ザバイオーネは湯煎にかけて沸騰しない程度に加熱しながら煮詰めるソース。
“湯煎bagnomariaバニョマリーア”は、4世紀にマリア・ジュデーアという錬金術師によって考え出されたとする記録が残っているそうだが、この人物が実在した記録はない。
13世紀にマリア・ディ・アレッサンドリアが発明したという説もある。どうもマリアさんが怪しい。
湯煎と言う方法が、蒸留技術にもつながる実に科学的なものであること、パスティッチェリーアの基本的なテクニックであることは、普段はまったく意識しない。
でも、リストランテ・アンバッシャータのロマーノ・タマーニシェフは、客の前で7分間ホイップしてザバイオーネを作り、錬金術を再現した。下の動画は別の人ですが。
トリノのビチェリンやカンビオと言ったトリノを象徴する老舗カフェやレストランでは、店特性のザバイオーネが味わえます。ビチェリン(webページはこちら)ではマルサラ、モスカート、バッシートなど様々なピエモンテ産ワインで数種類のザバイオーネを作っています。ザバイオーネはコッパに入れてビスコッティかフルーツを添えてサーブします。ビスコッティの定番はサボイアルディ。
ティラミスにも欠かせないピエモンテの名物。
ザバイオーネの主役は湯煎の技と卵。カルロ・クラッコシェフの本、(料理のベースの食材について書かれた)『卵が先か小麦粉が先か』に、卵に関する自身の子供のころのこんな思い出がありました。
《とても古い思い出だが、私の祖母はいつも「鶏が卵を産んだか見に行こう」と言って私を鶏小屋へ連れて行きました。まだ幼かった私は、あまり頭のいい子でははなく、鶏と卵の関係が分からず、いつもどういうこと?と感じていました。祖母は鶏小屋に入って見渡すと、鶏を1羽抱き上げて、「見つけた!」と言います。時には卵がない時もあって、卵を見つけると、それまでなかったものが出現していて、何か神聖なものを見たような気がしました。私にとっては卵は今も不思議な食材です。殻の中に命が入っているのも、外が堅くて中が液体なのも神秘的でした。
卵は基本の食材です。ドルチェからサラートまで、前菜からパスティッチェリーアまで様々な料理に使えて、泡立てるとふんわりして、生でも、ソースにも、炒り卵にもなり、卵白だけ別にするとメレンゲになり、パスタやパンになり、小麦粉と水に加えると様々な形になり、小さなうずらの卵から、大きくて風味の強いがちょうの卵まで、無数のバリエーションがありました。卵に魅せられて、私を象徴する料理は“卵のマリネ”と言われるまでになりました。私に幸運をもたらしてくれた料理です。
でも、私にはもっと前から象徴と言える卵料理がありました。蒸した卵のクリームUovo alla crema cotta al vaporeです。
マルケージの最初のシェフ、カラシュテンの元にいたときに考え出したものです。白トリュフと卵というクラシックな組み合わせに自分の個性と考えを加えたものでした。
卵のマリネの次に、生まれたもので・・・》
この後は、この料理の作り方の説明が続くのですが、卵を加熱する温度と時間の話が続き、私の頭がついていくのをやめてしまいました。
クラッコシェフのリチェッタの卵のマリネ↓
鶏小屋に卵が出現することを不思議がっていた少年が、卵のマリネで世に名前を知られるようになったのですねー。料理人は理系だなあ。
でも、本にはこの料理は技術ではなく経験とわずかな職人技から生まれた。創作力があれば大きな結果を出して新しいものを発見できる、と言っています。
卵のマリネの次は、マヨネーズ、そしてクレーマ・コッタ(クレーマ・カタラナ)へと続いていきます。基本中の基本の食材として選ばれた卵ですが、シェフの関心は次の食材、小麦粉へと展開していきます。機会があれば、少しずつ訳してみます。
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