2023年6月5日月曜日

復活祭を象徴する食材。卵がこんなに高級品になる日が来るとは・・・。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2021年4月号のリチェッタは、グリーンピースの話から始まりましたが、ここでちょっと初心に戻って、そもそも、4月のイタリア料理の大イベント、復活祭(イースター)の話。
今月号の記事は、特定な素材の料理の特集があれこれあります。
そもそも、春の訪れを祝う復活祭は、それを象徴する食材が主役になります。
その代表が、卵、子羊肉、発酵生地、ハーブなどです。
卵は命の復活、春、希望を象徴しています。
まさか卵を買うのがこんなに大変になる日がくるなんて、考えたこともなかったのですが、このままいくと、ゆで卵が高級品になってるかも。
パスクアの卵、イースターエッグは、殻に色を付けたカラフルなゆで卵です。
■色付き液で殻をむいたゆで孫をマリネ。黄身を取り出し、塩、こしょう、マスタード、マヨネーズで調味して白身に絞り出す。

ゆで卵に色をつける方法は無数にある。

中世には四旬節の間、動物由来である卵を食べることが禁じられた。そこで卵に赤や青の幾何学模様を描いて聖金曜日に祝福し、貧しい人に与えたのだった。

ストラッチャテッラStracciatella alla Romanaは溶き卵のスープ。
ブロード・ディ・カルネと卵が主役のローマ料理。

材料/
牛すね肉・・500g
ミニトマト(ダッテリーニ)・・5、6個
にんじん・・1本
セロリ・・1本
玉ねぎ・・1個
卵・・4個
パルミジャーノ・・100g
イタリアンパセリ、レモン
塩、黒こしょう、EVオリーブオイル

・鍋に丸ごとのすね、小さく切ったにんじん、玉ねぎ、セロリ、トマト、水2ℓ、塩を入れて2時間煮てブロードをとります。
・卵黄3個、全卵1個、パルミジャーノ、刻んだイタリアンパセリ、レモンの皮のすりおろし、塩、こしょうを混ぜる(ストラッチャテッラ)。
・ブロードを濾して沸騰させる。ストラッチャテッラを加えて1分煮て、皿に盛り付ける。

ストラッチャテッラは、復活祭になると、ブロデット・パスクアーレという祝日のご馳走に変身します。ブロードは、牛肉ではなく、牛肉と子羊肉のブロードになります。

そもそもローマ人は羊飼いの民族。
羊は貴重な財産で神聖さの象徴でした。
さらに羊は今日では生贄のシンボル。キリストが自らを生贄の子羊として十字架にかかったことに由来する聖体の象徴。
特に草を食む前の乳飲み子羊は、ローマでは純粋さの象徴。アッバッキオabbacchioと呼んだ。

アッバッキオ・アッラ・ロマーナ。

リコッタは羊の群れの象徴で、繁栄を願う食材。
ノアの箱舟にオリーブの小枝を加えて戻ってきた鳩(コロンバ)は平和の象徴。イタリアの復活祭のイメージキャラクターになったのばドルチェ業界のアイデア。
子ヤギはイメージ的にも子羊とよく似ているので復活祭の料理にはよく使われる。

小バトのパン。

鳩は平和の死者、膨らませるパンは豊穣の象徴、柔らかくて香りが強い春の香草は季節と再生のシンボル。
4月の料理にこれらの食材が欠かせないわけ、お判りいただけましたか?

明日は、まさに今の時期の料理、生パスタです。


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2023年6月3日土曜日

生クリーム(パンナ)は牛乳から作るってこと、普段は忘れてるかも。

今月の(CIR)のもう1つのグリーンピース料理は、ドルチェです。
グリーンピースのパンナ・コッタ(リチェッタはP.15)。
さやは使いませんが、可愛い新緑色のパンナ・コッタ。
下の動画は緑色の食材の代表、ピスタチオのパンナ・コッタ。ピスタチオはかなり薄い緑。グリーンピースは緑がもっと濃いので各種のアレンジが可能です。

甘い緑色の食材、グリーンピースはパンナコッタとの相性がいいようで、過去にもグリーンピースのパンナ・コッタのリチェッタは訳したことがあります。
グリーンピースをゆでてペコリーノと一緒にミキサーにかけ、生クリームとゼラチンを加えるだけというシンプルなもの。緑色のクリームと牛乳を加えてスプーンの絵で混ぜるとマーブル柄panna cotta marmorizzataになります。

そういえば、パンナは牛乳から造ります。
両者の違い、分かりますか?
殺菌した牛乳を低温で1日置いてパンナを分離させます。
これをホイップして塩を加えるとバターになります。
遠心分離して作るものとは違うそうです。店では自家製パンナと自家製バターを使ってると自慢してます。


パンナ・コッタは、イタリア語の料理名にしては奇跡的にラブリー。

アルティジャナーレな山小屋のバター。




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2023年6月2日金曜日

リジ・エ・ビジはベネチア共和国の領土中に広まったけど、今は世界中のベネチア料理を出すイタリア料理店に広まっているに違いない。

今月のリチェッタ1品めは、“カプリーノのラビオリ、グリーンピースのブロードかけ”
(リチェッタはP.4)でした。
グリーンピースといえば、さや入りの生のグリーンピースが出回る季節のベネチアの名物料理、リジ・エ・ビジの主役。
4月25日のサン・マルコの日に、ベネチアの大公が外国の大使たちを招いた盛大なパーティーで出した料理です。別名大公の料理とも呼ばれる由緒正しい料理。ただし当時のリチェッタは現代とはかなり違うものだそうです。サン・マルコはベネチアの守護聖人。

リジ・エ・ビジはベネチアの繁栄を祝う印で、新しい季節の始まりを象徴する料理でもありました。
ベネチア共和国の領土だけでなく、アドリア海の東側、ギリシャ、トルコ、レバノンにも広まりました。現代では、世界中のベネチア料理を出す店にも広まっていることでしょう。
ベネチアを代表するサン・マルコ広場は代表的な観光スポット。


リジ・エ・ビジRISI E BISI。

リジ・エ・ビジはリゾットのようなミネストラで、ブロードはグリーンピースのさやを裏漉しして使います。こうすると濃くて味の強いブロードになります。米一粒につき、グリーンピース1個の割合で入れるのがベネチア流。さらに、通常のスープの時より1カップ多くのブロードを加えて煮て柔らかいスープにします。

初物野菜の代表、グリーンピースのさやでブロードをとるのはベネチアじゃなくてもやってます。もちろん、さやを使うので無農薬のグリーンピースを使います。リジ・エ・ビジには小粒で熟しすぎていないものが最適。

グリーンピースのさやのブロードのズッパ。

材料/3杯分
フレッシュのさやつきグリーンピース・・500g
じゃがいも・・大1個か小2個
にんじん・・1本
セロリ・・大1本
玉ねぎ・・1個
EVオリーブオイル、塩
生クリーム、黒こしょう
パンのクロスティーニ

・たっぷりの水と香味野菜(玉ねぎは1/2個、残りはソッフリット用)、塩でゆでてブロードをとる。
・鍋に残りの玉ねぎのみじん切りと油を入れ、蓋をして弱火でソッフリットにする。
・その間にグリーンピースを下ごしらえをする。上下の筋とヘタを取り、2~3つに切る。じゃがいもは皮をむいて小角切りにする。
・玉ねぎのソッフリットにグリーンピースとじゃがいもを加え、蓋をして最低5分煮る。
・ブロードをたっぷり加えて蓋をして沸騰させ、最低30分煮る。
・火を止めてハンディミキサーで攪拌する。さらに濾して繊維を取り除く。
・スープ皿に盛り付けて中央に生クリームを垂らす。こしょうを散らして油を回しかけ、パンのクロスティーニ少々を加える。


今月のリチェッタには、もう1品、グリーンピースが主役の料理があります。
その話は次回に。

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2023年5月31日水曜日

ラビオリを造る麺棒は、別名魔法の麺棒と呼ばれている。製造過程は、まるで伝統工芸品みたい。箱根の寄木細工に似ている。

詰め物入りパスタ、pasta ripienaの一番シンプルな形の一つ、半円形。
シンプルなだけに、詰め物や生地、ソースで創造力を発揮するシェフが多い詰め物パスタです。
北イタリアのお家芸、詰め物入りパスタ。
基本は、軟質小麦粉と卵の生地をできるだけ薄く均一に伸ばすこと。
半円形の詰め物入りパスタは、南チロル地方の伝統料理として知られています。
     南チロルはドイツ語圏。ドイツ語で半円はkrapfen。ちなみにイタリア語ではメッザルーナmezzaluna。


四角いラビオリ用の麺棒状のカッター。魔法の麺棒だって。達成感あるなあ。

まるで寄木細工のような製造方法。この麺棒、伝統工芸品だったとは・・・。ドイツのクラフトマンシップを感じる・・・。これでラビオリ作りたくなる。


詰め物入りパスタの形は、発想次第で様々。

ラビオリメーカーでラビオリ造り。



ラビオリメーカーraviolatoriは均一のラビオリを作るための道具。
少しずつ分かってきたけど、絶対手で作るのは、多分、三角形のラビオリ。
この話は次回です。

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2023年5月30日火曜日

ラビオリの形は2枚の生地で挟んだ詰め物の閉じ方から生まれる。一番シンプルなのは長方形。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2021年4月号のリチェッタ、1品めは、
カプリーノのラビオリ、グリーンピースのブロードがけ(リチェッタの日本語訳はP.4)。

グリーンピースのブロードの鮮やかな緑に、形が美しいラビオリを浮かべた1品。
パスタは小麦粉200gと卵1個の生地に卵黄3個を加えた黄色い生地なのでグリーンピースの緑とよく合います。
ブロードはスープのようにたっぷりではなく、クリームのようにひたひたにパスタにかかっていて、色合いが強調されています。よく考えられた1品です。

ところで、今回のパスタはラビオリです。
スローフードの“スクオラ・ディ・クチーナ”シリーズの“パスタ・フレスキとニョッキ


から、詰め物入りパスタのページを訳してみます。

ラビオリは詰め物入りパスタです。
詰め物入りパスタとは、パスタ・フレスカ、つまり生パスタでもあります。家庭と地方という2つの作業場で考え出され、その中心地エミリア・ロマーニャ州では、ブロード用のパスタとして発展しました。

詰め物入りパスタ各種。

エミリア・ロマーニャの詰め物入りパスタ、トルテッリーニ・ボロニェージ。



パスタの詰め物は、肉と肉が入らないマーグロに大別されます。
形は、四角、長方形、三角、円、半円、半月が一つのグループで、もう一つは“カッペッロcappello”と呼ばれるグループです。カッペッレッティ、カッペッラッチ、アノレッティ、トルテッリーニ、トルテッローニなどが含まれます。今回の(CIR)のリチェッタのパスタはこのタイプ。
さらに特殊な形をしたカルツォンチーニ、ファゴット、クレスタ・ディ・ガッロ、カラメッラ、コーダ、コルドンチーノ、スピゲッタ、トレッチャ、ピッツィコットなどがあります。
他に、各地の伝統や外国のもの、グランシェフの想像力から生まれたものなど、様々です。
ラビオリの違いは詰め物をはさんだ2枚の生地の閉じ方の違いから生まれます。最もシンプルなものは長方形。半月形mezzalunaはやや技術が必要になります。


一見シンプルな長方形ですが、円形を半分に折るだけの半円形と違って、四角形の詰め物入りパスタは、4つの辺の長さを同じにする、ということが必要です。
ぶきっちょだと難しさが理解できるwww。これはフランスのラビオリの特徴で、イタリアにはリグーリアを経由してピエモンテのアスティに伝わりました。リグーリアが出てくると、サボイア家やサルデーニャの歴史とリンクします。ピエモンテでは、四角い詰め物入りパスタはブルジョア風とか都会風と呼んでいました。フランスに対する強烈な皮肉を感じる呼び方です。
裏返して、田舎に住んでると感じてるピエモンテ人は、かなりフランスや都会にコンプレックスをもっていることもわかります。
半円形は、よく知られている通り、イスラムのシンボル。イスラムに征服された経験を持つヨーロッパでは、ちょっと複雑なイメージがある形。でも、征服があれば解放もあるわけで、特に有名なのが、トルコとオーストリアの間の戦い。1683年にウイーンが解放されたときは、半月形にインスピレーションを受けた食べ物があれこれ誕生しました。クロワッサンがその代表。
ドイツ語ではkipfel。イタリア語ではコルネットcornetto。


半円形の詰め物入りパスタは、スッドチロル地方の伝統パスタです。
次回はこの話。
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2023年5月29日月曜日

(CIR)4月号。生物多様性と羊が注目される春。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2020年4月号、6/1に発売予定です。
今月は復活祭の号でしたが、今年は、生物多様性の話題があっちでもこっちでも取り上げられていました。子羊は復活祭のシンボルの一つですが、イタリアは、羊飼いの伝統が受け継がれてきた国。生物多様性への関心も、日本の10倍くらい強い、という印象です。

さすがに日本では見たことない移牧の光景。

移牧を見てみたいという観光客期分を打ち砕いたサルデーニャの羊飼いの映画、『バードレ・パドローネ』1977年のカンヌでパルムドール取ってます。
『バードレ・パドローネ』


生物多様性の中には人間も含まれる、というか、人間も羊も同じ厳しさを生きてる。

次回からは、気を取り直して、4月のリチェッタの話題。



(CIR)は約50ページの小冊子です。価格は1冊\900(税・送料込)、1年12冊の定期購読だと15%引きの\9200(税・送料込)になります。紙版と、ネット上にupするPDF版があります。価格は\800/号、定期購読は\7700/1年12冊です。

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2023年5月27日土曜日

ベネチアのシンボル、イワシのイン・サオールは時間が経つほど美味しくなるバカーロの定番料理。

(CIR4月号)発売直前ですが、4月号の記事“ベルバエーゼ”に、(日本語訳は~P.28)、4月号はベネトがあるので、今、ちょうどブログはベネトの話題だったので、フェイントで、ベネトの内容を解説します。
まず、その州を象徴する料理に選ばれたのは、意外なことに、超庶民派、“イワシのイン・サオール”でした(リチェッタの日本語訳はP.29)。
 イワシのイン・サオールは、
べネチアの伝統的オステリア“バーカリbacari”の定番メニュー。

ベニスのバーカリとチケッティ。
ベネチアに行ったら運河もいいけど、バーカリ巡りを忘れずに。というか、一度足を運んだら、次からはバーカリに行くためにベネチアに行くようになります。チケッティはどれも造ってから2、3日たつと美味しくなる料理。なので、ベネチアにはいるほど美味しくなる、という言い回しがあります。イン・サオールは、別の呼び方をすると、カルピオーネcarpioneやスカペーチェscapece。世界中で昔から使われている魚の保存方法。

イワシのイン・サオール。

バカーロは、下の動画の説明によると、オステリアとパブのミックスで、美味しいワインとベネチアの伝統料理のつみまを出す店。そしてそのメインとなる料理がイワシのイン・サオール。ベネチアの漁師が創り出した、少なくとも翌日に食べる料理だそうです。

ベネチアのバカーリ。


ソアーベでも飲みながらバカリの動画でも見てベネチアに行った気になるか。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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復活祭を象徴する食材。卵がこんなに高級品になる日が来るとは・・・。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2021年4月号のリチェッタは、グリーンピースの話から始まりましたが、ここでちょっと初心に戻って、そもそも、4月のイタリア料理の大イベント、復活祭(イースター)の話。 今月号の記事は、特定な素材の料理の特集があれこれあります。 そも...