチェは、伝統的に、パスティッチェリア・セッカがベースになっている。その根底にあるのは農民の暮らしだ。
ビスコッティ、ビスコッティーニ、パネットーネ、トルタ・アッシュッタは、クリーム入りの水分が多いドルチェより長期間保存できるので1週間はもつ。そうするとかまどに火を入れるのも1周間に一度でよい。何よりも、傷んで捨てることも減る。

なんと、竈に火を入れる回数をけちっていたからドルチェがかちこちだったとは・・・。
ナポリのビスコッティ・アッラ・アマレーナ↓


言われてみれば、クリームたっぷりのふわふわなドルチェはあまり南のイメージはないなあ。
でも、アマルフィのデリツィエは、まさにクリームでふわふわなドルチェ。
これは硬いドルチェばかり食べていた南の人は夢中になるなー。

サルバトーレ・ディ・リーゾのデリツィエ↓


デリツィエを広めたパスティッチェーレ、サルバトーレ・デル・リーソの本、『ドルチ・デル・ソーレ




2021年9月13日月曜日

世界中を虜にしたカントゥッチとヴィンサントの組み合わせ。ワインにクッキーを浸すという日本にはない食べ方は、外国人から教わるもの。

今日のイタリアのビスコッティは、久々にメジャーな地方料理、カントゥッチ(リチェッタは(CIR)P.29)です。


カントゥッチはイタリアを代表するビスコッティ。
私のカントゥッチとの出会いは、ちょっとした衝撃でした。
私はフィレンツェのイタリア語学校に通ったので、キアンティのワイナリーへの少遠足が頻繁に行われていました。
キアンティがワインの産地、ということは、かろうじて知っていた程度が当時の私です。つまりイタリアワインのことは何も知らなかったのでした。
スイス人やドイツ人の同じ下宿のクラスメイトたちと一緒の楽しいワイナリー巡りの最中、テイスティングの時にヴィンサントと一緒に出てきたのがこのカントゥッチでした。
私は、ヴィンサントがどういうものかも何も知らずに、とりあえずカントゥッチをかじって、その固さに、イタリア人は歯が丈夫なんだなあ、と思ったりしていたのです。
すると、スイス人の郵便局員の友達が、こうやって食べるんだよ、と、カントゥッチをヴィンサントに浸して食べてみせました。
早速真似してみると、ヴィンサントをたっぷり吸ってしっとりほろほろに柔らかくなったカントゥッチは、なんなくかみくだけて、しかも芳醇な強いお酒もたっぷり味わえて、何これ!超美味しい!と、たちまち心を鷲掴みにされたのでした。
あれがイタリアの食文化に興味を持ったきっかけだったのでは・・、と思います。
イタリア料理はアメリカから伝わったスパゲッティとピッツァしか知らなかった若かりし頃、酒精強化ワインにアーモンドクッキーを浸して食べる食文化は、きらきら輝いていました・・・。
ワインにクッキーを浸すなんて、トスカーナではあたりまえの発想は日本人にはまったくないから、これだけでもカルチャーショック。
これから初めてカントゥッチをヴィンサントに浸して食べる人は、あの感動をもう一度味わえるんだなあ、うらやましい。どこの国の人から教わるか、興味あるなあ。



カントゥッチとヴィンサントの組み合わせには世界中の人が夢中になりました↓
あなたにこの食べ方を教えてくれる人は、ブラジル人かも。
イタリア料理は移民が世界に広めましたが、これはまぎれもなく世界中からの観光客が広めた食文化。
ワインにビスコッティを浸す食べ方は、イギリス人のお茶にビスケットを浸す食べ方がルーツという説もあります。
        by マンマミーア



カントゥッチのルーツはトスカーナのプラート↓
保存のために2度焼いてかちこちにしたビスコッティです。
トスカーナでは食事の最後にヴィンサントと一緒にサーブします。
プラート↓

お勧めトスカーナ料理の本、“グイド・トンマージ”の『クチーナ・トスカーナ

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2021年9月12日日曜日

サルデーニャのパパッシーニはハロウィンイブの日のビスケット。

お題はイタリア各地のビスコッティ。
今日はサルデーニャのパパッシーニpapassini(リチェッタは今月のCIRP.28)。
出来上がりはアイシングで飾るジンジャービスケットに似てます,
生地はラルドやアーモンド入りのショートクラストペストリー、イタリア語だとパスタ・フロッラpasta frolla。
パパッシーナという可愛い名前はレーズン(uva pass)が語源。

サルデーニャでは11月1日の諸聖人の日festa di ognisantiのお菓子として知られています。
別名万聖節とも呼ばれるキリスト教の祝日です・・・。
あれ、この日は、ひょっとして、あの日ではないですか。
10月31日の、アメリカから伝わった、ハロウィーンの日ですよ。
11月1日のこの日は、いわばその前夜祭。なんだそうです。

サルデーニャのドルチェ↓は独自に進化したガラパゴス的ドルチェ。

クッキーをアイシングで覆って砂糖粒を散らすとサルデーニャ風ドルチェに。
パパッシーニによく似たサルデーニャのビスコッティ、ピストケッドゥス↓
昔はハロウィンは純粋なキリスト教の祭りではない、という説が有力だったけど、エンタメ化した現在のハロウィンは、イタリアにも徐々に浸透しているようです。
アングロサクソンの派手な祭りとサルデーニャ人の職人技が合体して生まれたのが、パパッシーニ。

諸聖人の日は、向き合い方がキリスト教徒でも国や地域によってによって違う日。シチリアの諸聖人の日のドルチェ↓


ミニサイズでお手軽なシチリアのドルチの本、ブランカート・クチーナ・シチリアーナシリーズのパスティッチェリーア・シチリアーナ



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2021年9月11日土曜日

バーチ・ディ・ダーマはアレンジが加えられて各地に広がり、バーチ・ディ・〇〇考案者の店は観光名所にもなっている。

イタリアのクッキー編です。
2つめは、バーチ・ディ・アラッシオ(リチェッタはP.27)。
アラッシオってどこにある街でしょう。
答えは、リグーリア。リビエラ・ディ・ポネンテにある小さなビーチリゾート。

バーチ(キス)という名のイタリアのクッキーは、バーチ・ディ・ダーマbaci di damaが有名。ピエモンテのトルトーナ生まれのクッキーです。イタリア国王から新しいクッキーを作るように命を受けて19世紀なかばに宮廷のパティシエが考え出したものと言い伝えられています。
キスという名前は、2つのクッキーをクリームで張り合わせた形が唇のようだから、と言われています。

イジニオ・マッサーリのバーチ・ディ・ダーマ↓

イタリアのモダン・パスティッチェリーアの父と呼ばれる巨匠、『イジニオ・マッサーリ』。
パティシエ・ワールド・カップのイタリア人初の名誉会長。


その後、広まるにつれ、色んなアレンジが加えられます。
アラッシオのバーチもその中の一つでしたが、後に考案者のアラッシオのパティシエ、リナルド・バルソラが特許を取って華々しく売り出します。彼のアラッシオの店、カフェ・バルソラは、アラッシオのバーチ誕生の店として観光名所になってます↓ 

お菓子にまつわる話はロマンチックさが大切。バーチという名前のヘーゼルナッツチョコレートクリームのクッキーは、この名前を考えついた時点で勝ち組でした。



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2021年9月10日金曜日

マルゲリータは人気者の王妃で、ピッツァだけじゃなくクッキーの名前にもなってる。

今月の日本語解説(CIR)、イブの次のリチェッタは、イタリアのビスコッティです(リチェッタはP.27)。
クリスマスにクッキーですと。
うーん、これは今どきの若いお母さんやお父さんならすぐにピンとくるのかも知れないけど、昭和な世代には、謎です。
ひょっとして、クッキーにキリスト教的な何かがあるんですか?
wikiによると、クリスマスツリーにぶら下げるものとか、イブに子どもたちがサンタクロースのために用意するクッキーとミルクだとか、夢のあるかわいい話をしておきながら、でも、大抵の人は自分で食べます(!)、という現実に引き戻される悲しいオチまであります。
この人情の機微がずれてるコンピュータ感、いいですねえ。

というわけで、本場のイギリスやドイツでは、もみの木、トナカイ、雪だるま、星の形でアイシングで飾ったジンジャーブレッドが主体ですが、これらのプロテスタントの国のキリスト教とは厳密には違うイタリアのクリスマスでは、もっとイタリア的なビスケットが求められます。
というわけで『クチーナ・イタリアーナ誌』が考えたのが、イタリアのビスコッティというテーマ。

いい機会なので、イタリアの地方料理にはどんなクッキーがあるのか、見てみます。

地方料理感は皆無のクリスマスのジンジャークッキー↓

1品めはストレーザのマルゲリータ。



ストレーザはピエモンテのマッジョーレ湖畔の落ち着いた観光地として有名な街。
ストレーザとマッジョーレ湖↓

マルゲリータは、ピッツァのマルゲリータでその名を知られるイタリアの王妃。
夫はイタリアの2代目国王で、ヨーロッパの社交界の真っ只中にいた人物。
マルゲリータ王妃↓



このビスコッティは、ストレーザのカフェ・ボロニャーロの店主のパスティッチェーレが、マルゲリータの最初の聖体拝領の記念に考え出したもの。
カフェ・ボロニャーノの動画はこんなのが見つかりました↓



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2021年9月9日木曜日

多分、年末はロマネスコがローマで一番売れる日。

イブの伝統的地方料理、ラストはローマの名物スープ、エイとブロッコリーのミネストラ(リチェッタは今月の日本語解説P.24)。
エイは、質素な食材の代表選手で、このスープもマーグロな日、つまりイブの典型的な1品。
ブロッコリーはもちろん、ロマネスコのこと。
手に入りにくい地元の特産品を使う地方料理が多い中で、手に入りやすく家計にも優しい食材で作る料理。
下はローマのビッツァのカリスマ、ガブリエーレ・ボンチのチャンネルにアップされた動画です。
ノンナ・ローマの昔ながらの味のリチェッタだそうです。
エイとロマネスコのミネストラla zuppa broccoli e arzilla

ぶっといスパゲッティの束を手で折るおばあちゃん。かっこいいっす。
ローマのレストランでは、イブだけでなく一年中出しているので出会う機会も多そうな料理。

イブ当日に、今晩は何を食べますか、とインタビュー↓
市場に買い物に来る人たちは伝統を守った料理を食べているみたい。

2018年のボローニャの家庭のイブの料理作り↓
メインはバッカラ。

ナポリのイブの伝統料理と言えば、スパゲッティ・ボンゴレ↓


2021年9月8日水曜日

安い食材の象徴、豆も、イブのマーグロなチェーナの1品になる。

今日のイブの地方料理は、“ひよこ豆のイン・ジミーノ”です。
リチェッタは今月の日本語解説(CIR)P.22。

リグーリアの料理です。
リグーリアは、地方料理書の傑作『テイスト・アンド・トラディション』(売り切れました)によると、アルプスとティレニア海にはさまれた虹の形の州、だそうで・・・。この表現、外国人にリグーリアがどう映っているかがよく分かりますねー。ものすごい憧れの地感。

発祥の地のジェノバは、古くは極東との交易で栄えた街で、後にスペイン王から支援を受けたコロンブスがアメリカ発見の旅に出た地です。
ジェノバ港↓

当時のジェノバは、海洋共和国として、アマルフィ、ピサ、ベニスと並ぶ強国でした。
でも、リグーリアの食事は、羊とうさぎが中心で、海と山に挟まれた僅かな土地を耕した畑でオリーブを栽培する農民料理で、エキゾチックな異国の食文化とは全く無縁。
ただ、大きな港があったので、豆や穀物の集積地でした。
そういえば、リグーリアにはひよこ豆の粉の名物料理、ファリナータがありましたね。
ユニークな家庭料理の本、『マンマミーア

には、“ひよこ豆のズッパ”にはこんなアドバイスがあります。
「チェーチは安い豆で、乾燥していると石みたいに硬いけど、前の日に戻してから煮ると、王様の食べ物になるんだよ!」

ひよこ豆のイン・ジミーノceci in zimino↓

ファリナータ↓


貴重な州別の地方料理書、“グリバウド・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”の『リグーリア』には、港で穀物を倉庫まで運ぶ労働者は、途中でこぼれ落ちた豆を自分のものにしてよいとされていて、こうして集めた豆で作るミックス豆のスープが港の名物料理になっていった、とあります。
豆は貧しさの象徴のような食材だったんですね。そういうものを工夫して美味しい料理にするのがイタリアの地方料理。

豆料理はトスカーナの得意分野。トスカーナ人の豆好きは有名で、“マンジャ・ファジョーリ”とからかわれるほど。

トスカーナ風ひよこ豆のズッパ↓




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生ハムの一番美味しい部位はガンベレットこと端っこ。

生ハムやパルミジャーノを、パルマの食文化の観点で見ると・・・。 食の都パルマのシェフが語るパルマの食文化 これはアルタ・クチーナとしてのパルマ料理ですね。 もう少し庶民的な、パルマの日曜日の家庭のプランゾの場合、スタートは、クラテッロ、パルマの生ハム、コッパ、ストロルギーノなどの...