2022年5月5日木曜日

パルミジャーノは噛まない。溶かすのだ。作り手が、原価の安さだけを追求しないのがアルティジャナーレの製品。

 『LA CUCINA ITALIANA』2020年7月号でちらっと見かけた言葉がありました。
マッシモ・ボットゥーラシェフの特集号、言い換えればモデナの食文化の特集号です。
“アルティジャナーレ”なモデナの食材を紹介する記事は、『白い牛の金L'ORO DELLA VACCA BIANCA』という副題でした。パルミジャーノのことです。
そして、こう書かれていました。
「パルミジャーノの本物の通の味わい方は、パルミジャーノを噛まない。口の中で溶かすのだ。すべての香りを引き出すにはこの方法しかない」
こう語るのは最高のパルミジャーノの作り手と評価されているカゼイフィチョ・ロゾラのカーポ・カザーロ、ジーノ、58歳。
この酪農場の最初の顧客はボットゥーラシェフでした。シェフは30か月熟成のパルミジャーノを毎週買っていた。パルミジャーノの熟成期間は最長で10年と長い。
パルミジャーノは16~17℃、湿度80%の熟成庫で、6か月熟成させるとチーズの中心まで塩が行き渡り、最低12~24か月の熟成の後、出荷される。放牧地の干し草の香りが発散されるのは3年後だ。
モデナのパルミジャーノの原料は、モデナの土着品種の牛、vacca bianca Modeneseのミルク。
牛の飼料や飼育する環境を守り、調え、最新の技術を用いてチーズに加工し、さらに長い年月をかけて熟成させるオーガニックのパルミジャーノは、ある意味究極のアルティジャナーレ製品。

vacca bianca Modenese

この牛のミルクは伝統的なものと比べると脂肪が少なく、たんぱく質が多い。

この品種は絶滅しかけていて、今は1000頭しかいない。一般的な牛なら30~40㎏のミルクが取れるが、バッカ・ビアンカはわずか15~16㎏で、機械で搾乳しやすいミルクの量が多い品種に取って代わられたのだ。

Caseificio Rosolaの動画にジーノが出てました。


絶滅しかかっている品種のミルクを使っている造り手は、新たなチーズを創り出すなどして需要を開拓している。
単純に原価の安さだけを追求すると、伝統の品種が絶滅するなど、取り返しがつかない結果になりかねないんですね。ボットゥーラシェフはモデナの食文化の保護のために何かをしてくれる人。そういえば、熟成期間の短いパルミジャーノのリチェッタも考えだしていました。動画でマッジェンゴの話をしている人、ボットゥーラシェフ?
上の動画では、夏の青い牧草を食べた期間のミルクを使うパルミジャーノに対して冬のミルクだけを使う農家の伝統のチーズを造っています。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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