ペコリーノの話、続けます。
そもそもの大前提、このチーズは羊のミルクのチーズです。
羊の飼育。市場を牽引しいるのはフランスですが、新人が参入する余地がたっぷりある新しい市場。
羊のミルクはイタリアの全ミルクのわずか5%ですが、羊が放牧される環境は年々関心が高まり、人間によって整備され、守られています。その結果、とても栄養価の高いミルクになります。例えば、オメガ3は牛乳より多く含むことが知られています。
これはDHA、ドコサヘキサエン酸、青魚に含まれていることが知られるあの栄養素です。
代表的な羊乳のチーズは、ペコリーノ・ロマーノ、サルド、シチリアーノ、トスカーノ。
ソフトなフレッシュと、おろして使う熟成タイプがあります。
ペコリーノ・ロマーノは、現在はほぼ90%がサルデーニャ産。ローマとナポリの生産者がラツィオと気候が似通ったサルデーニャで製造を始めたのがきっかけでした。現在はペコリーノ・ロマーノの管理組合もサルデーニャにあります。
ヨーロッパで最初にDOPが認められた羊のチーズで、外国の市場で偽物がもっとも出回っているチーズ。塩気が強いのが欠点でしたが、2013年には塩分が5%以下の製品が新発売されています。
おろして使うタイプのチーズは、“パスタ・コッタpasta cotta”と呼ばれる製法で造ります。この製法を用いないチーズはパスタ・クルーダpasta cruda。
カッティングしたばかりの凝乳物(カード)を48~55℃で加熱してからホエイを出す製法です。
この方法を用いると、弾力のあるカードになります。ペコリーノ・ロマーノ、グラナ・パダーノ、パルミジャーノ・レッジャーノもこの製法で造られます。これらのチーズは水分の排出量を多くするためにカードを細かくカッティングすることも共通しています。製品の水分含有量は40%以下。水分が少ないと、長期間熟成させることが可能になります。
ペコリーノ・ロマーノの熟成期間は、テーブルチーズは最低5ヵ月、おろして使うタイプは8ヵ月。パルミジャーノは最低12ヵ月で22か月以上熟成させると複雑な風味になります。グラナ・パダーノも最低12ヵ月。若いペコリーノ・ロマーノは、白~麦わら色で、サルデーニャやラツィオの牧草地のハーブの香り。やや辛口で、洋梨のコンポート、蜂蜜、ドライフルーツ、田舎パンとサラミ、フルーツと野菜などと相性がよく、定番の組み合わせはソラマメとパンチェッタ。
最低8ヵ月熟成させたペコリーノ・スタジョナートは、生地は若いタイプより締まっていてやや粒状。辛さがもっとはっきりしているので、ブリーモ・ピアットの味付けには完璧。特にローマの定番プリーモのカーチョ・エ・ペペ、カルボナーラ、アマトリチャーナには欠かせない。それだけでなく、じゃがいものニョッキ、ラビオリ、リゾット、ズッパにも合う。
というわけで、ドコサなんちゃらが豊富なペコリーノ、青魚の代わりに食べたくなりました。
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