今日のパスタ・フレスカは。トスカーナのピチです。
豊かで歴史ある食文化のトスカーナで、唯一、トスカーナ人の関心が薄いとされるイタリア料理が、よりによって国民的料理、パスタ・セッカなんですねー。
トスカーナ料理のスター食材、パンの扱いとは雲泥の差。ちなみに、トスカーナの代表的プリーモ・ピアットとして知られているのは、パッパ・アル・ポモドーロ。
硬くなったパーネ・トスカーノの料理です。パーネ・トスカーノは塩気のない、皮はカリッとしてクラムは長時間発酵させるふわふわで気泡の跡がたくさんある、薪で焼くパン。
パーネ・トスカーノもパスタも原料はトスカーナ産小麦。
でも、製品にかける情熱は、パンのほうが熱~いと感じてしまうのは、なぜ・・・。トスカーナのパスタ・フレスカのプリーモ・ピアットの代表、ピチpici。
麺を1本ずつ手で転がして伸ばす、すごく手間のかかる作り方をするパスタ。
リチェッタは(CIR4月号P.49)。
ピチの語源は“appiciare”。この独特の製法を表現する言葉です。生地を転がして細くすることを意味しています。
ピチは、複数形ですよね。ということは、単数形は、ひょっとしてピコ?超かわいい。
でも、残念ながら、ピチは別名pinciと呼ばれるそうで、だとすると単数形はピンコになっちゃう。このパスタの説明をする時は、大抵、スパゲットーニの一種、と表現されます。でも、作り方は大分違います。
ダイスを通して作るススパゲットーニ。
見るからに、リッチなソースが合いそうなパスタですね。
ピチの定番ソースは、アリオーネaglione。アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノのソッフリットでホールトマトを煮たソースです。
この料理のポイントは、キアーナ渓谷のアリオーネ、つまり巨大だけど味はマイルドで甘いにんにく。4人分で一玉のにんにくを使います。
そういえば、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノは太いパスタ、スパゲットーニで作るのが定番ですが、ひょっとして一番合うのはピチかも。
キアーナ渓谷のピチ・アッラリオーネPici all'Aglione della Val di Chiana。
にんにくの甘さと上質のトマトを味わうには、味付けはマイルドに。チーズはペコリーノ・トスカーノ。
キアーナ渓谷と言えば、イタリアを代表する美味で巨大な牛、キアニーナの産地。
この地方の名物ラグーは、キアーナ牛の挽肉で作ります。このラグー・アッラ・キアニーナもピチの定番ソースですが、ピチよりもっと重いソースに合うトスカーナのパスタ・フレスカがパッパルデッレ。
キアニーナのラグーのパッパルデッレ。
肉は包丁で刻み、鋳鉄の鍋で香味野菜のみじん切りと刻んだパンチェッタをソッフリットにしたら、肉を加えて火を強め、メイラード反応させる。香りが変わったらローリエを取り除き、ワインでデグラッサーレする。マルサラを加えてさらにデグラッサーレする。デグラッサーレするほど美味しくなる、と言ってます。トマトのパッサータをたっぷり加えて蓋をし、ブロードも加えて2~3時間煮込む。煮詰まりすぎたらブロードを足す。ゆでたパッパルデッレをラグー、ゆで汁少々、オイルでマンテカーレして皿に盛り付け、ペコリーノ・トスカーノを散らしてサーブする。サルシッチャや乾燥ポルチーニ、レバーを加えるリチェッタもあります。
ピチはシエナ地方の伝統料理ですが、パッパルデッレはマレンマ地方のパスタです。スパゲッティより太いのがピチでしたが、パッパルデッレはタリアテッレより太いと形容されるパスタです。
詳しくは次回に。
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ブログ『イタリア料理ほんやくざんまい』
イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)』
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