ロッシーニ風トゥルヌドがマルケ料理、と気が付いたきっかけは、ロッシーニの故郷がマルケ州のペーザロだったから。
ロッシーニが生まれ育ったペーザロの観光名所。
毎年、ロッシーニ・オペラ・フェスティバルが開催されるペーザロ、さらに、ヨーロッパの水質と設備が良いビーチに与えられるバンディエラ・ブルーの認定を獲得する常連のビーチリゾート。
ロッシーニの美食家ぶりにまつわるエピソードには、彼がこの地での暮らしを満喫していたことを証明するものばかり。
例えば6歳の時、ペーザロの教会の聖具室にあったビンサントを飲み干す事件を起こしている。
ロッシーニ風トゥルヌドは、フィレ・ミニヨンにフォアグラとトリュフを載せたフランス料理だが、ロッシーニなら、この料理がイタリアのマルケの料理ということを証明するのはトリュフの存在、と胸を張って言うはず。
ロッシーニ風トゥルヌド。
トリュフは、後期ラテン語で大地のエッセンスという意味のterrae tuferが語源。古代ローマ人はユピテル(ギリシャ神話ではゼウス)の雷から生まれたと信じていました。
ブリヤ・サヴァランはトリュフを「料理のダイヤモンド」と呼びました。
でも、イタリア人は、トリュフはダイヤモンドより貴重、と言っています。何しろ白トリュフはイタリアにしか存在しないのですから。
トリュフには黒と白があります。
最近ではトリュフを栽培する試みが進み、徐々に成果が出てきています。
でも、たとえ土壌や気候が適していても、菌糸で覆った木を植えて、最初のタルトゥーフォができるまでに6〜8年かかり、1ヘクタールあたり50kgのトリュフを収穫するのにそれから7〜8年かかり、白トリュフを作るには、さらに時間がかかるそうです。
育てるより採ったほうが早いわけですね。
タルトゥーフォ・ビアンコ・プレジャートは最高級の白トリュフ。
ピエモンテのアルバが有名な産地。
黒トリュフのタルトゥーフォ・ネロ・プレジャートは、産地の名前を取ってフランスではペリゴールと呼ばれ、イタリアではタルトゥーフォ・ディ・ノルチャとか、ディ・スポレートなどと呼ばれる。フランスでトリュフという時は、主にこのトリュフ。
黒トリュフはイタリア各地で採れる。ペーザロは黒トリュフが採れる町が周囲にいくつかあった。中でもアックアラーニャAcqualanaには国産トリュフの2/3を扱うトリュフ市場がある。
この地方で育ったロッシーニがグルメになったのは、こんな環境が影響したのかも。なので、アックアラーニャの黒トリュフを使ったトゥルヌド・ロッシーニというのが、ロッシーニが考えたこの料理により近いのかも。
そうそう、そもそも、黒と白では、適する調理方法が違う。
ビアンコ・プレジャートは生で食べるのに適していて、リゾットや目玉焼きにかける。一方ネロ・プレジャートは加熱することによって個性が引き出される。他の食材と混ぜて香りを与えることもできる。
トリュフは香りに価値がある。ところが、トリュフの香りの成分、bismetiltiometanoは、比較的簡単に安価で合成することができる。安いトリュフの場合は、香料を添加している場合もある。トリュフにセール品はない。本物なら、値段も正当な価格で売られている。
トリュフの香りの真偽は、実際に嗅いでみるとよく分かる。
トリュフを味わう最適な方法は、イタリア各地で開かれる品評会や収穫祭を訪れること。
アックアラーニャでは1年を通じて品評会が開かれている。
アックアラーニャのトリュフ市。
トリュフの香りを表現できるようになったら、本物のグルメ。例えばビアンコ・プレジャートは、にんにく、干し草、蜂蜜の香りがバランスよく繊細に感じられるんだそうです。品質が劣るものには強いアンモニア臭があります。ネロ・プレジャートの香りには強さや個性はないけれど、心地よさがあるそうです。
ソムリエの次元ですね。
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