きのうイカスミのリゾットの動画を色々見ましたが、無数にあるのにどれも全然リチェッタが違うのです。
主にリゾットの作り方の違いでした。
リゾットは、米の産地、ロンバルディアでは人気の料理、でも、ロンバルディアには海がない。
イカ墨のリゾットは、ミラノ料理じゃないなあ。やっぱりコウイカが採れるベネチアの料理。イカスミ料理に関しては、未だに後悔しているのが、ベネチアでイカ墨のリゾットじゃなくてイカ墨のスパゲッティを食べちゃったこと。
スパゲッティは硬質小麦粉の産地、つまり南イタリアの料理。ベネトは硬質小麦は育たなくても米は育ちました。むしろ、ポー河と潟地方があったベネトは、豊富な水が必要な稲作に適していました。デンプンの含有量が多くてリゾットに適したビアローネ・ナノという品種が知られています。
ミラノでは、ビアローネ・ナノとレンチーノという品種のハイブリッド米、カルナローリが1945年に生まれました。料理人からも支持されている米で、ミラノ風リゾットを始めとする様々なリゾットに使われています。
イカ墨のリゾットは、ミラノじゃなくてベネチアで食べるべきでした。
では、ミラノならではのリゾットとは。
ミラノの名物の一つはチーズです。ゴルゴンゾーラのリゾットなんてどうでしょう。
ゴルゴンゾーラ。
ミラノでは、大企業が大量生産するチーズは、外国産ミルクや粉末のミルクが使われている、と敬遠されがちで、地元の小さな造り手のチーズが人気。
最近は南イタリアのチーズの動画をよく見ていましたが、南イタリアのチーズはモッツァレラに代表されるパスタ・フィラータpasta filataのチーズです。一方、北イタリアのチーズはグラナgranaと呼びます。パルミジャーノに代表される硬質チーズです。粒状の生地がその名前の由来ですが、ゴルゴンゾーラはそのどちらでもなく、ストラッキーノチーズがベース。
ゴルゴンゾーラは青カビチーズで、イタリア語ではformaggio erborinati/フォルマッジョ・エルボリナーティと言います。語源はイタリアンパセリという意味のerborin。
ゴルゴンゾーラの製法は、晩のカード(凝乳)に朝のカードを加える“ドッピオ・パスタ”と呼ばれる方法。
そもそもこのチーズの誕生にはこんな言い伝えがあります。デートに夢中になった農家の若者が、加熱鍋にカードを入れたまま一晩中忘れてしまい、翌朝、できたてのカードに加えてかき混ぜてみたけれど、前の晩のカードは朝のカードとは完全に混ざらず、シワや隙間の多い生地になってしまった。この生地を熟成させてみると、チーズの中にカビが生えてしまったが、味は上々で人気のチーズになった。
というわけで、ゴルゴンゾーラはフレッシュチーズのホエイを出し、針で穴を開けてカビの発生を促しながら作ります。
ゴルゴンゾーラの誕生にまつわる話はいろんな説がありますが、この話を知って以来、私の中ではミラノ風リゾットはステンドグラス作りの職人の若者、ゴルゴンゾーラは農家の恋する若者のドジから生まれた傑作として、とってもほのぼのした食べ物になりました。
ゴルゴンゾーラができるまで。
リゾットのリチェッタは次回です。
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