今日のノンナの料理は、バーニャ・カウダです(リチェッタはCIR3月号P.4)。
イタリア料理を代表するソースですが、このソースはどこの地方のものでしょうか。
ヒントは料理の最後にあります。
この記事は、イタリアの老舗月間料理雑誌『クチーナ・イタリアーナ』誌の編集部員たちのおばあちゃんの料理にまつわる思い出と料理を集めたもの。
バーニャ・カウダには
「トリノ人と結婚した祖母が厳格なリチェッタで作っていた料理。軽くて孫たちには大人気だった。」
とあります。短いこの一文の中には、深~い情報が詰まっています。
まずはトリノの人と結婚した、とあります。トリノはもちろんピエモンテの州都です。
つまりこの文章は、トリノ=ピエモンテと読み解きます。
そしてピエモンテを代表する名物料理が、バーニャカウダです。
トリノ。
この動画からも感じられるトリノの高級感は、何なのでしょうか。
この街はサボイア家の宮殿がある街として世界遺産になっています。
サボイア家はヨーロッパの名門貴族の一族。その本拠地がピエモンテ。
イタリアは様々な外国の影響と支配を受けてきた国。食文化的にはアラブのシチリアやスペインのナポリなどが有名ですが、ピエモンテはフランスです。
フランスから見ればピエモンテは小さな隣国でしたが、その影響は絶大でした。
ピエモンテ人のバーニャ・カウダに対する敬意も、おばあちゃんが夫一族の厳格なリチェッタを守り次いでいたことからも理解できます。ただし、この料理はれっきとした農民料理なので、フランス貴族の血は一滴も受け継いでないとは思いますが。
バーニャカウダ。
バーニャカウダは中世後期に生まれたと考えられている料理。ピエモンテのカンティーナでは新ワインの樽を開ける時や、畑でその年の作業が終わった時など大事な出来事があるときに作るお祝い料理で、若いワインを飲みながらわいわいと賑やかに、たっぷり時間をかけて夕食をとるときの料理でした。
このリチェッタで気になったのが、野菜のラインナップです。
この料理は寒い時期の料理ですから、当然季節の旬の野菜を使うことになります。
リチェッタには、カリフラワー、プンタレッレ、ラディッキオ・タルディーボ、フィノッキオとあります。
本家のピエモンテでは、この料理にぴったりと考えられている野菜はカルド・ゴッボです。
カルドン、またはカルド・ゴッボ。
ニッツァ・モンフェッラートの名物野菜ですが、他に、厳しい寒さの中で最初の霜を被ったシャキシャキの生野菜を組み合わせます。
代表的なのは、サボイキャベツ、ピーマン、セロリ、かぶ、ポロネギなど。
ですが、どう考えても北の野菜が中心。それが、リチェッタでは、ローマ名物のプンタレッレやベネト名物のラディッキオ・タルディーボと、南から北までイタリアの名物冬野菜を豪華に集めてカリフラワーやフィノッキオと一緒に出しています。これはかなり面白い料理になります。
プンタレッレ。
実は今月号のリチェッタには“チコーリア”の記事があります(P.17)。チコーリアのほろ苦さは春の到来を告げるもの。この時期は霜を被った野菜よりもほろ苦さがあるチコリたちのほうが旬。そしてチコリたちもバーニャカウダにぴったりの野菜でした。
バーニャカウダは農民料理でも、お祝いごとの時に出す贅沢な料理です。この料理は、海のないピエモンテでアンチョビをたっぷり使っています。さらにオリーブも育たない地方なのに、とても貴重で高価なオリーブオイルを使います。
そしてテラコッタの卓上鍋を炭火の小さな火で温めていただきます。バーニャカウダはゆっくり加熱し、沸騰させない、というのが原則。
野菜を食べ終わったら残ったソースに卵を1個入れてスクランブルエッグにしてもよいですが、トリュフをすりおろして加えれば、超贅沢な1品に。
バーニャカウダのベースはアンチョビ、にんにく、オリーブオイル。これをとろ火で煮溶かす。
アンチョビ、にんにく、オリーブオイルはイタリアのソースの三種の神器。
野菜にも肉にも、パンにも合います。
バーニャカウダと同じくピエモンテのフランス系名物ソース、サルサ・トンナータ。
オイル漬けツナとマヨネーズがベースで冷やしてサーブします。
次回はチコーリアの話。
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