2018年9月28日金曜日

カルロ・クラッコの子羊のレバーのたこ焼き

さて、アブルッツォの羊版焼き鳥、アッロスティチーニですが、
カルロ・クラッコの地方料理

には、こう書かれています。
クラッコシェフは、羊肉の串焼きをどう料理するのでしょうか。

アッロスティチーニは、羊肉の角切りを串に刺して炭火で焼いた山の料理だ。
現在では子羊肉も使うが。
羊肉は本物のアブルッツォ料理の食材だ。
それと同時に山の食材でもある。
もう1つの典型的山の食材、それは内臓だ。
私のアッロスティチーニにも子羊の内臓を使う。
もちろん、1本の串に肉と内臓を刺して焼くのではない。
肉と内臓(トリッパ、腸、レバー、胸腺)は別々に串に刺す。
私はこれにパプリカで香りをつけた濃厚なアブルッツォ産オリーブオイルのペーストを添えるのが好きだ。


リチェッタを見ると、肉は羊や子羊のもも肉。
内臓はビネガーを加えた湯で下ゆでして小さく切り、セージ、パンチェッタと交互に串に刺します。
これを軽い炭火でオレンジ色にならないように焼きます。
直接グリルに串を載せてもいいですが、子羊とよく合うアロマのハーブ、タイムの束を網にのせてその上に串をのせて焼いてもいいでしょう。
2~3分で火が通ります。
ソースはパプリカ、オイル、水を撹拌したペーストです。


前回、キタッラのリチェッタで子羊の骨で取ったフォンドからラグーを作るリチェッタを紹介しましたが、クラッコシェフも、この料理の切り落としをバター、にんにく、玉ねぎで炒めてフォンドかブロードを加え、1時間煮てラグーにしたものをキタッラのソースにすることを勧めています。

本で紹介されているもう1品のアブルツォ料理は子羊のレバーのフリッタータです。
クラッコシェフにはアブルッツォ出身の同僚や友人がいて、それでこのマイナーな地方の料理もよく知っているのだそうです。

初めてオステリアで食べた時は、何のフリットかわからずに、子羊の内臓だと知った時には驚いたそうです。
でも、今まで食べたことのあるフリットとはぜんぜん違う味と姿で、深く記憶に刻まれたそうです。

彼はこれに独自のアレンジを加えて、シリコンの半球型を使うことにしました。
そしてさらに深く考察していくうち、どうもこれは日本のフリッタータが原型なのでは、と考え出します。
四角い鋳鉄に木の取手がついたフライパンで、底が半球型になっているもので焼きます。
あ、そ、それはあれですね。
シェフは家に新品のものがあるけれど、一度も使ったことはない、と告白しています。

たこ焼きならぬ、子羊の内臓焼きだー。
イタリアの人にとっては、あれはフリッタータの一種なんですね。

本を読む限り、彼はたこ焼き食べたことないのではと思うのですが、子羊のレバーのフリッタータは、たこ焼き器を使って作ります。
アブルッツォのオステリアで食べたフリッタータにとりつかれた彼は、たこ焼きをイタリアンのアルタ・クチーナにアレンジしてしまったのでした。

リチェッタはちょっと複雑ですが、読んでるだけで美味しそう。


ほんとこの人の本は面白いわ。
料理のことを語りだすと止まらない。




クールにしたいならエシャロットを使う』もお勧めです。





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2018年9月26日水曜日

アブルッツォの農家料理の定番、パロッテ・カチェ・オーヴェ

アブルッツォ料理を調べていたら、cac'e ove/カチェ・オーヴェという料理に出会いました。

動画も色々ありました。
特に“パッロッテ・カチェ・オーヴェ”という料理がアブルッツォ名物のようです。

パッロッテとはポルペッテのこと。
カチェ・オーヴェはチーズと卵。
パン粉とおろしたチーズ、卵のダンプリングです。
見事なまでに質素な農家の家庭料理の食材。
これをアブルッツォではどんな料理にするのでしょうか。
 ↓


質素な食材だけでできているとは思えない。

スローフードのオステリエ・ディ・イタリア

にはモリーゼ(!)のリチェッタがありました。

“パッロット・ディ・パーネ”
PALLOTTO DI PANE

材料/4人分
 パンのクラム・・150g
 小麦粉
 イタリアンパセリ・・1房
 卵・・1~2個
 牛乳・・1カップ
 ペコリーノ・スタジョナート・・200g
 塩
ソース;
 トマトソース・・300g
 玉ねぎ・・小1個
 にんにく・・1かけ
 ペコリーノ・スタジョナート
 EVオリーブオイル、塩

・パンを崩して牛乳に浸す。
・玉ねぎをみじん切りにしにんにくと一緒にソッフリットにする。
・トマトソース、塩一つまみを加えて蓋をして弱火で20分煮る。
・チーズをおろして軽く溶いた卵に加える。
・よく絞ったパン、塩一つまみ、イタリアンパセリのみじん切りも加えてこね、柔らかくて腰のある状態にする。柔らかすぎる時は小麦粉少々を加える。
・手で小さく丸めて小麦粉をまぶす。
・香りが強すぎないたっぷりの油で揚げる。
・シートに取って油を切る。
・トマトソースにパッロッテを入れてよく混ぜ、10分なじませる。
・仕上げにペコリーノを散らす。

そう言えば、『カルロ・クラッコの地方料理』には、

マイナーなアブルッツォ料理は何が紹介されているだろうと思って見てみたら、意外なことに“アッロスティチーニ”が取り上げられていました。
この羊版焼き鳥を、クラッコシェフはどう料理するのでしょうか。
訳は次回に。


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2018年9月24日月曜日

アブルッツォのリストランテとオステリア

アブルッツォの要チェックレストラン。
その1、ヴィッラ・マイエーラ。

地方料理とアルタ・クチーナが出会ったティナーリ一家の店。
14室のエレガントな客室付きのホテル・レストランです。




アブルッツォと言えば、ディ・チェッコ。
ディ・チェッコが企画した各州の有名なシェフのパスタを紹介する本、『パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリア
で、アブルッツォのシェフとして紹介されているのが、このヴィッラ・マイエーラのシェフのペッピーノ・ティナーリ。

アブルッツォの魅力的なもてなしを体験できる素敵な店。
昔ながらの懐かしさのある伝統の味を、現代の最先端の食材で再現しています。

本のリチェッタを訳してみます。

“子羊のラグー・ビアンコ、セイボリー風味のキタッラ
chitarra al ragù bianco di agnello al profumo di santoreggia

材料/6人分
 マッケローニ・アッラ・キタッラ・・500g
 子羊の肩か首肉・・600g
 子羊の首の骨・・200g
 葉玉ねぎ・・80g
 セロリ・・50g
 ローリエ・・1枚
 セイボリー・・2枝
 にんにく・・1/2かけ
 EVオリーブオイル・・150ml
 白ワイン
 野菜のブロード・・1L
 塩
 完熟トマト・・3個
 にんにく・・1/4かけ
 EVオリーブオイル・・100ml
 削ったペコリーノ

・ソテーパンに油を熱し、骨をじっくり焼く。葉玉ねぎとセロリのみじん切り、潰したにんにくを加えて炒める。
・次に1cm角に切った肉、ローリエを加えてワインをかけ、アルコール分を飛ばす。野菜のブロード少々をかけながら45分煮る。
・骨を取り除いて塩味を整え、セイボリー少々を加える。
・にんにくと油を熱し、皮と種を取って小さく切ったトマトを加えて10分煮る。塩味を調え、裏漉ししてクリーム状にする。
・パスタをゆでて子羊のソースであえる。
・皿にトマトのクリームを注ぎ、その上にパスタを盛り付ける。セイボリーとペコリーノの薄片で飾る。

コロコロの子羊肉の存在感があるパスタです。
子羊のフォンドで作るソースも濃厚そう。

子羊というと、ローマのアバッキオが有名ですが、ローマのアバッキオはほとんどがサルデーニャ産。
ペコリーノ・ロマーノもサルデーニャ産、という厳しい現実がありました。
ところが、山を挟んで反対側は、子羊料理のパラダイスがまだ現存していそうです。

スローフードの『オステリエ・ディ・イタリア2017

によると、ラクイラのオステリア・ディ・アンティカ・ムーラの子羊料理はこんな料理。

子羊のカーチェ・オーヴェ
Agnello cac'e ove

材料/4人分
 子羊のももか肩肉・・1kg
 卵・・3個
 ローズマリー・・1枝
 レモン・・1個
 ペコリーノ・スタジョナート・・50g
 EVオリーブオイル
 塩、こしょう

・肉を小さく切る。油とローズマリーで焼いて塩、こしょうする。
・卵を溶き、おろしたペコリーノとレモン汁を加える。
・これを子羊のソテーパンにかけて全体が固まるまで素早くマンテカーレする。
・熱した皿に盛り付けてすぐにサーブする。

※別名“子羊のブロデッタート”とも呼ばれるアブルッツォの(復活祭の)名物料理。
ソッフリットににんにくを加えたり、肉に白ワインをかけるなどのバリエーションがある。

これはフリカッセのアブルッツォ版。
アブルツォではカーチェ・オーヴェ(cac'e ove)と呼ぶのですね。
チーズと卵ですね。

カーチェ・オーヴェの話、次回にづきます。


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2018年9月21日金曜日

焼き鳥の羊版、アブルッツォのアッロスティチーニ

今日はアブルッツォ料理の話。
「総合解説」のグルメ旅がアブルッツォなので。

さてと、アブルッツォ料理といえば、キタッラ。

そう言えば、アブルツォは1963年まではモリーゼと一緒で1つの州だったのでした。

「山と平野と海があって、移牧の伝統があり、シーフードや子羊、仔山羊料理が名物」と、地方料理の個性的なロングセラー、

クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジにはあります。



さらに、地方料理には質素な食材を使うものが多く、野菜はアブルッツォはじゃがいもが名物。他にはサフラン、オリーブオイルが世界的に有名。
パスタを大量に消費する、といった南イタリア特有の食文化の特徴もあります。
ディ・チェコはアブルツォが誇る世界的パスタメーカー。

個人的には食べたいアブルッツォ料理ナンバー1は、羊肉の串焼き、焼き鳥の羊肉版、
アッロスティチーニ。
 ↓


この煙が美味しそう!
串も炭も中国からの輸入品だそうです。

アブルッツォの最後の羊飼いが語る“移牧”
牛の移牧とは、ちょっと違いますね。
 ↓


サルデーニャの羊飼いの世界が舞台の映画、『パードレ・パドローネ』を観て以来、羊飼いが素晴らしい自然に囲まれたのんびりした仕事だなんて、とても思えなくなってしまいました。
でもアッロスティチーニは単純に美味しそう。
リチェッタを訳した“ペルチャテッリ”は、アブルッツォ版ブカティーニ。
ナポリ発祥のパスタが違う名前で広まっているのをみると、アブルッツォは地理的には中部イタリアに属するけれど、食文化は南に近い、複雑で興味深い地方のようです。



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2018年9月19日水曜日

地方料理のシリーズ本

ニュートンの地方料理シリーズを、久しぶりに更新したら、新シリーズの表紙が料理の写真に変わって、とても賑やかになっていました。

クレアパッソのニュートンのページはこちら

このシリーズは、何度もデザインを変更しながら、昔から続いてきました。
表紙を頻繁に変える割にはリチェッタは一切手を加えず、頑なに昔のままという、
頑固な職人気質のシリーズです。

魚料理を集めたディ・マーレ・シリーズの次に売り出したのが、アンティパスト、パスタ、ドルチェというテーマで集めたシリーズ。

あとは野菜とカルネが出れば、コンプリート。

それにしても1000点のリチェッタというのは相当な数です。
他の地方料理のシリーズ書との大きな違いは、この数。
リチェッタと比べると写真の数は少ないですが質はいいです。

質と言えば、表紙がふかふかな仕様なのはなぜでしょう。
表紙だけは100年もつように作ってあります。

一方、ニュートンとは対象的なのが“グリバウド”シリーズ。
数をぐっと絞って、基本的な料理をコンパクトにまとめています。
シリーズを全部揃えても本棚の一角を埋めるだけ。
手軽で手に取りやすいいいシリーズですが、売り切れ間近です。


さらに、新入りの“イン・クチーナ”シリーズは、
リチェッタにも写真にも惜しみなくお金をかけた、とても豪華な本。

英語とイタリア語の2カ国語版で、世界中で売ることを念頭に作られています。
大力作。

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2018年9月17日月曜日

ヴィテッロ・トンナートじゃなくてトンノ・ヴィテッラート

今日のお題はヴィテッロ・トンナート。
いや、正確に言うと、トンノ・ヴィテッラート。

なんじゃこりゃ、と思いますよね。
ヴィテッロ・トンナートのバリエーションの話をする時、イタリア人の心に必ず浮かぶダジャレが、これなんですわ。
以前にも訳したことがあるんです。このどーしようもないダジャレ。

マグロのソースをかけた子牛肉があるなら、子牛のソースをかけたマグロがあってもいいじゃん、
というか、ゴロが面白ければ、味なんてどうだっていいじゃん、というラテン系なノリが見えるこのネーミング。

今回も、大真面目に訳しちゃいましたよ。
総合解説」2016年5月号P.15をご覧ください。

動画もちらほらあります。
 ↓



それにしても、tonnoやvitelloの語尾に~toをつけると、食材がソースに変わるのって、便利だなあ。
解説に載せたもう1品は、鴨の胸肉のアグルマータ。
agrumiは柑橘フルーツのことだから、レモンやオレンジのソースです。
でも、これはダジャレじゃなく、柑橘フルーツのミックスジュースのことをアグルマータというのでした。
 ↓



もう1品の七面鳥のヨーグルトソースはヨーグルタートじゃなくてアッロ・ヨーグルトallo yogurtでした。
ひょっとしたら、トンナートというのは珍しい言い方なのかも、
と思って他の名前を探してみたら、意外と~toとい言い方はなかった・・・。
トンノがたまたまトンナートに変化させやすい言葉で、
ヴィテッラートは、言ったもん勝ちのダジャレだったんですね。

お口直しに、市販のマヨネーズを入れない伝統的なリチェッタのヴィテッロ・トンナートをどうぞ。
この料理はフランス料理ではなく、ピエモンテ料理だったんだなあ。
 ↓


ゆでないので肉がジューシーに仕上がります。
ソースの油分は少量加えるだけ。
盛り付けも斬新で、別の料理のようですね。

お勧めの料理書は
スローフードの『オステリエ・ディ・イタリア2017




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“ヴィテッロ・トンナートのバリエーション”の記事の日本語訳は「総合解説」2016年5月号に載っています。
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2018年9月14日金曜日

パスタのお焼き、トルテッリ・アッラ・ラストラ

訳して以来、気になっていた料理、“石板焼きトルテッリ”。

聞いたことのないパスタだったので、動画もないだろうと思っていたら、意外とあって、ちょっと意外。
ひょっとして、知らなかったのは私だけ?
こんなパスタです。
 ↓


何も知らないと、この動画を見ても???ですが、『サーレ・エ・ペペ』の記事では、このパスタが誕生したいきさつを詳しく説明しています。
なるほどの歴史があったのです。

ちなみに上の動画は、「総合解説」で、「毎年石焼きトルテッリの祭りが開かれる町」と紹介されているアレッツォ県のコレッツォのもの。

さらに、蛮族が超えたというトスコ・ロマニョーロの山脈はこんな感じ。
 ↓


この地方の羊飼いが移牧の時に用いる調理方法が、石板焼きトルテッリ。

鍋に水を張ってゆでるよりは、このあたりで取れる砂利まじりの石の板を熱してその上で焼いたほうが簡単なのか。

これは一種のお焼きですね。

お焼きは餡を生地で包んで焼きますが、このトルテッリも、詰め物はトマトソース入りマッシュポテトで、餡という言葉がぴったり。

祭りには欠かせないストリートフードだそうで、これはぜひコレッツォで食べてみたい。
それにしても、ここまでどうやって行くのでしょうか。

去年の祭りの告知
 ↓




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“石板焼きトルテッリ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2016年5月号に載っています。
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2018年9月12日水曜日

春のジェノヴァ料理とスペッツァティーノ

総合解説」2016年5月号発売しました。


5月号の記事なので、春の料理が中心です。
イタリア料理は、夏はシチリア、秋はピエモンテ、冬はヴァッレ・ダオスタというイメージがありますが、春はリグーリア、中でもジェノヴァなんですねー。

最初の記事、“ジェノヴァのホームパーティー”は、ジェノヴァの伝統料理を取り入れた春のメニュー。
それにしても、ラッテ・ブルスコ、フリッシェウ、コンディッジョン、シュメッテと、聞いたことがない料理ばかりでした。

リグーリア料理、まだまだ開拓されていないですね。

もちろんリチェッタには松の実のソースのコルゼッティもあります。



地方料理はトスコ・ロマニョーラ地方の石板焼きトルテッリ。
知ってましたか?
焼きパスタです。
以前に揚げパスタ(プーリアのチーチェリ・エ・トリア)を紹介した時も、パスタにはすごい種類があると感じたものですが、石焼きは想定外でした。
何十年やっていても、新しいパスタとの出会いがあります。

フレッシュチーズも春を感じさせる食材なんですね。
でも、白いソフトチーズを白い皿にのせて白いテーブルの上で撮影する感性、理解できない。
写真がほぼ真っ白なんですけど(汗)。

ソラマメとサラミは、この季節の定番の組み合わせで、毎年記事に登場する度に、イタリア人どんだけ好きなんだろうと思っていました。
カルボナーラに入れたり、ピッツァのトッピングにしたりと、応用方法も無限にあります。

スペッツァティーノは、「春の」と季節を限定。
主役は白肉と春野菜です。

ワインも白肉のスペッツァティーノに合うワインの提案。

「豚肉・赤玉ねぎ・ソラマメのビネガー煮」に組み合わせるのは、
カラブリアのテヌータ・デル・コンテのチロー・ロッソ・クラッシコ・スーペリオーレ。




訳した料理書は『グランディ・クラシチ』の肉のセコンド12品。


国民的イタリア料理の肉料理をほぼ全部訳しました。
スペースの関係で載せられなかったのは、サルデーニャの『子豚のロースト』。



全部は紹介しきれません。
今月も盛りだくさんです。
詳しくはこちらのページで。

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2018年9月10日月曜日

エトナ山麓の旅、カターニア

今月のグルメ旅はエトナ産の麓。
これまでにも度々登場している地方です。
近年、注目度がかなり上がっているようです。

ビジュアルガイドのまず最初は、訳していて、ごめん何言ってるのかわかんない、状態だったのが、
イカ墨のリゾットとリコッタを噴火しているエトナ山の形に盛り付けたripiddu nivicatu。
そもそも読めないしね。
意味は雪をかぶった火山。

ネットで調べると、シチリアの有名料理だそうですよ。

こんな料理

インスタばえっ、ちゅーやつじゃないの。

読めないと言えば、nから始まる、ncaciata。

どちらもエトナ産の麓の美食の街、カターニアの名物パスタです。

他にも、青魚の稚魚のパスタpasta con il muccu、
豚肉とレモンのジェラティーナ zuzzu、
など、面白そうで発音が難しそうなものが一杯。
「総合解説」に写真は載せたけれど、解説しないとちょっと分からないのが、カターニアの守護聖人に捧げられたドルチェのサンタガタのミンネ。

聖アガタはカターニアの有名な殉教者。
乳房を切り落とされるというとんでもない拷問を受けます。
衝撃的だったゆえか、多数の伝説が生まれ、
病いからの再生のシンボルとされて、熱い宗教心を捧げられるようになりました。
乳がんの守り神とされるのも納得です。
乳房をかたどったドルチェも、看護婦などの、見守って支えてくれる愛情を表現した、究極の母性の表現。
「総合解説」に写真を載せたものは、素朴で優しくて美しいミンメ。




種明かしをすれば、カッサータの一種ですが、カターニアの守護聖人に捧げられたこのドルチェは、カターニアで食べてこそ。

エトナ山の麓をぐるっと走るチルクメテネア鉄道は、こんなに立派になっていました。
ビックリ。




エトナ山の麓巡りも楽しそうです。


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“グルメ旅~エトナ山麓”の記事の日本語訳は、「総合解説」2016年4月号に載っています。
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2018年9月7日金曜日

ヴェローナ、カーサ・ペルベッリーニ

今月の「総合解説」の二人目のシェフは、ジャンカルロ・ペルベッリーニさん。
ヴェローナのカーサ・ペルベッリーニのシェフです。

この記事で一番目を引いたのは、1品目の料理名。

suschi di maccheroni・・・/マカロニのスシ
とありました。

しかもソースはpesto di alga nori/海苔のペスト(と、わさびマヨネーズ)

です。

さて、どんな料理を想像しましたか?
2016年4月号の『ガンベロ・ロッソ』に載った記事でした。
2年前の記事ですが、オープンはその2年前の2014年。
現在は注目度がもっとアップしているよう。
すごい勢いで注目されてきたようです。
この1年くらい前のミラノ万博の頃から、イタリア人の日本料理への関心は、目に見えてた高まってきたように感じます。
しかも以前は、観光で日本を訪れて日本料理に初めて出会った、といった印象が強かったのですが、その専門色はどんどん強くなっています。
この料理は、ちょうどその両方を足して割ったような料理です。

カーサ・ペルベッリーニの繊細な料理。
 ↓


シェフのジャンカルロ・ペルベリーニとマグロのパスタ。
 ↓


マグロは可能だったらpinna blueを使うと言っています。
ピンナ・ブルーはタイセイヨウクロマグロのことです。
今では絶滅の危惧や世論から、入手はさらに難しくなっていることでしょう。
しかも、その上におろしかけているのはマグロのボッタルガ。
これも近年、お目にかかりません。

下ごしらえは、ミニトマトの皮を湯むきして小さく切ります。
玉ねぎは薄い輪切りにして塩とバター、油を加えて崩れない程度に柔らかくなるまで炒めます。
マグロはスカロッパに切って塩をし、片面だけさっと焼いてスライスします。
これにおろしたボッタルガとこしょう、オイルをかけます。
パスタをゆでている間に、にんにくと唐辛子少々をオリーブオイルで炒め、香りが立ったらミニトマト、野菜のブロード、トマトソースを加えて炒め煮にして、にんにくを取り除きます。
ここにゆでたパスタを加え、少量のオリーブオイルをかけてマンテカーレします。
皿にマグロを盛り付け、中央にレードルとトングを使って巻いたスパゲティを、横にしてトングを抜く方法で楕円形に盛りつけます。
最近トレンディーになっているお手本のようなパスタの盛り付けです。
その上にミニトマトのソースを縦長にのせます。
さらに玉ねぎをのせ、その上にマグロをのせてシブレットを散らします。

ちなみにイタリア料理の普通のツナのスパゲッティはこんな1品。
 ↓


この違いがミシュランの星付きシェフの料理と家庭料理の違いなんでしょうか。

とにかく、ペルベッリーニシェフ、繊細な料理というものを理解していますねー。

マカロニの寿司のリチェッタは、「総合解説」2016年4月号を御覧ください。

リストランテ・カーサ・ペルベッリーニのhpはこちら

グラン・シェフのパスタの力作を集めた本、『パスタ・レボリューション』もお勧めです。



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“ジャンカルロ・ペルベッリーニ”シェフのリチェッタは「総合解説」2016年4月号に載っています。
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2018年9月5日水曜日

入門編でもやけに本格的な本

もうすぐ発売の次号の「総合解説」には
グランディ・クラシチ
のリチェッタの翻訳を載せました。

国民的イタリア料理を集めたこの本は、協力がイタリア郵便局です。

郷土愛の強いイタリアで、国民的イタリア料理を決めようと思っても、みんな地元の料理が一番、と言うに決まっています。
単純な人気投票では、人口の多い大都市が断然有利。

そんな時、イタリア全土を網羅している郵便局が投票に協力すれば、田舎の過疎地の声も取り上げやすいはず、というナイスなアイデア。

確かに、選ばれた料理はどれも対等な扱いです。
例えば、今回はセコンドピアットを中心に訳しましたが、本に載っている最初の料理は
ヴァッレダオスタ風フォンドゥータ。
 ↓


確かに、南イタリアの人も国民的イタリア料理と認めるに違いない料理。
フォンドゥータは、イタリアだけでなく、フランスやスイスでも広まっている多国籍料理。
国民的イタリア料理の中には、明らかに外国から伝わった料理もありました。
例えば、ゴリツィア風グーラッシュ。



これはトマトとパプリカ入りビーフシチュー。
イタリア料理にシチューという名前は定着しなかったけれど、グーラッシュが、発祥地ハンガリーからイタリアで一番近い州、フリウリ・ヴェネチア・ジューリアで広まって、結局イタリア料理に取り込まれたのには歴史を感じますねー。

国民的イタリア料理を1冊に集めた『グランディ・クラシチ』は、イタリア料理の入門編、とも言える本です。
もう1冊、不思議な魅力を持った入門編の本があります。











イギリス人が著者なのに、イタリアでロングセラーのイタリア料理の本、です。

最初に紹介されているのが、野菜の前菜、シーフードの前菜、肉の前菜、クロスティーニ、ブルスケッタ、ズッキーニの花のフリット、バーニャ・カウダ、カルパッチョと、
イタリアンレストランではおなじみでも、地方料理書では一緒に並ぶことがない、無国籍、かつインターナショナルなイタリア料理。

野菜のグリッリアータ・ミスタ、オーブン焼き、オイル漬けの盛り合わせを一番最初に紹介する本。



この本がイタリアで売れている理由がなんと何分かります。
地方の伝統料理とレストランで食べたいイタリア料理は、きっと微妙に違うんですね。
この本で取り上げている料理は、一見するとイタリア料理だけど、よーく見るとインターナショナル料理。
入門編の料理の間に、うずらのぶどうの葉巻きローストなど、やけに専門的な料理が混ざっています。
一番最初のセコンドは、子豚の骨付き背肉のミルクロースト。



実は子豚のローストはサルデーニャ料理の国民的イタリア料理。
『グランディ・クラシチ』にも載っていました。


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2018年9月3日月曜日

「総合解説」のレストランとショップ情報

今日はナポリのレストラン、ティンパニ・エ・テンプラの話。

この店の名前、かなりインパクトありますよね。
総合解説」を作ってかなりたつのですが、その当初から、この店の名前を訳していたことを記憶しています。

今回の記事によると、1987年オープンだそうですよ。
もう30年前の話だったんですねー。

「総合解説」では、レストランやショップの情報は、なるべく訳すようにしています。
私自身、イタリアで食べる店を探す時は、いつも「総合解説」の情報を頼りにしていました。
イタリアで食べ歩きする時に、日本発の観光客向けの情報ではなく、イタリア発のグルメなイタリア人向けの情報で店を選びたかったからです。

実際に行ってみて、今までで一番記憶に残っているレストランは、ローマのユダヤ料理の記事で紹介された店です。
ローマ料理にとって、内臓料理とユダヤ料理は大きな柱。
ユダヤ料理の店なんて、興味はあっても想像もつかなかったのですが、イタリアの料理雑誌じゃなきゃこんな特集組まないですよ。

記事を頼りに探し出して入ってみて、周囲の客を見渡す余裕も出てきた頃、あることに気が付きました。
男性客が全員、頭の後ろに小さな帽子をのっけているんです。
ニュースなどで見たことがある、どうして落っこちないのか不思議なあの小さーな帽子です。

ローマのユダヤ人街は、観光地の真ん中にあるので、観光客がいっぱいいる店だろうと思っていたら、ど直球のユダヤ人向けレストランでした。
観光客らしき外国人もいましたが、彼らもユダヤ人でした。

トスカーナのワインを頼んだら、ラベルがへブライ語でした。
ユダヤ教ではユダヤ教徒が作ったワインを飲む、異教徒が触れたワインは飲まない、なんてことを知ったのは、旅行から帰ってからでした。
なにしろ体験が強烈過ぎて、激しく興味を持ち、遅まきながら調べてみたのです。
それにしても、その時はすべてが驚きで、ドキドキしながら食事をしました。
これが普通のイタリア人向けの記事なんだから、他の記事も当然、超ディープです。

ローマのゲットー
 ↓


観光客にとっても魅力的。

もう1軒、8年前、ヴィッサーニが仕入れているブッラータの店がプーリアのアンドリアにあるという記事があったので、その店に行った時も、超面白かったです。
そのチーズ屋は、常にお客で店がいっぱいの大繁盛店。
店員は頑固な職人気質で愛想は皆無。
ブッラータの注文の仕方も知らないド素人が買いに行くと、店員とお客が総出で、絶対冷蔵庫に入れてはいけないよ、と何度も念を押され、その日はブッラータが入った袋を持ちながらプーリアを歩き回るというハードな1日になりました。

でも、冷蔵庫に一度も入れないブッラータの味は、格別でした。
バターに生クリームが溶け込んだような濃厚でフレッシュなあのブッラータは、ぜひ、食べてほしいなあ。

どちらの店も、一生記憶に残る出来事になりました。

こんな風に、「総合解説」のレストランとショップ情報は、実は超ディープなんです。
強烈な異文化体験ができる情報源としてもお薦めです。

そんなレストラン情報で30年前から気になっていた店、ティンパニ・エ・テンプラ。
シェフの奥さんが日本人なのかな、ぐらいにゆるく考えていましたが、違いました。
この店名には深い意図があるそうです。

まず、ティンパニはマカロニを使ったカンパーニアの修道女の古い伝統料理でした。
シチリアではティンバッロと呼ばれる料理の一種です。
店ではこれを小さな一人前サイズにして、さらに生地で包んでテイクアウトできるようにしていました。
リチェッタは「総合解説」にのせています。

テンプラは、ナポリのストリートフードとしての揚げ物に、日本のテンプラからインスピレーションを受けた軽い揚げ物のテクニックを取り入れていることを表明している、とても高度な専門技術を持つ自信に満ちた名前だったのです。

ティンパニ・エ・テンプラ
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という訳で、
総合解説」は強烈な異文化体験をしてみたい人にもお勧めです。


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“アントニオ・トゥベッリ(ティンパニ・エ・テンプラ)”の記事の日本語訳は
総合解説」2016年4月号にのっています。
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生ハムの一番美味しい部位はガンベレットこと端っこ。

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