2023年5月24日水曜日

フランスの宮廷料理がベースのピエモンテでは、ソースはよく焼いて(ben cotta)よくディグラッサ―タ(ben digrassata)した料理から造った。

さて、今日のお題はヴィテッロ・トンナート。そもそも、子牛料理の話から、入った話題でした。
別名、ヴィテル・トンネとも呼ばれる、とてもフランス風だけど、味は正真正銘イタリアの味のピエモンテ料理。
この子牛料理の特徴はサルサ・トンナータla salsa tonnata。

材料/
オイル漬けツナ・・140g
塩抜きしたケッパー・・40g
レモン汁・・1/2個
オイル漬けアンチョビ・・3枚
ゆで卵の黄身・・2個
EVオリーブオイル・・1カップ
塩、こしょう

初期のサルサ・トンナータは、マヨネーズではなく、ゆで卵の黄身を使いました。
イタリア料理アカデミーの本、イタリアのソースを地方ごとにまとめた本、『スーゴとソース

によると、
マヨネーズとツナのソースですが、そもそも、この料理が18世紀にピエモンテで誕生した時には、マヨネーズもツナも入っていなかったそうです。
でも、このソースはいかにもフランス料理のテクニックぽい。
イタリア料理の場合、ソースはパスタや米にかけるもの。ベースとなる油はバターではなくオリーブオイル。地方ごとに異なるハーブやスパイスを多用するのもイタリア料理の特徴。特にバジリコ、マジョラム、セイボリー、シブレット、タイム、ローリエ、セージ、ローズマリーなどが中心。南からは唐辛やオレガノ、北からは白こしょうや黒こしょう、シナモン、クローブ、ナツメグ、ポピーシード、カルダモン、サフランが伝わりました。
イタリア料理のベースには、他に、にんにくや玉ねぎも欠かせない。

ピエモンテに、「料理の調味のベースになる美味しいソースは、しっかり焼いてしっかりデグラッサーレしたもの」という言い回しがあります。
ピエモンテ料理はサボイア家の宮廷料理がはぐくみました。19世紀末にはヌーベルキュイジーヌが誕生し、新しい方法の新しいソースが生み出されます。
ピエモンテ料理を語る時は、フランス料理を語ることにもなります。
当然、油はバター。ベシャメルなどの洗練されたソースのベースになりました。

かつては多用されていた豚の脂は貧しさの象徴でしたが、現在は植物性油に置き換わっています。
ピエモンテは気候的にオリーブが育ちにくい地方でしたが、オリーブオイルは隣のリグーリアとの交易によって流通していました。北のヴァッレ・ダオスタにもEVオリーブオイルの管理組合があります。
オリーブオイルを使ったピエモンテのソースは、ピエモンテの農民料理のシンボルになりました。バー二ャ・カウダです。

ピエモンテの料理を語る時、リグーリアはポイントになる地方です。
ヴィテッロ・トンナートの場合、マグロのオイル漬けはジェノバがピエモンテに併合された18世紀後半にリグーリアから伝わりました。それまで流通していたマグロの塩漬けとマグロのオイル漬けはかなり違うものだったそうです。
ピエモンテにはリグーリア産のアンチョビの塩漬けは14世紀にはすでに流通していました。

そして南の野菜、トマトが加わって赤くなったソースがバニェット・ロッソbagnetto rosso
です。

このように、イタリア料理のソースを知るためには、ピエモンテから初めてリグーリアに行き、ロンバルディアからトレンティーノなど北を経由してベネチア、そしてエミリア・ロマーニャに入ります。中央イタリアに入ったら、次はトスカーナ、マルケ、ウンブリア、ラツィオからカンパーニア、プーリア、シチリアと南に下り、最後にサルデーニャというのが一般的なルートです。
ピエモンテにはトンノ・ディ・コニッリオtonno di coniglio(マグロのうさぎ)という謎な料理があります。
モンフェッラートでよく知られた料理で、うさぎ肉をマグロのオイル漬けのようにオイルに漬ける料理だそうです。

ピエモンテ料理も、一歩足を踏み入れると面白そうなものばかりですね。
長くなりそうなので、今日はここまで。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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