2022年6月30日木曜日

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2020年9月号。暑さしかない8月の貴重な祝日。フェッラゴスト。

ブログの投稿先を間違えて、行方不明になっていたので、きのうのブログを再投稿です。

今月の(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)は9月号。

イタリアでは9月はバカンスシーズンが終わって、夏の楽しい思い出にまだどっぷり浸っている最中。

(CIR)9月号の最初のお題は、フェッラゴストferragostoです。8月15日の祝日。この日は家族や親たちが集まって、食事をしたり、ピクニックやバーベキューをしたりと、何やら楽しげな日ですが、キリスト教的には聖母マリアの被昇天。ローマ帝国的には初代皇帝アウグストゥス帝の祭りが起源。そもそも英語の8月augustの語源は彼。

言い換えれば、1〜2週間の有給休暇を過ごす祝日です。短期の祝日に庶民が出かけるのは近場のビーチ。カプリとかアマルフィといった国際的な高級リゾートじゃない。別の言い方をすれば、この時期は暑さ以外に何もないそうです。都会は空っぽになります。

コロナ禍の2020年はビーチで騒ぐわけにもいかず、マスクの着用も求められていました。でも暑い時期には夜は街に出て涼む、というのがイタリアの人々の日常。

夜に広場に出されたカフェのテーブルでグラニータを食べるなんて最高。

フェッラゴストの過ごし方。


2020年のフェッラゴスト。
今月号の(CIR、P.21)には、
「フェッラゴストが過ぎるとビーチの喧騒は去り、太陽は穏やかになって、空気は涼しくなる。ビーチにシートとテーブルを運んで、家で料理を用意してクーラーボックスに詰め、ピクニックをする季節だ・・・」とあります。

シチリアの暑い夏の必需品、レモンのグラニータ。

イタリアの夏の暑さを思い出しました。ローマで遺跡を歩き回っていたら仲間が軽い熱中症状態になるし、半袖でひと夏過ごした時の土方焼けはその後数年経っても消えなかったし、ジェノバやミラノでも、熱くてバールを見かけてはレモンソーダをがぶ飲みしてました。
あの暑い夏の過ごし方は、南イタリア人はよく知ってるはず。

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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
Riso
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2022年6月27日月曜日

インサラータ・カプレーゼは食材にどこまでこだわるかで違いが出る料理

あまりの暑さにもう7月だと思っていたら、まだ6月だった。
こんなに暑い日には、火を使わない夏の定番イタリア料理、インサラータ・カプレーゼなんてどうでしょう。
あらかじめお断りしておくと、この料理がなぜカプレーゼと呼ばれるのかは、わかっていません。
現実的な説では、1950~60年代に、映画やカンツォーネによってカプリのロマンチックな情景やセレブのリゾートとしての姿が有名になり、カプリ風、という響きが観光客受けしたのがヒットの理由だろう、とのこと。
カプリは確かに素敵でゴージャスなリゾート地ですが、セレブ感が強すぎて、庶民にはちょっと鼻につく。アマルフィとセットで回ると一財産使い果たすかも。

そんな田舎者のお上りさんにはいくらぼったくられるか分からない恐怖の国際的リゾート地でも、インサラータ・カプレーゼは、比較的安心して注文できるメニューかも。
何しろ、トマトとフィオル・ディ・ラッテとバジリコのサラダですからね。

下の動画には、こんな庶民的なカプレーゼを高級で高価な一品にするポイントが説明されています。
その一つは、食材にこだわること。
例えばトマトは、最低限のこだわりは、スーパーで買う時は、果肉が厚くて熟した、同じ大きさのものを選ぶこと。
これをフィオル・ディ・ラッテ、つまり水牛でなく牛乳のミルクのものと同じ厚さの輪切りにする。熟していないものは余分な水分が出ないが、熟していると水分が出るのでシートでたたいて軽く水気をふき取る。フィオル・ディ・ラッテの水分も同様にして皿がびしょびしょにならないようにする。またはざるに入れて30分水気を切る。
シンプルな料理なので食材は上質のものを選ぶ。特にフィオル・ディ・ラッテとEVオリーブオイルの品質は出来上がりを左右する。バジリコは手でちぎる。
カプレーゼのモッツァレラの量はトマトの重さの半分が目安。


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2022年6月25日土曜日

ナポリでは唐辛子だけどアマルフィの幸運のシンボルはロバ。狭くて急な山道の交通手段として地元の暮らしには欠かせなかった。

(CIR9月号)は6/29発売予定です。
ただいま、仕上げ作業中。

この暑さの中でアマルフィの動画を見てると、一足先にバカンス気分ですが、
今日はアマルフィの有名店の動画でも見て、行く前の予習でも。
リストランテ・ラ・カラヴェッラLa Caravella。
webページはこちら
60年代にミシュランの星を獲得した最初のレストランで、今も保っているこの星は、イタリアで一番古い星、と言われています。料理は、魚、野菜、レモンを使った地元の中世から続く歴史のある料理を現代版に再現したもの。

動画にはアマルフィ名物の陶器のロバのコレクションが映っていますが、アマルフィのロバは急な狭い斜面の大切な交通手段でした。ロバの陶器にはお守りの意味もあったそうです。

アマルフィ海岸の陶器の街、ヴィエトリ・スル・マーレの陶器店にはかわいいロバの陶器がたくさん。
結局、観光客のアマルフィ土産の中には、カラフルなロバが1頭まぎれていることになる。

ヴィエトリ・スル・マーレの町と陶器。

次はマイオーリのカプリの離れ岩が見えるレストラン、イル・ファーロ・ディ・カーポ・ドルソIl Faro di capo d'Orso。
店のwebページはこちら


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2022年6月23日木曜日

海の絶景を眺めながら山の幸を堪能できるのがアマルフィ海岸。

もうすぐ(CIR)9月号発売です。
今日は、アマルフィのおまけ動画をどうぞ。
アマルフィで食べたいアマルフィ料理は、デリツィエやネラノ風ズッキーニのパスタなど、まだ色々ありますが、
マイオーリのレストランのシェフたちの料理でもどうぞ。
まずはアマルフィ海岸でも抜群に眺めのいいテラス席があるTorre normanne。
こんなロケーションの店↓

アマルフィ海岸の注目パスティッチェリーエ、二コラ・パンサ。
アマルフィのドルチェは新世代が台頭していた。




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2022年6月21日火曜日

巨大タコはグリルしてバーベキューに、小さなタコはアッフォガートしてパスタに。その中間はルチア風。

今月の(CIR)の記事から、最後はタコです。
タコの様々な調理の仕方を紹介する記事です。
リチェッタは、グリル、オーブン焼き、ゆでてサラダ、赤ワイン煮を紹介しています。
タコはナポリの名物食材なので、このところ取り上げていたお題に沿って、今日取り上げるのはナポリのタコのパスタです。
タコと言えばアッフォガートですが、パスタの場合は小さなタコを使うので、大きなタコのアッフォガートとは違って、ソッフリットにします。

ナポリのタコは大きさによって料理も違います。

クチーナ・ディ・ナポリ

に載っているタコのパスタは、タコのアッフォガーティのスーゴのベルミチェッリVermicelli con sugo di polpi affogati。
1杯50~80gのタコを使います。

タコのアッフォガートのパスタ

材料/4人分
小ダコ・・1㎏
ホールトマト・・500g
にんにく、EVオリーブオイル
イタリアンパセリ、塩、唐辛子
リングイーネかスパゲッティ・・320g

・タコを下処理する。
・全部の材料(タコ1㎏につきトマトは400g)を鍋に入れてソッフリットにし(皮が取れる)、動画ではトマトを裏漉ししているが粗く切って加えてもよい。蓋をして水は加えずに弱火で45分煮る(トマトの缶に残った汁を水で溶いて加えたりしない)。
・パスタをゆでる。
・タコが煮上がったらにんにくを取り除いてイタリアンパセリのみじん切り、唐辛子(好みで)を加える。

もうちょっと大きな(500~700g)タコのアッラ・ルチアーナPolpo alla luciana。

・フライパンに油、潰したにんにく、唐辛子を熱し、にんにくに焼き色がついたらタコを入れてさっとソッフリットにする。
・白ワインをかけてアルコール分を飛ばし、裏返して水気を飛ばす。
・半分に切ったミニトマト、トマトのパッサータ、水少々を加え、蓋をずらしてのせて中~弱火で約40分煮る。
・煮上がる10分前にオリーブとケッパーを加える。
・塩味を整え、仕上げにイタリアンパセリのみじん切りを散らす。

(CIR)のリチェッタは、なすと一緒にグリルしたり、オーブンで焼いてポレンタを添えたり、じゃがいもと一緒に赤ワインで煮たりと、定番以外のなすのリチェッタを各種紹介しています。

巨大なタコのグリル。

さすがに司会者の手には負えなくて料理人登場。

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2022年6月20日月曜日

コラトゥーラのパスタの基本はマンテカーレ。だからパスタはブロンズのダイスを通したものが必須。

今日はアマルフィ名物、チェターラのコラトゥーラのパスタなんてどうでしょう。
シンプルでパスタをゆでる以外は火を使わない基本的なリチェッタ。

ソースの材料をボールに入れて乳化させる作業は、フライパンであおるのが苦手な人にはナイスなアイデア、と思ったら、皿でマンテカーレするリチェッタもありました。

チェターラのリストランテ・アクアパッツァの
コラトゥーラのスパゲッティのspaghetti con colatura di alici di Cetaraのリチェッタです。

・パスタは量産型のテフロンのダイスを通したものではなく、グラニャーノのパスタのようなアルティジャナーレなブロンズのダイスを通したものを使う。
・オリーブオイル、イタリアンパセリのみじん切り、にんにくの薄切り、コラトゥーラ1人前小さじ1、パスタのゆで汁大さじ数杯を皿に入れ、ゆで上がったパスタを加えてよくマンテカーレする。仕上げに唐辛子と揚げたスパゲッティで飾る。
唐辛子で飾るで思い出しました。コラトゥーラのパスタはアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノのバリエーションの一つ。そして偶然ですが、きのう、知り合いと園芸店に行って、キャロライナ・リーパーという唐辛子の苗を、どこかで聞いた名前だったので、お勧めして買わせちゃいました。
帰ってきて、ギネス認定の世界一辛い唐辛子で、リーパーとは死神の大鎌のことだという事実を知って、軽くショックでした。
コラトゥーラのスパゲッティにキャロライナ・リーパーが刺さっていたら、気を付けてね。

チェターラのコラトゥーラはアマルフィのお土産としても人気のよう。



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2022年6月19日日曜日

アサリのシャラティエッリならナポリでも、広まりそう。

きのうは、シャラティエッリのナポリのパスタとしての違和感の話をしようと思っていたら、逃げたアサリなんて名前のボンゴレのリチェッタを見つけてしまい、すっかり横道にそれてしまいました。
でも、アサリが高くて買えない時は、アサリを使わずにアサリ風味にするのがナポリ人です。
なのでミックスシーフードの生パスタは、たぶん、アマルフィでバカンスを過ごすようなお金持ちのための料理、と考えられても不思議はない。
この料理をもっとナポリ人向きにするには、どうしたらいいのか、
その答えが、『グランディ・クラシチ

という、イタリア郵便が出版した面白いイタリア料理の本にありました。
この本は傑作なのにすぐに売り切れたので、残念ながら今は手に入りませんが、イタリア人が自ら選んだ定番イタリア地方料理の本です。
この本のシャラティエッリは、“アサリのシャラティエッリ”Scialatielli con vongoleです。
リチェッタはアマルフィのトラットリア・リスポリtrattoria Rispoliという店のもの。


それでは本のアサリのシャラティエッリScialatielli con vongoleのリチェッタをどうぞ。

材料/4人分
《パスタ》
セモリナ粉・・500g+打ち粉
イタリアンパセリのみじん切り・・大さじ1
卵・・2個、塩
《ソース》
砂抜きしたアサリ・・500g
パキーノ・トマト・・10個
にんにく・・1かけ
イタリアンパセリ・・1房
EVオリーブオイル、塩

・パスタを作る。小麦粉をフォンタナに盛り、卵、イタリアンパセリのみじん切り、塩少々を加える。水を少しずつ加えながらこねてしまった均質の生地にする。
・丸めて布巾で覆い、最低30分休ませる。
・軽く打ち粉をした台で薄く伸ばし、巻いて幅0.5㎝に切る。打ち粉をした台で休ませる。
・その間にフライパンでにんにくを油でソッフリットにし、くし切りにしたミニトマトとアサリを加える。強火で熱して貝を開ける。パスタをアルデンテにゆでてソースのフライパンに加え、1分なじませる。皿に盛り付けてイタリアンパセリのみじん切りを散らす。

ミックスシーフードじゃなくても、安定のナポリ感。
これがアマルフィ版になるとこうなる↓

シャラティエッリのスーゴに何を入れるかは自由。下のリチェッタは小ダコ(モスカルディー二)のシャラティエッリ。

タコもナポリの象徴的な食材です。今月の(CIR)のシャラティエッリはズッキーニのクリーム、アサリ、ムール貝のスーゴでした。ズッキーニはミキサーにかけてクリームにして、アサリとムール貝のシャラティエッリに加えます。野菜のソースのシャラティエッリもありです。

メインの食材が逃げちゃうのは南イタリアの料理いうわけでもなく、ロンバルディアのベルガモには、逃げた小鳥Uccelletti scappatiという豚肉料理もあります。


材料/
豚ロース肉・・600g
薄くスライスしたパンチェッタ・・100g
厚切りのパンチェッタ・・100g
バター・・70g
セージ、塩、こしょう

・ロース肉を薄く切って平らにする。
・その上に薄切りのパンチェッタと小さくちぎったセージをのせて粗挽きこしょうをたっぷりかけ、インボルティーニに巻く。
・厚切りのパンチェッタを細く切る。これをインボルティーニに入りて巻いてもよいし、ここではセージと一緒に他のインボルティー二との間にはさんで串に刺す。
・付け合わせのソフトポレンタを約45分煮る。または付け合わせはじゃがいものピューレでもよい。
・スピエディーニをバターを熱したフライパンで強火で焼いてポレンタの上に盛り付ける。

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2022年6月18日土曜日

ナポリではアサリが高価すぎて手に入らない時は、アサリが入らないボンゴレを作った。その名も逃げたアサリ。

アマルフィ生まれのパスタ、シャラティエッリは、生麺のシーフードパスタで、ナポリのパスタとしてはちょっと異色。
そもそも、どケチなナポリ料理に、ミックスシーフードは、豪勢すぎるし・・・。
ナポリには有名なシーフードのパスタがあります。
ボンゴレです。
モダンな調理方法でパスタを作ることで知られるイグレス・コレッリシェフのボンゴレ。

・熱したフライパンにアサリを入れ、数秒後にワインをかけて蓋をする。
・貝が開いたら取り出し、汁は濾す。
・アサリのブロードを作る。玉ねぎ、セロリ、にんじんを油でソッフリットにし、アサリの殻を入れて炒めて氷で覆う。こうして貝柱の旨味を出す。
・パスタをフライパンに入れてアサリのブロードで覆い、ブロードをかけながらリゾッタートの方法でゆでる。
・パスタが2/3ほどゆで上がったらアサリを加え、レードルとトングを使って皿に盛り付ける。アサリをのせてパルミジャーノを散らし、オイルをかける。

ところが、かつてナポリではアサリさえ高価な食材でした。
イタリアでは、メインの食材が高価すぎて手に入らないとき、“逃げた”とつける便利な料理名があります。
実は、逃げたアサリという名前の、アサリが入らないボンゴレが、ナポリにはあるのです。
ナポリ料理の本、『クチーナ・ディ・ナポリ

にはそのリチェッタがあるで訳してみます。

アサリのフユーテのスパゲッティ Spaghetti alle vongole fujute


材料/4人分

スパゲッティ・・400g
フレッシュトマト(冬ならピエンノロ)・・数個
にんにく・・3かけ
EVオリーブオイル・・大さじ5
イタリアンパセリのみじん切り・・たっぷり、塩

・パスタの湯を沸かす。
・その間に大きなフライパンににんにくと油を入れてソッフリットにする。
a.焼き色が付いたらにんにくを取り出し、トマトを加えて火を弱める。数分煮る。
・パスタをアルデンテにゆでる。
・フライパンにパスタとa、パスタのゆで汁少々、イタリアンパセリを入れて強火でマンテカーレし、すぐにサーブする。

※ソッフリットに砂浜の石を少量入れて海の風味を出す、なんて冗談のようなアドバイスが付いていました。
でも、これはまぎれもなくリゾッタートの調理方法。
超モダンな調理方法が、伝統料理のリチェッタに取り入れられていたとは、ナポリのお母さんは、かなり時代の先端を行ってたんですね。
それにしても、ナポリのリチェッタ、面白すぎる。

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2022年6月17日金曜日

ナポリのシャラティエッリは南イタリアのセモリナ粉の編み棒のパスタが全国区になってシンプルなタリアテッレやフェットゥッチーネになったもの。

今日はアマルフィの名物パスタ、シャラティエッリscialatielliです。
1978年とかなり最近考案されたパスタでも、アマルフィ名物になるほど有名になり、今ではナポリの伝統的食材の一つに入っています。
(CIR)8月号のリチェッタは(P.38)、ズッキーニのクリーム、アサリ、ムール貝の具のオリジナルのリチェッタです。

考案者はアマルフィ生まれのエンリコ・コゼンティーノシェフ。
料理の国際コンクールに出すために、家族のパスタをベースに考え出したそうです。
アマルフィはカンパーニア州にあり、ナポリにも近いので、このパスタはナポリのパスタと考えられがち。
でも、タリアテッレを短くした生パスタとシーフードの組み合わせのパスタは、ナポリのパスタと言うには、どこか違和感があります。

このリチェッタを考案したコゼンティーノシェフのシャラティエッリ。


ちなみにパスタはセモリナ粉に牛乳、卵、ペコリーノ・ロマーノ入り。
スローフードの『パスタ・フォルメ・デル・グラノ

によると、このパスタは、もともと編み棒に巻き付けて作るタイプのパスタでした。これならかなり南イタリアの伝統的パスタと言えます。
ところが、この料理が北イタリアに広まるにつれ、タリアテッレやフェットゥッチーネの一種、と解釈されるようになります。
そして現在は、かなりタリアテッレに近い姿をしています。
シャラティエッリの定番ソースはミックスシーフード。

上の動画の材料/2人分
《シャラティエッリ》
セモリナ粉か小麦粉・・300g
卵と牛乳・・計150g(液体は粉の50%)
バジリコのみじん切り・・3枚
ペコリーノ・ロマーノ・・150g
塩、こしょう
《スーゴ》
ピエンノロかピカデリーのミニトマト・・7~8個
イタリアンパセリ
塩抜きしたケッパー・・7~8粒
黒かグリーンオリーブ・・7~8個
トマトペースト・・小さじ1
にんにく・・1かけ
アサリ・・500g
ムール貝・・200g
ヤリイカ・・1杯
コウイカ・・1杯
モスカルディー二・・2~3杯
エビか車エビ・・5~6尾

・セモリナ粉、卵、牛乳、バジリコ、ペコリーノ、塩、こしょうをこね、ボールをかぶせて30分休ませる。
・厚さ2~3㎜に伸ばして細く切り、長さを半分に切る。
・にんにく、イタリアンパセリの茎、唐辛子を油でソッフリットにし、ムール貝、アサリ、水少々を加えて蓋をして開くまで熱して取り出し、汁を濾す。
同じフライパンにエビと白ワインを入れてさっと熱する。
・細く切ったイカを油で炒める。貝の汁、半分に切ったミニトマト、ケッパー、オリーブ、トマトペーストを加え、蓋をして30分煮る。
・パスタを加えてマンテカーレする。火を止めて貝とエビを加え、イタリアンパセリのみじん切りを散らす。


パスタをタリアテッレにすると、さらに違和感が強くなる。
シーフードのタリアテッレ。

伝統のパスタ、シャラティエッリに合わせるなら、スーゴもナポリならではのものでないと。
というわけで、アサリのシャラティエッリというのはどうでしょう。
リチェッタは明日です。



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2022年6月16日木曜日

アマルフィ海岸の南の端のモンテ・ラッターリ国立公園は、生物多様性の聖地。

サルデーニャの話が続いて、知ってるイタリアじゃない、なんて感じ始めたところですが、今日のお題は、これこそ行ってみたいイタリア、コスティエーラ・アマルフィターナのワインです。記事の日本語訳は今月の(CIR)。P.37にあります。
でも、アマルフィのワインはビーチほどは知名度はないかも。

アマルフィ海岸の南の端はサレルノ湾とモンティ・ラッターリ国立公園。
モンティ・ラッターリは生物多様性が究極の料理を可能にすると信じている人にはパラダイス。
料理人にとってはアマルフィの魅力はビーチよりこの山とその周辺の環境かも
近くにはイタリア最古の海洋共和国、アマルフィ、イタリアのパスタ産業発祥の地グラニャーノ、古代ローマのガルムから生まれたといわれるコラトゥーラで知られるチェターラ、陶器の街、ビエトリ・スル・マーレなどがあります。
神々の小道と呼ばれる道もあります。



この地方の畑は山の斜面に作られた日当たりは良さそうだけど畑仕事はきつそうな段々畑。
ここでレモンも、コスティエラ・アマルフィターナ用のぶどうも栽培されている。
この地方は冬は厳しく夏はとても暑い。昼と夜の寒暖差が大きく、土壌は火山性の土壌が石灰岩で覆われている。すぐ近くの海には温度調節機能がある。
コスティエーラ・アマルフィターナは、ティンバロや肉料理に合う強い赤から、生魚やアクアパッツァに合う軽い白、シーフードに合うロゼまで、さまざまなタイプが造られている。

コスティエーラ・アマルフィターナの白

白ワインのぶどう品種はビアンコレッラ、ファランギーナなど。赤は、ティントーレ、ピエディロッソなど。
アックアパッツァに合う白はソフトに圧搾して醸造するタイプ。

この地区では5つの作り手が中心になって、長期熟成が可能な上質白ワインへの品質改良の試みが行われている。

この地区にはこんな風景もあります。
テラスからの眺めが素晴らしいラベッロのホテル、ビッラ・チンブローネ。

イルカの形をした小島があるガッリ諸島


次回のお題はこの地方の料理。

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2022年6月15日水曜日

サルデーニャの過疎の村、オヴォッドの名物、ス・ピッツードは地元の食文化の遺産を受け継いで守っていくような料理。

今月の(CIR)の地方料理はサルデーニャの中心部、バルバージャ地方の大きなラビオリのような料理、ピッツードPitzudosです。

サルデーニャ料理には、住民の独特の歴史と暮らしがたっぷり反映されているので、知ってるイタリア料理とは全然違います。
その根本にあるのは農民と羊飼いの文化。ペコリーノの種類はヨーロッパで一番豊富。海産物が加わるのはずっと後になってから。やはり、我々の食文化とサルデーニャの食文化を大きく隔てているのは羊飼いの食文化。
サルデーニャでは米の栽培はあまり普及せず、でも硬質小麦はバルバージャ地方でも昔から栽培され、独特の羊飼いのパンが作られていました。羊飼いのパンは軽くて持ち運びやすく、長期間保存できるパン、つまり、パーネ・カラザウでした。パーネ・カラザウは毎日食べるパンですが、サルデーニャのパンには宗教的な意味を持った特別なパンもあります。

サルデーニャの食文化。

サルデーニャのパン、コッコイcoccoi。

セモリナ粉から作るサルデーニャのクスクス、フレーグラfregula。

1ユーロで空き家を売った村、オヴォッダのピッツード祭り。

謎の食べ物、Pitzudosは、どうやらsu Pitsudoス・ピッツードと呼ぶようですね。リチェッタは今月の(CIR)P.42にあります。じゃがいも入り生地に軽い酸味があるフレッシュなペコリーノを詰めたラビオリを揚げたものです。
蜂蜜をかけた食べるセバーダスに似てますが、ドルチェではなく、サラダを添えて前菜として食べます。ヤギのチーズも硬質小麦粉も、忘れ去られつつある地元の食材だそうです。

オヴォッドは長寿で知られる村で、素晴らしい伝統や産物もあるけど、伝える人がいないと消滅する。過疎の問題は、世界中でかなり深刻。サルデーニャはひと昔前の世界に生きているような・・・。

セアーダスseadas。

オヴォッダの伝統的なチーズ作り。







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2022年6月14日火曜日

サルデーニャの長寿の村は、過疎と高齢化に悩んで、空き家を1ユーロで売り出した。

今月の地方料理はピッツードスpitzudosです。
とは言ったものの、この発音でいいのか自信はありません。まあ、ドスで終わる名前なんて珍しい名前は、いかにもサルデーニャ料理ですが・・・。

(CIR)の記事P.41によると、この料理のふるさとは、サルデーニャの魂がある場所、文字通りサルデーニャの中央部分、バルバージャbarbagia。

昨日までミラノの話をしていて、頭を切り替えるのがちょっと大変だけど、どちらもイタリアの姿。

バルバージャの羊飼いは、一年の大部分を放牧の旅に出ているので、畑を耕すとか、パンを焼くといった村の暮らしは残された女性たちが切り盛りしています。
上の動画は、1958年のバルバージャの女性たちを、イタリアの映画監督、ビットリオ・デ・セタが(『自転車泥棒』のデ・シーカじゃない。イタリアの最も貧しい労働者に焦点を当てたドキュメンタリーで知られる監督)もの。
バルバージャ・ディ・オッロライbarbagia di ollolai地方のオヴォッダOvodda村は、長寿で有名で、別名パンの村とも呼ばれるところ。

2016年のオッロライ。標高1000mの静かな水源の村。



2021年のオヴォッダ。

オッロライは世界中のテレワーカーが一番住みたい町に選ばれたんだって。
オッロライは過疎と高齢化に悩む村。前市長は、購入者が家を修復する、という条件で、20軒のぼろぼろの空き家を1ユーロで売り出しました。
国の内外から約40軒の問い合わせがあったようです。
どこもこの問題にはかなり困ってますね。
サルデーニャは多くの移民を出した地。そこに戻ってこようとする人もいるようです。



オッロライはヤギの放牧だけでなく、ロバの飼育も盛ん。昔はヤギのミルクを運ぶために飼っていたんだって。最近ではロバのレースも盛んになってきたそうです。

アルバのロバのパリオ。去年は中止だったけど、今年は再開された。

ピッツードスの話、次回に続きます。


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2022年6月13日月曜日

マルケージの弟子でミラノに店を持つオルダーニシェフの金箔と白いサフランのリゾットは、リチェッタを知らないとタイトル回収できない。

最近のリゾットのお題の始まりは、ダビデ・オルダーニシェフでした。
今月の(CIR)で特集されているシェフですが(P.18)、ミラノ出身でミラノに店を持つ彼の、ミラノ風リゾットの動画を見て、サフランに対する思い入れの強さを知り、彼の天才ぶりも知りました。
(CIR)には超個性的な彼の料理の写真を数点載せましたが、リチェッタはなかったので、難解なシェフの料理のリチェッタを動画でどうぞ。

サフランの使い方が天才的なサフランのリゾット。サフランは北イタリアで初めて栽培に成功したロンバルディア産のもの。オルター二シェフ御用達で有名になった。


下の動画はミラノやイタリアを代表するシェフでオルダーニシェフの師匠でもあるグアルティエロ・マルケージの傑作に軽いを加えた1品です。

金箔と白いサフランのリゾットzafferano bianco,riso e oro

材料/40人分
金箔・・40g
サフランを浸した水・・1ℓ
ビネガー・・1ℓ
ブッロ・ドルチェ・・1.5㎏
18か月熟成のカルナローリ米・・3㎏
塩・・1㎏
27か月熟成のグラナ・パダーノ・・1.5㎏

・何も入れていない鍋に米を入れて軽く炒めて米の香りを立てる。
・軽く塩を加えた湯をレードル1杯ずつかけてリゾットに煮る。カルナローリのゆで時間は16~18分。
・火から下して20~30秒休ませ、バター少々とビネガー少々、おろしたグラナ・パダーノ大さじ数杯を加えてマンテカーレする。塩味を整える。最後にサフラン水を加える。
クラシックなリゾットよりサフランの風味を味わうことを意識したリチェッタ。
・リゾットを皿に盛り付けて平らに広げ、金箔をのせる。

リチェッタを知って初めて料理の名前の意味が分かりました。
難解だけど、意味が分かるとめっちゃ楽しい。

シェフの店、リストランテ・ドーは、ミラノでシェフが子供時代を過ごした公園の前にある。

な、なんてオサレな先割れスプーン。

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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
Riso
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2022年6月12日日曜日

リゾットは、米にブロードを吸わせてでんぷんが溶け出るようにゆっくり煮る。

今日の料理はゴルゴンゾーラのリゾットrisotto al gorgonzola


リチェッタの基本はリゾット。
盆栽が趣味のシェフがマスクをして登場し、今まで15年レストランをやってきて店を閉めたことなど一度もなかったけれど、今はみんな家で家族と一緒にいます、と悔しそうに語っています。

ゴルゴンゾーラのリゾットは、リゾットを作って仕上げにゴルゴンゾーラでマンテカーレします。
リゾットの作り方さえマスターしていれば、あとはほんのちょっとのアレンジでできます。
米はベネトならビアローネ・ナノで、ロンバルディアやピエモンテならカルナローリ。

材料/
カルナローリ米
黒コショウ
EVオリーブオイル、バター
玉ねぎ・・1個
ゴルゴンゾーラ
白ワイン(グレコ・ディ・トゥーフォ)・・1カップ

・鍋ににんじん、セロリ、玉ねぎを入れてブロードを作る。
・ゴルゴンゾーラのリゾットの場合、玉ねぎを加えない人もいるが、私は好きなので加える。普通のリゾットの場合は玉ねぎを細かく切って加えるが、ゴルゴンゾーラのリゾットの場合はとてもクリーミーな料理なので歯ごたえが欲しくて、いつもよりやや粗く刻む。玉ねぎをバターとEVオリーブオイル少々(バターの温度を下げるために加える)でソッフリットにし(リゾットをクリーミーにするために生クリームを加える人もいる)、玉ねぎが半透明になったらカルナローリ米を加える。量は1人前で2握り。1人前の時は鍋用に1握りで計2握り加える。米の外側が透き通って米の中央に白い芯ができたら白ワイン1カップをかけてアルコール分を飛ばす。ここにブロードをかけて米の表面より1、2㎝上まで覆う。1、2分ごとにレードル1杯のブロードをかけてかき混ぜながら2、3分煮る。さらにブロードを米を覆うようにかけながらリゾットに煮る。チーズに塩気があるので、塩味は味見をして最後に調える。米はスポンジのようにブロードを吸い、絞ると泡が出るが、急いで一度に加えると水気を吸わないし泡も出ない。米がブロードを吸ってでんぷんを外に出せるようにゆっくり煮る。一般的にリゾットにするには18~20分かかる。
・仕上げにブロードをかけて2分煮詰める。レードル1杯のブロードを加えて混ぜ、2分煮詰める。計15分煮たら、最初のゴルゴンゾーラ一塊を加えて溶かす。ブロード少々とゴルゴンゾーラを加えて溶かしながら煮て、数分休ませる。
その間にセロリにのせたゴルゴンゾーラをかじって「マンマミーア」と言ってますねえ。
こういうタイミングであの言葉を言うんですねえ。ごついシェフが言うとギャップ萌え~。
しかも、最後に煮上がる1分前に残りの“ゾーラ”を加える。と言ってます。
ゾーラはロンバルディアの人のゴルゴンゾーラの呼び方。なんかかっこいい。
最後のゴルゴンゾーラを加えたら火を止めてバターとゴルゴンゾーラを加えて強く混ぜ、空気を混ぜ込む。1分休ませて皿に盛り付ける。
確かにリゾットはかなりクリーミーに煮上がってます。玉ねぎの歯ごたえが欲しくなりそう。

おまけの動画はパルミジャーノのリゾット。
パルミジャーノの皮にリゾットを盛り付けるのはよくあるけど、下のリゾットはパルミジャーノのチャルダで造った器にリゾットを盛り付けています。器は食べることができるから、最後に食べるのが楽しみ。


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2022年6月11日土曜日

イタリアのチーズは南はモッツァレラなどのパスタ・フィラータ、北はパルミジャーノなどグラナに大別される。ゴルゴンゾーラはドッピオ・パスタと呼ばれる製法。

きのうイカスミのリゾットの動画を色々見ましたが、無数にあるのにどれも全然リチェッタが違うのです。
主にリゾットの作り方の違いでした。
リゾットは、米の産地、ロンバルディアでは人気の料理、でも、ロンバルディアには海がない。
イカ墨のリゾットは、ミラノ料理じゃないなあ。やっぱりコウイカが採れるベネチアの料理。イカスミ料理に関しては、未だに後悔しているのが、ベネチアでイカ墨のリゾットじゃなくてイカ墨のスパゲッティを食べちゃったこと。
スパゲッティは硬質小麦粉の産地、つまり南イタリアの料理。ベネトは硬質小麦は育たなくても米は育ちました。むしろ、ポー河と潟地方があったベネトは、豊富な水が必要な稲作に適していました。デンプンの含有量が多くてリゾットに適したビアローネ・ナノという品種が知られています。
ミラノでは、ビアローネ・ナノとレンチーノという品種のハイブリッド米、カルナローリが1945年に生まれました。料理人からも支持されている米で、ミラノ風リゾットを始めとする様々なリゾットに使われています。
イカ墨のリゾットは、ミラノじゃなくてベネチアで食べるべきでした。
では、ミラノならではのリゾットとは。
ミラノの名物の一つはチーズです。ゴルゴンゾーラのリゾットなんてどうでしょう。

ゴルゴンゾーラ。

ミラノでは、大企業が大量生産するチーズは、外国産ミルクや粉末のミルクが使われている、と敬遠されがちで、地元の小さな造り手のチーズが人気。

最近は南イタリアのチーズの動画をよく見ていましたが、南イタリアのチーズはモッツァレラに代表されるパスタ・フィラータpasta filataのチーズです。一方、北イタリアのチーズはグラナgranaと呼びます。パルミジャーノに代表される硬質チーズです。粒状の生地がその名前の由来ですが、ゴルゴンゾーラはそのどちらでもなく、ストラッキーノチーズがベース。
ゴルゴンゾーラは青カビチーズで、イタリア語ではformaggio erborinati/フォルマッジョ・エルボリナーティと言います。語源はイタリアンパセリという意味のerborin。
ゴルゴンゾーラの製法は、晩のカード(凝乳)に朝のカードを加える“ドッピオ・パスタ”と呼ばれる方法。
そもそもこのチーズの誕生にはこんな言い伝えがあります。デートに夢中になった農家の若者が、加熱鍋にカードを入れたまま一晩中忘れてしまい、翌朝、できたてのカードに加えてかき混ぜてみたけれど、前の晩のカードは朝のカードとは完全に混ざらず、シワや隙間の多い生地になってしまった。この生地を熟成させてみると、チーズの中にカビが生えてしまったが、味は上々で人気のチーズになった。
というわけで、ゴルゴンゾーラはフレッシュチーズのホエイを出し、針で穴を開けてカビの発生を促しながら作ります。
ゴルゴンゾーラの誕生にまつわる話はいろんな説がありますが、この話を知って以来、私の中ではミラノ風リゾットはステンドグラス作りの職人の若者、ゴルゴンゾーラは農家の恋する若者のドジから生まれた傑作として、とってもほのぼのした食べ物になりました。

ゴルゴンゾーラができるまで。

リゾットのリチェッタは次回です。


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2022年6月10日金曜日

イカ墨のリゾットは、アドリア海のコウイカがメインか北イタリアの米がメインかでリチェッタがかなり違う。

それでは今日は、イカ墨のリゾットことリゾット・ネロrisotto neroです。

下の動画は、ベネチアでのリゾット・ネロの作り方。
市場にイカを買いに行くところから見せてくれます。
イカはその場で下処理しながら売るんですね。墨袋は別にしてくれます。

動画ではベネチアの一般的なコウイカの食べ方、イカのウミドを説明しています。大雑把なリチェッタは玉ねぎをソッフリットにし、小さく切ったイカを加えて炒めます。
ワインをかけて墨を加え、トマトペーストを加えます。
リゾットの場合は米を加えてブロード・ディ・ペッシェをかけながらリゾットに煮ます。

ピエモンテ州監修の米の本、『リーゾ

には、ヤリイカのコウイカの墨風味のリゾット詰めRiso al nero di seppia nel calamaroという料理がありました。
つまり、イカ墨のリゾットにするイカはコウイカで、詰め物をするイカはヤリイカ、ということです。

イカ墨のリゾットrisotto al nero di seppia

材料/4人分
コウイカ・・600~700g
米・・350g
イカ墨、ビネガー
セロリ・・1本
にんにく・・2~3かけ
バター・・30g
パルミジャーノ、塩、こしょう
EVオリーブオイル、イタリアンパセリ

・イカは大型のものが適している。下処理して小さく切る。
・鍋に油とにんにくをソッフリットにし、イカを加えて数分熱する。
・水とビネガー少々で溶いた墨を加えて混ぜる。
・セロリとブロード用の水約1.5ℓ、塩、こしょうを加え、蓋をして40分煮る。
・半ばでセロリとにんにくを取り除く。火を止めてブロードの一部を別にする。
・米を加え、ブロードをかけながらリゾットに煮る。
・煮上がる直前にバター、パルミジャーノ、イタリアンパセリのみじん切りでマンテカーレする。
・熱々をすぐにサーブする。

イカと米という2つの食材の扱い方がポイントの料理で、バリエーションは人によってかなり違う。
上の動画は比較的イカ中心、下はリゾット中心。
材料/
カルナローリ米・・300g
コウイカ・・1㎏
イカの墨袋・・2個
玉ねぎ・・1個
ブロード・ディ・ペッシェ
イタリアンパセリ・・1房、塩
EVオリーブオイル・・大さじ4

・玉ねぎをみじん切りにして油で焦がさないようにゆっくりソッフリットにする。
・小さく切ったイカを少しずつ加えて弱火で4~5分炒める。イカを全部加えたら弱火で40分熱する。乾きすぎる時はブロード・ディ・ペッシェか水少々をかける。
・蓋をして30分煮る。
・別の鍋に油かバターを入れて火にかけ、米を炒める。米はビアローネ・ナノかカルナローリがお勧め。
・米が半透明になったら(生の米と比べると色が変わったのが分かる)ブロード・ディ・ペッシェをかけながらリゾットに煮る。
・米は常にブロードで覆いながら煮る。米が煮えたら煮たイカとブロード・ディ・ペッシェを加え、イカ墨を加えて5、6分煮る。
・皿に盛り付けたらイタリアンパセリのみじん切りを散らし、塩味を整える。
・好みでバターやオイルでマンテカーレしてもよい。


この人はリゾットの作り方にもイカの処理の調理の仕方にもこだわってますね。トスカーナ在住の人だそうです。

アドリア海のコウイカとロンバルディアの米の両方が主役の料理でした。


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シチリア出身のシェフがミラノで出した店は、その名もイカの卵。イカの卵はベネチアのチケッティの珍品中の珍品でした。

ゴールデンウイークにイタリアに行く人たち、いいなあ、なんて思いながら、情報だけはどんどん入ってくるので、今年もせめて動画でバーチャルツアーしましょうか。 今年はミラノガイドのカリスマが、新しい本を出したので、その中からミラノのお店をいくつかどうぞ。 まずは老舗のパスティッチェリー...