2021年11月29日月曜日

パスタ入門編、その3。道具を使って成形するパスタ。麺棒かダイスかで道は2つに別れます。

前回は小麦粉と水をこねる、という過程の話でした。
次はいよいよ、パスタ造りの醍醐味、成形です。
北イタリアの軟質小麦粉は、生地の特性を生かした麺棒で薄く伸ばす方法が普及しました。
南イタリアの硬質小麦粉は、パスタ・フレスカ(生麺)とパスタ・セッカ(乾麺)に別れます。
これまではパスタ・フレスカの話でしたが、ここで乾麺が登場します。
乾麺のパスタの作り方は、製粉sfarinareとこねるimpastareの次に、ダイスを通すtrafilare と乾燥essicareの過程が入ります。
小麦粉と水の生地は、そのままでは食べることができません。
湯に入れてゆでたり、ソースをかけて味をつけるといった作業が必要になります。
成形の目的は、生地を美味しく食べられる形にすることです。

生麺の成形方法の一番単純な方法は、ニョッキです。生地を少量取って豆粒大に丸めて筋をつければ完成です。

代表的なのはサルデーニャのマッロレッドゥスMalloreddus。
ちなみにリチェッタは今月の(CIR)の“各地の定番パスタP.20”の記事にあります。

パスタ・フレスカの基本の形、ニョッキの次は麺棒で薄く伸ばすパスタ・リッシャPasta liscia、指先や道具を使って成形するオレッキエッテやピチ、キタッラなど。
綿棒を使って薄く伸ばす技を追求したの結果生まれたのがボローニャのタリアテッレとスフォリーナsfoglina麺打ち職人という専門職。

この平らな生地から生まれるのはタリアテッレtagliatelleの他に、ピエモンテの細いタヤリンtajarinやトスカーナの太いパッパルデッレpappardelle、棒を使ってカールさせたシチリアのブジアーテbusiateなどがあります。
ブジアーテ

道具を使うパスタの大量生産用のアレンジが、ダイスを通すtriforaleです。
ディチェコのトラフィラーレ。

パスタの様々な形は、すべて美味しく食べるための工夫の結果です。
パスタ・リッシャは、ソースをかける食べ方のためのパスタ。
ソースは地元の特産物など身近な食材と食文化から生まれます。
パスタに詰め物をする方法もあります。ラビオリやトルテッリがそうです。パスタ・リッシャに対してパスタ・リピエーナpasta ripienaと呼ばれます。
詰め物をするパスタの生地は薄くて可塑性が要求されるので、軟質小麦粉が得意で硬質小麦粉の苦手な分野。特にボローニャなどポー河沿岸の地方では、この種のパスタの料理が普及しましたが、南イタリアでは放棄されたようです。

南イタリアでも、指先の器用さが要求されるパスタが普及しました。代表はオレッキエッテOrecchietteやカヴァテッリCavetelliなどです。北イタリアの器用さが要求されるパスタの代表はリグーリアのトロフィエTrofie

パスタ・リッシャからは小麦以外の粉のパスタや色付きパスタも誕生しました。
ロンバルディアのそば粉のパスタのピッツォッケリ


色付きパスタの代表はほうれん草入り緑のタリアテッレやラザーニャ。

参考にした本は、スローフードのスクオラ・ディ・クチーナシリーズのパスタ・エ・スーゴ』、

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2021年11月28日日曜日

パスタ入門編、その2。パスタとは、硬質小麦粉と水を練った食品。インパスターレimpastare=練る

今まで改めて考えたこともなかったけど、パスタとは、何でしょう。
辞書で調べれば、まあ大抵が、小麦粉と水を練った食品、という答えになります。
硬質小麦粉と水を練ったもの、と書いてある辞書はさすがに見たことないですが。
イタリアの、特に南イタリアの食の基本が(つまり日本人にとっての米ですね)パスタ、詳しく言えば、南イタリアのベースの食べ物は、硬質小麦粉semolaのパスタ・フレスカpasta frescaです。
硬質小麦粉semolaか軟質小麦粉farinaか、パスタ・フレスカfrescaかパスタ・セッカseccaかというのは、パスタの話をする前にはっきりさせておかなくてはならない点です。
硬質小麦粉と軟質小麦粉は、粒の大きさも、色も栄養価も栽培される地域も、パスタになる過程も歴史も違います。

さて、根っからの文系の私は、理系の話になると、途端にさっぱり頭に入ってこないという欠点があります。そんな私が、パスタの本を読む時にいつもすっ飛ばしていたのがグルテンの話です。でも、そんなことも言ってられなくなりました。
美味しいパスタはどうやってできるのかを知るには、グルテンのことを知らないわけにはいかないのです。とうとう観念しました。

硬質小麦粉と水を強くこねると、粉は可塑性のある物質になります。この生地impastoで成形したパスタは、ゆでても煮崩れずに形を保ちます。
ここで大きな役割を果たすのがグルテンです。
硬質小麦粉に水と力を加えるとグルテニン(可溶性タンパク質)とグリアジンがグルテンを形成します。
グルテンはパスタを安定させる網で、網の中には水の分子に溶け出た硬質小麦粉に含まれるデンプンが閉じ込められています。グルテンの網はパスタを頑丈にし、湯でゆでられても形を保つことができるようになります。

一方、軟質小麦粉にはグルテンが少量しか含まれていません。ゆでている間にデンプンは湯に溶け出てしまいます。なので小麦粉と水の生地は形を待つことができません。
ただし、水を湯にする(デンプンがゼリー化する)、卵を加える(卵黄のレシチンが網の形成を助ける)などの方法で、形を保つこともできます。

イタリアを代表する軟質小麦粉のパスタ、ボローニャのスフォリーナ協会のタリアテッレ。

薄〜く均一に伸ばすには熟練の業と腕力が必要。

硬質小麦粉と水の生地

こねている時から両者の違いは明白。硬質小麦粉のパスタは手だけで様々な形を作り出します。なので薄〜く伸ばすのは苦手。その代わり想像力豊かな様々な形のパスタになりました。
軟質小麦粉は2Dのパスタ向き、硬質小麦粉は3Dのパスタ。
こうして北と南では形の違うパスタが普及します。

参考にした本は、スローフードの『パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ











2021年11月27日土曜日

地中海のシンボル、小麦。パスタ入門編、その1

プーリアの硬質小麦の話題が出たところで、大好きなテーマ、《パスタ》の話に入ります。
パスタの基本編、
小麦の収穫

小麦には硬質小麦grano duroと軟質grano tenero小麦があることは、皆さんとっくにご存知。
私達には麺を食べる食文化があるけれども、小麦を麺にするためには複雑な過程が必要とか、小麦には長い歴史があって品質も最高のものを目指して改良されてきたとか、あまり知らないかも・・・。
そもそも、パスタは生では食べられない。
小麦を食料にするための壮大な工夫がそこにはあるのです。
ちなみに私はラーメンのことは勉強不足で何も知りません。あくまでもパスタ限定の話です。
パスタの原料は硬質小麦。軟質小麦はパンやドルチェになります。

小麦は地中海のシンボルです。
イタリアは硬質小麦の栽培量は世界一ですが、昔はパスタ用硬質小麦はカナダ産の小麦が主流でした。現在、イタリアでは軟質小麦より硬質小麦の方が多く栽培されています。硬質小麦の栽培面積は軟質小麦の2.5倍です。
それが次第にカナダ産からイタリア産小麦にシフトし、今ではプーリアの小麦が注目されています。
南イタリアの経済に占める硬質小麦の重要性が高まり、プーリアでも品質改良の動きが活発です。
イタリアでは法律でパスタには硬質小麦を使うように定められています。
パスタの輸出量はもちろん世界一。
パスタの生産は、今や南イタリア全体の経済にも影響しています。
それと同時に、南イタリアの農家は、質か量かの選択を迫られているのです。

最初に栽培された小麦は、3種類あるファッロの一つ、triticum、籾殻に覆われた小麦でした。

5世紀末には籾殻がない改良された品種が普及して、小麦から粉を作ることが容易になります。
さらに風に強くて成長速度が早い外国の品種との交配も行われました。
こうして栽培の便利さが追求されていき、逆にこれらの改良が加えられていない小麦はほとんど姿を消すほど貴重になり、古代品種と呼ばれてその利点が注目されるようになりました。

硬質小麦の粉はパスタやパンに最適でしたが、気温が低く、夏の日照が少ない北イタリアでは、そもそも栽培できません。
北イタリアでは軟質小麦粉(farina)を使ったパスタが普及します。

プーリアの硬質小麦のパンの1つ、パーネ・ディ・アルタムーラ。

硬質小麦粉(semola)と水をこねた生地は、様々な形に成形ができて、熱湯に入れても崩れません。これは、グリアジンとグルテニンというタンパク質がグルテンになったおかげです。
ゆでている間に小麦粉(semola)のデンプンがゲル化すると膨張して柔らかくなります。
グルテンが少ない軟質小麦粉では、状況が違います。そのためにグルテンの代わりにレシチンが豊富な卵を加えました。

軟質小麦粉と水だけの生地は形を保つことが殆どできません。
デンプンが溶け出て、柔らかくてベタベタしたパスタになります。
このタイプのパスタはイタリアの伝統料理では殆ど見かけません。もっとも貧しい料理で、主に生地が溶け出ても問題がないスープに使われます。
卵を加えるとパスタの状態は大幅に変わります。レシチンを含むのは卵黄です。

次回は北イタリアのパスタ・フレスカの話。

参考にした本は、スロー・フードの“スクオラ・ディ・クチーナ”の『パスタ・エ・スーギ


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2021年11月26日金曜日

プーリアのオリーブオイルは海と畑の幸を結びつけた。

プーリアを代表するワイン、プリミティーボの話が出たところで、今日はプーリア料理の話でも。
イタリア料理の州別の料理書も、今となっては主なものは『グリバウド・グランデ・クチーナ・レジョナーレ』ぐらいです。
これも年月が経つにつれて出回る数が減り、幻の傑作となりつつありますが、ご注文があれば中古の良品を探し出して販売しています。グランデという名前にふさわしい大作ですが、本自体は小さくてコンパクトです。
州の食文化を知りたいなあ、という時にとても役に立つこのシリーズの『プーリア』

を読んでみました。

イタリアでも有数のオリーブの産地プーリアは、豊饒の象徴である粘土質で石灰質の赤い土に銀色のオリーブが実る。
プーリアのオリーブの収穫。

プーリアの風景は、金、銀、緑、青色に例えられる。
金は小麦、銀はオリーブ、緑はワイン、青は海だ。
プーリアにはイタリアで最大のタボリエーレTavoliere平野がある。
そこで栽培されているのが小麦だ。
「タボリエーレの小麦」

風が強くて乾燥したこの大地が、硬質小麦には最適だった。
プーリアはイタリア最大の硬質小麦の産地になった。
そしてその小麦から、パスタやパンが生まれた。

この平野の中央にはフォッジャの街がある。
昔から、移牧や小麦の売買の中心となってきた街だ。

トロイア(フォッジャ)の移牧祭り


dopオリーブオイル、テッラ・ディ・バリTerra di Bariは草やアーモンドのような香りが特徴のオイルで、味は熱く、フルーティーで辛口だ(産地による)。
テッラ・ディ・バリは。プーリアの地方料理のベースになるオイルだ。
さらに、プーリア料理は、オリーブオイル、小麦、野菜、チーズ、肉が海や大地の恵みと出会って生まれる。肉はハーブ風味のシンプルな調理の子羊肉、オイルはカルテッダーテの揚げ油など、ドルチェにも使われている。
野菜、豆、パン、パスタ、卵、きのこ、魚、子羊がこの地方の料理を作っている要素だ。

海と大地の味を結びつけるオイル、オリオ・ディ・ダウノDOPは、香ばしくてフルーティーなオイルだ。ベッラ・ディ・チェリニョーラBella di Cerignolaという品種の、皮が薄くて肉厚で、マイルドな味のオリーブから造られる。
ベッラ・ディ・チェリニョーラ

次回はプーリア料理。

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2021年11月25日木曜日

プーリアを代表するぶどうプリミティーボは、クロアチアから伝わり、ムルジャ地方の土壌と気候によく合った。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョイナーリ)3月号を発売しましたが、2月号のワインの話のビジュアル解説がまだ残っていたので、今日はワインの話。
プリミティーボPrimitivoです。

南イタリアを代表する品種の一つだそうですが、他にどんなぶどうが南イタリアを代表しているかというと・・・
ネロ・ダーボラNero d'Avola、アリアニコAglianico、ピエディロッソPiedirosso、ネレッロ・マスカレーゼNerello Mascalese、ガリオッポGaglioppoなどがあります。

プリミティーボのルーツは、プーリア中南部のジョイア・デル・コッレGioia del Colle地方。
ムルジャと呼ばれる地方です。
その100km北には、同じプリミティーボでも個性が違うプリミティーボができるマンドゥリアManduria地区があります。この地区のぶどうの栽培方法はアルべレッロと呼ばれる古い方式。
プーリアの魅力が詰まったアルタ・ムルジャ国立公園↓

この地方は海抜360mのアルカリ性で粘土と石灰岩の土壌の丘陵地。痩せた鉄分の多い赤土に覆われ、昼と夜の寒暖差が大きかった。渓谷や深い侵食があるカルスト大地で、洞窟が無数にある。気候は典型的な南イタリアのもの。高度の高い地方ほど気温が低い。この環境がプリミティーボにはよく合った。
ワインはジューシーで活発で、ボディーとコクがある。
エレガントな香りで強い組織があり、しなやかなボディーで控えめなタンニン、酸味とソフトさのバランスがよく、様々な地方の食文化と相性が良い身近なワインになった。
脂の多い料理にも、加熱時間の短い料理にも、サルシッチャや内臓の串焼き、豆のズッパ、ティンバロにも奇跡のように合う。
プリミティーボは次第に色が濃くなるワインで、ジョイア・デル・コッレのロゼは赤ワインの前身。
プリミティーボ・ディ・マンドゥリア↓

は、チェリーの香りがするワイン。ジョイアと比べるともっとフルーティーでソフトなワイン。

ムルジャ地方の名物巡りの旅↓


プリミティーボはカリフォルニアのジンファンデルと遺伝子が共通していると言われるが、本当のルーツはクロアチアの沿岸部。ムルジャ地方はクロアチアからイオニア海へと抜ける航路の途中にある。

2021年11月24日水曜日

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)3月、発売しました

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)3月号、発売しました。
定期購読分も発送しました。

イタリアの料理雑誌『クチーナ・イタリアーナ

と『サーレ・エ・ぺぺ

の記事とリチェッタを日本語に翻訳した解説書です。
イタリア料理の今が分かる雜誌と併せてご利用ください。定期購読がお得です。
ご要望があった記事やリチェッタは率先して翻訳します。
リクエストはお気軽にどうぞ。

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2021年11月23日火曜日

ノルチャ風ストランゴッツィは基本のサルシッチャのパスタ。ウンブリチェッリはウンブリア版ピチ。

今月のグルメガイドはペルージャPerugiaです(CIR200年2月号P.26〜)。
オリーブオイル、ワイン、チョコレート、トリュフ、豚肉など、美味しいものがいっぱいあるウンブリアの州都。
ペルージャの名物から一つを決めて、それを追求する旅を計画すると、それだけでも特別な旅ができます。

ペルージャの中心、9月4日広場。
下の動画の背景がその広場。

この街のベースにあるのはエトルリア文明。

ペルジーナのチョコレートやポルケッタなど、取り上げたい話題はたくさんあるのですが、今日のお題はウンブリアのパスタです。
ウンブリアのパスタは黒トリュフによく合います。
まずは平らな太麺のストロンゴッツィstrongozzi。
タリアテッレの仲間ですが、もっと厚くて細い麺。


ノルチャは豚肉加工の技でイタリア中に知られる街。ノルチーノは肉屋の代名詞になっています。
ノルチャ

ノルチャ風ストランゴッツィStrangozzi alla Norcina。
基本のサルシッチャのパスタです。
バリエーションは多数あります。

材料/4人分
《パスタ》
セモリナ粉・・125g
00番の小麦粉・・125g
塩、水・・130ml
《ソース》
ノルチャのサルシッチャ・・4本
EVオリーブオイル・・大さじ2
にんにく・・2かけ
乾燥ポルチーニ・・10g
ペコリーノ・・大さじ2
生クリーム・・200g

・粉、塩、水を10分こねてなめらかな生地にする。ボールに入れて覆いをして休ませる。
・油大さじ2で潰したにんにくを炒める。
・サルシッチャは皮(腸)を取ってほぐす。ノルチャのサルシッチャはすでに塩、こしょう、にんにくで調味済み、油に加えて軽く潰しながら炒め、にんにくを取り除く。
・戻したポルチーニの水気を軽く絞って加え、戻し汁少々も加えて弱火で20分煮る。
・打粉をした麺棒で生地を伸ばす。タリアテッレより厚めになるよう、薄くしすぎない。
・セモリナ粉をまぶして端から中央に向かってたたんでいき、細めにカットする。包丁を差し込んで持ち上げ、広げて台に並べて打ち粉をする。
・油少々を加えた湯でパスタをゆでる。
・サルシッチャに生クリームを加える。パスタとペコリーノを加えてなじませる。皿に盛り付けてペコリーノを散らす。

ストランゴッツィは別名ウンブリチェッリumbricelliとも呼ばれます。語源はミミズだって。
もうちょっと美味しそうな名前にしようと思ってストリンゴッツィにしたのかと思ったら、こっちは首を絞める、という意味だって。
ウンブリア人のネーミングセンス、中世感半端ない。
作り方はピチに似てる。ピチは棒にする、という意味だったっけ。

ペルージャのお勧め店の一つ、オステリア・ア・プリオーリ。
下の動画の料理はキアニーナのラグー・ビアンコとグリーンピースのクリームのタリアテッレは、(CIRP.29にリチェッタが載っています。)

(CIR)3月号は明日発売の予定です。


パスタ入門編、その3。道具を使って成形するパスタ。麺棒かダイスかで道は2つに別れます。

前回は小麦粉と水をこねる、という過程の話でした。 次はいよいよ、パスタ造りの醍醐味、成形です。 北イタリアの軟質小麦粉は、生地の特性を生かした麺棒で薄く伸ばす方法が普及しました。 南イタリアの硬質小麦粉は、パスタ・フレスカ(生麺)とパスタ・セッカ(乾麺)に別れます。 これまではパ...