ローストの話、続けます。
ローストはイタリア語だとアッロストarrosto。食材に直接熱を伝える調理方法のことです。
様々なバリエーションがありますが、表面を焼いた後に、ワインやブロードなどの水分を加えて加熱するローストの場合は、“arrosto morto/アッロスト・モルト”(鍋ロースト)と呼びます。
表面を焼いた後に水分を加えて加熱する、という調理方法で思い浮かぶのはピエモンテの名物料理のブラザートbrasato。蓋をした鍋で少量の煮汁を加えた牛肉を炭火のような火加減でじっくり煮込む料理です。ブラザートの語源は炭の古い呼び方、ブラーザbrasa。
ブラザートに適しているのはコラーゲン組織をたっぷり含んだ部位。ゆっくりと加熱することによって、コラーゲンがクリーミーなゼラチン状になり、肉が風味豊かでより柔らかくなる。そともも肉などの赤身肉の場合は、ラルデッラーレして調理します。
ラルデッラーレlardellare。
よく似た調理の基本の一つに、グラッサ―レglassareというのがあります。料理を濃いソース、グラッサglassaで覆って味を濃くして艶を出す調理方法のことです。
ケーキやビスコッティの仕上げにするのは砂糖がベースのシンプルな“グラッサglassa”。料理の場合はもっと複雑で肉や魚の焼き汁から作ります。
ソースにボディーを出すには、小麦粉、でんぷん、片栗粉、生クリームなどのつなぎを使います。小麦粉は繊維があるのでソースは不透明になります。でんぷんを使うと透明なソースになります。生クリームは脂肪でソースの水分が乳化してとろみがつきます。滑らかでも不安定なのですぐにサーブする場合に使います。
グラッサの液体はワイン、リキュール、ブロード、牛乳を単体、またはミックスして加えて食材の焼き汁を溶かします。またはフライパンや食品のメイラード反応した焦げを溶かします。
リチェッタによってはデグラッサーレした後に他の液体を加えて煮詰めてソースにします。
肉をマリネする時は、ワイン、野菜、香料で完全に覆い、6~24時間マリネする。長くつけるほど強いアロマが加わる。冷蔵庫に入れると肉の熟成が遅れるので、それ以外の涼しい場所に置く。ワインはボディーのある赤で、あまり酸味の強くないものがよい。理想的なのはビンテージものではないバローロ。熱によってワインの複雑さの大部分は失われてしまうので、上質のものは使う意味がない。マリネ液のワインと野菜はブラザーレする時にも使う。
マリネした肉をまず熱した油で表面を焼いてカラメッラーレし、次にワインでゆっくり煮る。
バローロのブラサート。
バローロ、またはネッビオーロのワインは、コクと強いタンニンがあり、脂分が多い料理や繊維が詰まった味が持続する料理によく合う。ジビエなら、肉の組織に入り込んだワインが肉に溶け込み、料理の最後まで持続するので確実な相棒になる。特にバローロを使った料理の場合は効果的。
バローロ。
ピエモンテの夏の定番料理ですが、ロンバルディアにも昔からある料理です。
ローストビーフに匹敵する上品でマイルドな料理。
正式なリチェッタというのは存在しませんが、歴史が古く、イタリアや発祥地のシンボル的料理なので、深く掘り下げようとすると、大変なことになります。そもそもルーツはロンバルディアかピエモンテかもわかっていません。
まずはツナのソースの料理なのに、どちらの州にも海がありません。
詳しくは次回に。
ビテッロ・トンナート。
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