今日のお題はペコリーノです。
ペコリーノは、羊のミルクというクセの強いミルクから造るクセの強いチーズとして、マイルドな牛乳のチーズに慣れている消費者からは多少敬遠されがちなチーズだが、イタリアでは、長い伝統があるメイド・イン・イタリーの産物として誇らしげに語られています。CIR2月号のペコリーノの記事も、歴史とプライドを感じさせるものでした(日本語訳はP.16~)。
記事は、ポリフェルモという洞窟に棲む一つ目の巨人の話から始まります。
ポリフェルモが何なのか知っている人は、アジアにはほとんどいないだろうなあ。
でも、ヨーロッパでは有名な存在。ギリシャ神話に登場するし、ホメロスのオデュッセイア(ユリシーズ)にも登場します。ポセイドンの息子だそうです。
グロテスクで恐ろし気な一つ目の巨人ですが、なんと彼は、緑豊かな島で羊を飼って洞窟に棲んでする、という設定です。つまり、イタリアの食文化を代表する歴史上もっとも有名なチーズ、ペコリーノを造る羊飼いだったのです。
多分、ポセイドンの息子の一つ目巨人が羊飼いでペコリーノの造り手ということは、ヨーロッパ人の教養の基礎の範囲内なんでしょうねえ。
それにしても、ペコリーノはなぜ特別なのか、というと、かなり野生が残った家畜である羊のミルクのチーズの製造過程が人と自然の関わりを強く感じさせるチ―ズだからです。
ヒツジの飼育。
牛の飼育。
羊のミルクを絞れるのは放牧されている羊が栄養価の高い餌を探せる春から夏の間。つまりそれが授乳期間で、かなり凝縮されています。
夏の終わりになると羊は妊娠の準備のためにミルクを出さなくなります。
そのためミルクを保存する必要があったのです。
そして創り出されたのが中~長期熟成させるチーズ。
羊のミルクの味は食べている餌や季節によって違います。
つまりチーズは牧草地によって味が違うのです。
そしてちょっと意外だったのが、こう言ったのが、イタロ・カルヴィーノというイタリアの国民的作家だということ。彼は大学の農学部出身なのでした。
ペコリーノの牧草地による影響について語れる国民的作家って、なんだかおもしろい。
次はイタリア各地の名物ペコリーノの話。
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