2022年12月28日水曜日

レンズ豆の他にもたくさんある縁起物の食材。

新年の縁起物食材の話を探していたら、サボイキャベツを1月1日のディナーに食べるとリッチになる、というのがありました。もっとお手軽なのは、ぷどうは新年の真夜中に12粒食べると365日間豊かになるという話。
どうやら、サボイキャベツ、ビエトラ、ズッキーニ、ブロッコリーなどの緑色がお金の色なので、豊かさの象徴とみなされているようです。
ぶどうは富の象徴で、1ヶ月に1粒で、計12粒。古代ローマ人が広めた習慣のようで、ぶどうが甘ければ、その年はいい年になり、酸っぱけれ大変な一年になる、というもの。
もっとお手軽ならシャンパンにザクロの粒を入れて飲むと新年は豊かになるというのもあります。マンダリーノ(みかん)も新年の縁起物、他に悪運を払う唐辛子(ディアボリッキオ種)、旅の安全を祈願するなら、巡礼者の守り神、ホタテ貝といった具合。
とりあえず、今年はぶどうにしてみようかなと思ってます。甘いぶどうにあたることを願って・・・。

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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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2022年12月27日火曜日

金運upを願う人の新年の縁起物、レンズ豆。今年もこの豆の話をする時期になりました。

クリスマスが過ぎると、新年に向けて気分の切り替えはや~。
一応、(CIR)の2021年1月号は、12月29日発売予定です。
ギリギリですが、がんばってます。
新年になると必ず登場する縁起物の食材、毎年言ってるからもうご存じですよね。
肉料理の付け合わせやミネストラに入れたり、パスタと一緒に煮たり、小金が溜まるように念じながら煮込みます。体だけじゃなく心も温まるだって。寒い日の料理です。
1月1日に食べると富をもたらす、と信じられ、約7千年前に現在のシリアから地中海全域に広まった、食べ物、レンズ豆です。
中世には修道院で栽培されていました。修道士たちの断食の日の質素な食事に登場する“金曜日の食べ物”でした。肉に匹敵する栄養価があるとみなされていたのです。
イタリアで一番有名なレンズ豆は、カステッルッチョ・ディ・ノルチャのレンズ豆。6月初めの花の時期は、ウンブリアとマルケの間の高原がハーブとカラフルな花で埋まる美しい季節。
下の動画は2020年の光景。この4年前の大地震のイタリア中部地震の震源地となったノルチャの高原に再び咲いた花は多くの人に感動を与えました。

2021年のノルチャ

今すぐレンズ豆を買いに飛んでいきたくなる・・・。 

それでは、レンズ豆のズッパのzuppa di lenticchieリチェッタをどうぞ。
材料/2人分
乾燥レンズ豆・・250g
トマトのパッサータ・・80g、またはトマトペースト25g
セロリ・にんじん・玉ねぎのみじん切り
ローリエ
ローズマリー・・1枝
唐辛子・・1本
EVオリーブオイル、野菜のブロード

・小鍋にオイルと香味野菜のみじん切り、唐辛子を入れてソッフリットにする。
・レンズ豆を加えて(戻す必要はない)2分炒め、塩少々を加える。
・白ワイン少々をかけてアルコール分を飛ばす。
・ブロード、ローリエ、ローズマリーを加え、熱いブロードを少量ずつ足しながら煮る。
・半ばでトマトのパッサータを加える。
・ローズマリーを取り除く。
・皿に盛り付けてオリーブオイルをかけ、ローズマリーの穂先で飾る。


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2022年12月26日月曜日

26日のパネットーネ。

26日のパネットーネは、クリスマスケーキと同じ運命を辿る。
パネットーネはクリスマスの食後のデザート、という強固なイメージは、なかなか取り除けなく、季節とビッタリ結びついています。
ただ、パネットーネやバンド―ロといったドルチェは、塩味と組み合わせるとユニークな味を生み出します。特に、クリスマスが終わってキッチンにパネットーネが残っている時がこの組み合わせを試すチャンスです。
パネットーネは、もちろん1年中いつ食べてもいいドルチェです。
グランシェフがパネットーネを料理に使う時は、養鶏所の新鮮な卵、山の牛乳やバター、イタリア産の新鮮な砂糖や小麦粉といったベースの材料に、吟味したオリジナルの香味素材を加えたパネットーネを使います。
例えば、プロセッコのような香りのよいイタリアワイン、シチリアのオレンジ、カラブリアのディアマンテのチェードロなどです。
オートクチュールのパネットーネで知られる、ビチェンツァのパスティッチェリーア、ダリオ・ロワゾンは、クリスマスのドルチェというアイデンティティ―を失わずに、26日以降も一年中、パネットーネを日常の中に存在させようと考えている人です。

ロワゾンのパネットーネ。

彼の一押し新作パネットーネはピスタチオと抹茶入り。その名もパネットーネ・ピスタチキオ・マッチャ。

さらにはマンダリーノのパネットーネ。

パネットーネのサーブの仕方。

パネットーネのグレードを上げる方法は、パティシエの感性次第。これだけ吟味した食材を使っているパネットーネを料理に使ったら、どうなるでしょう。

例えば、マンダリン風味のパネットーネは、フォアグラと交互にテリーヌ型に詰めてミルフィーユにします。

パネットーネとゴルゴンゾーラのミルフィーユ。

彼のパネット―ネはグランシェフの1品、“フォアグラ、パネットーネのトーストとカプッチ―ノ、レチョートのソース”のメインの食材。“パネットーネ・ロワゾン”のイチジク風味で通じるようです。

イチジク入りパネットーネは厚さ1㎝にスライスしてオーブンでトーストします。レチョートは煮詰めてシロップにします。フォアグラは1㎝にスライスして澄ましバターで焼きます。
皿にフォアグラ、パネットーネ、ナッツを盛り付けてレチョートのシロップを垂らします。
カプチーノは粉にしたパネットーネを牛乳に加えて沸騰させ、ガスを添加したサイフォンでクリームにします。小さな器に絞り出し、パネットーネの粉を散らしてフォアグラに添えます。
粉にしたパネットーネは子牛のヒレ肉にまぶしてオーブンで焼けばヒレ肉のパネットーネ焼きに。



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2022年12月24日土曜日

クリスマスプレゼントのルーツは。

今日のお題はクリスマスプレゼントです。
宗教は違っても、ケーキとプレゼントだけは律儀に守っている人も多いのでは。
クリスマスのプレゼントは、イタリア人にとっても特別なもので、もちろん、クリスマスの大事な伝統です。この時期に誰かに贈り物をするという行為は、キリスト教徒の一種の義務のようなものですが、クリスマスプレゼントが伝統行事だと思ってる人はあまりいないだろうなあ。
『サーレ・エ・ぺぺ』誌の2020年12月号にクリスマス・プレゼントについての記事があったので、訳してみます。
クリスマスプレゼントは、古代ローマの12月後半に行われるサトゥルナーリア祭に起源があります。聞いたことがないお祭りで、無礼講のどんちゃん騒ぎだったようですが、西洋の人たちの間ではクリスマスの前身としてよく知られている祭り。これに幼子イエスの元に駆け付けて贈り物をした東方の三博士の話がミックスされたもののようです。


この贈り物は物質的な価値よりも、何か便利なものが選ばれました。
さらに自らが造ったものであれば喜ばれました。
古代でもこの目的にピッタリと考えられていたのが食べ物です。
例えば、狩りの獲物は古代の儀式に捧げた後、贈り物になりました。
現在では、スポーツとしての狩りは消えても、自ら料理して贈るという習慣は残りました。

そしてクリスマスプレゼントを宗教的にも、儀式的にも特別なものにしているのは、サンタクロースの存在です。サンタクロースは、この儀式を世界的なものにしました。どうやら重要なのは、サンタのコスチュームのようです。
イタリアではサンタはバッボ・ナターレBabbo Nataleだけど、サンタクロースSanta Clausはアングロサクソンの国々での呼び方。
サンタクロースをイタリア語にすると、San Nicola。

サンタのプレゼント工場。

San Nicolaはトルコのマーラの大司教で、プーリアはバーリの守護聖人。
バーリのサン・二コラの祭り。暖かい祭りですが、コスチュームはまったく別物。

この聖人は、貧しさから3人の娘を売ろうとしていた親の家にお金を投げ込んだという伝説が残されていいて、これらのことから貧しい子供や詐欺の被害者の保護者の聖人と見なされています。
ク、クリスマスのプレゼントの裏に、人身売買なんて重い話があったなんて。サン・二コラは騙された人の保護者だったんだ。
とにかくゲーム機もらって喜んでる子供たちは、この儀式の深い意味も知るべき。

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2022年12月23日金曜日

あらゆる料理に合うプロセッコ・エキストラ・ドライは、貴族に嫁いだ庶民の世界をよく知ってるお姫様みたいなスプマンテ。

今日のお題はプロセッコに組み合わせる料理です。
(CIR12月号P.48~)はリチェッタを何点か訳しました。
とは言え、アペリティーボに最適のスプマンテ、プロセッコは、応用範囲が広いのも特徴で、食前の乾杯に始まって、大体どんな料理にも合います。
牡蠣の輸入業者のお薦めはプロセッコと牡蠣。

プロセッコの組み合わせは、ビールで代用されがちですが、ビールのスモーク香はワインとの組み合わせを難しくする要素。ビールと組み合わせたくなったら、プロセッコの炭酸が多いタイプやフリッザンテがお勧めです。例えばニジマスのスモークと紫芋のチップスにはプロセッコ。
プロセッコ・スーペリオ―レは残留糖度によって、生魚や野菜のプリーモに合うエクストラ・ブリュット、フレッシュでフルーティーで、柑橘風味の前菜や魚や野菜の前菜、貝のプリーモに合うブリュット、定番タイプの食前酒、豆のミネストラ、フレッシュチーズ、白肉に最適のエクストラ・ドライ、フレッシュな甘さでドルチェや乾麺のパスタに合うドライの4種類があります。
イタリアンならどんな料理とでも組み合わせ可能。

生ハムで有名なサン・ダニエーレはマスのスモークでも有名。

サン・ダニエーレのニジマスのスモークに合うなら、生ハムとも組み合わせてみたくなるし、スモークサーモンにも合うはず。


紫芋のチップス

その応用がサーモンときくいものキッシュ。
きくいもはピューレにしてパイ生地に詰めます。その上にサワークリームとスモークサーモンを交互に重ねてオーブンで焼きます。

プロセッコと組み合わせる料理3品目は、カルダモンと黒ゴマのハッラー。
聞いたことがない料理ですが、ユダヤ教の編み込みパンです。砂糖が入る甘いごま付きパン。
記事ではカルティッツェを組み合わせていました。エキゾチックで甘いパンまでいけるんだから、ほんとに組み合わせに関しては不可能なことはないみたいなスプマンテです。

定番のプロセッコ・エクストラ・ドライ。
ベネチアみたいにゴージャスな夢を見せてくれるけど、ふと我に返ると世界中のお上りさんに囲まれてる街だったりして。

庶民の出のお嬢様が頑張ってると、おばちゃん応援したくなる。



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2022年12月22日木曜日

量産型の値段で品質はアルティジャナーレなのがプロセッコ・スーペリオ―レ・ディ・カルティッツェ

プロセッコの話、続けます。12月号の記事によると(CIR/P.47)、プロセッコの中でも、カルティッツェcartizzeと呼ばれる地区は、イタリアワイン界の真珠のようなワインができるそうです。
プロセッコは世界で一番売れているスプマンテ。言い換えれば一番人気。でもシャンパンの一種ではない、というのが、この地区のプライド。
年間約100万本造られるスーペリオ―レ・ディ・カルティッツェは、この地区のワインの一般的な値段より4倍高いそうです。ちなみにシャンパンはプロセッコの20倍は高い。
この違いは、シャンパンはアルティジャナーレ、プロセッコは量産型と目指すものがはっきり違うことから生まれます。
そんな工業化に適したプロセッコでも、真珠のような製品ができるというわけで、つまり量産型の値段でアルティジャナーレな質のスプマンテなんです。こんなのが欲しかったのでは。

カルティッツェ。


カルティッツェが成功したら、後を追うワインが生まれるのは当然、という訳で、厳格な規定の元で限られた生産地区で造られたカルティッツェを超えるプロセッコが造られています。コネリアーノ・ドッピア―デネ地区の傑作、と言われているプロセッコ“リーヴェRive”です。

プロセッコ・リーヴェ

プロセッコは主に北米市場で大ヒットしたようで、イタリアのワインの造り手に取っては、まさにアメリカンドリームを実現したワインとなりました。気合の入り方が違います。




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2022年12月21日水曜日

世界中で人気上昇中のスプマンテ、プロセッコ。

今日のお題は今月のワイン、プロセッコです(CIR12月号、P.47)。
プロセッコはトレビーゾ北部のワイン。アルタ・マルカ・トレビジャーナと呼ばれる地方です。
プロセッコは近年目覚ましく普及しているワインで、昔はプロセッコ・コネリアーノ・バルドッビアーデネと、やたら名前の長いスプマンテ、という印象でしたが、いつの間にか、イタリアを代表するスプマンテと呼ばれるほどになっていました。現在、生産量の60%は海外に輸出されています。
 DOCGになったのをきっかけに、広大な地域で作られていたプロセッコが、より細かい地域に分類され、その個性が明確になると、上質からお手頃なものまで、もとから豊富だったプロセッコの特徴がさらに広がり、どんな料理にも、どんな味が好みの人にも受け入れられる応用範囲の広いスプマンテとして、世界中に普及していきました。

プロセッコ。

プロセッコdocとdocgの違い

 上の動画にも登場しますが、プロセッコのぶどうはグレーラglera。かなりマイナーなイメージです。つまりインターナショナルなぶどうから生まれるスプマンテではなく、イタリアのトレビーゾのぶどうから生まれるスプマンテ。

ちなみに、シャルドネを導入してフランスのシャンパンを目指したのがトレンティーノdoc。フェラーリというカンティーナが有名。

プロセッコの産地は、マルカ・トレビジャーナ。
ベネト州のマルカ・トレビジャーナの中心地はトレビーゾ。
ベネチアの妹とも呼ばれる、運河が流れる美しい街です。

トレビーゾ

トレビーゾの名物については来月号の(CIR)のグルメガイドで詳しく取り上げています。
産地によって特徴が違うプロセッコを知るには、まず地形を知る必要があります。

コネリアーノとバルドッピア―デネの丘陵地帯。

この地方の地形を簡単に説明すると、北は小さな川の流れで区切られた山岳地帯の麓で、寒気がさえぎられている。南はベネチアの潟地方の温暖な気候で氷河の影響が小さい。

プロセッコの産地の複雑な特徴、次回に続きます。


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2022年12月20日火曜日

チッチョ・スルタノのシチリア魂。そのベースはオイル、麦、塩。

今日、クリスマスの思い出を語ってくれるのは、チッチョ・スルタノシェフです。
30歳でパスティッチェリーアのギャルソンになり、その後スパゲッテリーアで働いて人気店にし、多くの年月を海外で過ごし、シチリアに戻ってラグーザで自身の店リストランテ・ドゥオモを開き、ミシュランで2つ星を獲得した、現在のイタリアを代表するシェフの一人です。
ラグーザのリストランテ・ドゥオモ

 彼はこう語っています。世界を巡り、ドイツやニューヨークで働いた後、私の島、私の故郷に帰ってきました。私は料理人です。あらゆるものの味と触感を五感を駆使して追求します。私の料理は常に大地と海の間や家庭や旅の記憶、アルタ・クチーナとストリート・フードの間にありますが、常にデリカシーは忘れません。
人の手で丹念に作られた食品を使う料理には、人間と自然が現れます。
美味しいワインのように、その品質は、まず畑に現れ、そしてカンティーナにも表れます。シチリア人の私にとって、ベースとなる食材は、オイル、麦、塩の3つです。そこに何世紀も続く島の伝統、文化を纏っています。それと同時に、シチリア人は変わることや越えていくことを恐れません。それは島のルーツが深く根を張っていることを知っているからです。クリスマスも同様です。
クリスマスは家族で祝います。12月25日には家族全員が集合して伝統料理を食べます。料理はいつも同じ。カッボーネのリピエーノ、手打ちのパスタ・イン・ブロード、そしてドルチェ。叔母さんたちが造って持ってきた料理も欠かせません。料理は家族の共同作品です。
妻は、各家庭の自慢の詰め物をしたラグーザの美味しいフォカッチャ、スカッチャ・ラグザーナscaccia ragusanaの担当です。我が家では、アンチョビ、イタリアンパセリ、ドライトマト、玉ねぎ、カチョカバッロ・ラグザーノを詰めます。
スカッチャ・ラグザーナ。


リチェッタ;
材量/4人分
シチリア産パン用硬質小麦粉・・600g
生イースト・・11g
塩・・小さじ1
ぬるま湯・・約250ml
EVオリーブオイル・・大さじ2
細かく刻んでオイルと塩で調味したトマト・・最低800g
バジリコ
カチョカバッロ・ラグザーノの小片・・200g

・小麦粉に塩を加える。
・イーストをぬるま湯で溶いて小麦粉に加える。オイルも加える。
・水を加えながらこねて滑らかな生地にしてまとめ、十文字のクープを入れる。覆いをして1.5~2時間発酵させる。
・生地を薄い円形に伸ばす。
・トマトを塗り、バジリコとカチョカバッロをのせて三つ折りにする。
・再びトマトを塗ってバジリコとカチョカバッロをのせ、三つ折りにして天板にのせる。フォークでピケする。
・200℃のコンベクションオーブンで30~35分焼く。

バリエーション

スカッチャはラグーザを中心とするイブレイ地方のフォカッチャ。
代表的な詰め物はトマト、なす、カチョカバッロ、アンチョビ、リコッタ、フィノッキエット入りサルシッチャですが、季節や場所によってバリエーションは豊富。
生地は硬質小麦粉、オイル、イースト。発酵させて薄く伸ばしたら、具をのせて数層に折りたたんでいきます。または半月型に閉じてオーブンで焼きます。

二人の姉は、ブロード用のパスタ、クアドルッチやシクリのクリスマスのビスコッティ、イアッドゥッチiadduzziを作ります。

モディカとシクリ。

シクリのイアッドゥッチ。

・詰め物を作る。鍋に蜂蜜500g、水500gを入れてアーモンドプードル100g、オレンジ1個の皮のすりおろし、シナモンを加えて中火で熱する。
・かき混ぜながら硬質小麦粉400gを少しずつ加え、鍋肌からはがれるようになるまで熱する。天板に移して完全に冷ます。
・表面の生地を作る。硬質小麦粉500g、卵1個、ラード50g、ベーキングパウダー1/2袋、砂糖100g、水少々をこねて締まった生地にし、ラップで包んで冷蔵庫で30分休ませる。
・詰め物を絞り袋に入れる。
・生地を麺棒で薄く伸ばす。幅8㎝に切って巻き、長さ8㎝に切る。両端に切込みを入れて天板に並べ、180℃のオーブンで13分焼いて冷ます。
・グラッサを作る。粉糖300g、卵白2個、レモン汁とレモンのエッセンス少々をホイッバーで混ぜる。これを刷毛でビスコッティの表面に塗り、室温で乾かす。

カチョカバッロ・ラグザーノ。


スパイスがたくさん入るあたりは他の地方のクリスマスのドルチェと同じですが、オレンジやアーモンドプードルが入るのがやっぱりシチリア。




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2022年12月19日月曜日

クッタイア・シェフのイブ。南イタリアのモスタッチョリ。

今日は『cucina italiana』誌2020年12月号から、シチリアのトップシェフのクリスマスイブの話を訳してみます。
まずはピーノ・クッタイアシェフ。
このシェフがイカの卵を店のイメージキャラ?にして以来、私の頭はしばらくイカの卵でいっぱいになりました。まさに革新的な新しいイタリア料理を引っ張っている天才の一人です。

シェフの背後のコウイカの卵が・・・。

LicataのLa Madia

シチリアのリカータ生まれのシェフは、母親がオリベッティで働くことになったのを機にトリノに移りました。でも、すぐに工場での安定した仕事より自由が欲しいと、玉ねぎをスライスすることを仕事にする道を選びます。何年も故郷から遠く離れて働いた後、妻と共に故郷の島の自身のレストラン、ラ・マディアに帰ったのは、2000年のことでした。
「クリスマスは常に家族が再会する伝統のお祭りで、イブの夜は私の店も締めました。料理の香りと共に、もういなくなった人の思い出もよみがえりました。その中の一人は、私を育ててくれたおばあちゃんでした。
 子供の自分にとって、クリスマスは両親が返ってくることを意味していました。当時父親は母と一緒に、ドイツで働いていました。だから私は、一年中両親に再会できることを楽しみに過ごしてしたのです。なので、わたしにとってクリスマス料理は待ち焦がれているものでした。クリスマスが近づくと、家中が賑やかな声や人や香りで満ち、誰もがドルチェや料理を作る手伝いをしました。
私の記憶は、シンプルだけれどとても時間がかかるムスタッチョリmustaccioliをスパイス(クローブ、こしょう、シナモン、オレンジ風味のアーモンドエッセンスなど)入りのヴィーノ・コットで柔らかくした強い香りと結びついています。」

ムスタッチョリは南イタリアのクリスマスのドルチェ。クリスマスのドルチェにありがちな、高価な食材をごちゃ混ぜにしたドルチェ。各地に様々なバージョンがある。

モスタッチョリ・ディ・ソリアーノ・カラブロは、カラブリアの伝統的なビスコッティ。材料は小麦粉、オレンジの蜂蜜、ヴィーノ・コットなど。カラブリアの職人の器用さが思う存分披露されている。カラブリアの移民と共に世界中に広まった。

カラブリアのソリアノ・カラブロのモスタッチョリ。

ヴィーノ・コット入りシチリアのモスタッチョリ。

ナポリのモスタッチョリ。チョコレートでコーティングしてあります。クリスマスのビスコッティはクリスマスの間トレイに並べておき、やってきた訪問客に出します。そのため長期間保存できることが必要。

一番上の動画でクッタイアシェフは、現代の母親の仕事は家事の割合が減り、かつての母親のように料理で伝統を受け継ぐことができなくなっている、そして現在、その役割を担っているのが料理人だ、そしてこれはフードサービス業の他の多くの職業についてもいえることだ、と語っています。
 父親の思い出は、田舎で過ごしながら作った料理の味と結びついています。それは玉ねぎのスフィンチョ―ニsfincioni di cipollaでした。挽肉と玉ねぎを煮て、ターバン型に巻いてオーブンで弱火で焼いた、一種のシュトルーデルのような料理です。
イブに欠かせない料理は、バッカラです。フリットにしたり、トマトと一緒にオーブンで焼いたりしました。バッカラは遠い北国の食材で、移民家族には親しみの持てるものでした。
バッカラがナポリあたりで人気なのは安いからだと思っていました。まさか、遠い北国の食材に、移民ならではのシンパシーを感じていたとは、ふ、深い・・・。
 ピエモンテで過ごしたシェフはピエモンテのクリスマス料理、ビテッロ・トンナートやインサラータ・ルッサなども学びました。そして現在、彼のクリスマス料理には天然のサーモン、特別な生ハム、スプマンテなど、各地の古い伝統と文化、歴史を混ぜ合わせた新しい料理が並んでいます。

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2022年12月17日土曜日

ヴァッレ・ダオスタの腸詰め、モチェッタ。年に一度しか焼かない涙ぐましいパン、ライムギパン。

ブレザーオラを調べていて気が付いたのが、あまりなじみのないバッレ・ダオスタの腸詰のバラエティーの豊かさです。
すでに取り上げたアルナのラルドと、ブレザーオラというだけでも、その幅の広さに驚きますが、この地方には、まだほかにも名物腸詰めがあります。
モチェッタmocettaです。鹿のハムなんて呼ばれてますが、ジビエのstambeccoやcamosioの腸詰めです。これらの動物は山の羊飼いたちが仕留めた獲物でした。昔は重要なたんぱく源だったようですが、現在ではヤギなどで代用することもあるようです。
肉に塩や山のハーブをまぶしして木やテラコッタの容器で2週間熟成させ、6日間乾かします。さらに風通しの良い場所で3~4週間吊るして干し、主にトーストしたパンやバターを添えて前菜として、またはオイルとレモン汁をかけて黒パンと蜂蜜を添えたり、ゆでたじゃがいもと一緒にサラダにしてサーブします。

モチェッタ

スタンベッコ

豚肉の加工品、ジャンボン・ド・ボスJambon De Bosses
というのもあります。標高1800mの、ヨーロッパで一番高い場所で造られている山の生ハムです。アルティジャナーレな作り手は約20軒という貴重品。

それではブレザーオラのサーブについて。
豚の脂身の塩漬けは、ソッフリットに加えて溶かしてスーゴにするのが基本でしたが、
牛肉の赤身のブレザーオラは、熱しないで、冷たいままサーブします。
その代表がインボルティーニ。下の動画では広げたブレザーオラにクリームチーズを塗ってルーコラをのせ、インボルティーニに巻いていますが、厚めにスライスして4つに折り、コーン型にして中にロビオーラを牛乳で伸ばしたクリームを詰めるというリチェッタもあります。


いい機会なので、バッレダオスタには、どんなブリーモ・ピアットがあるのか見てみましょう。
有名なのはフォンドゥータfonduta。フォンティーナfontinaが主役。
次はベルザとフォンティーナの冬のスープ、ズッパ・バルペッリネンツェZuppa valpellinentze。フォンティーナと黒パンを重ねてブロードで覆い、オーブンで熱する1品。
ベルザの代わりに米を使うこともあるそうです。

バッレダオスタのライムギパン。

昔は、パンは年に1、2回しか焼かなかったそうです。黒パンは高地で育つ穀物、黒いライムギの粉のパンで、村中総出でパンを焼くのは冬の訪れを告げる儀式でした。焼いたら天井裏で干して保存し、各家庭に分けて1年間保存し、牛乳、ブロード、ワインに浸して毎日たっぷり食べました。ラルドやモチェッタも黒パンを添えて食べました。11月には、いちじく、くるみ、レーズン、栗などが登場して、黒パンは、祝日のご馳走になったそうです。しかもそれは主に司祭や妊婦の食料になりました。な、涙ぐましい。



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2022年12月16日金曜日

牛肉のサルーメ、ブレザーオラ、コトレッタのバリエーション

今日は、牛肉のサルーメの話。
イタリアの農民は、昔は各家で1頭は豚を飼っていました。
そのため、依頼があったら各家庭をまわって豚を捌いて腸詰にする仕事が存在しました。
でも、牛はどうだったのでしょう。
そもそも、ブレザーオラはバルテッリ―ナの名物。

バルテッリーナ

バルテッリーナの放牧風景

バルテッリーナは、マッタ―ホルンがある北の州ですが、フォンティーナというチーズでも有名です。
フォンティーナは、パルミジャーノ、モッツァレラと共にイタリアが世界に誇るチーズでもあります。
このチーズは地元の品種の牛のミルクから作ります。
牛がたくさん飼育されていそうなバッレダオスタですが、この地方で肉と言えば豚肉か狩猟肉で、牛は処分しなければならない時だけ捌き、塩漬けにして保存し、煮込みなどにして食べました。それでも子牛肉を食べる習慣はありませんでした。
ブレザーオラも昔は馬肉や鹿肉で作っていました。
それでもバッレダオスタには、フォンティーナの他に、バッレダオスタ風コトレッタという名物料理があります。これは子牛肉の料理です。
食習慣が変わったのは、バッレダオスタに観光客が訪れるようになったからでした。

ブレザーオラは現在はイタリア中で造られているサルーメですが、ヴァルテッリ―ナのブレザーオラはIGP製品で、管理組合が各種の規定を定めています。
原料は、牛のもも肉。もも肉に粗塩ゃスパイスをまぶし、10日後に腸詰にして吊るし、その後1~3か月熟成させます。食べる時はスライスしてオリーブオイル、レモン汁、バルサミコ酢などをたらします。
ブレザーオラができるまで。

フォンティーナ

フォンティーナのCM

ヴァッレダオスタ風コトレッタ。


フォンティーナを挟むことによって肉のボリュームアップにもなりますね。
焼くときに香りが良い森のバターを使ってチーズが溶け出すまで焼けば完璧。

おまけの動画、コトレッタ・ボロニェーゼ。
パルマの生ハムをのせてパルミジャーノを散らします。

おまけの動画その2はジョルジョーネのコトレッタ・ミラネーゼ。
叩いて薄く広げた肉のことを像の耳orecchia di elefanteと呼びますが、上質の肉を使っている時は薄くしたがらないアルタ・クチーナのシェフもいます。
この人はほんと庶民派。




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2022年12月15日木曜日

パンチェッタとグアンチャーレ。イタリアを代表する人気パスタとサルーミの産地で大地震の被害を受けたノルチャとアマトリーチェは、今は共に復活のシンボル。

考えてみれば、豚肉の加工専門の職人、ノルチーノというのは、すごい特殊技能の持ち主ですよね。ウンブリアのノルチャという町が語源で、この町は、いわばノルチーノの里。
名物を求めて観光客も大勢やってくる美しい町です。
ノルチャ

パンチェッタを料理に使う時の基本は、ソッフリットに加えること。スライスしたパンチェッタを包丁で細かく叩き、EVオリーブオイルで溶かすように炒めます。脂が溶けたら玉ねぎのみじん切りを加えてしんなり炒めます。ミネストローネなどに最適で、各種のパスタソースのベースです。
パンチェッタのソッフリット

ズッキーニとパンチェッタのパスタ

このタイプのパスタで有名なのが、アマトリチャーナ。
ローマのシンボルのような料理です。

アマトリチャーナは、アマトリーチェの羊飼いが考え出したと言われています。
アマトリチャーナはアブルッツォからローマに編入された村。
さらにパスタ、パンチェッタ、ポモドーロ、ペペロンチーノ、ペコリーノという5つのPの料理と呼ばれますが、トマトと唐辛子は、新大陸が発見されるまでは存在しなかった食材でした。さらにパンチェッタではなく、頬肉から作るグアンチャーレを使うのがオリジナルのアマトリチャーナ。
グアンチャーレとパンチェッタの違い。

ノルチャのグアンチャーレ

ローマでアマトリチャーナが有名な店と言えば、リストランテ・ラ・マトリチャーナ。

この店のオーナーシェフは、グアンチャーレは赤身も脂身もパンチェッタより締まっているので風味が強い、トマトはフレッシュよりパッサータのほうがパスタによく絡む、と語ってます。

アマトリーチェにも近く、食文化も深く結びついていたノルチャは、2016年のイタリア中部地震の震源地となり、アマトリーチェ共々大被害を被りました。
現在では、ノルチャのグアンチャーレを使ったアマトリチャーナが復興のシンボル。
下の動画は5年前のもの。



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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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2022年12月14日水曜日

ノルチーノが造るパンチェッタを見てその技のすごさが分かりました。

サルーミの話を続けます。
今日のサルーメはパンチェッタ。豚の肋骨を覆う部分の脂肪の塩漬け。
平らなタイプ(テーザ/tesa)、ロールタイプ(アッロトラータ/arrotolata)、いわゆるベーコンのスモークタイプ(アッフミカータ/affumicata)があります。テーザは皮付きです。
カンパーニアのスモークしたパンチェッタ・テーザは、カンパーニア中で造られていて、カンパーニアの郷土食材のリストにも入っています。パンチェッタはイタリア中で造られていて、他に、DOPのピアチェンツァやカラブリアのものが有名。
シンプルな製法のパンチェッタに、バリエーションはあまりありません。

パンチェッタ・カラブレーゼ

パンチェッタ・ピアチェンティーナDOP


パンチェッタ・アッロトラータは肉に塩、こしょうして1分揉み込み、2枚ずつ組み合わせて巻いて糸で縛ります。
油紙で包んで再び縛り、風通しの良い乾燥した熟成室に吊るして約1か月寝かせます。
熟成させたパンチェッタ・テーザ

豚肉専門の職人、ノルチーノが作るパンチェッタ・テーザ・トスカーナ。

ノルチーノの技の偉大さが分かりました。画面の隅を横切ったニャンコ、ノルチーノに飼われてるなんて幸せだね。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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生ハムの一番美味しい部位はガンベレットこと端っこ。

生ハムやパルミジャーノを、パルマの食文化の観点で見ると・・・。 食の都パルマのシェフが語るパルマの食文化 これはアルタ・クチーナとしてのパルマ料理ですね。 もう少し庶民的な、パルマの日曜日の家庭のプランゾの場合、スタートは、クラテッロ、パルマの生ハム、コッパ、ストロルギーノなどの...