2022年6月9日木曜日

イタリアの米を使っても、ゆでた米にブロードとバターを加えただけではリゾットにはならない。

ゆでた米は、世界で最もよく食べられている料理です。
イタリアは、米が伝わると、米の栽培に適した環境のピエモンテとロンバルディアを中心に栽培が普及します。そして今や、ヨーロッパでもっとも重要な米の栽培国になりました。

リーゾ・ボッリート。

米は水と一緒に炊飯器に入れておくことに慣れ切ってると、ちょっと違和感。

リーゾ・ボッリートにブロードとバターを加えても、リゾットとは全然別物。ゆでた米にブロードとバターを加えただけではリゾットにはならないのでした。

北イタリアの米栽培は、北緯46度が北限です。言い換えれば、イタリアでもっとも多く栽培されている米、ジャポニカ米の北限でした。ベルチェッリ-アレッサンドリア-ノバーラの三角形の地域で、イタリアの米の2/3が栽培されています。エミリア-ロマーニャやベネト、トスカーナ、カラブリア、プーリア、サルデーニャでも少量栽培されています。イタリアの中でも米(リゾット)が好きな地方として知られているのはミラノとベネチアです。

北イタリアでは、米は水の中で生まれてワインの中で死ぬ、Nasce nell'acqua e muore nel vino...という言い回しが知られています。これは米の栽培にたっぷりの水が欠かせないことや、ゆでている間にでんぷんがゆで汁に溶けでる米の特徴や、米がベースの料理にワインが欠かせない、というような多くの米の特徴を、端的に言い表しています。
 弥生時代から続く伝統がある日本では、米は炊飯器で炊くものになっていますが、なんの伝統にも縛られないヨーロッパでは、モダンで科学的な方法で鍋で米を調理し、それに適した米が作り出されました。

 米の2種類のデンプン、アミロースとアミロペクチン、ゆでることによる米の粘り気、他の食材の香りや味を吸い込む力、米の表面積と調理中に米が吸い込む水分の量の関係などから判断される米の熟成具合、水分量、米と組み合わせる他の食材、こうしたもろもろのことが考えつくされて、ただのゆでた米ではなく、リゾットは生まれました。
米は品種によってゆで汁に溶け出るでんぷんの量が違います。

デンプンの量が多い米で作ったリゾットは柔らかく、クリーミーになります。
これはマンテカーレすると、アッラ・オンダと呼ばれる米がつながって波打つようになる状態を作り出します。

アッラ・オンダalla onda。


デンプンが少量しか溶け出さない米は、調理してもゆで汁が澄んだままで煮崩れず、サラダや魚のリゾット、パエリヤに適しています。
米に空洞が多い締まっていない米は、この中に水分が入り込み、煮汁や油脂が入らなくなります。そのため、米は調理する前に炒めて余分な水分を飛ばす必要があります。
このような条件を満たす米がリゾット用として選ばれます。


リゾットの基本がわかったところで、次回はリゾットのリチェッタです。
まずはミラノ同様リゾット好きのベネチアの名物料理、ベネチア風イカ墨のリゾットなんてどうでしょう。

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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
Riso
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シチリア出身のシェフがミラノで出した店は、その名もイカの卵。イカの卵はベネチアのチケッティの珍品中の珍品でした。

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