2023年5月11日木曜日

農民が上質の小麦粉を造り出すための小麦として誕生したセナトーレ・カッペッリ。大規模農業に適さなくて栽培量が減ったが、今は生物多様性のシンボル。

このあたりで(CIR)3月号の話に戻ります。
今日のお題はセナトーレ・カッペッリです(記事の日本語訳はP.31~)。
イタリアが世界に誇るパスタ。そしてその原料でもある硬質小麦もイタリアが世界に誇っている産物です。
イタリアの硬質小麦の中でも有名なのが、セナトーレ・カッペッリという品種です。
下の動画はトスコ・エミリア―ノ山地の標高1000mにあるセナトーレ・カッペッリの畑。
幹線道路や工業地帯から遠く離れた、自然の真っただ中で、有機栽培で造られています。

下の動画にはセナトーレ・カッペッリの生みの親、ナザレノ・ストランペッリの写真があります。遺伝子学者の彼は上質の小麦粉を造り出すための硬質小麦を選別して1915年にセナトーレ・カッペッリを造り出しました。セナトーレとは“上院議員”ということ。
(CIR)の記事によると、普通は新しい品種には作り出した人の名前をつけるものですが、上院議員で学者の彼はプーリアに所有する土地を研究のために提供した人物なんだそうです。ちょっと政治的な忖度のようなものがあったかも。

70年代までは国内でもっとも多く栽培されていた硬質小麦でしたが、その後近代的な大規模農業に適した品種が主流になり、栽培量が減少したそうです。
そして現代、この小麦は生物多様性の象徴として蘇ります。多品種と交配することなく、100%純粋な品種として、多くの他の硬質小麦の父親になります。


その特徴は、豊かで個性的、香りが持続するなど味の評価が高く、ヘルシーなこと。美味しくてヘルシーという曖昧な評価も、現代になって科学的な根拠が加わるようになります。
高度に精製していないので微量栄養や食物繊維を含みながら、すべての人に消化しやすい小麦。
近代的大規模農業に適さないと敬遠された品種が、今では生物多様性、サステナビリティ、トレーサビリティーなど、現代の農業に適応して生き残りの道を歩んでいます。
食品としての品質改良のためには環境への影響を最低限で、持続可能なものにする必要があります。肥料や殺虫剤を用いない有機栽培が必要で、水不足に耐えられるようなとても素朴な環境を保たなくてはなりません。現在はイタリア南部、バジリカータを中心に栽培されています。価値の高い小麦です。

パスタの原料として高く評価されたセナトーレ・カッペッリ。
セナトーレ・カッぺッリ小麦とアルティジャーナーレな製法が結びついたパスタ。

現代的農業の舞台として注目を浴びているのは南イタリアだけではありません。ウンブリアもそんな地方です。詳しくは次回に。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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バッカラはノルウェーとイタリアを結ぶ干物貿易の主役で、この航路は1450年作成の世界地図にも記載されるほど重要でした。

(CIR12月号)によると、ヴィチェンツァでは、この料理はCが1つなんだそうです。普通はバッカラはbaccalàでも、ヴィツェンツァでは、Cがひとつのバカラ。んなばかな、と思ったけど、地元のこの料理の専門家たちは、C一つで呼んでました。会の名前の刺繍もC一つ。リチェッタはP.11...