トリュフとロッシーニに続くマルケの食材、最後は牛肉です。
北と南は何かと注目されるイタリア料理ですが、中央イタリアにもなかなかユニークな食文化があります。
イタリアの牛肉と言えば、トスカーナのキアニーナが有名。
世界最大の牛の一種、キアニーナ。
野性的な品種で病気に強く、放牧に適している。ミルクの量は少ないが肉は上質。
この牛をロマニョーラ種、ポドリカ種などと交配させて誕生したのがマルキジャーナです。
マルキジャーナ。
丈夫なため、長い間畑での労働力として利用されていました。ミルクの量は少ないけれど、肉は美味しい品種。
そしてこれらのトスカーナやエミリア・ロマーニャ、マルケの牛を一つにまとめたブランド牛が、ビテッロ―ネ・ビアンコ・デル・アッペンニーノ・チェントラーレ。
そもそも子牛が特別な肉、というか、子牛肉vitello(ビテッロ)なんて、見たことない、という人もいるはずですが、そこにさらにビテッロ―ネvitellone と言われても、正直イメージわかないですよね。
私もミラノ料理の本『クチーナ・ミラネーゼ』
に、ミラノ料理のスターは子牛肉だ、とあるのを読んで初めて、子牛肉がイタリアでも特別な肉だということを意識したのでした。というか、ミラノ料理以外に、子牛料理がポピュラーなイタリアの地方料理なんて、思いつかないし・・・。
に、ミラノ料理のスターは子牛肉だ、とあるのを読んで初めて、子牛肉がイタリアでも特別な肉だということを意識したのでした。というか、ミラノ料理以外に、子牛料理がポピュラーなイタリアの地方料理なんて、思いつかないし・・・。
子牛肉料理はフランス料理や強力な貴族階級が存在する地方にしか需要はなかったはず。
という訳で、ちょっと考えれば、子牛肉はかなりマイナーな肉と分かるのでした。
いい機会なので、ここでイタリアの牛のことをざっと見てみましょう。
そもそも牛は、ミルク、肉、労働力という目的のために飼育されました。
イタリアの牛は、アジア原産の、労働力として伝わったものや、ゲルマン人の大移動によって伝わったものなどがあります。
労働力といっても、ちょっとした力仕事程度ではなく、重労働をこなす牛が求められました。
イタリアに定着した品種の中でも、かなり過酷な環境でも順応する丈夫さがあり、上質のチーズになるミルクを出す、という特徴があったのが、ポドリカ種です。飼育数は大幅に減りましたが、肉の質の評価も高い品種です。
カラブリアのポドリカ種。
ロマニョーラ種はポドリカ牛がルーツ。ロマーニャ地方とベネトの一部だけで飼育されている。昔は労働用と食用の両方に使われていた。皮の下に厚い脂肪層があるのでグリルやローストに最適。
マレンマ種もルーツはポドリカ種。野生の放牧に適していて飼い葉が少なくてもミルクをたっぷり出し、肉もジューシー。
ピエモンテーゼはイタリアを代表する中型の牛。ミルクより、特に若牛の肉が評価されている。赤身でコレステロール値が低く、ボッリートや生で食べるのに最適。
キアニーナ、ロマニョーラ、マルキジャーナがビテッロ―ネ・ビアンコ・デッラ・アッペンニーノ・チェントラーレというIGP製品に認定された。
農業が機械化されるにつれて牛の需要が変わり、肉用の品種が求められるようになった。
ということは、大きな牛ほど肉がたっぷりとれるわけで、丈夫な牛より大きな牛の時代がきた。半野生の状態で飼育するので、各地の森との環境の結びつきも強い。生物多様性の象徴の一つ。
そんな子牛肉の代表的料理は、ロースト。
この話は次回に。
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