2023年2月28日火曜日

リゾット・アル・サルトはスキレットに盛り付けるとぴったり。

今日の料理は“リゾット・アル・サルトのフォンドゥータがけ”(リチェッタの日本語訳はCIR2月号P.7)。
この料理の写真はユニークでした。この料理は、リゾットだけどリゾットじゃないので、普通にスープ皿に盛り付けることができません。皿じゃなくてフライパンに盛り付けます。
クチーナ・ミラネーゼ』に

よると、リゾット・アル・サルトは前日のリゾット・ミラネーゼ。残り物のリゾット・ミラネーゼをこんがり焼いたトルタです。
“リゾット・アル・サルト”はミラノのトラットリアで人気のとても庶民的な料理。

ミラノの老舗トラットリアのリゾット・アル・サルト。

普通に皿に盛り付けていますが、CIRの写真ではスキレットに盛り付けています。皿より小さなスキレットですが、リゾットはジャストサイズで大分おさまりが良さそう。さらにその上に熱々のフォンドゥータをかけます。

スキレットは知ってしまうとそのぴったり感から皿にはもう盛り付けられなくなるかも。


ところで、リゾット・ミラネーゼはイタリア料理の基本の一品。一度マスターすればどんどんアレンジができる調理方法です。クラシックなリゾットはパルミジャーノのリゾットとリゾット・ミラネーゼ。この黄色いリゾットで、イタリアのリゾットは赤いチキンライスではなく、サフランの黄色をしていることを知り、スープのブロード・ディ・カルネのとり方を学びます。

リゾット・アッラ・ミラネーゼ

パルミジャーノのリゾット。

ちなみにカルロ・クラッコシェフの本、『クールにしたいならエシャロットを使う
ですが、このかっこいいタイトルは、サフランのリゾットのリチェッタを説明する時に、「まず玉ねぎをみじん切りにしますが、クールにしたいならエシャロットを使います」と言っているところからつけられたタイトルです。この本はシェフが若手料理人に自らの経験を伝えようとするイタリア料理書の教本です。
サフランのリゾットはレベル1の料理で、基本中の基本。

サフランは、アラブのスパイスです。パスタもアラブ生まれの食べ物ですが、日本はアラブとは繋がりが薄かったので、パスタもサフランもアラブ経由では入って来ませんでした。スペインでは10世紀頃から栽培されていて、古代ギリシャ人も古代ローマ人もサフランを知っていました。
イタリアにはスペイン経由でサフランが入ってきました。様々な米料理に黄色い着色料としてサフランは使われていましたが、もちろんリゾット・ミラネーゼがサフランを使った一番有名な料理です。1kgのサフランを作るにはクロッカスの花が10万個は必要と言われて、とても高価なものでした。
下の動画はサフランの収穫。
サフランは湿気が大敵なので摘んだ花は風通しがよいかごに入れました。花を摘むのは手が小さな女性の仕事。ただし雌しべではなく花ごと摘み取ります。

そしてリゾット・アル・サルトにフォンドゥータをかけて完成。
フォンドゥータは具のないリゾットに最適のフォンティーナチーズのソース。
フォンドゥータ。

次回はクラッコのリチェッタを訳してみます。

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2023年2月27日月曜日

パルマよりなすとの結びつきのほうが強い料理、パルミジャーナ。

今日の料理は“アーティチョークのパルミジャーナparmigiana di carciofi”です(リチェッタはCIR2月号、P.6)。パルミジャーナの説明のお約束と言えば、この料理はパルマとは何の関係もありません、ということ。
パルミジャーナはトラットリアの定番料理になるほど愛されているイタリア料理で、特に人気なのが“なすのパルミジャーナ”。
この料理は、パルマやパルミジャーノよりはなすとの関係のほうが強い料理。ほぼなすの料理と思われている感もあります。

 なすはスペイン人によってナポリに伝わったと言われていて、おなじくパルミジャーノが普及しているシチリアと、料理のルーツについてナポリ対シチリアの大人気ない論争の元になったりしています。この2つの街は、中世にシチリア王国が2つに分離した際にも、どちらもシチリア王国の本家の立場を譲らず、両シチリア王国という名前が誕生したという因縁の国。
 そもそも両者は似ているけど違うというのが両者の言い分。性格も歴史もそっくりの2つの地方。よそ者は頑固なシチリア人かナポリ人にコテンパに論破されて、入る余地もありません。

ナポリ風なすのパルミジャーナ。

シチリア風パルミジャーナ。

違い、わかりますか?
この料理はなすのほろ苦さとフレッシュトマトのパッサータの酸味の組み合わせ。各層に砂糖を薄く散らすのは味を中和させるため。なので当然ながらなすの味がポイント。
パルミジャーナはなすだけでなく、ズッキーニなど、他の野菜でもできます。アーティチョークのパルミジャーナは、実はナポリの伝統料理。
ナポリのアーティチョークのパルミジャーナ。

ジョルジョーネのズッキーニのパルミジャーナ。

オーブンで焼いてきっちり四角にカットしたパルミジャーナはラザーニャに似ています。
そういえば、ナポリではラザーニャはカーニバルの食べ物、という伝統があります。今頃食べているかも・・。
下の動画はラザーニャの本家、ボローニャとナポリのカーニバルのラザーニャのリチェッタを比べたもの。両者には大きな違いがあります。似てるけど違うのです。動画ではさらっとやり過ごしていたので気がつかないかも。
答えはパスタです。ボローニャは軟質小麦粉のほうれん草入り手打ちパスタ。ナポリは硬質小麦粉の乾麺のパスタを使います。詰め物に欠かせないラグーですが、ナポリのラグーの話をすると、また別の料理の話になるので、きょうはこの辺で・・・。

ナポリのラグー、ジェノベーゼ。

パルミジャーナがパルマとなんの関係もないのと同様、ジェノベーゼもジェノバとは何の関係もないナポリ料理。というか、正確には最近の研究では、アラブからシチリアに伝わったパスタを広めたのはジェノバの商人だったということにが分かっています。ジェノべーゼ(ジェノバ人)はナポリの人にとっては足を向けて眠れない、ナポリ繁栄の基礎を作ってくれた人たち。でも、それがラグーとどう結びつくのかは相変わらず不明。

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2023年2月25日土曜日

サルデーニャのアサリとイセエビ。

フレーゴラの話、今日はリチェッタです。
フレーゴラはセモリナ粉から作るサルデーニャのクスクスのような食べ物。
フレーゴラのスーゴの定番はアサリ。
普通クスクスは蒸して作りますが、フレーグラはリゾッタートというリゾットと同じ方法で作ります。
この調理方法は最近ではパスタで応用する人も増えています。

アサリのフレーゴラFREGOLA CON ARSELLE

アサリ・・1kg
小さく切ったホールトマト・・150g
白ワイン・・50g
にんにく・・2かけ
塩、黒こしょう
イタリアンパセリのみじん切り・・大さじ1
EVオリーブオイル

・アサリを砂抜きする。
・ソテーパンを熱し、油少々とにんにく1かけを加える。
・アサリとワインを加えて蓋をし、火を強めて時々揺すりながら4〜5分熱する。貝が開いたら汁を濾す。アサリの半分は殻から出す。
・ソテーパンを熱して油とにんにく1かけを鍋底にこすり付けながら熱する。にんにくを取り除き、刻んだトマトを加えてなじませる。フレーゴラを加え、アサリの汁少々をかける。水気がなくなったらアサリの汁をかけながらリゾットの要領で煮る。
・塩、こしょうで味を整え、アサリの汁がなくなったら水を加えながら煮る。フレーゴラがほぼ煮上がったらアサリを加える。仕上げにイタリアンパセリを散らす。
サルデーニャは美味しいアサリが採れる島。
特にオリスタノ湾のアサリは有名。

オリスタの湾の潟地方にある漁村マルチェッディ。

アサリもいいけど、サルデーニャといえば、イセエビ(ARAGOSTA/アラゴスタ)。この島のイセエビを食べるために、世界中から人がやって来ます。
島北部の豊かなプランクトンや海藻を食べたイセエビは地中海で一番美味しいと信じられています。
海の女王と呼ばれるサルデーニャのイセエビ。

食材が高級になると動画はぐっと減ります。
サルデーニャのイセエビの代わりになりそうなのが、シチリアのマザーラ・デル・バッロのガンベロ・ロッソのフレーゴラfregola con gambero rosso di Mazzara del ballo e zafferatoのこの動画。


もちろん、小さなイセエビやスカンピなど他の甲殻類のフレーゴラも劣らずゴージャス。

・葉玉ねぎ、セロリ、にんじんでブロードを取る。サフランを加える。
・エビは頭と背わたを取る。
・葉玉ねぎのみじん切りを油でソッフリットにし、海老の頭とフレーゴラを加えて炒める。
・香味野菜のブロードをかけリゾッタートにし、エビの頭を取り除く。仕上げに油を回しかけて皿に盛り付け、生のエビを盛り付ける。

フレーゴラの調理方法はほぼ米と一緒。高級な甲殻類はデリケートな甘い味なので、結局生が一番美味しい。という結論でしょうか。ただし、火を通したイセエビの鮮やかな赤い色は、宝石のようです。

フレーゴラはサルシッチャやポルチーニのスーゴも定番。

フレーゴラはたくさんある美しいサルデーニャのパスタの一つ。
下の動画はサルデーニャの人気店、リストランテ・ダ・レンツォのレンツォ・コロナシェフが語るサルデーニャのパスタ。シェフはオリスターノの自らのパスティフィーチョでサルデーニャのパスタを製造販売している。

サルデーニャのパスタに足を踏み入れたら、次はサルデーニャのパン。
はまります。

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2023年2月24日金曜日

移民の街、ボストンのノースエンドは一種のリトルイタリーで、フレーゴラのようなイタリアでも珍しい地方料理がこの街では生き残った。

今日の(CIR)の料理はブリーモの“サルシッチャときのこのフレーゴラ”(日本語訳はP.5)。
フレーゴラは言うまでもなく、クスクスによく似たサルデーニャの名物料理です。

カンピダ―ノのフレーゴラ。
セモリナ粉、水、塩を手でこすり合わせてクスクスよりやや大きな粒状にし、天日で干してオーブンでトーストし(トーストすることによって独特の色と香りが生まれる)、リゾッタートの方法で煮るという、かなり複雑な手順で作るパスタですが、サルデーニャでは乾麺が出回ってます。


シドニーはイタリア人の大きなコミュニティーがある街。イタリア料理店のメニューもかなり本格的な地方料理。イタリア系と見える方々がすごく厳しく真剣にチェックしてます。
オーストラリアのイタリア料理、独自の進化をしているかも。

フレーゴラの発祥地はサルデーニャのカンピダーノ。イタリアのトラットリアの定番料理を紹介する記事に、しれっと紛れ込んでいる全然知られていないサルデーニャ料理。トラットリアの人気料理なのに知名度は低い、という矛盾の答えを探していたら、『トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ』という傑作だけど売り切れている本に、フレーゴラはイタリアから輸出されてシドニーからボストンへと伝わって大ヒットしたイタリアの食材の一つ、という記述がありました。
オーストラリアはイタリアからの移民が多かった国です。

イタリア料理は移民と共にシドニー→ボストンへと伝わっていきました。
ボストン。

ボストンのノースエンドはリトルイタリーのようなアメリカ最大のイタリア人コミュニティーがあることで知られる街です。

ノースエンドのイタリア食材店。行ってみたい!

今ではイタリア系アメリカ人も裕福になって裕福な地区に住むようになり、都市化が進み、ほとんど同化しているそうです。でも逆に、このような地区の食料品店でしかお目にかかれないイタリア料理もあるのかも。
フレーゴラはそんな1品なのですね。

ノースエンドのイタリア人家族。

その暮らしは故郷と強く結びついていました。

シドニーのイタリア料理。

フレーゴラはサルデーニャ料理であると同時に、移民のふるさとの料理でもあるのでした。




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2023年2月22日水曜日

オニオングラタンスープはカテリーナ・ディ・メディチがフランスに伝えたと言われているトスカーナ料理。トスカーナではカラバッチャと呼ばれている。

今日の料理は、“フィノッキオとサボイキャベツのズッパ、スペック入り”(CIR2月号P.5)です。
この料理は、その写真を見た瞬間に、真っ白いスープカップの下に赤いチェックのクロスを敷いた盛り付けに釘付けになりました。

このカップはフランス料理ではオニオングラタンスープに使われるライオンの頭付きのデザインのものです。

オニオングラタンスープ。

昔からこのきれいなスープ皿は大好きでした。
何故かオニオン・グラタン・スープといえばこの皿。
フランス料理を代表するスープですが、この料理は、イタリアではトスカーナ料理として有名。別名“カラバッチャcarabaccia”とも呼ばれていますが、そのルーツはカテリーナ・デ・メディチが結婚した時にフランスに伝えた料理として知られています。
そんな高級フレンチの一品が、ライオンの頭付きスープカップでサーブしても下に赤いチェックを敷くだけでこれ以上はないイタリア料理になっているので驚きました。
上の動画は本家争いをしているフランスとイタリアのシェフが作るオニオン・グラタン・スープ。
トスカーナ料理のカラバッチャは質素な農民料理。香味野菜のスープです。この
ライオンヘッドのスープカップはライオンの頭の美しさがポイント。イタリアの陶器メーカーなら業務用ラインに必ず入っているので、トスカーナあたりだったら日本で買うより美しいものが手に入るかも。イタリアで見かけたら買いです。

玉ねぎのグラタンスープは冬の農民料理の典型。

フィノッキオとサボイキャベツのズッパは、北イタリア版冬の農民スープ。

キャベツのスープも(CIR)のリチェッタのようにスペックを浮かべると途端に上品な一品に。
黒キャベツ入りならトスカーナ風。

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2023年2月21日火曜日

シチリアではタコのアッラ・ルチャーナはアッラ・ムラーティと呼ぶ。これは実はピエモンテの牛肉の調理方法、ブラサートと同じだった。

今月の(CIR)のリチェッタ、“タコこのワイン煮のパッパルデッレ”(P.4)のために、タコのリチェッタを調べると、アッフォガート、ウブリアーコ、ルチアーナ、ブラザーレなど、色々見つかりましたが、すべてに共通しているのがアッラ・ルチアーナ(サンタ・ルチア風)。
タコはアサリと共にナポリ湾の銘産物で、ナポリ人にとても愛されている軟体動物なのでした。ボンゴレに匹敵する人気パスタが、ナポリのタコ漁師が多く住むサンタ・ルチア地区発祥のタコのアッラ・ルチアーナのパスタ。

これらのパスタはいわばロッソ。
ビアンコのタコのパスタもありました。
ナポリを代表するシーフードと組み合わせる野菜と言えばこれ、ズッキーニ。
“タコとズッキーニのリングイーネLinguine con Polpo e zucchini”です。


冷凍のタコを使い、スーゴをコーンスターチでつないでいます。

次の動画はタコのルチャーナのシチリア風。シチリアではルチャーナことをムラーティ muratiと呼びます。

小ダコのアッラ・ムラーティ。

漁師さんのシチリアなまり、カッコいいけど何言ってるのかさっぱりわからなくて頭に入ってこない・・・。

ムラーティとは石工のことなので、タコを鍋の中で密閉して煮る様子が石工さんの石を積み重ねて接着する作業に似ていたから、こう呼ばれるようになったのかな、なんて推測してます。密閉して少量のワインと共に弱火で煮る料理なら、ピエモンテの牛肉の調理方法、ブラザートに似ています。
ブラザーレは炭が語源の調理方法。つまり暖炉でコトコト料理することを意味しています。さらに暖炉では炭を密閉した鍋の上にのせて上下からの熱で焼くこともできます。
密閉した容器でことこと煮るのは、南ではラグーを作るときの調理方法です。

牛肉のバローロのブラザート。


タコのブラサート。
北のシェフが南の要素を一切感じさせずにタコを調理します。なまってない。


タコのラグーのパスタ。

材料/4人分
好みのパスタ・・400g
タコ(24~最低48時間冷凍して繊維を柔らかくする)・・800g
にんじん・・1本
玉ねぎ・・1/2個
赤ワイン・・1カップ
セロリ・・1本
にんにく・・1かけ
トマトペースト・・大さじ1
トマトのパッサータ・・大さじ4
イタリアンパセリ・・1房
EVオリーブオイル、塩

・タコを同じ大きさに小さく切る。
・フライパンに油と潰したにんにく1かけ、イタリアンパセリの茎を1~2分ソッフリットにし、タコを加えて30分炒める。イタリアンパセリの茎とにんにくを取り出す。
・赤ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・粗く刻んだセロリ、にんじん、玉ねぎ、トマトペースト、トマトのパッサータを加えて煮る。
・イタリアンパセリのみじん切りと唐辛子、ゆで上がったパスタ、ゆで汁少々を加えてマンテカーレする。
・皿に盛り付けてイタリアンパセリ、唐辛子、レモンの皮のすりおろし少々を加える。

軟体動物のラグー、美味しそう・・・。

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2023年2月20日月曜日

タコのスーゴをスパゲッティのソースにするのはサンタ・ルチアの伝統。煮過ぎないようにタコもトマトも小型のものを使います。

(CIR)2月号のリチェッタ、今日からはプリーモです。
トラットリアで人気のパスタに選ばれたのは“タコのワイン煮のパッパルデッレ”(P.4)と、
ちょっと意外。
タコと言えばサンタ・ルチア風ことアッラ・ルチアーナalla luciana。サンタ・ルチア生まれのナポリの古い人気メニューです。ポルピ・アッフォガーティpolpi affogatiとも言います。ナポリの人気料理と言うことは、イタリア料理のシンボル的人気料理ということ。
ポイントは新鮮なタコを使うということ。捕りたてのタコは、色も味も香りも歯ごたえも最高ですが、時間がたつと質が落ちます。タコは1杯100~200gの小型のもの。
煮汁で煮るのではなく、タコの水分で煮るのがサンタ・ルチア風。ちなみに私がナポリで食べた最初のセコンドが、タコのアッフォガート。生まれて初めてタコを頭から足まで1匹丸ごと食べました。小さなタコだったけど、ペロッといただきました。

テラコッタの鍋で唐辛子とトマトで煮て、あぶったクロスティーニを添えて前菜としてサーブします。スーゴをスパゲッティのソースにするのはサンタ・ルチアの伝統。
仕上げにスーゴにパスタを入れてリゾッタートにします。

タコのルチアーナ。

タコのスーゴはシーフードのパスタソースの一種。
シーフードのパスタソソースは、シーフードが生の場合と保存加工したもの(イワシやアンチョビのオイル漬け、塩漬け、ボッタルガ、コラトゥーラなど)の2種類あります。
ほぼすべてにトマトが入ります。魚はアンチョビなど小型のものや青魚などの大衆魚。タコのリチェッタはヤリイカやコウイカなどの他の軟体動物にも適しています。
ナポリ湾のタコの最後はポッツオーリの市場のストリートフード、タコのブロードになります。

タコのブロード。
屋台は最近では見かけなくなりました。

ポッツオーリの魚市場。


ナポリの最後のタコのブロード売り。

庶民のナポリの黄金、ことナポリのお茶、タコのブロードは冬の飲み物。今は姿を消しましたが、10月以降の寒い日なると登場します。

には、ナポリのティンパニ・エ・テンプラのタコのブロードBrodo di polpoのリチェッタが載っています。

材料/7~8人分
タコ・・1杯、1㎏
玉ねぎ・・1個
セロリ・・3本
皮をむいたにんじん・・1本
にんにく・・1かけ
スフザーティ・ディ・アマルフィ・レモン・・2個
黒粒こしょう・・10粒
クローブ・・3個
水・・3ℓ
粗塩・・小さじ1

・大鍋に水、セロリ、にんじん、クローブを刺した玉ねぎ、粒こしょう、塩を入れて弱火にかけ、沸騰したら蓋をせずに45分煮る(ブロード)。
・タコは内臓、嘴、目を取って流水で洗い、沸騰したブロードに入れて再沸騰してから約15分ゆでる。
・タコをざるに取って水気を切り、温かいうちにボールに入れて蓋をする。
・ゆで汁(ブロード)を2ℓに煮詰める。
・レードル2杯の沸騰したブロードをゆでたタコ1片を入れたカップに注ぎ、飲む前にレモン1/4個の汁をかける。

※アマルフィのレモンは甘くて酸味はほとんど感じません。
タコのワイン煮はウブリアーコ(酔っ払い風)とも呼びます。
調べていたら、どんどん面白いリチェッタが見つかったので、続きは次回に。


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2023年2月18日土曜日

ゆでた牛のすねの軟骨、ネルベッティは貴族が食べないので庶民にふるまった部位。そのサラダはミラノやベネチアのオステリアで人気の前菜になった。

今月の(CIR)のリチェッタは、イタリアのトラットリアのプランゾがテーマ。
前菜2品見た時点で気が付いたのは、トラットリアのメニューはイタリア人が大好きな定番料理で構成されていて、地方料理ではあっても、イタリア中の地方料理がある、ということ。
きのうのマスのカルピオーネはロンバルディア料理。そして今日のネルベッティのサラダ(リチェッタはP.3)もロンバルディア料理です。正確にはミラノ料理。
ネルベッティのサラダ。

まず、イタリア語で“ネルヴォnervo”というと“神経”という意味なので、ちょっとどんな食べ物か疑問に思いますが、安心してください。神経は入ってませんよ。
ネルベッティは、子牛のすねの軟骨です。これを香味野菜と一緒に長時間ゆでて型押ししてカットしたもので、ひと昔前は、典型的なオステリア料理の前菜と考えられていました。
かつてはサルメリアで作っていましたが、今はスーパーで売っています。

市販のネルベッティであっという間に作るサラダ。

庶民感がチラチラ見えている料理ですが、中世では、貴族が庶民に気前よくふるまった自分では食べない部分だったのです。ちょっとショックなルーツですが、領主様の気前の良さを現すための道具とはいえ、トラットリアで一杯やりながらつまむネルベッティのサラダは人気の1品になりました。たぶん格安の料理だったのでしょう。

ベネトの料理、サオールと組み合わせた
ネルベッティのサラダのイン・サオールInsalata di nervetti di vitello in saor
というのもあります。
材料/
ネルベッティ・・100g
牡蠣・・12個
セロリ・・2本
トロペアの赤玉ねぎ・・3~4個
りんご酢・・50g
ブラウンシュガー・・30g
土佐酢・・60g
ミスティカンツァ(ミックスハーブ)
エストラゴン
EVオリーブオイル

・セロリを小角切り、玉ねぎを細切りにする。
・小鍋に酢、水(ビネガーの重さの2倍)、ブラウンシュガー、塩一つまみを入れて沸騰させ、セロリを加えて2~3分煮る。セロリを取り出し、玉ねぎを加えて2~3分煮る。
・牡蠣を開けてバットに並べ、バーナーで軽くあぶる。汁は集める。
・ネルベッティを薄く切ってボールに入れ、セロリと玉ねぎを加える。油と牡蠣の汁で調味して皿に盛り付ける。こしょうをかけ、薄くスライスしたネルべッテをかぶせてバーナーであぶる。ミスティカンツァを散らして土佐酢をかける。

アレンジ次第でリストランテの1品にもなるんですね。
この料理のベースは、チケッティの1品、ネルベッティと玉ねぎ。
さらにベネトのオステリア料理、つまりチケッティの本『ピアッティ・エ・チケッティ・ダ・オステリア

にも、ネルベッティと玉ねぎ、という料理が載っていました。これはベネチア料理・・・。


ちなみにこの料理にお勧めのワインはプロセッコだって。


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2023年2月17日金曜日

昔はウナギは活きて市場に届く唯一の魚だった。


今月の(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)前菜の2品目は、lavarello in carpione(ラバレッロ・イン・カルピオーネ)、リチェッタはP.2。
ロンバルディアの料理です。
まずはlavarello。
大きな湖など深くに棲むサケ科の淡水魚で、別名コレゴ—ネcoregoneとも呼ばれます。養殖もされています。体長30㎝ほどの上質の白身魚で、マスの調理方法が適しています。
ロンバルディアは海のない州。でも湖はあれこれあります。

ロンバルディアの湖。


クチーナ・ミラネーゼ

には、ミラノ料理のDNAの中には、バッカラ以外は魚といえば淡水魚、とあります。
そしてミラノではおなじみの淡水魚がイラストでずらっと並んでいます。
養殖の淡水魚はサステナブルでヘルシーな食材として、最近はEU諸国では消費量が70%も伸びているそうです。

ガルダ湖のマスの養殖。

淡水魚の調理方法の代表的なものは、ムニエルやカルピオーネ。

コレゴーネのカルピオーネ。横にいる人はマルケージ氏。

カルピオーネは淡水魚に適した調理方法ですが、海水魚だとベネトのsaor/サオールやスカペーチェscapeceという名前になります。

イワシのイン・サオール。

カルピオーネは北イタリアではウナギの料理として知られています。
ウナギのカルピオーネ。

『クチーナ・ミラネーゼ』には、“ウナギのカルピオーネ”は北イタリアやミラノの定番料理、とあります。産地はコマッキオ湖。
イタリアの川や湖にはウナギがいたとは言え、日本と同じでウナギは生態が謎だらけの魚でした。
確か、イタリアのウナギの産卵場所はメキシコ湾あたりではなかったっけ。
今ではWWFによって消滅の危機にある魚に指定されています。
保護しなければならないほど数も減っているウナギが、なぜイタリアではクリスマスの定番料理になるほど人気なのか、いつも不思議に感じていました。
でも、『クチーナ・ミラネーゼ』の解説を読んで、謎が解けました。
昔はウナギは活きて市場に到着する唯一の魚だったんだって。
採った後長く活きている魚だったのですね。魚は死ぬと傷むので、調理する直前に捌いていました。さらにウナギは脂が多い魚としても知られていました。デリケートで骨を掃除しやすい魚としても人気でした。

ナポリや南イタリアの年末年始はウナギ。

北から南まで、ウナギは実は国中で人気の魚だった。

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2023年2月16日木曜日

ブッラータとプンタレッレは焼き立てじゃないローマ風ピッツァにもブルスケッタにもぴったりの具でした。

(CIR)2月号から、まずは2月のリチェッタですが、2月のリチェッタのテーマは、イタリアのトラットリアのプランゾです。
料理もトラットリアのサーブの仕方が分かるような写真になっています。
テーブルクロスは赤か青のチェック。塩やこしょうなど調味料が載ったトレー、足がないグラスに入ったワインなど、典型的なトラットリア風です。

トラットリアといっても、ちょっとだけフォーマルなものから、あくまでも庶民的な店まで様々です。下の動画はジェノバの店のPV(PVがある時点でかなりフォーマル)、
その下はローマのトラットリアの突っ込みどころ満載の食リポ。ワンポーションの量が信じられないほど山盛りで、フードファイターみたいなカップルが食べきれないほど。山盛りのブカティーニをチュルチュル音を一切立てずに食リポしながら見事にいただいてます。ただ黒いTシャツとジャケットはソースがはねて大変なことに。残ったパスタはお持ち帰りするそうです。食事が終わるとテーブルクロスはビチョビチョ。グラス割ったみたい。どうやらシェフの知り合いだったのでやりたい放題やったみたいですが、ローマでトラットリアやるのは大変ですね。


ローマのトラットリアでは前菜が山盛りのレバーのベネチア風でしたが、(CIR)の前菜は、ブッラータのミニブルスケッタです(リチェッタはP.2)。定番のものはどこの地方のものでもメニューにあるんですね。ブッラータの上にはプンタレッレを載せます。
ちなみにプンタレッレはローマの冬の名物野菜だけあって、ローマのトラットリアでは信じられないくらい山盛りで出てきてましたが、プンタレッレの定番調味はにんにくとアンチョビなので、ブッラータとは相性が良さそう。ついでですが、ブッラータはプーリアの名物チーズ。

インサラータ・ディ・プンタレッレ・アッラ・ロマーナInsalata di puntarelle alla Romana

材料/4人分
プンタレッレ・・800g
アンチョビ・・10枚
EVオリーブオイル
にんにく・・1かけ
塩、ビネガー
こしょう・・2g

・プンタレッレは内側の小さな芽を使う。外側の葉はミネストラに入れたりフライパンで炒めたりにする。芽は薄く切り、たっぷりの氷水に10~15分さらしてカールさせる。芽に残った葉は柔らかいのでそのまま使う。
・にんにく小1片をみじん切りにする。アンチョビを小さく刻む。
・プンタレッレの水気をよく切って別のボールに入れ、にんにくとアンチョビ、EVオリーブオイル、塩、こしょう、ビネガーを加えて混ぜる。これは定番の調味だが、ラズベリービネガーや柑橘フルーツなどを使ってもよい。ベースのソースが味わえるように深さのあるスープ皿に盛り付ける、と言ってますが、これはブルスケッタの場合もにも言えますね。こんがり焼いたブルスケッタにアンチョビソースがしみこんで美味しくなるはず。

(CIR)のリチェッタではブルスケッタは田舎パンの小さなスライスで作りますが、ローマ風ピッツァの第一人者、ガブリエレ・ボンチはブッラータとアンチョビとプンタレッレのピッツァGabriele Bonci - Pizza con burrata acciughe e puntarelleを作ってました。


動画でプンタレッレをスライスしているのはプンタレッレの女王と呼ばれる人。プンタレッレは機械じゃなく手でスライスする、と言ってます。ピッツァは冷めてもカリッと香ばしいように硬質小麦粉を混ぜて使います。

・小麦粉800g、硬質小麦粉200gを混ぜて7gの生イーストか10%の天然酵母、約600mlの水、少量のEVオリーブオイルを加える。
・台に取ってこね、冷蔵庫で24時間休ませる。セモリナ粉の打ち粉をして天板に入れ、トマトのパッサータを広げる。
・最高温の250~270℃のオーブンで10~15分焼く。
・その上にブッラータのストラッチャテッラを広げてアンチョビをのせる。このアンチョビはスペインのカンタブリアのもので塩漬け。カンタブリアのアンチョビは寒い北海で育つので脂がのってると説明してます。
・それを下ごしらえしたプンタレッレで覆い、EVオリーブオイルをまわしかける。

確かにこれは冷たい具がぴったりのピッツァでした。(CIR)のブルスケッタも焼いたパンに具をのせるスタイル。ブッラータやプンタレッレにはぴったりですね。

下の動画はモリーゼ料理の動画。ブッラータとプンタレッレのブルスケッタは、定番化してるのか。生のアンチョビに小麦粉をつけて揚げます。プンタレッレはミニトマトと一緒にオイルとにんにく、唐辛子で炒めます。ブッラータはどかっと切ってどーんと真ん中にのせるので、どうやって食べるのか心配になりました。食べる所、見せてほしかったなあ。

次は今時のプンタレッレとブッラータのクロストーネ。
プンタレッレの女王はきっちり手で切ってたのに、今時の子は、プンタレッレ専用のカッターですとお。まったく。それにそのソースはアンチョビ入りマヨネーズかい。最後の顔を仰ぎながらのどや顔は自分で作った料理を食べる時のお約束。



2023年2月15日水曜日

(CIR)2021年2月号発売しました。カーニバル特集です。

今月号は、カーニバル特集です。
イタリアのカーニバルは、コスプレの本家というか、ハロウィンとは違って格式と伝統が感じられますよね。
2023年のベネチアのカーニバル。
2



今月の(CIR)も面白い生地とリチェッタをたくさん訳しました。
ビジュアル解説は明日からです。

(CIR)は約50ページの小冊子です。価格は1冊\900(税・送料込)、1年12冊の定期購読だと15%引きの\9200(税・送料込)になります。

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2023年2月14日火曜日

農家風と家庭風の違いは重労働に耐えられるスタミナがつく料理かどうか。そう考えるとマスカルポーネのパスタも許せる。

手作りフレッシュチーズの本があったなあと思い出したので、ちらっと見てみました。

フォルマッジ・フレスキ・ファッティ・イン・カーザ
マスカルポーネのページには、マスカルポーネは生クリームで代用できる、といきなり元も子もない話が・・・。

気を取り直してマスカルポーネの作り方を見てみました。

材料は・・・。
生クリーム(できればビオのもの)・・500ml
レモン汁・・大さじ2

これだけです。
シンプルなだけに生クリームの質がすべて。
作り方は、
・生クリームを耐熱容器に入れて湯煎にかけます。
・80℃になったらレモン汁を加えて数分かき混ぜ続けて濃くします。
・サラダボールに入れて6~10時間休ませ、表面にバターミルクが浮かぶのを待ちます。
・これをガーゼをかぶせたシノワで濾して冷蔵庫で最低12時間水気を切る。
・密閉容器に入れて冷蔵庫で5日間保存できる。

次はマスカルポーネを使った料理。
マスカルポーネは加熱すると溶けてしまうので、加熱しない料理に適しています。
逆に香草を加えてゼラチンで固めてババレーゼにし、サーモンマリネではさめば冷たい前菜になります。
ニュートン・クチーナ・レジョナーレ』シリーズのミラノ料理

の本には、“マスカルポーネのマルタリアーティMaltagliati al Mascalpone”のリチェッタが載っていたので訳してみます。

材料/4人分
マルタリアーティ・・400g
バター・・120g
マスカルポーネ・・200g
生グリーンピース・・100g
おろしたパルミジャーノ・・50g
塩、こしょう

・グリーンピースをゆでる。
・たっぷりの熱湯で堅めのアルデンテにパスタをゆでる。
・バター100gを木べらで軽くなるまで練り、マスカルポーネを加えてこしょうを散らす。
・ソテーパンに残りのバター20gを入れてグリーンピースをなじませる。
・パスタの水気を切り、マルカルポーネのスーゴでマンテカーレしてグリーンピースを加える。
・皿に盛り付けてパルミジャーノを散らす。

ちょっと胸やけしそうなので生ほうれん草のパスタでお口直しをどうぞ。
次の動画は生ほうれん草、マスカルポーネ、パンチェッタのマルタリアーティ。
そもそもマルタリアーティはラザーニャやタリアテッレを手打ちした時に残った切り落としの部分。
家庭的というより農家風のパスタ。農家風とは重労働に耐えてスタミナがつくような料理。この料理は、その典型。そう考えるとマスカルポーネとパンチェッタのパスタも許せる。きのうちらっと紹介したストラッチもマルタリアーティの一種。



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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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よもぎはドイツ語ではベアムート。かっこよくてお餅につける名前じゃないよね。トリノでパティシエが白ワインとよもぎから作りだしたのがベルモット。

今日のお題は、メイド・イン・イタリーの食材です。(CIR2022年1月号P.37の記事) その食材は、ベルモット。ピエモンテ州トリノで誕生したフレーバード・ワインです。 白ワインにスパイスとハーブを加えて香りをつけたもの。 ところで、ベルモットはドイツ語の“ヨモギWermut”が...