新入荷の本で、ほとんど紹介していない本がありました。
流石に上級者向けすぎるかなと思って、お蔵入りにしていたのですが、この本に、ちょっと変わったバベッテのリチェッタがありました。
そもそもこの本は、イタリア人の間では忘れられた古い料理を紹介する、というもの。
作者の子供時代の思い出がベースになっています。
作者は、子供の頃、毎年シチリアの別荘で過ごしていたそうです。
そこは家族の港のような場所で、一族の子供や孫、友達、友達の友達、などがみんな集まってくる場所でした。子どもたちがプールで午後を過ごしたら、晩ごはんも一緒に食べるのが当たり前のような暮らしでした。食事の時間は決まっていないけど、いつも何か食べるものがあったそうです。しかもパンとトマトのような軽食ではなく、オーブン焼きパスタ、ティンバッロ、スープといった手のこんだ料理で、しかも台所はいつもきちんとしていました。
子供心にも、いつも不思議に思ったそうです。
その台所は、ノンナやノンノたちの王国でした。
この家の近くに、魔法のような場所がありました。
ティレニア海の入り江で、地上からはたどり着け無いような場所でほとんど誰にも知られず、そのおかげで手つかずの自然が保たれていました。
友人のマッシミノアーノの祖父は漁師で料理人でした。彼は子供たちに様々な料理を教えてくれました。
この料理もその一つです。
マルゲリータ・ディ・マーレのバベッテe bavette sulla margherita di mareですl。
マルゲリータ・ディ・マーレというのは小さなはさみと盾のような大きな胴体の巨大なクモガニです。砂地の岩場に棲み、海藻や微生物を餌にします。
身は少ないけれど美味しい出汁がでます。
マッシミリアーノと彼のおじいちゃんはこのカニを競って獲っていました。
そしてこの美味しいバベッテなど、様々な料理を作ってくれました。
カニを洗う時は塩を加えた真水じゃなくて海水で洗うのだというのがおじいちゃんの教えです。昔はみんなそうしていたのだそうです。
実はこの料理の一番の衝撃は、その盛り付け方です。
リングイーネはスパゲッティより幅がある麺なので、基本の巣(ニード)形の盛り付けがよく会います。ぐるぐる巻いてこんもり盛り付けたバベッテに、なんと、蟹の足をぐさぐさと突き刺すのです。
衝撃的な姿ですよ。でも、これぞ漁師メシという感じで、とても美味しそう。
クモガニ
それではリチェッタです。クモガニのバベッテle bavette sulla margherita did mare。
材料/
バベッテ・・400g
マルゲリータ・ディ・マーレ(クモガニ)・・大1杯
イタリアンパセリ・・1房
にんにく・・1かけ
漉した海水・・1本
ミニトマト・・250g
白ワイン・・2カップ強
ペメンティーネ(トスカーナの唐辛子)・・1~2本
EVオリーブオイル、塩
・トマトは皮をむいて半分に切り、ザルに入れる。
・カニを海水でよく洗う。
・にんにくとイタリアンパセリをみじん切りにし、大きなフライパンで2分ソッフリットにする。
・汁を集めながらカニを4つに切る。まず縦に半分に切ってささらに横に切る。
・ソッツフリットにカニを入れて弱火で5分炒める。ワインをかけてアルコール分を飛ばし、トマトを加えて弱火で20分煮る。半ばでトマトを穴開きレードルで潰す。最後にペメンティーネを加えて塩味を整え、5分煮る。
・汁が煮詰まりすぎているようなら水を足す。
・カニを取り出す。
・バベッテを硬めのアルデンテニゆでる。ソースのフライパンに入れてなじませる。
・皿に盛り付けてカニで自由に飾る。
最後にカニは個性を出して好きなように盛り付ける、とあります。
あの豪快な盛り付け方は、マッシミリアーノのおじいちゃん独特のものだったのですね。
バベッテの前のページのウニのスバゲッティSpaghetti ai ricci di mareも訳してみます。
自分の好きな料理だったので取り上げたそうですが、シンプルな料理でも、獲りたての新鮮なウニが必要なので、簡単には作れないそうです。
塩水漬けのウニは、海藻の味が消えています。基本ですが、ウニは牡蠣やトリュフと一緒で加熱してはいけません。新鮮なウニが手に入ったときだけ作る料理です。
材料
スパゲッティ・・一人100g
ウニ・・一人40~50個
にんにく・・1かけ
EVオリーブオイル
イタリアンパセリ
・ウニを開いて身を取り出す。使うときまで冷蔵庫に入れておく。
・大きなフライパンに少なめの油とにんにくを焦がさないように熱し、色がついたらすぐに取り出す。
・スパゲッティを8割ほどゆでる。
・仕上げはフライパンで火を通す。ゆで汁少々を加える。
・仕上げ直前にウニを加えてよくなじませ、イタリアンパセリのみじん切り少々を散らしてすぐにサーブする。
ウニのスパゲッティ
dimenticati(忘れ去られた)というのは現代人の世界つリズムに合わない料理かと思ったけど、失われた自然の豊かさを自覚する料理でした。
まだまだ面白い料理があるので次回に続きます。
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