2026年8月18日火曜日

ヤギのチーズのフォンドゥータ入りカボチャのパンは、ヤギのチーズとパンと言うキリスト教のキーワードをクリスマス風にアレンジしたパン。

注目のシェフの“クリスマスのプランゾ”、次の料理は“ヤギのチーズのフォンドゥータ入りカボチャのパン”です。
きのうは帆立貝がキリストの12使徒の一人、聖ヤコブのことで、彼はスペインの守護聖人で、彼の遺体が発見されたとするスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラはキリスト教の代表的な巡礼地。そしてその象徴が帆立貝。というキリスト教の基礎知識に基づいた料理でした。


高齢の知り合いで毎年巡礼に行く人がいて、巡礼地から毎年絵葉書を送ってくれました。日本人もいくさんいるよ、といつも言ってたっけ。


さて、今日の料理はカボチャのパンです。パンと言えばキリスト教ではキリストの象徴。
最後の晩餐で、キリストはパンを使徒たちに渡してこれは私の体です、と告げます。


キリスト教のミサでは、聖餐と呼ばれるパンを口にします。


聖体拝領。何も知らない頃は、どんな味のものなのか、とても気になってました。こんな複雑な作法があるなんて知らなかった。あのパンはイタリア語でいうとオスティアostiaで、ウエハースという意味もある。この名前だと味はないんだろうなあ、なんて思ってましたが、薄ーいオスティアの対極にあるのが、今回のパン、カボチャのパン。イタリア語でいうとzucca di pane。カボチャのパンじゃなくてパンのカボチャ。つまりパンをカボチャに見立てたということ。カボチャ入りパンだとpane alla zuccaとなります。

聖体拝領


カボチャ風味のパンは、クリスマスというよりハロウィンのパン。

    
単純にパンをカボチャの形にするだけでもかなりのインパクト。聖体のパンとは大違いだけど、シェフの創造力は感じられます。そしてこの中にヤギのチーズのフォンドゥータを詰めます。

チーズはヤギのトーマ。ヤギ乳のチーズと言われても想像もできないけど・・・。ヤギは神への捧げものとなる動物でした。古代の農業社会では利用価値が高く貴重な家畜。牛乳のチーズより、クリスマスのパンに詰めるのに適したチーズかも。


ヤギのミルクのチーズ。■■■


見た目の派手さだけでなく、キリスト教やイタリアの伝統の食文化を熟知していることをかなりアピールしてるパンなのです。

イタリアでカボチャと言えば、マントヴァ。

ズッカ・マントヴァ―ナ。この巨大なカボチャをパンで再現したのが、“山羊のチーズのフォンドゥータ入りカボチャのパン”


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この話は(CIR)2023年12月号のリチェッタ、シェフのリチェッタの“クリスマスのプランゾ”の解説です。
“ヤギのチーズのフォンドゥータ入りカボチャのパン”の日本語のリチェッタと写真はP.43。

記事の内容は以前の(CIR)や販売している書籍から引用しています。

動画は日本語の字幕付きでご覧ください。

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2026年8月17日月曜日

海がないミラノには、ダ・ヴィンチの傑作、最後の晩餐がある。この絵に描かれているキリストの12人の使徒の一人がサン・ジャコモ。つまり帆立貝。クリスマス料理に帆立貝あっても不思議じゃない。

若手シェフのオリジナルクリスマス・ディナー。2品目は前菜、“帆立貝のマリネとジャルディニエーラのパイの貝包み”です。

海がない州、ミラノのシェフが作るシーフードの前菜。ベースは帆立貝のマリネ。パン・ブリオッシュにのせてクロスティーニにします。これをロマネスコと一緒に帆立て貝の殻に盛り付けます。帆立貝の殻を使ってパイ生地を抜き、ナイフで筋をつけ、膨らまないように網をかぶせて焼き、帆立貝のマリネにかぶせて帆立貝仕立てにします。

帆立貝はイタリア語ではカペサンテcapesanteですが、これはサン・ジャコモSan Giacomoという名前のベネト訛りです。サン・ジャコモはイエスの使徒の一人。使徒とは弟子という意味。
キリスト教徒の初歩の常識、ミラノには、ダ・ヴィンチの傑作、『最後の晩餐』がありますが、この絵には12人の使徒が描かれています。

サン=聖という名前の、クリスマスのご馳走にするのにピッタリの貝。サン・ジャコモは聖ヤコブのこと。帆立貝を食べる時に、キリストの使徒のことを思い出す人は、日本にはまずいないだろうなあ。そう言えば、聖人はサン・ナンチャラ、という名前ですが、例えばマトウダイのことはサン・ピエトロと呼びます。最初に覚えた使徒の名前がこれでした。

サン・ピエトロは使徒としては筆頭で、バチカンにはサン・ピエトロ寺院があります。私はマトウダイと聞くとバチカンを思い出します。
マトウダイの特徴はその側面にある黒い大きな斑点。
マトウダイと帆立貝の料理は、多分ありがたい料理なんだろうなあ。


帆立貝のスパゲッティ


マトウダイのミニトマト添え


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この話は(CIR)2023年12月号のリチェッタ、シェフのリチェッタの“クリスマスのプランゾ”の解説です。
“帆立貝のマリネとジャルディニエーラのパイの貝包み”の日本語のリチェッタと写真はP.42。

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2026年8月14日金曜日

カルドンのブロードのストラッチャテッラ・ヴェルデ入り、なんのこっちゃだけど、実はクリスマスの定番。

さて、今日の料理はミラノの新進気鋭シェフのクリスマス料理のプリーモ・ピアットです。 ディアボレッティという聞いたこともないパスタ・リピエーナの、見た目に華やかで、クリスマスディナーにはふさわしい1品。 具を2枚のパスタではさみ、ギザ刃のカッターで小さな円形に切り抜いたもの。小さな円形のアノリーニのようなパスタにギザギザのたてがみみたいな縁飾りがついています。

ベースとなっているのは パルマのアノリーニ。
  

これにカルドンの詰め物をして、卵とイタリアンパセリの薄いフリッタティーネを麺状に切ったストラッチャテッラ、カルドン入りのブロードを加えたもの。

ディアボレッティの詰め物は冬野菜が定番。
カルドンなんて見たことないけど、イタリアの冬野菜の代表。

カルディて名前だけど、スーパーじゃない。
カルドンの下ごしらえ。


温まるカルドンのブロードは冬の料理。


アブルッツォのカルドンのブロード料理。


カルドンとカッポーネ(去勢鶏)のブロードはクリスマスのご馳走。


カルドンのブロードに欠かせないのがストラッチャテッラ。


“カルドンのディアボレッティ・イン・ブロード、ストラッチャテッレ・ヴェルディ入り”は、これらの知識があって初めて理解できる料理なのでした。メルリシェフ、頑張りましたねー。

カルドン入りブロードがクリスマス料理だとは、さすがに知らないでしょ。


カルドンはバーニャカウダに欠かせないピエモンテの名物だけど、アジアで栽培されてるんだって。


バーニャ・カウダ


ピエモンテでバーニャ・カルダ食べる機会があったらカルドンのこと思い出して。あ、食べるなら冬ですよ。

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この話は(CIR)2023年12月号のリチェッタ、シェフのリチェッタの“クリスマスのプランゾ”の解説です。
“カルドンのディアボレッティ・イン・ブロード、ストラッチャテッラ・ヴェルデ入り”の日本語のリチェッタと写真はP.41。

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2026年8月13日木曜日

パスタ・リピエーナ

リッカルド・メルリシェフのクリスマスディナー。
プリーモピアットは、“ディアボレッティ・イン・ブロード”。
クリスマスディナーのプリーモは、パスタ・フレスカのご馳走、パスタ・リピエーナが定番。
パスタ・セッカはマイナーな存在になります。
その製法を見ると、パスタ・セッカは工場での大量生産にぴったりの、保存や移動に適した硬質小麦粉のパスタなことがわかります。一方で、パスタ・リピエーナは、アルティジャナーレな、職人の手作業と熟練の技が必要で、大量生産は無理だけど腕次第でご馳走になるパスタ。
薄く伸ばしやすい軟質小麦粉と卵のパスタ・フレスカから生まれるパスタ・リッシャpasta lisciaから作るパスタ。
パスタ・リピエーナのベース、パスタ・リッシャ

パスタ・リッシャはボローニャの伝統パスタ。
ボローニャでは、パスタ・フレスカのパスタ・リッシャ造りは母から娘へと受け継がれる女性の職人の技。


フランス語でパスタはヌイユと言うと思ってパリでヌイユを食べたら、美味しくなくて、超ビックリ。隣の国でもマネできてない。やっぱりイタリアのパスタは世界一だと確信したのでした。
フランスのパスタ・フレスカ。ヌイユnouille。


職人の技がベースで大量生産は不可能なのがパスタ・リピエーナ。


生地で具を包むという、一見シンプルなパスタですが、このタイプのパスタのポイントは、パスタの閉じ方。トルテッリーニは、2回閉じるパスタの代表。ラビオリは1回閉じるパスタ。半分に折ったパスタの両端を合わせて再び閉じるのがトルテッリーニ。作っている間にパスタが開いて詰め物が飛び出さないようにする工夫。
そう思って見ると、上の動画のパスタ・リピエーナは2倍おもしろくなります。

トルテッリーニ。


パスタにはリッシャ(平ら)とリガータ(筋付き)があります。
つまり、平らなパスタのソースが絡みにくいという問題点を筋をつけることで解決しています。


パスタ・リピエーナは、抜き型の形によって形も様々。型がない時代にはコップで抜きました。


現在のパスタ・リピエーナはシェフの創造性と技の熟練度が現れるパスタのもっとも新しい形。


大体わかってきました。リッカルド・メルリシェフがディアボレッティという聞いたことがないパスタ・リピエーナを選んだ理由。カルドンとストラッチャテッラ・ヴェルディが欠かせないこの料理はおそらくアブルッツォの伝統料理。腕と知識がない人には作れない料理です。次回は詰め物の話。

2026年8月12日水曜日

オルダーニシェフの後継者のクリスマスディナー。

今月のシェフはコルナレード(ロンバルディア)のリストランテ・オルモのリッカルド・メルリシェフ。



ダヴィデ・オルダーニシェフの店、ドーのスーシェフです。

ドー。

オルダーニシェフは、ミラノの新世代を引っ張っているシェフ。ミラノはイタリアの飲食業界のトレンドを生み出す街。オルダーニシェフは頭脳派です。ドーという店の名前は柔道などに使われる道という言葉のことだそうです。その言葉の意味、知ってますか?さらにはクチーナ・ポップという概念を生み出して広めた人。


クチーナ・ポップ。学術的な発想とこれほどの発信力を持ったカリスマは、イタリア料理界で久々に表れたシェフでした。マスコミ関係者や、ヨーロッパのインテリたちはたちまち彼の支持者になりました。ただ、あまりにもアバンギャルドな彼の料理は、こてこての伝統料理を愛する原理主義者からは時には反感も受けています。しかし、彼にはイタリア地方料理の著書もあり、その知識は、かなり本格的。

ドー。


ミラノ・コルティナ冬季オリンピックの料理人として、ミラノのスタイリッシュな面を牽引してました。アスリートにも美食家であることを求めるお国柄は、ヨーロッパ人じゃないとちょっと理解不能なくらいかっこつけてる。だけどこれでもかとイタリア名物のご馳走を並べて世界中のマスコミに披露しているところを見ると、アスリートに求めているものが違うなあ、と感じます。


さて、そんなオルダーニシェフの才能を色濃く受け継いだシェフが作るクリスマスディナーです。
ベースにはイタリアの伝統がありながらも、かなりスタイリッシュな料理です。
1品目は、“カルドンのディアボレッティ・イン・ブロード、ストラッチャテッラ入り”。
クリスマスを代表する詰め物入りパスタのイン・ブロードと言えば、ボローニャの“トルテッリーニ・イン・ブロード”。見るからに家族の伝統が詰まったこのパスタの代わりに、メルリシェフが作った詰め物入りパスタは、“ディアボレッティ”。
・・・聞いたことない。まあ写真で見る限りでは、おしゃれな形のスタイリッシュなパスタ。しかも、詰め物もブロードもとても伝統に忠実。


そもそも詰め物入りパスタpasta ripienaは、イタリアのパスタ・フレスカ(生パスタ)の一種ですが、工場での大量生産の対極にあるパスタ。ちなみに大量生産のパスタの代表がスパゲッティ。ご存じの通り、セモリナ粉で作ります。パスタ・リピエーナは軟質小麦粉と卵で作ります。代表的なのはラビオリ。

パスティフィーチョ・ガロファロのスパゲッティ。


代表的パスタ・リピエーナ。


リコッタとほうれん草のラビオリ



次回はパスタ・リピエーナについて、もう少し詳しく見てみます。

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2026年8月10日月曜日

クレーマ・ナメラカ入りのレイヤーケーキ。

クリスマスのオリジナルケーキ。今日はレイヤーケーキです。ドアップで見ると、とても美しい、インパクトの大きなケーキ。レイヤーというその名の通り、各種の素材を複数の層に重ねたケーキ。イタリア語ではトルタ・ア・ストラーティtorta a strati。


イタリアの伝統的なレイヤーケーキの代表は、例えばトルタ・ディプロマティカ。
ベースはスポンジ生地にアルケルメスの赤いシロップを塗ったもの。これで厚いクリームの層を挟んだケーキ。お祭り気分を盛り上げるウエディングケーキなど派手なケーキの典型的な製法。

下のケーキはレモン・マスカルポーネ・レイヤーケーキ。
マスカルポーネはフィリングにピッタリ。レモンもマスカルポーネもイタリアをイメージさせる食材。


ここにアルケルメスが加われば無敵。

アルケルメスとフィレンツェ。


そしてこの(CIR)のリチェッタのケーキもマスカルポーネとアルケルメスは使われていますが、あまり聞いたことがないクリームがはさまれています。
それはクレーム・ナメラカというものです。ナメラカという名前は、どう考えてもイタリア語じゃなくて日本語。私は初めて見ましたが、フランスのパティスリー界隈では有名なもののよう。イタリア語でもナメラカnamelaka。


スーパークリーミーという意味。
(CIR)のリチェッタの日本語訳と写真は、P.39。

クレーマ・ナメラカ。
ゼラチンとホワイトチョコレート入りなので冷やすと固まる。


アルケルメスシロップを塗った赤いスポンジ生地で挟まれた白いナメラカは、まちがいなくこのドルチェの主役。
アルケルメスは日本では手に入らないので余計に食べたくなる。

やっぱりズッパ・イングレーゼかな。大好きなドルチェで、フィレンツェでガボガボ食べて酔っぱらった原因。それ以来、イタリアのドルチェには忖度なしでお酒が入っていることを知りました。アルケルメスは赤いだけじゃなく、アルコール度が20~30度のお酒でした。



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2026年8月7日金曜日

リコッタ・クリームとマスカルポーネ・クリーム。

“クリスマスのオリジナルドルチェ”。
きのうの“コッパ・マルゲリータ”に続き、今日は“アニスクリーム入りチャンベッラ・ブリオッシュ”です。
どちらも真っ白なクリームがかなり目立ち、カラフルなフルーツのカンディートとの組み合わせが引き立っています。

きのうコッパ・マルゲリータのリチェッタを見ていて気が付きました。
このリチェッタの白いクリームはリコッタクリームです。リコッタクリームは、シチリアのドルチェの象徴的チーズクリーム。
カンノーリを始めとしてリコッタクリームは様々なシチリアのドルチェに使われています。
牛や羊のミルクから作るリコッタクリーム入りシチリアのドルチェ。正確にはチーズではなく、チーズを作った残りの乳清から作る乳製品。

リコッタクリーム

一方でマスカルポーネは、チーズの街、ミラノのチーズ。
その名前は、リコッタを意味するローディーの方言、マスケルパmascherpaが語源。おそらく、見た目や製造過程が似ているから、と言われています。
マスカルポーネも正確にはチーズではなく乳製品。チーズの香りはありません。昔はミラノで冬の間作る製品でした。今は全国で作られています。

ミルクからマスカルポーネへ。


クリーム状でドルチェに使うのにピッタリで、北イタリアのリコッタのような存在、マスカルポーネを使うドルチェの代表はティラミス。


そして“チャンベッラ・ブリオッシュの白いクリーム”は、マスカルポールがベースのチーズクリーム。マスカルポーネにエキゾチックなスターアニス、アニスリキュール、ホイップクリームを加えた北イタリア風味のクリーム。

マスカルポーネ・クリームの代表的イタリアのドルチェはティラミス。


リコッタクリームを使ったドルチェの代表はシチリアのカンノーリ。


これらの白いクリームを使うと、ドルチェは格別にゴージャスになります。

スターアニスの乾燥。ベトナムは中国に次ぐスターアニスの生産国。外国の産物が集まってくるのは、大都市ミラノならでは。

南のリコッタと北のマスカルポーネの共通点は白さと、他の食材との相性の良さ。
コッパ・マルゲリータもチャンベッラ・ブリオッシュも、見た目のインパクトは抜群。

(CIR)の“アニスクリーム入りチャンベッラ・ブリオッシュ”の日本語のリチェッタと写真は、P.37。

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