2023年2月4日土曜日

カンパニア・フィリックスとナポリ湾のアサリ。

トマトのパスタソースの話をする時、ナポリ料理の話は避けては通れません。
イタリア地方料理の傑作シリーズ、“グリバウド・グランデ・クチーナ・レジョナーレ”のカンパーニア州
は、《campania felix》“カンパニア・フィリックス”(幸せなカンパーニア)という有名な言葉から始まる。
起源1世紀の地理学者で、歴史的な大作『地理誌』の作者ストラボンStraboneの言葉です。
世界中を巡って地中海の地理に詳しかったストラボンは、地中海のことをもっとも肥沃な平野、と表現しました。
カンパーニアで造られる穀物、野菜、オイル、ワインなどは、ローマに送られて、ローマ人をはじめとする多くの人がその素晴らしさを知っていました。
気候が温暖で水が豊かで、ベスビオ山の麓の火山性土壌の土地、カンパーニアは、その豊かさが昔から知れ渡っていたのです。
ストラボンのカンパニア・フィリックスという言葉は、あまりにもピッタリな表現で、その地から生み出される料理と共に、世界中に広まったのでした。

幸せなカンパーニアの中でも、今日注目したいのは、2つの湾です。
ベスビオ火山の麓で作られるトマト、そしてナポリ湾とサレルノ湾からとれる海の幸やレモン。世界中の人々を惹きつけてやまない美しい地方です。


このナポリ湾のシンボルと言われているものがあります。
アサリです。昔はたくさんとれましたが、水揚げ高は年々減っているそうです。
大粒で味の強いナポリ湾のアサリは、スパゲッティやピッツァ、ズッパ・ディ・ペッシェには欠かせないものでした。
クチーナ・ディ・ナポリ

によると、ナポリのクラシック料理なので、リチェッタにアレンジを加えることはほとんどない料理です。ただし、ナポリ人は、リングイーネ・ア・ボンゴレa vongoleと呼んで、“コン・レ・ボンゴレcon le vongole”とは呼ばないのだそうです。めんどくさいやつみたいになってますが、誰か分かる人、ナポリ人の心理を解説してください。

ボンゴレのスパゲッティはナポリのクリスマス料理。つまりご馳走。

この料理のポイントはアサリの質。
でも、実はアサリはナポリでは高級品でした。あまりに高価で買えないので、ナポリの人たちは“逃げたアサリ”という料理を考え出して、アサリが入っていないパスタを作りました。ナポリ人、正直者で言葉のセンスもよかった。
逃げたアサリのリングイーネLinguine con vongole "fujute" (Linguine con vongole scappate)。前回紹介した基本のトマトソース、シュエ・シュエがベース。
仕上げにパスタにトッピングしたにんにくとミニトマトが、アサリに見えないこともない、と言ってますが、かなり厳しい。
イタリア料理で逃げるものと言えば小鳥。アサリが逃げたと言うのは笑うとこ。

ウッチェッリ・スカッパーティ。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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