2022年7月12日火曜日

じゃがいもは庶民的な食材だけど、世界中に広まった歴史は国によって事情が違ってなかなか面白い。イタリアへはジェノバを包囲したフランス軍によって伝わったとか。

今日の料理はじゃがいものトルタ・サラータ、“トルタ・バチョッカtorta Baciocca”。
リグーリアの伝統料理です。日本語のリチェッタは、今月の(CIR,P.11)

下の動画はリグーリアの伝統料理のリーダー的店。ジェノバのラ・ブリンカla Brincaのバチョッカ。

この店はスローフード、ミシュランなど、各種の団体が高く推薦する有名店で、リグーリア料理どころかイタリア料理のこともろくに知らない頃に、ジェノバ観光のついでにいきなり立ち寄ったことがあります。
畑に囲まれたリグーリア内陸部の素晴らしい環境の中にポツンとあるこの店では、観光客にも一切忖度しない、渋~い伝統料理を出していました。その料理の知識がまったくないド素人には、自分が一体何を食べているのか、想像もできずに、ただ胃袋に流し込んだだけという、とてももったいない経験となりました。


この料理の主役は店の畑で栽培した“クアランティーナquarantina”という、味がよくてどんな料理にも使えるというジェノバで一番重要なじゃがいも。標高300m以上の砂がちの山の土壌に適したジェノバ内陸部でもっとも古くから栽培されているじゃがいもですが、一度消滅しかけ、スローフードの保護食材に指定されています。地元の小さな2軒の農家によって復活した実が白いじゃがいもです。ラ・ブリンカでは、赤玉ねぎ、オリーブオイル、ジャム、蜂蜜、ハーブ、白いんげん、ビオのレッドカラントやトウモロコシもこうした農家から仕入れています。

パターテ・クアランティーナ↓
じやがいもは南米からスペイン経由でジェノバに伝わりました。
栽培しやすく栄養価が高く、価格が安いじゃがいもが広く普及してヨーロッパの飢餓を救ったのは、フランス人のパルマンティエという天才農学者のおかげ。彼はパリ郊外にじゃがいも畑を作り、見張りは昼間に3名だけつけて、夜は泥棒にじゃがいもを盗ませ放題にしたのだそうです。こうしてパリにじゃがいもが広まりました。パルマンティエがいなかったイタリアには、18世紀末、ジェノバがフランス軍によって包囲される戦争の際に広まったと言われています。オーストリア継承戦争中の戦いで、ジェノバがスペイン、フランスと同盟してオーストリア、イギリス、サルデーニャと戦ったという、誰が敵なんだかさえ分からない複雑なヨーロッパの戦争の最中の話でした。バチョッカはリグーリアを代表するじゃがいも料理だそうです。

ビーコ・エクエンセ(ナポリ)の自家菜園で栽培した食材と母親のリチェッタの料理で知られるシェフ、ペッペ・グイダのじゃがいものトルタ。


ナポリではじゃがいものトルタはガットー・ディ・パターテGattò di patateと呼びます。
語源はフランス語のガトーgateau。フランス人料理人、モンズが伝えた料理の証。

リチェッタは
・ゆでて潰したじゃがいもに卵3個と小さく切ったサラミとモッツァレラ、おろしたパルミジャーノ、こしょう少々、牛乳少々を加えます。
・型の内側にバターを塗ってパン粉をまぶす。
・混ぜた材料を入れて平らにし、パン粉とバターの小片を散らし、(ピッツァ窯か)170℃のオーブンで20~25分焼く。

じゃがいもと組み合わせる定番バッカラ料理。baccala e patate。

材料/2人分
塩抜きしたバッカラ・・400g
トマト・・6個
じゃがいも・・150g
玉ねぎ・・1/2個
イタリアンパセリ
松の実、レーズン
にんにく・・1かけ
EVオリーブオイル

・鍋に油、にんにく1/2かけ、玉ねぎの薄切り、イタリアンパセリの茎をソッフリットにし、皮を湯むきしてくし切りにしたトマトを加えてイタリアンパセリの茎とにんにくを取り除く。唐辛子の小口切りを加える。
・筒切りにしたバッカラを加える。小さく切ったじゃがいもをのせてレーズン、松の実、イタリアンパセリのみじん切りを加え、蓋をして混ぜずに鍋を揺すりながら20分煮る。



おまけの一品。バッカラのナポリ風。
北海の魚が地中海風味になる1品。バッカラ・アッラ・ナポレターナ。

材料/
戻したバッカラ・・1㎏
ホールトマト・・600g
オリーブ・・100g
ケッパー・・25g
にんにく・・1かけ
ドライオレガノ
唐辛子・・2本
松の実・・15g
小麦粉、塩
EVオリーブオイル
ピーナッツ油

・戻したバッカラを同じ厚さにして同じ大きさの4~6つに切る。
・揚げ油を熱する。
・皮目に軽く切り込みを入れ(皮を取ると崩れやすくなる)、小麦粉をまぶして揚げる。薄く色がついたら取り出す。揚げすぎない。
・トマトソースを作る。フライパンに油とにんにく1かけを熱し、小口切りにした唐辛子を加える。手で崩したトマト(またはパッサータと崩したフレッシュトマト)を加えて中~弱火で3~4分煮る。
・にんにくを取り除き、ガエタオリーブ、ケッパー、松の実、オレガノと塩少々を加える。
・オーブン皿にトマトソースを少量敷き、揚げたバッカラを適度な大きさに切って皮を下にして入れる。トマトソースで覆い、180℃のオーブンで20分焼く。


=====================================
イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
[creapasso.comへ戻る]
=====================================

0 件のコメント:

ブッラータはプーリア以外の地方の定番料理にもよく合います。コクとフレッシュさが同時にあるこのチーズは、成功するマーケティングを研究した魔法使いが生み出したようなチーズ。

今月の(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)の食材の記事は、“ブッラータとモッツァレラ”。 リチェッタも数品紹介されています。 1品目はブッラータのジェラート。 純白のジェラートで、見た目はとても美しいのですが、残念ながらブッラータのジェラートの動画は見つからなかったの...