2023年5月31日水曜日

ラビオリを造る麺棒は、別名魔法の麺棒と呼ばれている。製造過程は、まるで伝統工芸品みたい。箱根の寄木細工に似ている。

詰め物入りパスタ、pasta ripienaの一番シンプルな形の一つ、半円形。
シンプルなだけに、詰め物や生地、ソースで創造力を発揮するシェフが多い詰め物パスタです。
北イタリアのお家芸、詰め物入りパスタ。
基本は、軟質小麦粉と卵の生地をできるだけ薄く均一に伸ばすこと。
半円形の詰め物入りパスタは、南チロル地方の伝統料理として知られています。
     南チロルはドイツ語圏。ドイツ語で半円はkrapfen。ちなみにイタリア語ではメッザルーナmezzaluna。


四角いラビオリ用の麺棒状のカッター。魔法の麺棒だって。達成感あるなあ。

まるで寄木細工のような製造方法。この麺棒、伝統工芸品だったとは・・・。ドイツのクラフトマンシップを感じる・・・。これでラビオリ作りたくなる。


詰め物入りパスタの形は、発想次第で様々。

ラビオリメーカーでラビオリ造り。



ラビオリメーカーraviolatoriは均一のラビオリを作るための道具。
少しずつ分かってきたけど、絶対手で作るのは、多分、三角形のラビオリ。
この話は次回です。

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2023年5月30日火曜日

ラビオリの形は2枚の生地で挟んだ詰め物の閉じ方から生まれる。一番シンプルなのは長方形。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2021年4月号のリチェッタ、1品めは、
カプリーノのラビオリ、グリーンピースのブロードがけ(リチェッタの日本語訳はP.4)。

グリーンピースのブロードの鮮やかな緑に、形が美しいラビオリを浮かべた1品。
パスタは小麦粉200gと卵1個の生地に卵黄3個を加えた黄色い生地なのでグリーンピースの緑とよく合います。
ブロードはスープのようにたっぷりではなく、クリームのようにひたひたにパスタにかかっていて、色合いが強調されています。よく考えられた1品です。

ところで、今回のパスタはラビオリです。
スローフードの“スクオラ・ディ・クチーナ”シリーズの“パスタ・フレスキとニョッキ


から、詰め物入りパスタのページを訳してみます。

ラビオリは詰め物入りパスタです。
詰め物入りパスタとは、パスタ・フレスカ、つまり生パスタでもあります。家庭と地方という2つの作業場で考え出され、その中心地エミリア・ロマーニャ州では、ブロード用のパスタとして発展しました。

詰め物入りパスタ各種。

エミリア・ロマーニャの詰め物入りパスタ、トルテッリーニ・ボロニェージ。



パスタの詰め物は、肉と肉が入らないマーグロに大別されます。
形は、四角、長方形、三角、円、半円、半月が一つのグループで、もう一つは“カッペッロcappello”と呼ばれるグループです。カッペッレッティ、カッペッラッチ、アノレッティ、トルテッリーニ、トルテッローニなどが含まれます。今回の(CIR)のリチェッタのパスタはこのタイプ。
さらに特殊な形をしたカルツォンチーニ、ファゴット、クレスタ・ディ・ガッロ、カラメッラ、コーダ、コルドンチーノ、スピゲッタ、トレッチャ、ピッツィコットなどがあります。
他に、各地の伝統や外国のもの、グランシェフの想像力から生まれたものなど、様々です。
ラビオリの違いは詰め物をはさんだ2枚の生地の閉じ方の違いから生まれます。最もシンプルなものは長方形。半月形mezzalunaはやや技術が必要になります。


一見シンプルな長方形ですが、円形を半分に折るだけの半円形と違って、四角形の詰め物入りパスタは、4つの辺の長さを同じにする、ということが必要です。
ぶきっちょだと難しさが理解できるwww。これはフランスのラビオリの特徴で、イタリアにはリグーリアを経由してピエモンテのアスティに伝わりました。リグーリアが出てくると、サボイア家やサルデーニャの歴史とリンクします。ピエモンテでは、四角い詰め物入りパスタはブルジョア風とか都会風と呼んでいました。フランスに対する強烈な皮肉を感じる呼び方です。
裏返して、田舎に住んでると感じてるピエモンテ人は、かなりフランスや都会にコンプレックスをもっていることもわかります。
半円形は、よく知られている通り、イスラムのシンボル。イスラムに征服された経験を持つヨーロッパでは、ちょっと複雑なイメージがある形。でも、征服があれば解放もあるわけで、特に有名なのが、トルコとオーストリアの間の戦い。1683年にウイーンが解放されたときは、半月形にインスピレーションを受けた食べ物があれこれ誕生しました。クロワッサンがその代表。
ドイツ語ではkipfel。イタリア語ではコルネットcornetto。


半円形の詰め物入りパスタは、スッドチロル地方の伝統パスタです。
次回はこの話。
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2023年5月29日月曜日

(CIR)4月号。生物多様性と羊が注目される春。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2020年4月号、6/1に発売予定です。
今月は復活祭の号でしたが、今年は、生物多様性の話題があっちでもこっちでも取り上げられていました。子羊は復活祭のシンボルの一つですが、イタリアは、羊飼いの伝統が受け継がれてきた国。生物多様性への関心も、日本の10倍くらい強い、という印象です。

さすがに日本では見たことない移牧の光景。

移牧を見てみたいという観光客期分を打ち砕いたサルデーニャの羊飼いの映画、『バードレ・パドローネ』1977年のカンヌでパルムドール取ってます。
『バードレ・パドローネ』


生物多様性の中には人間も含まれる、というか、人間も羊も同じ厳しさを生きてる。

次回からは、気を取り直して、4月のリチェッタの話題。



(CIR)は約50ページの小冊子です。価格は1冊\900(税・送料込)、1年12冊の定期購読だと15%引きの\9200(税・送料込)になります。紙版と、ネット上にupするPDF版があります。価格は\800/号、定期購読は\7700/1年12冊です。

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2023年5月27日土曜日

ベネチアのシンボル、イワシのイン・サオールは時間が経つほど美味しくなるバカーロの定番料理。

(CIR4月号)発売直前ですが、4月号の記事“ベルバエーゼ”に、(日本語訳は~P.28)、4月号はベネトがあるので、今、ちょうどブログはベネトの話題だったので、フェイントで、ベネトの内容を解説します。
まず、その州を象徴する料理に選ばれたのは、意外なことに、超庶民派、“イワシのイン・サオール”でした(リチェッタの日本語訳はP.29)。
 イワシのイン・サオールは、
べネチアの伝統的オステリア“バーカリbacari”の定番メニュー。

ベニスのバーカリとチケッティ。
ベネチアに行ったら運河もいいけど、バーカリ巡りを忘れずに。というか、一度足を運んだら、次からはバーカリに行くためにベネチアに行くようになります。チケッティはどれも造ってから2、3日たつと美味しくなる料理。なので、ベネチアにはいるほど美味しくなる、という言い回しがあります。イン・サオールは、別の呼び方をすると、カルピオーネcarpioneやスカペーチェscapece。世界中で昔から使われている魚の保存方法。

イワシのイン・サオール。

バカーロは、下の動画の説明によると、オステリアとパブのミックスで、美味しいワインとベネチアの伝統料理のつみまを出す店。そしてそのメインとなる料理がイワシのイン・サオール。ベネチアの漁師が創り出した、少なくとも翌日に食べる料理だそうです。

ベネチアのバカーリ。


ソアーベでも飲みながらバカリの動画でも見てベネチアに行った気になるか。


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2023年5月26日金曜日

ベネトのこんがらかるワインたち。アマローネ、ヴァルポリチェッラ、レチョート、リパッソ、ソアーベ。

イタリアの州ごとの食文化を紹介する(CIR)の連載記事、《ベルパエーゼ》ですが、ベネトは次号、4月号で取り上げています。ちなみにもうすぐ発売予定です。
この記事は、各州の名物食材、ワイン、料理を紹介する、イタリアで食べ歩きをするにはもってこいのガイドです。ベネトは、とても興味深いワインの産地と紹介されています。世界遺産にもなっているコネッリアーノとバルドッピア―デネのプロセッコ、ソフトでボディーのあるアマローネ、アマローネの絞り粕にヴァルポリチェッラを“リパッソ”して再発酵させるリパッソ、フレッシュで調和がとれたデイリーワイン、ヴァルポリチェッラ、貴重な瞑想のワイン、レチョート、火山性土壌から生まれるソアーベ、などなど。
確かにソアーベやプロセッコなどの超メジャー級もあるんですが、アマローネ、ヴァルポリチェッラ、レチョートといった違いがよくわからないワインもあります。

アマローネとバルポリチェッラ。

アマローネの絞り粕にヴァルポリチェッラを“リパッソ”して再発酵させるリパッソて、なんやねん。
ヴァルポリチェッラ・リパッソ。

 ソアーべはイタリアの白ワインの代名詞となったワイン。心地よい飲みやすさがある一方で、熟成によってエレガントで高級なワインになるという、コストパフォーマンスの良いワイン。レチョートは、ぷどうの房の飛び出した部分を意味する耳という意味の方言、ㇾチエが語源。ソアーベはガルガネガ種のぶどうから造りますが、干したガルガネガから造る甘ワインがレチョート・ディ・ソアーベ。

ボッラのアマローネとリパッソ。

レチョート・デッラ・バルポリチェッラ。

ボッラはソアーベ成功の立役者。戦後すぐに世界中にワインを輸出して主にアメリカで大成功した。

ピエロパンのレチョート・ディ・ソアーベ。
ピエロパンはボッラに続いた造り手の一つ。

ソアーベのお薦めエノテカ・レアルダ。


ワインと食べ歩き観光のポイントになる各地のワインロード。ソアーベのストラーダ・デル・ビーノ。




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2023年5月25日木曜日

ヴァルポリチェッラはラテン語でカンティーナの谷、という意味。アマローネはこの地区とベローナが誇るワイン。

きのうは、“”マグロのうさぎtonno di coniglio”を見つけた時点で面白くなっちゃっいましたが、マグロ料理の話をしてたんじゃないことを危ないところで思い出しました。
そもそも、ピエモンテというところはサボイア家の影響で、広い領地をもつ領主による狩りの伝統があったので、ジビエも広まっていました。
ピエモンテ料理にはまだまだ面白い料理が色々ありますが、気を取り直して(CIR)の話に戻ります。
次号の4月号はもうすぐ発売予定ですが、3月号の最後の記事は、ワインのアマローネでした。記事の日本語訳はP.49。
アマローネができるまで。

このワインの特徴を、『クチーナ・イタリアーナ』誌は、世界の他の偉大な赤ぶどうとアマローネの違いは、アクティブな冬眠状態にある、と表現しています。
アクティブな冬眠とは、分かるようでわからない言葉ですが、この冬眠の間干すことによってぶどうは糖分を始めとする要素が凝縮されます。
ラテン語でカンティーナの谷、という意味のヴァルポリチェッラでは(ちなみに2020年11月号のワインの記事はヴァルポリチェッラでしたP.37)、千年前にこの作業が行われた痕跡があるそうです。長い歴史がある作業です。

ヴァルポリチェッラ。

このヴァルポリチェッラ地区のシンボル的なワインがアマローネです。
今や国際的な人気ワインになりましたが、大きな分類ではベローナの赤。

ということは、ヴァルポリチェッラはベローナが誇るワイン。


ヴァルポリチェッラは生産地区によって違いがあるワイン。
この30年間はアマローネが主流で、他のワイン、つまりヴァルポリチェッラやレチョートは忘れ去られかけている。
ベローナのワインは、ぶどうを干すことから生まれる印象とは遠い心地よさ、柔らかくて、滑らかな後味などが特徴。

アマローネの理想的な相棒は熟成チーズ。肉料理や長時間の煮込み料理、辛いスーゴのスペッツァティーノにも合う。

という訳で、お勧め料理は、ゴルゴンゾーラソースのステーキなど。(CIR)のリチェッタはP.51。
ゴルゴンゾーラソース。

・フライパンを弱火で熱してバターを溶かし、皮を取ったゴルゴンゾーラを加えてとろ火で溶かす。
・ブランデー少々を加えてアルコールでチーズの組織を切り、牛乳少々、塩、こしょうを加えて軽く煮詰める。これをステーキ、パスタ、ニョッキなどにかける。

ゼ―ノのアマローネ。

アマローネのリゾットはベネト名物。(CIR3月号)のリチェッタはP.50。


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2023年5月24日水曜日

フランスの宮廷料理がベースのピエモンテでは、ソースはよく焼いて(ben cotta)よくディグラッサ―タ(ben digrassata)した料理から造った。

さて、今日のお題はヴィテッロ・トンナート。そもそも、子牛料理の話から、入った話題でした。
別名、ヴィテル・トンネとも呼ばれる、とてもフランス風だけど、味は正真正銘イタリアの味のピエモンテ料理。
この子牛料理の特徴はサルサ・トンナータla salsa tonnata。

材料/
オイル漬けツナ・・140g
塩抜きしたケッパー・・40g
レモン汁・・1/2個
オイル漬けアンチョビ・・3枚
ゆで卵の黄身・・2個
EVオリーブオイル・・1カップ
塩、こしょう

初期のサルサ・トンナータは、マヨネーズではなく、ゆで卵の黄身を使いました。
イタリア料理アカデミーの本、イタリアのソースを地方ごとにまとめた本、『スーゴとソース

によると、
マヨネーズとツナのソースですが、そもそも、この料理が18世紀にピエモンテで誕生した時には、マヨネーズもツナも入っていなかったそうです。
でも、このソースはいかにもフランス料理のテクニックぽい。
イタリア料理の場合、ソースはパスタや米にかけるもの。ベースとなる油はバターではなくオリーブオイル。地方ごとに異なるハーブやスパイスを多用するのもイタリア料理の特徴。特にバジリコ、マジョラム、セイボリー、シブレット、タイム、ローリエ、セージ、ローズマリーなどが中心。南からは唐辛やオレガノ、北からは白こしょうや黒こしょう、シナモン、クローブ、ナツメグ、ポピーシード、カルダモン、サフランが伝わりました。
イタリア料理のベースには、他に、にんにくや玉ねぎも欠かせない。

ピエモンテに、「料理の調味のベースになる美味しいソースは、しっかり焼いてしっかりデグラッサーレしたもの」という言い回しがあります。
ピエモンテ料理はサボイア家の宮廷料理がはぐくみました。19世紀末にはヌーベルキュイジーヌが誕生し、新しい方法の新しいソースが生み出されます。
ピエモンテ料理を語る時は、フランス料理を語ることにもなります。
当然、油はバター。ベシャメルなどの洗練されたソースのベースになりました。

かつては多用されていた豚の脂は貧しさの象徴でしたが、現在は植物性油に置き換わっています。
ピエモンテは気候的にオリーブが育ちにくい地方でしたが、オリーブオイルは隣のリグーリアとの交易によって流通していました。北のヴァッレ・ダオスタにもEVオリーブオイルの管理組合があります。
オリーブオイルを使ったピエモンテのソースは、ピエモンテの農民料理のシンボルになりました。バー二ャ・カウダです。

ピエモンテの料理を語る時、リグーリアはポイントになる地方です。
ヴィテッロ・トンナートの場合、マグロのオイル漬けはジェノバがピエモンテに併合された18世紀後半にリグーリアから伝わりました。それまで流通していたマグロの塩漬けとマグロのオイル漬けはかなり違うものだったそうです。
ピエモンテにはリグーリア産のアンチョビの塩漬けは14世紀にはすでに流通していました。

そして南の野菜、トマトが加わって赤くなったソースがバニェット・ロッソbagnetto rosso
です。

このように、イタリア料理のソースを知るためには、ピエモンテから初めてリグーリアに行き、ロンバルディアからトレンティーノなど北を経由してベネチア、そしてエミリア・ロマーニャに入ります。中央イタリアに入ったら、次はトスカーナ、マルケ、ウンブリア、ラツィオからカンパーニア、プーリア、シチリアと南に下り、最後にサルデーニャというのが一般的なルートです。
ピエモンテにはトンノ・ディ・コニッリオtonno di coniglio(マグロのうさぎ)という謎な料理があります。
モンフェッラートでよく知られた料理で、うさぎ肉をマグロのオイル漬けのようにオイルに漬ける料理だそうです。

ピエモンテ料理も、一歩足を踏み入れると面白そうなものばかりですね。
長くなりそうなので、今日はここまで。


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2023年5月23日火曜日

ロースト、鍋ロースト、ブラザート、ラルデッラーレ、デグラッサーレ、肉料理の基本用語。北の肉料理に共通しているのは忍耐。

ローストの話、続けます。
ローストはイタリア語だとアッロストarrosto。食材に直接熱を伝える調理方法のことです。
様々なバリエーションがありますが、表面を焼いた後に、ワインやブロードなどの水分を加えて加熱するローストの場合は、“arrosto morto/アッロスト・モルト”(鍋ロースト)と呼びます。

表面を焼いた後に水分を加えて加熱する、という調理方法で思い浮かぶのはピエモンテの名物料理のブラザートbrasato。蓋をした鍋で少量の煮汁を加えた牛肉を炭火のような火加減でじっくり煮込む料理です。ブラザートの語源は炭の古い呼び方、ブラーザbrasa。
 ブラザートに適しているのはコラーゲン組織をたっぷり含んだ部位。ゆっくりと加熱することによって、コラーゲンがクリーミーなゼラチン状になり、肉が風味豊かでより柔らかくなる。そともも肉などの赤身肉の場合は、ラルデッラーレして調理します。

ラルデッラーレlardellare。

よく似た調理の基本の一つに、グラッサ―レglassareというのがあります。料理を濃いソース、グラッサglassaで覆って味を濃くして艶を出す調理方法のことです。
ケーキやビスコッティの仕上げにするのは砂糖がベースのシンプルな“グラッサglassa”。料理の場合はもっと複雑で肉や魚の焼き汁から作ります。
ソースにボディーを出すには、小麦粉、でんぷん、片栗粉、生クリームなどのつなぎを使います。小麦粉は繊維があるのでソースは不透明になります。でんぷんを使うと透明なソースになります。生クリームは脂肪でソースの水分が乳化してとろみがつきます。滑らかでも不安定なのですぐにサーブする場合に使います。
グラッサの液体はワイン、リキュール、ブロード、牛乳を単体、またはミックスして加えて食材の焼き汁を溶かします。またはフライパンや食品のメイラード反応した焦げを溶かします。
リチェッタによってはデグラッサーレした後に他の液体を加えて煮詰めてソースにします。

肉をマリネする時は、ワイン、野菜、香料で完全に覆い、6~24時間マリネする。長くつけるほど強いアロマが加わる。冷蔵庫に入れると肉の熟成が遅れるので、それ以外の涼しい場所に置く。ワインはボディーのある赤で、あまり酸味の強くないものがよい。理想的なのはビンテージものではないバローロ。熱によってワインの複雑さの大部分は失われてしまうので、上質のものは使う意味がない。マリネ液のワインと野菜はブラザーレする時にも使う。
 マリネした肉をまず熱した油で表面を焼いてカラメッラーレし、次にワインでゆっくり煮る。

バローロのブラサート。

バローロ、またはネッビオーロのワインは、コクと強いタンニンがあり、脂分が多い料理や繊維が詰まった味が持続する料理によく合う。ジビエなら、肉の組織に入り込んだワインが肉に溶け込み、料理の最後まで持続するので確実な相棒になる。特にバローロを使った料理の場合は効果的。
バローロ。

次の子牛肉料理はヴィテッロ・トンナートvitello tonnato。
ピエモンテの夏の定番料理ですが、ロンバルディアにも昔からある料理です。
ローストビーフに匹敵する上品でマイルドな料理。
正式なリチェッタというのは存在しませんが、歴史が古く、イタリアや発祥地のシンボル的料理なので、深く掘り下げようとすると、大変なことになります。そもそもルーツはロンバルディアかピエモンテかもわかっていません。
まずはツナのソースの料理なのに、どちらの州にも海がありません。
詳しくは次回に。
ビテッロ・トンナート。

デグラッサーレdeglassare。



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2023年5月22日月曜日

野菜のブロードをとる時、香味野菜の切り落としや皮は、鍋に入れるんじゃなく、buttare(ブッタ―レ)と言う。つまり捨てるということ。

今日のお題は子牛のロースト。
子牛肉のローストの特徴は、エレガントな色合い、柔らかい肉、短い調理時間の
柔らかくてジューシーな料理。
適している部位は、比較的赤身で調理時間の短い部分。イタリア語の分類だとスピナチーノspinacinoやマガテッロmagarelloなど。

子牛のロースト。

日曜日の鍋ローストArrosto in Pentola della Domenica
“日曜日の”とつけると、ご馳走感と家庭料理感がアップ。

材料/
牛肉・・塊、800g
玉ねぎ・・4個
ローズマリー1枝
白ワイン・・1カップ
EVオリーブオイル、塩、こしょう
野菜のブロード(セロリ、にんじん、玉ねぎ)

・ブロード用野菜の切り落としと野菜を鍋に入れる。粒こしょうとにんにく1かけを加えて水で覆い(塩は加えない)、蓋をして中~弱火にかけて最低1時間煮る。
・火を止めて塩味を調える。
・フォンド用に粗く切った玉ねぎを油でソッフリットにして塩、こしょうする。蓋をして弱火で柔らかくなるまで10分熱する。蓋を取って火を強め、肉を入れるスペースをあけて肉を入れ、肉に穴を開けないよう木べら2本で裏返しながら表面全体を焼き
肉汁を閉じ込める。
・全体を焼いたらワインをかけて焼き汁を強火でデグラッサーレし、アルコール分を飛ばす。ハーブ、蓋をして約2時間ローストする。
・レードル1、2杯の熱い野菜のブロードを加えて玉ねぎとハーブを混ぜ、肉を鍋の中央に置く。とろ火にして1.5時間~2時間ロートする。鍋に水分が残る程度にローストする。火を止めて蓋を取り、肉を完全に冷ます。
・肉汁が流れ出ないように前後に包丁を動かして肉をスライスし、春や夏なら玉ねぎの上に盛り付けて大さじ数杯の焼き汁をかける。冬ならフォンドに肉を入れてなじませてもよい。

カルロ・クラッコシェフが、自分の経験をイタリア料理人をめざす若者に伝えようと書いた本、『クールにしたいならシャロットを使う

には、ローストについてこんなことが書いてありました。
“Arrosto”はとても美しい言葉で、子供時代の、焼き汁も一緒のよく焼いた、とても美味しいものを表現している。昔はロスティッチェリーアrosticcerieで美味しいローストを焼いて売っていた。祝日になるとこれを買いに出かけた。
ロスティッチェリーア。惣菜の店。

私にとって定番のローストは、母が作ってくれた日曜日のローストだ。セロリ、にんじん、玉ねぎといった香味野菜を全部畑から取ってきて、小さく切ってステンレスの深鍋に“投げ込み”、数年後に鋳鉄の鍋を使うようになったら、明らかに料理は美味しくなった。鍋底には、ローズマリー、にんにく、ローリエ、少々を加えて軽く炒め、肉を加える。普段は豚肉か鶏肉だ。豚肉はreale(レア―レ/肩ロース)という頸の上にある部位を使う。少しずつ回転させながら肉を焼き、白ワインをかけてアルコール分を飛ばしてオーブンに入れ、時々裏返して焼き汁をかけながら2時間焼く。でも、この料理の素晴らしい点は、料理につきっきりになる必要がなく、勝手に出来上がるという点だ。ちょっと焼いてオーブンに入れておき、焦げないように仕上げに蓋をすればよい。私にとっては神話のような料理で、すべてが記憶にくっきり刻まれている。

それではこの本のリチェッタを訳してみます。ローストの玉ねぎ添えArrosto con le cipolle
材料/6人分
子牛レア―レ・・1㎏
トロペアの赤玉ねぎ・・2、3個
にんにく・・1かけ
ローリエ、タイムかセージ
白ワイン、EVオリーブオイル、バター

・美味しいローストを作るには、適したフライパンが必要。この場合は、鋳鉄のやや深さのあるものがよい。鋳鉄はとても重く壊れにくい素材だが、それを活かすには手入れも必要。ステンレスやアルミ、銅の鍋より調理の熱を食品にしっかり伝える。私が理想とするローストを作るには鋳鉄のフライパンが必要だ。
・肉屋では各種の肉の小片をもらう。赤身だけのローストが好きな人もいれば、ロースやもも、肩肉が好きな人もいる。柔らかさの問題は部位の問題だ。ヒレ肉は柔らかくて美味しい部位だが、仕上がりは、もっと風味豊かな部位のほうがいい場合もある。

長くなりそうなので、今回はここまで。次は玉ねぎの話。

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2023年5月20日土曜日

ミラノ料理の王様子牛肉は、イタリアの他の地方では滅多に見ない食材。

トリュフとロッシーニに続くマルケの食材、最後は牛肉です。
北と南は何かと注目されるイタリア料理ですが、中央イタリアにもなかなかユニークな食文化があります。
イタリアの牛肉と言えば、トスカーナのキアニーナが有名。
世界最大の牛の一種、キアニーナ。
野性的な品種で病気に強く、放牧に適している。ミルクの量は少ないが肉は上質。

この牛をロマニョーラ種、ポドリカ種などと交配させて誕生したのがマルキジャーナです。
マルキジャーナ。
丈夫なため、長い間畑での労働力として利用されていました。ミルクの量は少ないけれど、肉は美味しい品種。

そしてこれらのトスカーナやエミリア・ロマーニャ、マルケの牛を一つにまとめたブランド牛が、ビテッロ―ネ・ビアンコ・デル・アッペンニーノ・チェントラーレ。

そもそも子牛が特別な肉、というか、子牛肉vitello(ビテッロ)なんて、見たことない、という人もいるはずですが、そこにさらにビテッロ―ネvitellone と言われても、正直イメージわかないですよね。
私もミラノ料理の本『クチーナ・ミラネーゼ

に、ミラノ料理のスターは子牛肉だ、とあるのを読んで初めて、子牛肉がイタリアでも特別な肉だということを意識したのでした。というか、ミラノ料理以外に、子牛料理がポピュラーなイタリアの地方料理なんて、思いつかないし・・・。
子牛肉料理はフランス料理や強力な貴族階級が存在する地方にしか需要はなかったはず。

という訳で、ちょっと考えれば、子牛肉はかなりマイナーな肉と分かるのでした。
いい機会なので、ここでイタリアの牛のことをざっと見てみましょう。
そもそも牛は、ミルク、肉、労働力という目的のために飼育されました。
イタリアの牛は、アジア原産の、労働力として伝わったものや、ゲルマン人の大移動によって伝わったものなどがあります。
労働力といっても、ちょっとした力仕事程度ではなく、重労働をこなす牛が求められました。

イタリアに定着した品種の中でも、かなり過酷な環境でも順応する丈夫さがあり、上質のチーズになるミルクを出す、という特徴があったのが、ポドリカ種です。飼育数は大幅に減りましたが、肉の質の評価も高い品種です。

カラブリアのポドリカ種。

ロマニョーラ種はポドリカ牛がルーツ。ロマーニャ地方とベネトの一部だけで飼育されている。昔は労働用と食用の両方に使われていた。皮の下に厚い脂肪層があるのでグリルやローストに最適。


マレンマ種もルーツはポドリカ種。野生の放牧に適していて飼い葉が少なくてもミルクをたっぷり出し、肉もジューシー。

ピエモンテーゼはイタリアを代表する中型の牛。ミルクより、特に若牛の肉が評価されている。赤身でコレステロール値が低く、ボッリートや生で食べるのに最適。

キアニーナ、ロマニョーラ、マルキジャーナがビテッロ―ネ・ビアンコ・デッラ・アッペンニーノ・チェントラーレというIGP製品に認定された。
農業が機械化されるにつれて牛の需要が変わり、肉用の品種が求められるようになった。
ということは、大きな牛ほど肉がたっぷりとれるわけで、丈夫な牛より大きな牛の時代がきた。半野生の状態で飼育するので、各地の森との環境の結びつきも強い。生物多様性の象徴の一つ。
そんな子牛肉の代表的料理は、ロースト。
この話は次回に。

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2023年5月19日金曜日

トリュフの香りはトリュフの生存戦略。抵抗しても無駄。そもそも、トリュフオイルはオイルにトリュフを浸さなくても造ることができた。



白トリュフを栽培しようとしたらかなり年月をかけなくてはならない、という話をしましたが、もちろん、人間が採るのも大変です。トリュフが生える場所は、大抵、親から子へと伝えられ、その場所は家族とトリュフ犬しか知りません。トリュフ犬は子犬のころから訓練して育てます。トリュフの保存期間は短いので、保存方法も重要です。採ったら紙に包んでガラスの密閉容器に入れて冷蔵庫の野菜室に入れ、湿った紙は毎日換えて、容器内の水気もふき取ります。値段の安いトリュフは粗く刻んでバターに練り込み、冷凍することもできます。このバターでリゾットをマンテカ―リしたり、ステーキにのせたりします。リゾットはトリュフと一緒に保存した米で作ります。トリュフは香りですから。

アペニン山地でトリュフ犬とトリュフ探し。

どうもまだトリュフをひきずってます。
なぜ人は、こんなにトリュフが好きなのか。

そもそもトリュフは熟すと強烈な香りを発します。引き寄せられた動物は、地中を掘ってトリュフを食べる。こうしてトリュフは移動初段を獲得し、胞子を広げていくわけです。
トリュフの香りはトリュフの生存戦略。抵抗しても無駄ってもの。人によっては、篭絡されてしまう。

下の動画はトリュフオイルの造り方。オイルにトリュフを浸すんだと思ってた人、その方法もあるけど、そうじゃない方法もあります。

・軽いオリーブオイルを用意します。香りの強いEVオリーブオイルや遺伝子操作をした外国産は避けます。
ガラスの密閉容器の底にテーブルクロスを敷き、中央にオイルを入れたカップ1個を置きます。その周囲に犬が探す時に崩した小さなトリュフを置きます。オイルの中にトリュフは入れません。オイル1カップにつきトリュフは100g。トリュフを入れたら容器を密閉し、冷蔵庫で2、3日寝かせます。

ウンブリアのシェフ、ジョルジョーネのトリュフのタリアテッレ。

たっぷりのバターで和えるだけですでに美味しそうですが、削り方の違う2種のトリュフが加わると、その香りがこっちまで漂ってきます。香りの食材と言えば、その代表はにんにく。イタリア料理は古代ローマ時代からにんにくの香りを多用してきました。
イタリア料理アカデミーの本、『スーゴとソース

では、ウンブリアの女性はトリュフとにんにくの活かし方をよく知っている、と言ってます。フライパンににんにく、EVオリーブオイル、アンチョビを熱し、にんにくを取り除いて冷ます。そこにすり潰した、または粗くおろしたトリュフを加えてなじませ、こしょうをする。これでトリュフソースの完成です。これを炙ったパンに塗ります。またはスパゲッティのソースにすれば黒トリュフのスパゲッティの完成です。


『スーゴとソース』のウンブリアの黒トリュフのスパゲッティSpaghetti al tartufo neroは、
材料/5人分
スパゲッティ・・500g
黒トリュフ・・50g
にんにく・・2かけ、塩
EVオリーブオイル・・40g

・油と潰したにんにくを熱して粗熱を取り、おろした黒トリュフを加えて塩をする。
・これをアルデンテにゆでたスパゲッティにかけて和える。

そういえば、前回紹介したじゃがいもとトリュフですが、これはじゃがいもとフンギと言い換えることもできます。
この場合のフンギはポルチーニです。
リグーリア料理です。ポルチーニはアペニン山脈の幸。

アペニン山地のポルチーニ。

アペニン山脈はイタリア半島を縦断する背骨のような山脈。
この山脈の北部は中央ヨーロッパと南イタリアの区切りです。
この地方はトリュフやポルチーニといったきのこの産地ですが、さらに、イタリア最上の牛肉の産地でもあります。
この話は次回に。

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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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