2019年11月30日土曜日

ピエモンテのヘーゼルナッツ

イタリアにトリュフを食べに行く人は、行く前に少しでもピエモンテ料理の知識を仕入れていって欲しいなあ。

ピエモンテはイタリアを代表するグルメな地方。
チェレット社が企画したリストランテ、
(というか、ピオーラとはピエモンテの言葉でオステリアという意味、地元の伝統料理とワインを出す店のこと)、ラ・ピオーラでは、
店の黒板にランゲの最も重要な料理が20品、書き出されている、というので
(黒板の写真はこちら)
見てみましたが、典型的なピエモンテの代表的料理ですね。


典型的なピエモンテ料理を集めた本、グリバウド・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズピエモンテ』
多分、ピエモンテ料理のイタリア料理としての知名度は低そう。
でも、ピエモンテの食べ物で、日本全国に行き届いているものもあるんです。
近所のスーパーには必ずあるし、なにしろ味が最高。
私にとってはトリュフやワインとは比べ物にならないほど、一番身近なピエモンテです。
そう、あれ、ヌテラです。
ピエモンテの話をすると、必ずねじ込みたくなるんです。
まあ聞いて下さい。

世界中で人気。
とりあえず、ナポレオンからムソリーニまで出してすんごいPR

元々は、ピエモンテの伝統的なドルチェ、ジャンドゥイオット用のカカオがナポレオン戦争で不足した際にカカオの代用品として使われたというのは有名なヌテラの歴史のエピソード。

ヌテラの原料はヘーゼルナッツnocciola。
そしてピエモンテは上質ヘーゼルナッツの大産地。
このヘーゼルナッツのおかげで、他のチョコレートクリームとは段違いに美味しいんですねー。

ちなみに先月の「総合解説」2017年9/10月号のメイド・イン・イタリーの食材はピエモンテのヘーゼルナッツでした。
で、まず、最も上質とみなされているヘーゼルナッツを紹介。
トンダ・ジェンティーリ・トリロバータTonda Gentili Trilobata、またはデッレ・ランゲdelle Langheという品種です。ノッチョーラ・ピエモンテーゼという名前でIGP製品にもなっています。





トンダ・ジェンティーレの主な産地はランゲ北部のクーネオ県。
トーストした後も味やアロマが長く続き、形が均一で皮をむきやすく、保存にも適している、などが最高と評価される要因。

さらにヘーゼルナッツの油を感じさせない甘さは料理にもよく合った。
というわけで、まずはランゲのヘーゼルナッツからピエモンテ料理に触れいてくなんてどうでしょう。
カファレルのジャンドゥィオット。
そうそう、ピエモンテは、ナポリ、シチリアに次ぐイタリアのドルチェ第3の地方。




庶民的なヌテラと比べると、やたらゴージャスなPV。


トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ1』では、ランゲ地方をドルチェ・ランゲdolce langheと呼び、へーゼルナッツの大きな写真をどーんと載せています。
次回はこのページP.55を訳してみます。
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クチーナ・プリエーゼ
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グイド・エ・グイド
トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ1

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2019年11月29日金曜日

トリュフに合うイタリアワイン

トリュフ、いや『サーレ・エ・ぺぺ』誌2017年12月号によると、トリュフという呼び方は廃れているんだそうです。詳しくは「総合解説」に日本語訳をのせましたが、トリュフじゃなくてタルトゥーフォだそうです。
さて、前回はバローロの話が出たところで、今日のテーマはワインです。
「総合解説」P.40にも訳をのせましたが、トリュフに合うワインの話です。

度々言ってますが、トリュフは香りを味わうもの。さらに、トリュフを使った料理をワインと組み合わせるとなると、料理に使われている他の食材との調和も考えないといけません。
これは正直言って、ソムリエのお薦めに従っといたほうが無難ですよね。
素人にはハードルが高すぎます。
チェッレットが見出した才能、アルバのピアッツァ・ドゥオモのエンリコ・クリッパシェフの白トリュフ風味のタリオリーニ。
アルバを訪れた人は結局この有名シェフのこの料理を食べて地元のワインを飲みます。



トリュフとワイン


例えば、トリュフにはミネラル風味があるんだそうで、重いワインの強い酸味やタンニンは注意が必要。
白トリュフと黒トリュフでは合うワインも違います。
そもそも、白トリュフと黒トリュフの香りの違いを、『サーレ・エ・ペペ』のソムリエさんは、こんなふうに表現していました。
白の香りは刺激的で酔うような強い香りだが、黒はもっとゆるやかで森の土や草の洗練された香りがある。

なにやら抽象的ですが、定番料理には同じ地元のワインが合う、という不動のルールは、トリュフの場合でも有効です。
トリュフの産地がイタリア有数のワインの産地というのも、すごい偶然。
最高の白トリュフと言われるアルバの白トリュフには、ピエモンテ南部のワインが、イタリア中部の白トリュフの産地として知られるアックアラーニャのトリュフには、ガヴィやペコリーノなどの白ワインが合います。

白トリュフに関しては、アルバの永遠のライバル、アックアラーニャ。


ピエモンテのワインと比べるとマルケのワインはマイナー感があるけれど、なかなか素晴らしいものがいっぱいあります。



珍しいペーザロ・エ・ウルビーノのワイン



ウンブリアなど中央イタリアの黒トリュフはグレケットのような締まった白やヴェルディッキオのような豪華な白が合います。

単純に強いワインと組み合わせてもだめ、ということはわかりましたが、ジビエの料理なら、バルバレスコやバローロが適しているそうです。

「総合解説」の中程には、年末年始のご馳走向けのトリュフ風味の料理のリチェッタも。
フォンドゥータのタリオリーニ(P.25)と組み合わせたのは、ヴァッレ・ダオスタのプティルージュを使ったジェルベール・ディディエのワイン。山の料理なら、ヴァッレ・ダオスタのものもあり。



トリュフをソースに使うときは生で散らす場合より影響が強いので、手の混んだ白トリュフ入りソースならヴェルメンティーノやロッセーゼが合うんだそうです。



難しいことはおいといて、ピエモンテの美味しいワイン飲みたい。



気がつけば11月も終わりですね。
そろそろ、年末年始の料理の話始めましょうか。
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“グルメガイドランゲ”と“トリュフに合うワイン”の日本語訳は「総合解説」2017年11/12月号P.42に載っています。
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2019年11月28日木曜日

ランゲのバロリストたち

きのう、バローロの畑100haはミラノのドゥオモ広場のアパートより高価、という話をしたところで、偶然にも、朝のテレビでミラノのドゥオモ広場近くのアパートが3億円、という話を耳にしました。
ランゲのワインメーカーたちの鼻息が荒いのも納得ですね。

で、バローロの醸造家たちのことをバロリストと呼ぶそうですが、彼らは半端じゃない起業家たちです。
美味しいワインを作りたいという思いからスタートして、ついにはバローロというテロワールを造り上げ、ランゲを世界遺産にして、ルレ、レストラン、ゴルフ場を経営してしっかりかせぐ一方で、新しいカンティーナも造って、バローロをますます魅力のあるワインにしています。
北イタリアではIT企業よりワイナリーのオーナーのほうが人気があるのでは・・・。

でも。バローロはのどかで美しい丘陵地帯です。




ピエモンテはイタリアでも南イタリアとはまったくの別世界。
人間も料理も気持ちの切り替えが必要なくらい違う世界。
この多様性がイタリアの偉大な魅力の一つ。



バロリストが最近熱心に取り組んでいるのが地元の食文化の継承。なかでもチェッレットは成功しているようです。



トップのブルーノ・チェッレット氏が『クチーナ・イタリアーナ』誌にちらっと語ってましたが、金額は重要ではないんだそうです。企画はワインから始まり、グルメ、アートへと広がっていくそうで、ドバイや香港のお金持ちがターゲットだそうですよ。見栄を張ると大変なことになりそう。
これだけ競争が激しいランゲで、ワイナリーがレストランを出して、しかも大成功を収めて、ミシュランでは3つ星を獲得し、世界中から客がやってくる人気店になりました。
その成功の最大の要因が、エンリコ・クリッパという優れたシェフを獲得したこと。



ラ・ピオーラは10年前にオープンした店。
地元の料理の継承を全面に出していて、黒板に書かれているのは、ランゲの最も重要な料理20品。
店のwebページはこちら



ランゲのバリバリ起業家のカンティーナが経営するアグリトゥーリズモカッシーナ・ブリック


いやーランゲは大富豪と一緒に行きたい場所ですねー。

おまけの動画はバローロのワイナリーに住み着いた野良猫の家族。
きっと美味しい餌には困らないね。
そのうち岩合さんが撮影に来るかもね。




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“グルメガイドランゲ”の日本語訳は「総合解説」2017年11/12月号P.42に載っています。
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2019年11月27日水曜日

イタリアで一番グルメな地方、ランゲ

トリュフの話題を取り上げながら、ずっとデジャブ感に付きまとわれていました。
そして、前回のブログで、トリュフに合うパスタを取り上げたとき、突然、思い出しました。
今月の「総合解説」、つまり2017年11/12月号のグルメ旅は、ランゲだったのです。
そして記事の中で紹介した料理が、インパクトが強烈で、一度聞いたら忘れられなくなる料理名だったのです。
この料理名を見た途端に、そうだ、と思い出したのでした。
その料理名、“卵黄40個入りのタヤリン、ポルチーニと白とトリュフのソース”。
ピエモンテを、いや北イタリアを代表するレストラン、グイドを世界的に有名にした料理です。
とても有名なので、ピエモンテに縁のあるイタリア料理人の方なら、説明するまでもないと思いますが、その店の本“グイド・エ・グイド”

は、彼らの目指した料理を伝える素晴らしい本でしたが、残念ながら売り切れました。
在庫がある本で、彼らの料理を多少なりとも伝えているのは、イタリア料理本の傑作、“トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ1”の北イタリア編のみ。


世界中の人がイメージする地中海からは遠く離れたピエモンテで、ナポリ人でもない彼らの店を、北イタリアを代表する名店にしたのは、このパスタでした。
本の表紙の端にちらっと写っている手の写真は、この料理(アニョロッテイ・デル・プリン)を数十年間打ち続けたリディア・アルチャーティの手。この写真が、この店の歴史を物語っているんですね。

リディア・アルチャーティ


彼女のリチェッタを受け継いだのが孫のウーゴ・アルチャーティ。孫の代まで有名にするってすごいことですね。



彼のリチェッタは「総合解説」2017年11/12月号に日本語訳を載せました。

このリチェッタが載っていた記事はイタリアで一番グルメな場所と言われるランゲのグルメ旅のガイドです。
ランゲはトリュフとバローロが出会う場所。食通のグルメにはなんとも魅力的な場所ですねー。
この記事によると、“”トリュフはトスカーナやエミリア・ロマーニャでも育つがランゲの白トリュフはずば抜けている”そうです。
季節でなくても、待てば品質は最高になり、価格も下がるのだそうですよ。
あせっちゃだめなんですね。価格は100g€500(EUROが安いこのご時世でも6万円!)程度していたものが€350程度になるそうです。2万円近く下がりますよ。
幸せになるには10gで十分だそうです。
なんと、素人には見分けがつきにくい2級品というのもありますし、香りを科学的に合成できるんだそうです。変なのに手を出さないでねー。

世界中の高級な逸品にはお金を惜しまないお金持ちが集まる場所なので、この時期、素人にはちょっと敷居が高い場所ですねえ。
しかも、最近では世界的な高級ワイナリーが一流料理人と組んで、様々な企画を発表するので、人気はうなぎのぼり。バローロの畑100haは、ミラノのドゥオモ広場のアパートより高価なんだそうで、景気のいいは話ですねー。
ちなみに、バローロの醸造家たちのことはバロリストbarolistiと呼ぶそうです。
フランス語のワイン用語にテロワールという難解な言葉がありますが、バローロはランゲのバロリストたちとランゲの独特な気候、テロワールが生み出したワインだそうです。
次回はバロリストの話。




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2019年11月26日火曜日

白トリュフの品種別解禁日

まあ定番と言えば定番ですが、イタリアで白トリュフ食べるなら、本場と言われるアルバで食べたい、とは誰もが考えること。
世界中からグルメがつめかける特別な産物なので、観光情報も充実してます。
ピエモンテ州の国際白トリュフ見本市のサイト(こちら)にいけば、なんでもわかります。
今日のテーマは、白トリュフをどう味わうか。
その前に肝心の品種別のトリュフの解禁日を調べてみましょう。
詳細はこちらのページ
白トリュフTuber magnatum Picoの解禁日は、2019年は9月21日~1月31日。
この期間以外は採れません。
この期間を過ぎていても、別の品種を探せば、何かしら見つかります。
例えば、上質の黒トリュフでフランス人に人気が高いネロ・プレジャートmelanosporumなら12月1日~3月15日。
9月1日~20日はすべての品種が完全に禁止の期間。
夏の間はサマートリュフ、別名スコルゾーネというのが採れます。

11月にピエモンテのアルバで白トリュフを食べようと決めたら、次はどうやって味わうのが一番いいのか。
イメージするのは、トリュフは香りを味わうということ。

料理に加える時の適量は白も黒も約9~10g。
触ったときに締まっていて、適度に熟しているものがよいそうです。
中の筋がはっきりしているものが熟しています。
購入後は1週間以内に食べます。

サマートリュフは季節が違うという印象のせいか、値段が控えめ、でも香りは強いのでお得なトリュフ。
サマートリュフの選び方。


スコルゾーネはピエモンテやカンパーニアで採れます。
ポルチーニやヘーゼルナッツの香りが特徴。
軽くスライスして中の状態を確かめます。
動画のトリュフは上質のものですが一般的には栗色と呼ばれる実が白すぎてまだ熟していません。
柔らかすぎるのもだめです。
タルトゥーフォ・エスティーヴォのタリアテッレTagliatelle al tartufo estivo


材料4人分
サマートリュフ(スコルゾーネ)100~120g
にんにく・・1かけ
卵入り生麺のタリアテッレ・・600g

たっぷりのEVオリーブオイル
・トリュフは土を丁寧に落としてスライサーでスライスし、飾り用に数枚残してジュリエンヌに切ります。
フライパンにオリーブオイル大さじ2.5×人数分とにんにく(皮つきでもよい)を入れて弱火で熱します。にんにくに色がついたら取り除き、トリュフと塩を加えます。
・さっとなじませて火を止めます。
・タリアテッレをアルデンテにゆでて取り出し、フライパンに加えます。
・ゆで汁も加えてなじませます。

白トリュフは加熱しない、黒リュフは加熱するという基本のルールがありますが、ゆでたてのタリアテッレに削ってかけると、ちょうどよく熱せられて香りが広がります。

タリアテッレやタリオリーニは白トリュフと組み合わせる定番料理なだけに色々リチェッタがあります。次回もっと見てみます。
中でも、ピエモンテ料理に多大な影響を与えた伝説級の名店、グイドのリチェッタは有名でした。

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2019年11月25日月曜日

イタリアで食べたい、白トリュフ編、トリュフ犬に癒やされる~。

プーリア料理の本を新発見して、話が思わずそれましたが、タルトゥーフォの話が始まったところでした。
総合解説」2017年11/12月号の“トリュフ”の記事を読めば、トリュフの基本的な情報はばっちり手に入ります。
イタリアには何種類もトリュフがありますが、そのおおまかな情報もコンパクトにまとまっていました。
まず、イタリアで最高のトリュフとみなされているのは、もちろん白トリュフ。
正確には学名で呼びます。
Tuber magnatum Picoです。




アルバの白トリュフ


最高の白トリュフの産地として知られるのが、ピエモンテ南部のアルバ地区、
(上の動画の舞台)やマルケのアックアアラーニャ地区です。

アックアラーニャの白トリュフ


アルバでもアックアラーニャでも、上質のトリュフの条件はアロマの強さ。

一方、黒トリュフの中で評価が高いのは、11月末から3月の間に熟す“ネロ・プレジャート”melanosporumと呼ばれるトリュフ。



ウンブリアのノルチャとスポレートの秋から5月にかけての特産品で、

ネロ・プレジャートほど高値にはならないのが、軽い土の香りがあるスコルゾーネscorzone。



活き活きと働くトリュフ犬たちに癒やされるなー。

動画は香りが伝わらないのが残念。

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2019年11月24日日曜日

プーリアのフォカッチャとピッツァのベースの生地

さて、『クチーナ・プリエーゼ』です。

最初の章、focaccie e pizzzeリチェッタをちらっと読んでみました。
するとベースの生地というのが4種類ある、と、さらっと書いてありました。
で、本を探してみたのですが、ベースの生地のリチェッタというのがどこにもない。
さらに、昨日のブログで紹介したフォカッチャ作りの動画でも、プーリアのフォカッチャにはベースの生地が4種類ある、と語られていました。
リチェッタによっては、材料の所に“ベースのリチェッタ参照”と書かれているものもあります。

まあ、プーリア人の気持ちになって考えれば、最初の4点だろうと想像は付きますが・・・
という訳で、この本を読んでいていきなりベースのリチェッタ参照、というのに出くわしたら、次のリチェッタを参考にして下さい。
それではプーリアのフォカッチャとピッツァの基本の生地をどうぞ。

■パン生地Pasta da pane

材料;
小麦粉・・500g
イースト・・1キューブ
EVオリーブオイル・・大さじ1
砂糖・・小さじ1
塩・・小さじ1

・イーストを少量のぬるま湯150mlで溶く。温度が高いと発酵しない。
・小麦粉、イースト、砂糖、塩をこねてなめらかで弾力のある生地にする。
・必要ならぬるま湯を足す。
・1時間発酵させる。二次発酵については各リチェッタ参照。

■じゃがいも入りパン生地Pasta da pane con  le patate

材料;
小麦粉・・500g
粉質のじゃがいも・・150g
牛乳・・150ml
イースト・・1キューブ
EVオリーブオイル・・大さじ1
砂糖・・小さじ1


・じゃがいもを丸ごと水からゆでて皮をむき、熱いうちに潰す。
・じゃがいも、小麦粉、オリーブオイル、水と牛乳150mlで溶いたイースト、砂糖、塩小さじ1をこねてなめらかで均質の生地にする。
・必要なら水を足す。
・30分休ませる。

■具入りピッツァ生地Pasta per pizza farcita

材料;
小麦粉・・500g
イースト・・1/2キューブ
EVオリーブオイル・・1/2カップ
牛乳


・小麦粉と温めた少量の牛乳で溶いたイーストをこねる。
・オリーブオイル、塩小さじ1を加えてこね、小麦粉と温めた牛乳を少しずつ加えながらさらにこねてなめらかで均質の生地にする。
・この生地は発酵させる必要がない。
・30分休ませる。

■ワイン入り生地Pasta al vino

材料;
小麦粉・・300g
白ワイン・・80ml
EVオリーブオイル・・80ml


・ボールにワイン、オリーブオイル、塩小さじ1弱を入れて小麦粉を少しずつ加えてこねる。
・なめらかで均質の生地になったら30分休ませる。

これだけです。
この本にはフォカッチャやピッツァのリチェッタが40点以上載ってますが、すべてこの4種類の生地がベースになってます。

プーリアの(バーリの)フォカッチャ


フォカッチャと言えばリグーリア

お薦め本は『リグーリアの発酵生地


そっけないまでにシンプルなプーリアの本と比べると、リグーリアの本は写真がたっぷりでお金かけてて読んでて楽しい本でした。

プーリアのピッッァ・リピエーナ

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2019年11月23日土曜日

異色の序文の料理書

新入荷の本『クチーナ・プリエーゼ』を紹介しています。

前回は序文を訳しました。
実は私、料理書の序文が大好きなんです。
写真もリチェッタもない地味な部分ですが、本や著者の情報がぎゅっと詰まっていて、参考になることが多い箇所です。
でもイタリア語では読む気にならないだろうなあと思って、面白い時はなるべく訳そうと考えています。
今回の序文も面白かったですよ。
さすがは有名なジャーナリスト。
やることが前代未聞でした。
何しろ、わずか2ページの間に、両親、おばあゃん、4人のおばさんの名前を出して、彼らの料理がいかに美味しいか褒め称えているのです。
家族の名前を全部書こうという強い決意が感じられます。
そしてさりげなく、孫の名前までちゃっかり書き込んじゃってますよ。
しかも同時に読者に、プーリアの家族や料理って素晴らしいと、強烈に印象づけているのです。
こんなおじちゃんが親戚にいたらいいなあ、しかも料理がうまいなんて・・

さて、それではリチェッタを見てみましょう。
リチェッタの第1章は、オレッキエッテでもテーリアでもありません。
focacce e pizzeフォカッチャとピッツァです。
そしてこう書かれていました。
小麦はプーリアの黄金だ。
Il grano è l'oro della Puglia.
プーリアの人が小麦を語る文章もいいですねえ。

『グリバウドのグランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ』シリーズのプーリアには

こう書いてあります。

イタリア南部で一番広い平野、タヴォリエレTavoliereはほとんど全域で小麦が栽培されている。この黄金色の畑の中央にフォッジャFoggiaがある。
昔ながらの移牧の中心地で、現在でも小麦の重要な市場だ。


フォッジャの語源はラテン語で穴という意味のfossaだ。この穴は、一説によると、小麦の保存用のものだったという。
硬質小麦には乾燥して風が強いプーリアの気候がよく合った。
この溝は水道管や家畜用として使われた。
プーリアは南伊で最大の硬質小麦の産地だ。
広大な小麦畑はプーリアの風景のシンボルになったが、食卓でも、小麦は主役になった。各種のソースをかけたカヴァテッリcavatelliや、トロッコリtroccoli・・・。
オレッキエッテorecchiette 、ラガーネlagane、フジッリfusilli、ミンキアレッディminchiareddhi、サーニェ・ンカンヌラーテsagne 'ncannulate、マッカルーニmaccaruni、フェネシェッキエfenescecchie、ストラッシナーティstrascinatiなど、様々な形のパスタが作り出された。

これらのパスタにはチーメ・ディ・ラパをシンプルにトマトで和えたソースや野菜や魚、肉、がベースのにんにくと唐辛子入りのソースをかけた。

タヴォリエレの小麦畑と風


フォッジャの移牧の風景



『クチーナ・プリエーゼ』の文章はさらにこう続きます。
小麦は地中海の素晴らしい食物とみなされてきた。
白いセモリナ粉や全粒粉に加工して、プーリアのあらゆるシンプルで本物の美味しい料理に使われる。
ノンナ・ニネッタの口癖は、セモリナ粉が1kgあれば金持ちだよ。
ふんわりして美味しいフォカッチャも、色んな具のピッツァも、プーリアの様々な美味しい料理ができるのだから。
フォカッチャやピッツァは、イースト入りやなしの各種の生地から作る。
この本では4種類のベースの生地を紹介しよう。
そして4種類どころか40種類以上のフォカッチャやピッツァのリチェッタが続きます。
ピッツァやフォカッチャはプーリアに大いに普及して、各地で様々なものが作られました。フォッジャのスカナテッダscanatedda、レッチェのトマト風味のピッツィpizzi、黒オリーブ、オレガノ、レーズン入りのプッチャpuccia、大型のパン、カゼレッチョcaserecioは、イタリア中に広まってプリエージpugliesiと呼ばれている。
これらはプーリアの豊かな小麦粉製品の本の一部だ。

なんだかきりがなくなってきたので、今日はこのへんにしておきます。

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イタリアの穀倉の中心地フォッジャ

『クチーナ・プリエーゼ』を紹介していますが、
プーリアの食と言えば、欠かせないのが硬質小麦です。
前回は硬質小麦の産地のタヴォリエレtavoliereという地名と、その中心地のフォッジャfoggiaという町の名前が突然出てきましたが、
プーリアはとても素敵な場所です。
私も初めて行った時はプーリアの人々の人懐こさに驚き、レッチェの街の美しさに驚き、アンドリアのブッラータの美味しさに驚きました。
でも、自分がフォッジャに行ったかどうか、記憶がない・・・。
改めてプーリアのこと何も知らないなあと感じています。

でも、大お勧めの観光スポットです。



アルベロベッロやマテーラ、カステル・デル・モンテといった世界遺産はもちろんですが、芸術と美食が共存する南のフィレンツェことレッチェは超お勧めの街。

タヴォリエレのPV


フォッジャ


イタリアの硬質小麦の中心地、プーリア、そしてその中心地のフォッジャ。

タヴォリエレ平原北部の料理


南イタリアの粉物天国はここですか。
しかもオリーブオイルや野菜も美味しいし。
というか、プーリアに行ったら硬質小麦粉のパスタやパン、野草を食べないとね。
私はプーリア料理の知識をほとんど持たないでプーリアに行って、料理があまりにもお美味しいので、知識がないことを激しく後悔しました。
少なくとも上の動画に出てくるものは味見したいですねー。

フォッジャの住民が食べているもの



そうなんですよ。プーリアでは近所の惣菜店やパン屋、パスティッチェリーア、バールで買ったものまで美味しいんですよ。

プーリアのフォカッチャとピッツァ


イメージトレーニングはこのくらいでバッチリですね。
このノンナ・マリアは毎年子どもたちのクラスメイトを招待して彼らの目の前でフォカッチャを作るのだそうです。ちなみに彼女もの基本の生地も本で紹介しているのと同じ4種類。これがプーリアのフォカッチャのベースなんですね。
そして子どもたちは母親が陽気にパンをこねる姿を見て、パンが焼き上がる香りを嗅いで、故郷と家族の幸せな記憶が作られていきます。
口がすっかりプーリアのフォカッチャになってます。



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2019年11月20日水曜日

プーリアの子供時代

新着本の『クチーナ・プリエーゼ』から、
la cucina pugliese



リチェッタを訳そうと思ったのですが、まずはその前に、序文を訳してみます。プーリアのグルメなインテリは、どんな子供時代を送るのか、知らなすぎて想像もできず、興味がわきました。

バーリは私の街だ。ここで生まれて、両親や兄弟と一緒に子供時代のすべてを過ごした。
私の父マリオもバーリ生まれで、「食事はみんなで食べる」という良き習慣を受け継いでいた。
食事はおしゃべりしたり笑ったり、言い争ったり、あれこれ計画したり、おいしい食べ物を称え合って過ごした。何年もたった今でも、父は厳格に毎週のメニューを守っている。
月曜は米、金曜は魚、土曜はパスタ、水曜は野菜、日曜は食後のデザートつきだ。
母のマリアは、ブリンディジ生まれで、5人姉妹の3番目だった。
南伊のすべての女性のように。母も、食べ物を情緒的なボンドのように扱った。
子供と母親をつなぎとめる接着剤のようなものだ。
そのため、ほぼ毎朝をキッチンで、その日の食事を準備して過ごした。
家族みんなの好物の味を探し、夕食には豆が体にいいからそら豆を出そう、おやつのドルチェも用意して、今晩はミネストラにしよう。今年のクリスマス用にカルテッラーテを作って味見してみようか、などと。
マリアの母親のノンナ・ニネッタは、突然やってきた20人の客のために食事を作ることもできた。
まるで1週間の予定の中にあらかじめ入っていたかのように。
揚げ菓子の山は孫全員に大喜びで受け入れられた。
家族みんなで祝う毎年のお祭りの中でも忘れられないのはギータ叔母さんのクリスマスイブのご馳走だ。
山盛りのマジパンやヌガーのトレーの間で、ビンゴをして遊び、リタおばさんの家の誕生日会では、悲鳴と叫び声の中で、フォカッチャやロゼッタおばさんのチョコレートケーキを食べた。
パスクアには、リナおばさんのご馳走のパスタのオーブン焼きを食べた。
ローラおばさんは、イタリア対ドイツのサッカーの試合の間、パオロ・ロッシのゴールを待ちながらパンツェロッティを揚げていた。具はモッツァレッラ、トマト、バジリコで。白、赤、緑の幸運の3色だよと言いながら。
こうして私は、誰かのために何かを食べて作ることがもたらす満足の意味を知った。

ところが今ではすべてが変わった。
南伊の女性は幸運なことに時代に追いつき、バリバリ仕事をして積極的になった。
その分、夕食の準備に費やす時間は減った。
1週間の食事はやりくりして決める。そして世界中の体によいものを手早く食べる。
一切れの肉とサラダ、ヘルシーな豆のミネストラ、
料理する時間はほんの少しになった。
母から娘へと受け継がれてきた伝統料理は無自覚のうちに遺産になった。
毎日インスタント食品を食べ、日曜だけは時間をかけておばあちゃんが造っていた美味しいラグーのオレッキエッテやティエッラを作る。
料理を研究して、その食材を生み出した故郷、プーリアの豊かで誇り高い大地を知る。
この本に集めたリチェッタはどれもシンプルだ。
それはプーリア料理がシンプルだからだ。
私の伝統の一部を、皆さんの伝統の一部にしたたもらいたくてこの本を作りました。

なるほど、こんな思いで彼はこの本を造ったのか。
時代が変わって昔ながらのプーリアの家族関係が消えかけた今、アラン・バイは、プーリア料理のリチェッタを広めることによってプーリアのバイおじさんになろうとしたのでした。
どれどれ、それではうちの家族で一番のインテリで美食家のバイおじさんの料理を味わってみるか。
プーリアのクリスマスのドルチェ、カルテッラーテ

南伊にお嫁に行った日本人は、世界的な歌姫を初めとして大勢いるでしょうね。
みんな頑張ってね~。
それにしても、料理をpanzerotti di zia Linaリーナおばさんのパンツェロッティ、のように、作った人の名前とその時の状況込みで覚えているのは素敵ですね。



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2019年11月19日火曜日

新着本『クチーナ・プリエーゼ』

今日は新着本のご案内です。 おっと、正直に言いますね。 正確には新発見本でした。 このところのブログでオリーブの話題を書いていたのですが、その過程でオリーブのリチェッタを探そうと思い立ち、 日頃から、イタリア料理書のダンジョンと化している書架を探してみたのです。 すると、緑色のみずみずしいオリーブがきらきらと輝いている美しい本が出てきました。 あまりにも美しいオリーブに見とれて手に取ると、『la cucina pugliese』という本でした。 そうだ、思い出した!プーリア料理の本が欲しいと思って探したら、この本の表紙のオリーブがあまりにも美しかったので、思わず仕入れたのでした。
でも、よくあることですが、そのまま忘れていたのですねー。
ほんとによくあるので、ご希望の本があたらご案内し忘れている場合もあるので、とりあえず、こんな本ないですか、とお問い合わせいただけるとうれしいです。



la cucina pugliese
かなり小型の本です。
写真はなく、唯一の写真が、この表紙のオリーブ。しかも何日もかけて生のオリーブの実を食べれるようにするのはどんなに大変か、プーリアの農家は何世紀もかけておいしい食べ方を探してきた、ということを調べた直後のこと。
この写真のオリーブを見ると、この写真を選んだ人が、プーリアの食文化をいかに強く愛し、深く結びついているかが、ひと目でビビビッとわかる見事な写真でした。
いったい誰の本だろう。
著者はAllan Bayアラン・バイさん。

たくさんの料理書を書いている人です。
エノガストロノミーの専門家のジャーナリスト。
政治と経済を勉強した美食家で、料理と食文化史を愛するインテリです。
彼は子供時代をバーリで家族とともに過ごしました。父親もバーリの人。
彼の食文化への興味の根底には、南イタリアのDNAが流れています。
アラン・バイ氏



オリーブの苦味抜きの方法を調べて感じたのですが、プーリアの農家は、親から子へと口頭で伝えたので、各家庭ごとに言うことが違うし、料理書もなく、そのリチェッタを調べるのはすごく大変、ということ。
それでは、どんなリチェッタが収められているのか、見てみましょう。
ん?
プーリア料理って、どんなものが・・・。
これが世界中がイメージするプーリア料理。の理想的な姿。
バーリ市街の路地に出したテーブルで、ベテランのおばちゃんたちがおしゃべりしながらオレッキエッテを作る。


家族はプーリア料理の大切な要素。
この家族経営のオレッキエッテリアは3代目。



次回はリチェッタを訳してみます。

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2019年11月17日日曜日

白トリュフの解禁日

今日は「総合解説02017年11/12月号から」、年末にふさわしい食材の話です。
それはトリュフ。
なんだか最近、やたら耳にするし目にもします。
トリュフ。
イタリア語ではタルゥーフォtartufo。
トリュフもタルトゥーフォもたいした違いはなさそうですが、フランスとイタリアは永遠のライバル。世界中でこの物体がトリュフと呼ばれるたびに、イタリア人は、ちょっとプライドが傷ついていたようです。
ところが最近は、タルトゥーフォと呼ぶ人が増えてきたそうですよ。
どや顔で報告されていました。


トリュフ
tartufo

タルトゥーフォ
Tartufo

確かに見た目はかなり違う両者。
昔はトリュフと言えば黒で、白の話なんか出たことなかったものですが、白トリュフも毎年じわじわとメジャーになっていきました。
そそもそもトリュフって食べ物?
きのこだってことぐらいは知ってます。
毎年この時期になると料理雑誌に華々しく登場するので、私も訳しながら少しずつ知識をためていきました。

でも、その香りはあまりにも実態がつかめなくて、結論は、結局食べるしかない。
トリュフは香りを味わうものですが、その香りはどう表現しますか?
これが難問です。
結局食べるしかない。

そう、どちらに転んでも、トリュフに関しては、食べるしかないのです。

イタリアの料理雑誌のトリュフの記事には、トリュフが一番美味しい時期や場所、一番美味しい味わい方の情報が満載です。
結局いつかは食べに行くのなら、今から準備していても遅くはないですよ。
トリュフ犬を連れて森や林を巡るトリュフ採りは、いつ見ても癒やされます。
カベッラ農園というピエモンテのアグリトゥーリズモのトリュフ採り。


『サーレ・エ・ペペ』2017年12月号のトリュフの記事も、興味深い話がいっぱいでした。
まず、トリュフを採る人のことをトリフォラウtrifolauと呼ぶ、というのは基本情報なので、よく知られた話。

ところが。これがピエモンテのトリュフ摂りだけの呼び方だとは、知らなかったなあ。
しかも、イタリア中部ではカヴァトーリcavatoriだそうですよ。初めて聞いた。
元々は採石場で大理石を切り出す人という意味のようです。
トリュフ解禁日の主役はトリフォラウとトリュフ犬。
トリフォラウもトリュフ犬も、この日を辛抱強く待ち続けるのです。




ピエモンテのトリュフの解禁日は、品種ごとに細か定められています。
byこちらのページ
上から訳してみると、9月21日~1月30日
12月1日~3月15日
12月15日~3月15日
6月1日~8月31日
ちなみに白トリュフは一番上のTubero mangatum Picoです。

それにしても、12月1日から8月31日まで、幅広いですね。
これは、世界中に需要が拡大して、一年中ある需要に答えるようになった結果でもあります。
これだけ見てもトリュフ市場の爆発的な成長が想像できます。


まあ、第一歩として、少なくとも、白トリュフの解禁日はわかりましたね。
この期間以外は市場には採りたての白トリュフはないんです。
とは言っても世界中からやってくるお客様をがっかりさせない体制もバッチリできています。
少なくとも、最高のものを味わおう思ったら、9月中旬から臨戦態勢ですね。

トリュフは、白も黒もイタリア各地で採れます。

中部イタリアのサマートリュフ採り





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“トリュフ”の記事は「総合解説」2017年12月号P.23に載っています。
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2019年11月14日木曜日

シロッコが生んだシチリアのペコリーノ

シチリアのオリーブを追いかけていたら、シチリアのチーズバステッダ・デッラ・ヴェリチェへと話題が移って行きました。シチリアのオリーブのことも何も知らないと自覚しましたが、ペコリーノ・シチリアーノも、よく知らないなあ。

そこで、今日はこのチーズのことをもう少し調べて見ます。


こちらのページによると、このチーズは、地元の羊飼いの老人が偶然生み出したチーズだった。彼はいつもように羊のミルクを搾ってペコリーノに加工し、固めるために葦のかごに入れた。
ところがその日はシロッコが吹く特に暑い日だったので、チーズは酸化してしまった。
そこで酸味を取るために、リコッタにやるようにチーズを湯に浸してみた。チーズは繊維が固まって。フィラータ生地になった。タライから取り出したチーズを、彼は皿に入れた。こうしてヴァステッダ・デッレ・ベリチェの形が決まった。

唯一の羊のミルクのパスタ・フィラータのチーズは、こうして誕生した。
フレッシュで甘いこのチーズの味は、ベリチェ渓谷に生える草から作られる。
元々は、ペコリーノを作るにはミルクの量が足りなくて、暑い夏の間だけ作るチーズだった。
フレッシュでデリケートな味なので組み合わせるワインは典型的なシチリアワイン、ネロ・ダーヴォラ、メルロー、シラー、チェラスオロ・ディ・ヴィットリアなどが合う。

ヴァステッダのCM




シロッコとは北アフリカから吹く強い季節風。

世界中どこでも、大自然の猛威に襲われるんですね。



モルタデッラの羊版、バステッダを使うとピッツァもシチリア風に。



モッツァレッラの変わりにバステッダを使ったスパゲッティ・アッラ・カプレーゼ。


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2019年11月12日火曜日

シチリアのヴァッレ・ベリチェのオリーブとペコリーノ

イタリア各地を旅行して、そのオリーブとオイルの美味しさにびっくりしたのはプーリアでした。
線路の両側に広がる広大なオリーブ畑も印象的でしたが、郊外の町で何気なく入ったレストランの料理に使われているオリーブオイルの美味しさにもびっくりし、翌日のお肌のしっとり具合や体調の良さには心底びっくりして、あっ言う間にプーリアオイルの大ファンになりました。
イタリアでは各地でオリーブオイルが作られていますが、ここまで強烈なインパクトを受けたのは初めてです。

オリーブのクンツァータにも興味を持ったので、シチリアのオリーブについて、ちょっと調べてみました。手軽さでは他に類を見ない地方料理書の秀作、グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナの『シチリア』には、こんなふうに書いてありました。


シチリアのエクストラバージンオイルは香り高く、フルーティーだ。年々品種改良が進み、最近は非常に高いレベルになっている。昔は、ボディーが強すぎて荒いと言われたが、6種類あるDOPオイルはエレガントでなめらかで甘く、草の風味や辛味がある。アーモンドやトマト、アーティチョークの風味も感じられる。
オリーブはシチリア中で栽培されていて、栽培地の環境によって風味が違う。オリーブの大部分は土着品種だ。
代表的なのはトマトの風味のオイルができるノチェッラーラ・デル・ベリチェNocellara del Belice、
生食用にも適したオリーブで、大粒で肉厚、オリーブの実としてもDOP製品。
トラーパニ県のベリチェ渓谷で栽培されています。
収穫されたオリーブは、イン・サラモイア(塩水漬け)酢漬け、スキアッチャーテ・エ・コンディーテ、イン・フォルナーテin fornate(オーブン焼き)と、様々に下ごしらえされて各種の伝統料理に使われます。
シチリアだけでなく、イタリアのオリーブオイルの評価は昔と今ではだいぶ違うのですね。
それにしてもトマトの風味があって生食、オイル用、どちらにもなるオリーブ、ノチェッラーラ・デル・ベリチェとは、どんなオリーブでしょう。

 
羊の放牧で有名らしく、こんな動画がたくさんあります。



ということはもちろんペコリーノの産地。
ベリチェのペコリーノはヴァステッダという名前。





羊は土着品種で、全て放牧。
1日放牧して、ベリチェ渓谷の草をたっぷり食べたら羊のミルクにレンネットを加えて固め、崩してホエーを出します。これをかごに詰めてむ24時間~48時間固めます。
これをスライスして湯を加え、フィラトゥーラの作業をします。さらに塩をまぶして皿に入れて乾燥させます。

ベリチェ渓谷の草の香りが特徴のパスタ・フィラータのチーズだったんですね。

これはどんな料理になるか楽しみ。
次週に続ききます。



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2019年11月9日土曜日

オリーブの実を食べる

オリーブの実に味をつけることをクンツァータと呼ぶことは、シチリア料理の話では、よく聞きます。
そこで、シチリア料理の本からクンツァータをちょっと探してみました。
『お勧めの地方料理シリーズ、グイド・トンマージのシリーズの『シチリア』の最初の料理は、オリーブのクンツァーテでした。
A)シチリアでは、コンディーテ(味付け)のことをクンツァーテと呼び、イン・サラモイア(塩水漬け)も味付けの一種、なんですね。
さらにリチェッタの解説の一文で、もっとよくわかりました。
シチリアには、どの市場でも様々な種類や大きさのオリーブを売る屋台が出ている。オリーブも、自家製"cunzarle"にする、イン・サラモイアin salamoiaや、調味済みの"cunzate"、など、各種ある。
つまり、塩水漬けを買ってきて各家庭の味でクンツァーテにするんですね。

オリーブの隣には、ケッパーや野菜のジャルディニエーラ、ドライトマト、塩漬けアンチョビも並ぶ。

シチリアの市場に行った時、小さなパックのケッパーは買いやすいから必ず買うけど、下処理の大変さを知った今なら、オリーブこそは、迷わず買うべきものだったなあと、大後悔。

カターニアのカルロ・アルベルト広場のメルカート


さて、オリーブのクンツァーテのリチェッタは、
まずサラモイアにします。
【材料】
生の丸ごとのグリーンオリーブ・・500g
塩・・約80g
フィノッキエット・セルヴァティコ・・数枝
次にクンツァーテにします
生唐辛子・・1本
セロリ・・1本
にんにく・・1かけ
オレガノ・・一握り
ビネガー・・大さじ3、約45ml
EVオリーブオイル・・大さじ4、約60ml
・グリーンオリーブを3日間水に見晒す。この間、1日に2回水を替える。
・オリーブが常に水に浸るように重しをのせる。フィノッキエット・セルヴァティコを縛って容器の口から垂らして水に入れる。
・塩80g、水1L(オリーブを覆う量)でサラモイアを作る。卵1個にサラモイアをかけてみて浮かび上がったら塩の量は適量。足りないようなら少量足す。
・蓋をしてサラモイアに30日間漬ける。
・オリーブの形を崩さないようにしながらペティナイフで種を取る。
・刻んだセロリ、唐辛子にんにくのみじん切り、唐辛子、ビネガー、オリーブオイル、オレガノを加える。
オリーブのインサラモイア、梅干しにそっくりで赤くしてみたくなる。



最初の漬け汁オリーブ1kg、水3L、塩270gで2日間、水を換えて同じつけ汁で2日間。
2回目は保存容器に入れて漬け汁で完全に覆う。つけ汁は水1Lにつき塩50g4~5日漬ける。
オリーブオイルとビネガーをかけてアペリティーヴォに。
農家の家庭のリチェッタは適当で細かいところが微妙に違うので、文字にするのは大変。 
塩の量は卵が浮かぶ濃度って、昔話のレベルだよん。
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2019年11月7日木曜日

オリーブのクンツァーテ

オリーブの話をしていて、すっかりオリーブ通になった気分ですが、庭に実ったオリーブの実を食べようと思ったら、どうすればいいのか、まださっぱり分かっていないことに気が付きました。動画を見ていて気がついたのですが、オイルを搾る段階でハンディブレンダーで撹拌したオリーブは、なかなか美味しそうなオリーブのパテでした。
黒オリーブのパテ


材料
・種つきガエータの黒オリーブの塩水漬け170g

オリーブの種を抜く。
・にんにく1かけ
・アンチョビ1尾
と一緒にブレンダーでパルス式で撹拌する。
・トーストしたパンに塗る
超簡単。
次はグリーンオリーブのパテ。


種抜きグリーンオリーブのパテ・・1カップ
塩を洗い落とした塩漬けケッパー・・小さじ1とオリーブオイル
をハンディ・ブレンダーで撹拌する。
レモン汁・・くし切り1片分と乾燥オレガノ少々を加える。、唐辛子(好みで)を加える。
これも簡単でアレンジの幅も広そう。

オイルを搾る前にオリーブを潰す、スキアッチャーテschiacciateという技もありました。
潰したら味をつけます。(condite)
このことをクンツァーテcunzateと言います。



オリーブの下処理。スキアッチャーテ・クンツァーテ。

オリーブを潰してレモン1個を入れた水に毎日水を替えながら4日間晒して苦味を抜く。
オリーブオイルをかけて混ぜ、オレガノつわ加える。
さらに水気を切ったジャルディニエーラ、小粒玉ねぎの酢漬けを加える。ビネガーを加える。時々混ぜながら2日漬ける。つけ汁と一緒に密閉ビンに詰めて保存する。
もう一つ、クンツァーテ。
オリーブは下処理の方法さえマスターすれば、無敵の食材ですね。





オリーブのリチェッタ何かないかなあ、と探していたら、こんな美味しそうなオリーブが表紙の本が。『クチーナ・プリエーゼ』ですって。やっぱりオリーブのことはプーリアに聞かなくちゃ。だいぶ前に入荷して、紹介するの忘れてました。
次回は、リチェッタを探してみます。



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総合解説」の関連記事は2017年11/12月号に載っています。
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2019年11月5日火曜日

オリーブの実からオイルを絞る

なんの知識もないけど庭のオリーブからオイルを搾りたいというささやかな夢は、どうすれば実現するのか、収穫から1週間たっても、苦味を抜く作業ばかりで全然前に進まない大変さに、もうすっかりあきらめていました。一番簡単そうだった塩水漬けでさえも、複雑な下ごしらえが必要です。総合解説「で紹介した『サーレ・エ・ペペ』の編集長は、近所の搾油所に持ち込めばなんとかなる、と思っていたようですが。イタリア人のこのなんとかなるさという前向きの考え方、好きだなあ。

そもそも搾油所(フラントイオfrantoio)て何でしょう。オリーブを砕いて押し潰してオイルを搾り取るところです。
家族経営の小さなフラントイオ。
これこれ、これがないと。




編集長のやたら前向きの考えも、こんなフラントイオが近所にあったから生まれたんですね。


この過程が家庭でできてしまうビンビーのふらんといお。



オリーブの実がたっぷり収穫できる人はこれだ。
ようやく自家製オリーブオイル作りの動画発見。




オリーブをハンドブレンダーで潰してペースト状にする。
鍋に入れて中火で5~10分熱する。
網にチーズ用のフィルター布をのせてこしきを作る。ここにスプーンでペーストをのせ、
冷めたら布できつく包んで絞る。
一晩置いて表面のオイルと水分70mlを分離させる。
オリーブペース50gから取れるオイルは50ml。
涙がでそうなくらいちょっと。
チーズ作りと似たような作り方と道具ですね。
チーズとオイルが自家製できるなんて。

動画を探していて気が付きました。世界中の人が試行錯誤をしながら自己流でオイルを絞ってます。
この動画はモロッコ流


今回の、自家製オリーブオイルを作りたいという編集長のエッセイ。
地中海地域という気候に恵まれていて、近所に小さなフラントイオがある、というオリーブオイルの食文化圏で。大農場でオリーブを長年栽培している叔母さんがいれば、その夢もかなうかも。でも決して軽い気持ちでは手を出せないです。

バックアップがなにもないとこうなる。



要は、潰して絞るんだよね。

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“サーレ・エ・ペペ編集長のエッセイは、総合解説2017年11/12月号p.11に載っています。
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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...