今日は『cucina italiana』誌2020年12月号から、シチリアのトップシェフのクリスマスイブの話を訳してみます。
まずはピーノ・クッタイアシェフ。
このシェフがイカの卵を店のイメージキャラ?にして以来、私の頭はしばらくイカの卵でいっぱいになりました。まさに革新的な新しいイタリア料理を引っ張っている天才の一人です。
シェフの背後のコウイカの卵が・・・。
LicataのLa Madia
シチリアのリカータ生まれのシェフは、母親がオリベッティで働くことになったのを機にトリノに移りました。でも、すぐに工場での安定した仕事より自由が欲しいと、玉ねぎをスライスすることを仕事にする道を選びます。何年も故郷から遠く離れて働いた後、妻と共に故郷の島の自身のレストラン、ラ・マディアに帰ったのは、2000年のことでした。
「クリスマスは常に家族が再会する伝統のお祭りで、イブの夜は私の店も締めました。料理の香りと共に、もういなくなった人の思い出もよみがえりました。その中の一人は、私を育ててくれたおばあちゃんでした。
子供の自分にとって、クリスマスは両親が返ってくることを意味していました。当時父親は母と一緒に、ドイツで働いていました。だから私は、一年中両親に再会できることを楽しみに過ごしてしたのです。なので、わたしにとってクリスマス料理は待ち焦がれているものでした。クリスマスが近づくと、家中が賑やかな声や人や香りで満ち、誰もがドルチェや料理を作る手伝いをしました。
私の記憶は、シンプルだけれどとても時間がかかるムスタッチョリmustaccioliをスパイス(クローブ、こしょう、シナモン、オレンジ風味のアーモンドエッセンスなど)入りのヴィーノ・コットで柔らかくした強い香りと結びついています。」
ムスタッチョリは南イタリアのクリスマスのドルチェ。クリスマスのドルチェにありがちな、高価な食材をごちゃ混ぜにしたドルチェ。各地に様々なバージョンがある。
モスタッチョリ・ディ・ソリアーノ・カラブロは、カラブリアの伝統的なビスコッティ。材料は小麦粉、オレンジの蜂蜜、ヴィーノ・コットなど。カラブリアの職人の器用さが思う存分披露されている。カラブリアの移民と共に世界中に広まった。
カラブリアのソリアノ・カラブロのモスタッチョリ。
ヴィーノ・コット入りシチリアのモスタッチョリ。
一番上の動画でクッタイアシェフは、現代の母親の仕事は家事の割合が減り、かつての母親のように料理で伝統を受け継ぐことができなくなっている、そして現在、その役割を担っているのが料理人だ、そしてこれはフードサービス業の他の多くの職業についてもいえることだ、と語っています。
父親の思い出は、田舎で過ごしながら作った料理の味と結びついています。それは玉ねぎのスフィンチョ―ニsfincioni di cipollaでした。挽肉と玉ねぎを煮て、ターバン型に巻いてオーブンで弱火で焼いた、一種のシュトルーデルのような料理です。
イブに欠かせない料理は、バッカラです。フリットにしたり、トマトと一緒にオーブンで焼いたりしました。バッカラは遠い北国の食材で、移民家族には親しみの持てるものでした。
バッカラがナポリあたりで人気なのは安いからだと思っていました。まさか、遠い北国の食材に、移民ならではのシンパシーを感じていたとは、ふ、深い・・・。
ピエモンテで過ごしたシェフはピエモンテのクリスマス料理、ビテッロ・トンナートやインサラータ・ルッサなども学びました。そして現在、彼のクリスマス料理には天然のサーモン、特別な生ハム、スプマンテなど、各地の古い伝統と文化、歴史を混ぜ合わせた新しい料理が並んでいます。
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