今日の料理はベネチア料理の前菜、“バッカラ・マンテカートbaccalà mantecato”です。
きのうのバッカラ・アッラ・ビチェンティーナに続く、ベネトの人気バッカラ料理ですが、このノルウェーのロフォーテン諸島特産の干ダラは、長期間保存ができ、とても安価だったので、ヨーロッパ中の、主に海のない地方に広まりました。イタリアでも国中にバッカラ料理があります。
特にベネト地方ではバッカラの消費量が多かったのでした。
冬のロフォーテン諸島↓
ストッカフィッソ作り↓
バッカラはメルルーサを保存加工したもの。
この干したメルルーサは、バイキングの長い航海を可能にした。彼らはこれを食料にし、
物々交換の商品にしてヨーロッパ中に広がっていった。
イタリアに伝えたのはベネチアの商人。ロフォーテン諸島で難破した時出会ったストッカフィッソを故郷に伝えた。それ以来、ロフォーテン諸島で生産されるストッカフィッソの90%はイタリアに輸出される。
メルルーサは主に北大西洋、北海、バルト海に生息するタラの一種で、ナゼッロはもっと小型のタラのこと。地中海を含むもっと温かい海に棲む。イタリア近海の魚ではないので、ナゼッロの鮮魚を使った伝統料理はイタリアにはない。タラはイタリアでは主に冷凍ものが出回っている。
バッカラはイタリアの地方料理には欠かせない重要な魚。
特にキリスト教は金曜日に肉を断つ,金曜日の断食の教えがあったので、金曜日にバッカラを食べる習慣が広まった。
山では干ダラを何時時間もかけて戻して料理していたが(ノルウェーのRabnarという有名な輸出業者が作るラーニョという上級品は戻すのに6日かかった。戻すと3倍近い量になる)、沿岸部では生のフレッシュな魚を食べた。
当然ながら、バッカラは質素な食材の筆頭だった。
ベネトの庶民の味と言えば、ベネトにはバカロとチケッティという独特のオステリア文化がある。
チケッティ↓
材料/
戻したストッカフィッソ・・500g
軽いEVオリーブオイル(リグーリア、ロンバルディア、ベネト産)・・150g
ストッカフィッソのゆで汁・・100g
ローリエ・・2枚
レモン・・1/2個、塩
・バッカラ(ストッカフィッソ)を水で3日間戻す。ストッカフィッソは塩漬けしたメルルーサを干したもの。ベネトではバッカラと呼んでも実際はストッカフィッソのこと。戻したバッカラは茶色でストッカフィッソは灰色がかっている。戻す間、5~6時間ごとに水を替える。
・戻したストッカフィッソを骨、皮ごとゆでる。皮や骨からゼラチン質が溶け出たゆで汁は、皮や骨を完全に取り除いて調理に使う。大きく切って鍋に入れる。鍋に水(ゆで汁)、ローリエ2枚、レモン1/2個、オイル、塩を加えてストッカフィッソを入れて火にかけ、沸騰してから20分ゆでて冷ます。
・皮と骨を取り除きながらほぐしてニーダーに入れる。ミキサーを使うと歯ごたえが変わる。これは牛乳を使わないリチェッタだが、好みでミキサーを使ったり、牛乳を加えてもよい。
・攪拌羽を付けたニーダーで攪拌し、覆いをして速度を速めて10分攪拌する。
・速度を落とし、オイルとゆで汁を少しずつ加えながらマンテカーレしてクリームにする。戻したストッカフィッソ500gに対し、タッジャスカオリーブのオイル150g、ゆで汁100gの割合で加える。
・覆いをして速度を速めて20分攪拌する。
・グリルしたポレンタのクロスティーニにのせてサーブする。
次回はバカロのチケッティについて。
ベネチアの名店、ハリーズバーの自伝的本『ハリーズ・バー』
には、ハリーズ・バーの創業者、ジュゼッペ・チプリアーニが、あんなカチコチのストッカフィッソから、こんなふわっとした料理を作り出すなんて、この料理を考え出した人にはノーベル賞を与えたい、と書いている。
には、ハリーズ・バーの創業者、ジュゼッペ・チプリアーニが、あんなカチコチのストッカフィッソから、こんなふわっとした料理を作り出すなんて、この料理を考え出した人にはノーベル賞を与えたい、と書いている。
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