今日の話はCIR2月号の記事《ペコリーノ》P.16からです。
ペコリーノはペコリーノ・ロマーノしか知らないという人が大半だとは思いますが、イタリアでは各地で数多くのペコリーノが造られています。
ちなみにローマではチーズと言えば牛乳のチーズではなく、羊のミルクのチーズのことだそうです。
今日のペコリーノは、トスカーナのペコリーノ・ディ・ピエンツァpecorino di Pienzaです。羊のレンネット(凝乳酵素)を使うので、とてもクセが強いペコリーノ。
ペコリーノ・ディ・ピエンツァ
トスカーナのヴァル・ドルチャval d'Orciaという地方で半野生状態で飼育されているサルデーニャの品種の羊のミルクから造ります。20世紀になってサルデーニャからトスカーナに移り住んだ農民が造り始めた、歴史の長いペコリーノのわりには歴史の短いチーズ。
同じヴァル・ドルチャのピエンツァのすぐ近くで造られているワイン、モンテプルチャーノのようなトスカーナのタンニンや個性が強いワインによく合い、脂を洗い流すことができるチーズ。
トスカーナのハートこと、ピエンツァとヴァル・ドルチャ。その風景は世界中の人がイメージするトスカーナの姿そのもの。レオナルド・ダ・ヴィンチの絵の背景に描かれていそうな風景。
ヴァル・ドルチャ。
ペコリーノ・トスカーノの一種、ペコリーノ・ディ・ピエンツァの中でも最高のペコリーノの造り手と言われているのがブーカヌオヴァbucanuova。サルデーニャの羊飼いの一家が造っています。どうやらペコリーノのキーワードはサルデーニャ。
ブーカヌオヴァのペコリーノ・ディ・ピエンツァ。
ペコリーノ・ロマーノたげでなく、ペコリーノ・ディ・ピエンツァもサルデーニャの羊飼いが造ったチーズでした。
下はペコリーノ・ロマーノとペコリーノ・サルドの違いを説明する動画。
最初にペコリーノ・ロマーノとグラナ・サルドを並べて色の違いを見ています。左の白いペコリーノは羊小屋の羊のミルクから造り、塩分の含有量は2~3%。右は放牧地の羊のミルクから造ったチーズで塩分の含有量は6.5%ととても高くなっています。
ペコリーノ・ロマーノはローマ料理のベースとなるチーズですが、パルミジャーノによく似ています。おろしてアマトリチャーナなどのローマのパスタや料理に散らすのに最適です。ピエンツァのペコリーノは食事中に食べたり、赤ワインと組み合わせるのに最適。
ローマ料理に合うように造られたペコリ―ノ・ロマーノ、トスカーナのワインに合うのはペコリーノ・ディ・ピエンツァ。さらに言えば、サルデーニャの羊飼いが造るチーズは製造コストが安く、塩分が多いので保存できる期間も長いチーズでした。一方、トスカーナのチーズは世界的なトスカーナワインの人気と結びついて、世界中に広まりました。塩気のないトスカーナのパン、パーネ・ショッコに合うその甘さも、パルミジャーノに似た味も、世界中の消費者に人気となりました。ペコリーノの生産者は選択を迫られました。庶民的なローマ風にするか、高級で洗練されたトスカーナ風にするか。クセを残すかマイルドにするかです。
羊を飼育するということは、村や文化を造り出すことに直結していた。
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サルデーニャから移り住んだ羊飼いがローマやトスカーナでチーズを造ったが、ローマのパスタもトスカーナの高級ワインも知らない羊飼いは、ペコリーノの癖が強いと言われて消費者が求めるマイルドな味に変えて売った。すると値段の安さもあって大ヒット。造り手のいないローマやトスカーナのチーズは消えていった。
トスカーナでも個性的なペコリーノは造られていた。
その一つがペコリーノ・デッラ・モンターニャ・ピストイエーゼpecorino della montagna Pistoieseです。山の暮し、農民、羊の共同作業が生み出すチーズ。小さな作り手たちが集まって上質のペコリーノを造り出す。ピストイアの山間部では、角が特徴の黒い羊たちを飼育し、チーズや羊毛を造っている。
ペコリーノ・デッラ・モンターニャ・ピストイエーゼ
70年代にサルデーニャから羊の群れと共にマルケ移り住んだカウ・エ・スパーダ家は、現在では上質のペコリーノの造り手として知られている。
カウ・エ・スパーダ。
アブルッツォのグレゴリア―ノは1500頭の羊のミルクから造られる。
Gregolianoのペコリーノ
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