2022年7月31日日曜日

ヨーロッパで一番高い火山エトナ山は、ユーラシアプレートで一番高い火山でした。

今月のワインはVini dell'Etna、エトナ山のワインです。
エトナ山は、ふつう、ヨーロッパ最大の活火山、と紹介されますが、今回は、
“ユーラシアプレートの一番高い火山”でした。
こうやって紹介されると、地球規模にすごい山のようで、恐れ入ります。



ヨーロッパの、シチリアの人々は、この山に畏敬の念を抱きながら、なくてはならないものとして受け入れ、やがては共存し、愛し、ついには「母なるエトナ」と呼んでその恩恵を享受するまでになりました。

恩恵の一つがエトナワインです。
下の動画は火山性土性で造られるワインの国際フォーラム。

エトナ山麓のアグリトゥーリズモ。

エトナの産物として有名なものに、ブロンテのピスタチオがあります。

エトナ山を上から見るとよくわかりますが、ブロンテはエトナ山の西側にあります。
ブロンテのピスタチオは国際的にも有名になり、その畑は今ではエトナ山の西側全体を埋めるほどになりました。
だから、エトナ山麓でワインが造られているのは、西側以外です。
さらに、北側は火山性の土壌ではなく、白い砂岩で、熟成に適した上質の赤ワインができる地区の黒い土壌とははっきり違うそうです。東斜面は雨が多いそうです。
エトナ山は標高3300m余りで、東側は地中海です。ちなみにナポリのそばのベズビオ山は1132m。標高が高く、海が近いと寒暖差が大きくなります(25℃ぐらい変わります)。火山性土壌と大きな寒暖差がエトナワインの高い品質を生み出しています。

エトナワインはその歴史も独特です。その話は次回。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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2022年7月30日土曜日

シチリアのジェラートをはじめとする冷たいドルチェはガラパゴス化が著しい。

いまさらだけど、ジェラートの季節。
ジェラートはシチリアが生んだ奇跡のデザート。
ジェラート、ソルベット、グラニータ、セミフレッド、ジェーロetc.
シチリアのジェラートはアラブの文化から伝わったもの。
これだけ冷たいデザートのバリエーションが豊富、ということは、それだけ暑い、という証明。

シチリア名物の3段ジェラート、ジェラート・ディ・カンパーニャgelato di campagna。

シチリアのジェラートと言えば、お団子付きブリオッシュbrioche。
下の動画はパレルモのお勧めジェラテリーアの食べ歩き。


ブリオッシュにこれでもか、とジェラートをはさんで、ホイップクリームをドバドバと絞り出し、ナッツを散らしてコーンを3本も刺してチョコレートソースを垂らしたジェラートをどうぞ、と渡されてみたい。
1位に選ばれた店、パレルモのニュー・パラダイス。webページはこちら




シチリアの食文化はガラパゴス化してる

イタリアの中でも評価が高いジェラートを出す、ノートのカフェ・シチリアCaffe Sicilia。
オリジナルのフレーバーを自在に作り出している。店主の地元のあらゆる食材を使いこなす、という決意がすごい。


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2022年7月29日金曜日

スイカのグラニータ。

今日のお題は夏のサラダ、スイカのサラダです。
スイカのサラダは、夏になると食べたくなる1品ですが、今月の(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレP.24)には、いつもに増して美味しそうなスイカのサラダが。
スイカとレッドカラントのサラダです。

スイカのサラダの基本はスイカとフェタチーズのギリシャ風サラダ。



今回のリチェッタは、これにレッドカラントを加えます。スイカとレッドカラントは、赤いフルーツという共通点がありますが、2つを組み合わせると、最強のコンビになります。

レッドカラント、イタリア語ではリベス。

スイカのグラニータGRANITA DI ANGURIA↓
もシチリアの夏の最強の組み合わせ。
この暑さでアイスが主食になってしまい、夏バテ気味です。グラニータは冷たくて栄養もある飲み物。

材料/
スイカの果肉・・500g
砂糖・・75g
水・・150ml
レモン・・1/2個

a.水に砂糖とレモン汁を加えて沸騰させ、冷ます。
・スイカの果肉を角切りにする。
・500gをハンディミキサーで攪拌し、aを加える。密閉瓶に入れて時々揺すって混ぜながら2時間冷凍する。



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2022年7月28日木曜日

エミリア・ロマーニャ地方やマルケで独自の進化をしたフォカッチャ

フォカッチャのルーツたち

スローフードの“スクオラ・ディ・クチーナ”シリーズの『パーネ・ピッッェ・フォカッチェ』

から、
今日は、マルケ州のマチェラータの名物、クレッシャcresciaです。ピアディーナのルーツのようでもあるけど、記事に卵やたっぷりのこしょうが入るところが違うそうです。

材料/6枚分
小麦粉・・500g
塩・・小さじ1
こしょう・・小さじ1
卵・・2個
ラード・・100g(伸ばした生地に塗る分50g、生地50g)
水・・200ml

・小麦粉、塩、こしょう、卵、ラード、室温の水をこねて柔らかい生地にし、ラップで覆って30分発酵させる。
・生地を6つに分けて丸め、指と麺棒で厚さ1㎜の丸~四角形に伸ばす。
・ラードを塗って長い辺から巻き、巻いて生地の端を中央に差し込む。
・ラップで覆い、冷蔵庫で30分休ませる。
・鉄板(ピアディーナを焼く鉄板と同じもの)を熱している間に厚さ2㎜に伸ばす。
・鉄板で片面2~3分ずつ焼き(またはオーブンや炭火の網で焼く)。

気が付いたらイーストもオーブンも使ってなかった。
かなり原始的な薄焼きパン。

ピアディーナはイースト入り。

モデナのストリアStria。
ストリアはパン屋で、パンを焼いた後の火を落としたかまどの温度の低い部分を使って残り物のパン生地を焼いたもの。でも、具は生ハムやサラミとなかなかゴージャス。
フォカッチャとピアディーナを足して割ったようなパン。


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2022年7月27日水曜日

フォカッチャのルーツたち、トスカーナのぶどうのスキアッチャータは、ぶどうが入らなければフォカッチャそのもの。塩は入ってます。

フォカッチャについてはまだ謎が多いのですが、スローフードのスクオラ・ディ・クチーナシリーズの『パ―ネ・ピッツェ・エ・フォカッチェ』

には、フォカッチャは発酵やオーブンの発明より前に考え出された、という説が載っています。
ピアディーナのような発酵させない平らなパンは、かまどの大きさに合わせた丸や四角に伸ばして、石の板の上で焼いて、皿のようにして使われました。各種の具をのせる容器で、最後は食べてしまうことができました。

ピアディーナ発祥の地と言われるエミリア・ロマーニャの庶民的なビーチ・リソート地、リミニのピアディーナ↓

トスカーナのスキアッチャータは、トスカーナ版フォカッチャ。
サワードウの薄焼きパン。トスカーナでぶどうの収穫の時期に作る農民のドルチェ。
トスカーナでぶどうと言えば、サンジョベーゼやカナイオーロ。
トスカーナで食べておけばよかったな・・・、とも思うけど、トスカーナの農家のぶどうのスキアッチャータは種入りぶどうで作るんだって。これは無理かも。
種で思い出すのがシチリアでサボテンを食べたとき。
種が多くてすごく食べにくかったので、思わず近くにいたシチリアのおじいちゃんに種が多くて食べにくいね、とぐちを言ったら、シチリア人は飲み込んじゃうんだよ、とウインクされたっけ。

ぶどうのスキアッチャータSchiacciata All’Uva
1番の軟質小麦粉・・500g
砂糖・・小さじ2
塩・・小さじ2
ぬるま湯・・300ml
ドライイースト・・1袋
EVオリーブオイル・・20g

・全部の材料をニーダーでこねる。
・ラップと布巾で覆って2時間発酵させ、2倍に膨らませる。
・天板に油を塗り、その中に生地を手で広げる。
・生地にぶどう1房の粒を1粒ずつ。
・グラニュー糖大さじ6を振りかける。
・220℃のコンベクションオーブンで30分焼く。
・切り分けてサーブする。

ぶどうのスキアッチャータのルーツはオイルと塩のスキアッチャータ。まさにフォカッチャ。
薪のかまどが存在しなくなった現代のトスカーナでは、朝食にパーネ・ショッコを食べるのは不可能になった。でも、スキアッチャータはストリート・フードになってトスカーナ人の小腹を満たしているんだとか。

フィレンツェのストリートフードになったスキアッチャータ。土曜の夜はこの賑わい。

結論は、スキアッチャータ=フォカッチャ。


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2022年7月26日火曜日

フォカッチーネは具を包んで焼くとおやきにそっくり。

オリーブオイルの記事は、読めば読むほど深みにはまっていくようなやたらと難解な記事でした。ここらでちよっと初心に戻って、この記事のタイトル、“ピッツェッテとフォカッチーネ”、について。
リチェッタの日本語訳は(CIR/9月号、P.29~)。
フォカッチーネという名前は初めて聞きました。小さなフォカッチャということは容易に想像できますが、一応、動画をどうぞ。

フォカッチーネ↓

具を包むタイプはお焼きにそっくりでした。


ピッツェッテ↓

(CIR)のリチェッタでは、ピッツェッテもフォカッチーネも同じ生地から作ります。違いは形と具。表面がカリカリ、サクサクで生地がフワフワなのがフォカッチャ・ジェノベーゼ。

フォカッチャ・ジェノベーゼ↓

おやき

フォカッチャには色んな種類があって、あっという間に深みにはまるので、慎重に取り上げます。今日はここまで。

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2022年7月25日月曜日

北イタリアのピッツァはナポリの縛りから解放されて、オリジナルでハイレベルな食材の組み合わせを楽しめる新たな地方料理になりつつある。

今月の(CIR)のEVオリーブオイルの記事からは、ナポリのピッツァにかけるオイルは、トマトやモッツァレラなどのトッピングとの相性、なかでもトマトとの相性で決まる、ということが分かりました。
マリナーラに合うオイルとして挙げられたのは、イルピニア地方のオイルでした。
最初はなぜだか全くわからなかったのですが、この地方が、ベズビオ山のふもとのトマトの産地として名高い場所、というがヒントでした。
同じ土壌で栽培されたトマトとオイルの組み合わせだったのですね。トマトや草の香りがするオイルだそうで。

ナポリの伝統的なマリナーラと対極にあるピッツァ、つまりオリジナルのクリエイティブなピッツァの代表として選んだピッツァイオーロは、シモーネ・パドアン↓
彼はヴェローナ出身。
ピッツァの頂点に君臨するナポリから解放されて、さらにその上を目指そうとした人で、トマトの呪縛からも解放されているピッッァイオーロです。
彼が目指すピッツァは、シンプルで伝統的で、同時に革新的なピッツァ。
彼が作ったピッツァに合うオリーブオイルに求められたのは、トマトの風味ではなく、エレガントで口の中の油を流すようなオイルでした。たぶん、このことも、ナポリから見ると革命的だったのでしょう。


彼のピッツァはビーガ(サワードウ)を使った天然酵母のピッツァ。
このところずっと見てきたパーネ・ショッコなど、ドッピア・コットゥーラ(二度焼き)の製法の、外はこんがりと焼けて中は柔らかい生地です。
ベローナから30分の距離にある彼の店で作るピッツァは、北イタリアのピッツァを代表しているかも。“リグーリア”というピッツァの生地はまるでとても軽いパンのよう。トッピングはペコリーノ、タッジャスカオリーブ、松の実、バジリコ、スモーク・グアンチャーレ、ほうれん草。地方料理がベースのハイレベルな食材の組み合わせを楽しむピッツァでした。リグーリアというネーミングもぴったり。
マリナーラとマルゲリータばかり食べていた人には、相当新鮮だったでしょう。
結論として、これは家で食べるピッツァではない、リストランテで食べるものだと言っています。ピッツァが生まれた歴史などを考えると、新しいピッッァには抵抗が強いかもしれないですが・・・。ナポリから解放されると、それだけでも新しいものが生まれてきそうです。


下の動画は、ピッツァ界の新星シモーネ・パドアンと、イタリア・クラフト・ビール界のビッグボス、テオ・ムッソの対談。天才たちの話は難しいけど、両者が同じ立ち位置というのは分かりやすいです。



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2022年7月24日日曜日

オリーブオイルにはちょっと冷めているナポリのピッツァイオーロ。でも、オリーブを栽培してオイルを造る農園を所有するシェフたちの思いは熱かった。

オリーブオイルというキーワードでナポリピッツァを見てみると、トマトについて熱く語っているピッッァイオーロは多くても、オイルについては全然熱が感じられず、ちょっと肩透かし的な感じでした。
しかも、ナポリを代表するピッツェリア、ダ・ミケーレのオーナーは、店ではEVオリーブオイルは使わない、代わりに使うのは大豆油です、と堂々と明言。でも、その理由を聞いて、納得です。要は、トマトの風味や色を消さないような、無味で無色のオイルが必要だから、とのこと。ナポリのトマト愛はオリーブオイルに優先するほど強かったのですね。
それに引き換え、ドン引くほどじゃぶじゃぶオリーブオイルをかけていたのはリグーリアのフォカッチャ。オリーブオイルの産地リグーリアでは、当然トマトよりオリーブオイル優先。
オリーブオイルの話題はイタリア全国共通で熱いのかと思ったら、地域差がかなりあるようです。
そこで今月の(CIR)に話は戻ります。テーマは“ピッツァとフォカッチャにかけるオイル”です(P.37)。記事では、ナポリピッツァの代表としてマルゲリータに合うオイルを考察しています。
たぶん、かなりオリーブオイル愛が強い人の意見です。
そして選ばれたのは、オルティチェOrticeという品種のオリーブオイル。
聞いたことないけど、カンパーニアの品種だそうですよ。

ローマの有名レストラン、アガタ・エ・ロメロではオルティチェ単品種のオリーブオイルを自社生産して販売しています。アガタ・エ・ロメロと聞いて、南イタリアのパスタの名店を集めた本『パスタ/サポーリ・エ・プロフーミ・ダル・スッド

を思い出しました。
オルティチェのオリーブオイルはドバイのコンクールで金賞を取ったこともあるみたい。

アガタ・エ・ロメロのオルティチェのオリーブオイル。
店は閉店したが、ロメロは現在オリーブオイル造りに取り組んでいる模様。



そしてこの本の中で、ナポリを代表するシェフでも、オリーブオイルについて熱く語っている人がいました。ドン・アルフォンソです。
ドン・アルフォンソとアガタ・エ・ロメロの共通点は、自社の畑でオリーブを栽培し、オイルを販売しているという点。

地元の産物と深く結びついたドン・アルフォンソ。
レストランの理想郷を作り続けている。


さてオルティチェですが、この品種のオイルは、イルピニア地方のトマトや草の香りがする、と言われています。モッツァレラと組み合わせると面白いのだそうです。
マリナーラにはほろ苦さや薬草の風味があるノチェッラーラ・メッシネーゼなどが合うそうです。またマニアックな選択。
すでに置いてけぼり感が強いですが、さらに、ピッツァ・ビアンカや黄トマトの甘味があるピッツァには、イトラーナのオイルなど、もっとコントラストの強いオイルが面白い、と、もう完全に一般人の読者は置いてけぼりの超専門的なコメントになってきました。
イルピニア地方Irpinia。
ベズビオ火山の斜面で栽培されたミニトマト、ピエンノロ・デル・ベズビオの産地として知られる地方。

記事の中で、シモーネ・パドアンのブッラータとエビのピッツァという一般人にも少しはわかりそうな話がありましたが、詳しくは次回です。


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2022年7月23日土曜日

ナポリのダ・ミケーレはピッツァにEVオリーブオイルじゃなくてトマトやチーズの風味を消さないようにプレーンな大豆油を使っているんだって。

パンの一地番シンプルな調味料はオリーブオイルという話になったところで、今日のお題は(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)9月号P.37から、ピッツァとフォカッチャにかけるオイル。
この記事は、『サーレ・エ・ぺぺ』誌のEVオリーブオイルの解説の連載記事ですが、あまりにも専門的なので、気軽で入門編向けの話の時だけ訳しています。

今回も、まず最初に、「リグーリアのフォカッチャやナポリのマリナーラに凡庸なオイルをかけても、あの美味しさは出ない、」とズバッとくぎを刺しています。
オイルの選択は小麦粉の選択と同じくらい重要なのだそうです。
そこまで重大に考えたことなかったので、ちょっと引き気味。

まず、ピッツァ生地に使う時はオイルはマイルドなものが最適。
丸いオーブン皿に広げた生地に調味としてかけるなら、たっぷりかけて表面や底に行き渡らせる。
ピザピールにのせて焼く丸いピッツァなら焼く前に表面にだけ少量かける。
縁を柔らかくするために縁に数滴かける人もいる。
さらに焼き上がってから香りづけに少量かける。
といったことが基本。

ナポリで最高のピッツァを巡る動画。

ナポリの世界的に有名なピッツァイオーロたちは、各自が自信に溢れたはっきりした考えを持っています。
オリーブオイルについて熱く語る人はあまりいないようですが、最後のダ・ミケーレはちょっと意外。EVオリーブオイルではなく、無色で無味の大豆油を使っているそうです。

一方で、リグーリアのフォカッチャにはEVオリーブオイルは必需品。

フォカッチャとパンの違いを尋ねられて職人が悩んでますね。技術的には発酵時間の長さなんだけど、それだけじゃない。
マリナーラに最適のオリーブオイルは、いったい何でしょうか。

詳しくは次回に。


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2022年7月22日金曜日

サルデーニャのパーネ・グッティアウはオイルをたらす、という意味の、シチリアのパーネ・クンツァートよりもっとシンプルなパンの食べ方。

このところの日持ちがする乾いたパンや、堅くなった残り物のパンの話をするたびに、なんだか、最近こんなパンの話をしたばかり、という気が強くなっていました。
実は、(CIR8月号)で、そんな料理のリチェッタを訳したばかりでした(P.2)。
それはサルデーニャの究極の乾燥したパン、羊飼いが移牧に持っていくために考え出した、皮だけのパン、軽くて日持ちがする究極のパン、パーネ・カラザウpane carasau。

家庭のオーブンで作るパーネ・カラザウ

材料/
セモリナ粉・・500g
水・・250ml
塩・・9g
生イースト・・5g

・セモリナ粉に塩とイーストを溶いた水を少しずつ加えて加えてニーダーで約15分こねる。
・生地を台に移してこね、滑らかな生地にして30~45分休ませる。
・生地を250g程度に分けて丸め、布巾で覆って30分休ませる。
・セモリナ粉の打ち粉をした台で生地を手と麺棒で平らにし、直径40㎝に伸ばす。
・打ち粉をした布巾にのせ、別の布巾で覆って打ち粉をする。残りの生地も同様に広げて重ね、30分休ませる。
・オーブンを最高温に熱する。
・生地を1枚、パーラーにのせてオーブンに入れる。生地がパンパンに膨らんだら取り出して上下2段に切る。
・布巾に2段に切った生地を1枚載せ、パーラーで潰して平らにする。裏側も同様にする。
2段に切った生地をオーブンで1分焼いて乾かす。

サルデーニャの人は、パーネ・カラザウをどうやって食べたのか。
オリーブオイルをかけるパーネ・グッティアウpane guttiauは、一番シンプルなバージョン。
グッティアウとは、滴らせる、という意味。文字通り、オリーブオイルをかける、という意味です。調味する、という意味のシチリアのパーネ・クンツァートよりもっとシンプル。


トマトソースと卵とチーズが加わるパーネ・フラッタウは、パーネ・カラザウのご馳走版。
伝説では、突然訪れたサルデーニャ王のために手に入るものを農家のおかみさんが畑と家中からかき集めて急いで(フラッタウ)作った料理。

王様のためのアレンジとなると、さすがにオリーブオイルをたらすだけというわけにはいかない。乾燥させてわざわざ日持ちを良くしたパンもゆでて戻していただく。

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2022年7月21日木曜日

塩気のないパンで作るパッパ・アル・ポモドーロ、水気のないパンで作るパンツァネッラ、どちらも仕上げはトスカーナのエキストラバージンオイル。

フィレンツェのパーネ・ショッコにトマトを組み合わせると、イタリア料理を代表する夏の料理、パッパ・アル・ポモドーロpappa al pomodoroになります。




夏はトマトの季節ですからね。ちなみに、この料理は冬にはリボッリータになります。

リボッリータribollita。

冬の間、トマトはないけれども、畑には、霜が降りると美味しくなる黒キャベツがあります。
基本は残り物で作る料理なので、余っている食材をなんでも使います。バリエーションは家庭の数だけあります。
そして19世紀後半になると、パルマではトマトの保存食の研究が盛んになり、ナポリ周辺ではピエモンテ人のフランチェスコ・チリオによって最初のホールトマトの缶詰が作られます。
トマトの缶詰が発明されたおかげでトマトは季節の縛りから解放されます。
さらに言えば、缶詰用トマトに最適な品種、サン・マルツァーノトマトは世界中に輸出されてイタリア料理に使われました。
パンツァネッラpanzanellaもパーネ・ショッコの夏の料理。

パッパ・アル・ポモドーロ。


材料/4人分
玉ねぎ・・1個
トマト・・500g
にんにく・・4~6かけ
堅くなったパン・・300g


・玉ねぎを薄くスライスして刻む。
・陶器の鍋にたっぷりの油を入れて玉ねぎをソッフリットにする。
・トマトを小角切りにしてソッフリットに加える。丸ごとのにんにく、唐辛子、バジリコ少々も加えて15~20分煮る。
・ちぎったパンを加えてよく混ぜ、数分煮る。
・野菜のブロードか湯で覆い、濃いクリームにする。塩味を整え、火を止めて仕上げのバジリコを加える。
・皿に盛り付けて油を回しかける。

パンツァネッラはパンのサラダ。


セミが鳴いてますねー。
夏にぴったりの料理。
リチェッタは下の動画から。
または今月の(CIR/P.40)に日本語訳を載せています。

材料/4人分
堅くなったパーネ・トスカーノ・・400g
熟したトマト・・500g
赤玉ねぎ・・1個
バジリコ・・15枚
ワインビネガー

・パンを厚さ1㎝にスライスしてオーブン皿に並べる。
・水250mlをかけて40~45分休ませる。
・玉ねぎを薄く切り、水70ml、ビネガー70mlをかけてかき混ぜながら15~20分マリネする。
・きゅうりの皮をピーラーでむき、縦に半分に切って輪切りにする。
・トマトを小角切りにする。
・ほぐしたパン、トマト、水気を切った玉ねぎ、きゅうり、ちぎったバジリコを混ぜて1時間休ませる。
・油40gとビネガー15gをかけて塩、こしょうをする。
皿に盛り付けて油を回しかける。

今月の(CIR/P.39)はパンツァネッラ。詳しいリチェッタもあります。

パンツァネッラがお勧めのフィレンツェのオステリーア、ダ・ブルデDA BURDE↓
詳しくは(今月のCIR/P.41)




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2022年7月20日水曜日

紀元1100年ごろ、ピサは敵対するフィレンツェの港を封鎖して塩の貿易を止めた。その結果生まれたのが、後にフィレンツェの食文化のベースとなる塩気のないパン、パーネ・ショッコ。

今日はトスカーナのパンの話。
パンは、文明のベースとしてトスカーナの食文化と深く結びついているだけでなく、キリスト教では神の愛やキリストの奇跡の象徴でした。

塩気のないパンさらに、トスカーナの塩気のないパン、パーネ・ショッコpane scioccoは、フィレンツェの象徴でもあります。


パーネ・ショッコ誕生のいきさつには諸説ありますが、よく知られているのが、中世、紀元1100年ごろ、フィレンツェとピサが戦っていた時、ピサの港の船の貿易を妨害して、街に塩が入らないようにしたため、という説。なんだかどこかで聞いたような話ですねえ。
でも、フィレンツェは農民の街、贅沢はせずに手に入るものでなんとかする、じっと耐えていればいずれは、という精神が行き渡っていました。
そしてもちろん、堅くなったパンや残ったパンも、一切を無駄にせず、美味しくいただく、という精神から、パッパ・アル・ポモドーロpappa al pomodoroやパンツァネッラpanzanellaといったフィレンツェの庶民料理の定番が生まれます。
イタリアの偉大な詩人、ダンテは、故郷フィレンツェの街を二分する争いに巻き込まれてフィレンツェから永久追放されます。ダンテは、『新曲』の中で、いつかフィレンツェに戻ってパーネ・ショッコを再び食べるとができる、という予言まで登場させてパーネ・ショッコ愛を語っているのです。
パーネ・ショッコとフィレンツェはこんなにも強く結びついていました。
パーネ・ショッコの料理には美味しくて、シンプルで、経済的というトスカーナ料理のエッセンスが詰まっています。
さらに食卓の中央に盛って、どんな料理にも合わせられる、という利点もありました。

パーネ・トスカーノDOP↓
パーネ・トスカーノpane toscano↓



材料
2番の軟質小麦粉・・1㎏
水・・600g
サワードウ・・300g

・小麦粉、サワードウ、水を混ぜて冷蔵庫で8時間発酵させる。
・打ち粉をした台でまとめて型に入れ、3時間発酵させる。
・クープを入れて240℃のオーブンで50分焼く。

パーネ・トスカーノは精製の粗い軟質小麦粉のサワードウのパン。




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2022年7月18日月曜日

パーネ・クンツァートのベースは皿より大きなシチリアのセモリナ粉のサワードウの焼き立てパン。

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きのう、サリーナ島のパーネ・クンツァート、別名クンツァート・エオリアーナを調べていて、シチリアの観光客向けのパーネ・クンツァートとは、造られた背景が違うもの、ということにようやく気が付きました。
パーネ・クンツァートは、貧しくて質素なパンの食べ方なのです。
シチリアを代表するワイナリー、プラネタのシチリア料理の本、

シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ
によると、パーネ・クンツァートはかなり質素で貧しいパン、とあります。

シチリアのパンの美味しさは、初めてあのごま付きパンを一口食べた時から感じていました。あんなにおいしいパンなら、あれこれ豪華な味付けをしなくても、十分美味しいはず。
この料理の本質は、パンにあったのでした。
シチリア料理のお勧め本、『グイド・トンマージのクチーナ・シチリアーナ

には、オーブンから出した熱々のパンを調味する最もシンプルで美味しい方法は、2段に切ってEVオリーブオイルをたっぷりかけて、塩とオレガノ少々を散らし、黒オリーブ数粒を加えればよい、とあります。


本に載っているパーネ・クンツァートのリチェッタは、パンを作るところから始まります。
この料理の基本は、パンです。

シチリアのパンと言えば、ごま付きパンのパーネ・マファルデPANE MAFALDE。
皿より大きなサワードウのパン。
シチリアのアラブ時代を想起させるマファルデは、とぐろを巻いた蛇のような形が特徴。モルトの香りとジュジュッレナーレgiuggiulena(シチリア系アラビア語でごまという意味)付き、クラムは柔らかいが、硬質小麦特有の腰もある。
あの形は、蛇のような棒状にした生地をくねくねと折りたたみ、最後に尻尾で全体にくるっと巻き付ける。



シチリアの家庭での伝統的なパン作りとパーネ・クンツァート↓

パーネ・クンツァート作りは、夜にサワードウ(crescente)に小麦粉と水を足し、ドーナッツ形にして発酵させる。そして翌朝、生地を焼く。

パンとキリスト教は強く結びついている。
パンは貧しさのシンボルで、友情や平和、分かち合いのシンボル、さらには聖なるもののシンボル。
次回はトスカーナのパンの話。


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2022年7月17日日曜日

パーネ・クンツァートは漁師のパンのサラダをサリーナ島のシェフが見栄えを意識して盛りに盛った結果、島の名物料理にまでなった大人気の1品。

シチリア名物の超ジャンボサイズのサンドイッチ、パーネ・クンツァート。
でも、この具沢山ぶりは、シチリアの庶民料理として愛される食べ物としては、具を山盛りにする巨大なサンドイッチというのは贅沢すぎて違和感だらけ。
観光客向けに盛られているのかも・・・。
サリーナ島のレストラン、ダ・アルフレードが考案して有名にし、島の名物にまでなったパーネ・クンツァートpane cunzato。店の2代目が説明するにはもともとは古い漁師料理で、夜にありあわせの材料とあぶったセモリナ粉のパン、ケッパー、オリーブ、玉ねぎ、アンチョビ、オレガノ、バジリコで作る山盛りのサラダがベース。これを現代風に見栄えよくしたのが今のパーネ・クンツァートだそうです。
ダ・アルフレードのパーネ・クンツァート。あとグラニータもお勧め。↓

今月の(CIR)P.25の“サリーナ島”の記事によると、サリーナ島とは、ぶどう畑やオリーブ畑に覆われた、生物多様性を実感できる農業の島。
下の動画は豊かな野菜とケッパーに、地元のパンを加えたエオリアン・サラダ。
地元のパンは、Pane caliatuというパンで、パン屋が20日ごとに焼くそうです。
たぶん、パーネ・クンツァートの原型。
つまりこれが庶民のパン。日持ちが良いことが絶対条件なのでオーブンに入れっぱなしにして水分を飛ばします。

ということは、トマトの汁やオリーブオイルをよく吸うはず。

おまけの動画は記事でも紹介していたミシュランで最優秀女性シェフに選ばれたマルティーナ・カルーソ。

タスカ・ダルメリータのホテル・レストラン、Capofaro Malvasia & Resort




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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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2022年7月16日土曜日

美しい名作イタリア映画のロケ地は大体世界遺産の観光名所。名物は何かを調べてから聖地巡礼に。

(CIR)9月号から、今月の観光ガイドはサリーナ島です。
シチリアから船に乗り換えて行く、上級者向けの世界自然遺産のエオリエ諸島の島。
salina ↓



シチリアに着くまでは行き方もわからなかったけど、メッシーナ県のミラッツォMilazzoから船で1時間だそうで、ミラッツォというのも古代ギリシャによって造られた素晴らしいところのようです↓


ミラッツォはシチリアのサンドイッチことパーネ・クンツァートが名物。
パーネ・クンツァート祭り↓も開かれます。



サリーナ島は映画『イル・ポスティーノ』の舞台になった島として知られています。でも確か、あの映画はカプリ島のそばのプロチダ島でロケしたんじゃ・・・。

プロチダ島↓


とにかく美しい映画でした。
サリーナ島の名物は、パッシートワインとケッパー。

サリーナ島のケッパー↓

サリーナのリストランテ・ダ・アルフレードのパーネ・クンツァート。

リチェッタは次回。


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2022年7月15日金曜日

かなり見栄えにインパクトがある紫芋のニョッキ。

ニョッキはイタリアのおばあちゃんの料理のイメージを代表する素朴で家庭的な料理。
その一方で、イタリア中に広まって、各地の名物食材と組み合わせられて、シェフの腕を感じるアルタ・クチーナの料理にもなった。
グイド・トンマージのミニ料理書シリーズ、“ピッコロ・スプンティーニ”の一冊、『ジョべディ・ニョッキ

には、“シイタケのソースの紫芋のニョッキ”という、インパクト大き目のニョッキが載っていました。
紫芋のニョッキGnocchi di patate viola

材料/
紫芋・・500g
小麦粉・・300g
卵・・1個

・ニョッキの材料をこねる。小麦粉の量は芋の質によって変わる。まな板を使うと芋の紫色が移るので使っていない。生地が手につかなくなったら粉をまぶして30分休ませる。
・生地を一部切り取って中央から端に向かって転がしながら棒状に伸ばす。
・たっぷり打ち粉をして小さく切り、軽く転がして丸める。

シーフードにも合います。車エビのソースの紫芋のニョッキ↓

・エビの殻をソッフリットにし、白ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・殻を取り出し、車エビとドライトマトを加える。
・ポロネギを薄い輪切りにし、小麦粉をまぶして揚げる。小麦粉はグルテンフリーのもの。
・ニョッキをゆでて皿に盛り付け、エビとドライトマトを添えてポロネギをのせる。

ちなみに、今月の(CIR)のニョッキは“アンズ茸のニョッキ”P.10です。
ニョッキに使うじゃがいもの品種は、ビンチBintjeかデジレDesirée種と指定されていました。どうやらこれらがイタリアの一般的なじゅがいもの品種のようです。
じゃがいもの動画はフランス語のものが圧倒的に多くなります。
さらに、フライはベルギーのもの。ベルギーのフライの一般的なじゃがいもはビンチです。外側はカリッと、内側はホクホクに揚がるのだそうです。じゃがいもの太さはストリートフードとして持ち歩いても冷めにくい11㎜。

文化の厚みが違う。

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よもぎはドイツ語ではベアムート。かっこよくてお餅につける名前じゃないよね。トリノでパティシエが白ワインとよもぎから作りだしたのがベルモット。

今日のお題は、メイド・イン・イタリーの食材です。(CIR2022年1月号P.37の記事) その食材は、ベルモット。ピエモンテ州トリノで誕生したフレーバード・ワインです。 白ワインにスパイスとハーブを加えて香りをつけたもの。 ところで、ベルモットはドイツ語の“ヨモギWermut”が...