2015年12月17日木曜日

カーチョ・エ・ペペ

もうすぐ発売の「総合解説」13/14年3月号から取り上げる次の地方料理は、カーチョ・エ・ぺぺ。

Spaghettoni Al Cacio E Pepe @ Trattoria Epiro

カーチョ・エ・ぺぺのことを何も知らない時の私は、この料理は、ゆでたスパゲッティをおろしたチーズとこしょうであえる、超お手軽簡単な料理だと思っていました。
ところが、イタリアの料理書にかなり度々取り上げられる記事を読むうちに、どうやらこの料理は、もっと奥の深い重要なものであることに気がつきました。
言うならば、ローマ系パスタ(カルボナーラ、アッラッビアータ、アーリオ・オーリオといったイタリア料理の代表的なパスタ)のルーツではないのか、ひょっとしたら、カーチョ・エ・ペペを知らずしてパスタは、少なくともローマ料理は語れないのでは、と思うまでになりました。

でも、シンプルな料理のわりに、リチェッタが驚くほどバリエーション豊かなのがローマのパスタ。
カーチョ・エ・ぺぺも例外ではありません。
単純にゆでたパスタをチーズとこしょうであえるものから、今回の「総合解説」で紹介しているようにチーズ、こしょう、水をハンドミキサーで攪拌するものまで、かなり様々で、これが正当派だと言える根拠を探すのはかなり大変そう。

ローマ料理の本として信頼されているリヴィオ・ジャンナットーニの『ラ・クチーナ・ロマーナ・エ・デル・ラツィオ』によると、

「この料理は、初めて作るときは必ず失敗する。
酒が飲みたくなる料理なので、最近では深夜の料理として再流行している」
のだそうです。
かなりこしょうが利いてそうですが、彼が本物のロマーノだと認める人物は、この料理に使うこしょうのブランドや、買う店まできっちり決めているそうです。
ジャンナットーニのリチェッタは、ボールに水気をざっと切ったパスタを入れてチーズとこしょうであえるもの。

南イタリアの有名店のパスタを集めた本、『パスタ ; サポーリ・エ・プロフーミ・ダル・スッド』には、ローマのリストランテ・アガタ・エ・ロメオのカーチョ・エ・ぺぺが載っています。
アガタのリチェッタは、オリーブオイルとバターでサフランを溶き、これでまずパスタをあえてからチーズとこしょうを加えます。
こしょうはナイフで粗く潰します。
ちなみにこしょうは花椒を使用。
ペコリーノは、ペコリーノ・ロマーノと、珍しいエンナ産サフランと粒こしょう入りのペコリーノ・ピアチェンティーノのミックス。

カルロ・クラッコシェフは、その著書、『カルロ・クラッコの地方料理』で、こう書いています。

「カーチョ・エ・ぺぺはとても美しくて重要なリチェッタだ。夜や深夜に何か食べたくなったら、カーチョ・エ・ペペこそぴったりな料理だ。
この料理のことを考えると、親友のパオロ・ロプリオーレシェフが作ったカーチョ・エ・ぺぺのことが思い浮かぶ。
自分で作ってみたとき、最初は失敗ばかりで、気に入った味にならなかったが、違うタイプのペコリーノを混ぜるという秘訣をパオロが教えてくれて以来、美味しいものができるようになった」

クラッコのカーチョ・エ・ぺぺは3種類のペコリーノとこしょうでパスタをあえたら生クリームでつなぎます。
ちなみに彼が世界最高の一つと考えているこしょうは、カメルーンのペンジャの黒こしょうです。

“リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズの『パスタ』にはローマのエノテカ・ヴィーノ・エ・カミーノのトンナレッリ・カーチョ・エ・ぺぺのリチェッタが紹介されています。
それによると、オリジナルのリチェッタではオイルは使わず、最近ではパスタはトンナレッリ、または他の手打ちパスタ、あるいは細すぎない乾麺のパスタがよく使われるそうです。
このリチェッタでは、オリーブオイルでにんにくとこしょうを熱し、パスタとゆで汁を入れて水気がなくなるまで熱し、火から下ろしてチーズを加えます。

すべてのリチェッタが見事に違います。

どのシェフも、自分なりのうんちくを熱く語ってますねー。









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“チコーリア入りカーチョ・エ・ペペ”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」13/14年3月号に載っています。
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