2023年4月5日水曜日

ステーキのグリーンペッパー風味のこしょうの刺激が苦手な人は、こしょうの選び方を変えてみるほうがよいかも。

今日は肉料理の話。
ゲルマン系の豚のもものビール煮から地中海風のポークチョップ、豚のブラチョレットまで紹介しましたが、次はフランス系の子牛のステーキのグリーン・ペッパー風味です。カルロ・クラッコシェフがこの料理にまつわる自身の思い出を本の中で語っていました。
カルロ・クラッコシェフの過去の経験を語った面白い本、『クールにしたいならエシャロットを使う』です。

本では、子牛のヒレ肉料理についてのこんな体験が語られていました。

「“ダ・レーモ”で働き始めた時、かなり衝撃を受けた子牛料理があった。たいていの店は肉料理と言えばグリルかローストだったが、私はある仕上げをまかされた。それは“ヒレ肉のグリーンペッパー風味il filetto al pepe verde”だった。」
この本は、シェフが若かりし頃、まだ修行専門の好奇心一杯で勉強熱心な駆け出しの料理人だった時に体験したことや、子供の頃の思い出など、彼の料理の基礎となり、現在の彼の料理のベースとなった出来事を、若手料理人に伝えるために書いた本。
子牛のヒレ肉の料理は、レストランの肉料理の基本中の基本。
でもシェフは、この肉はどこから来たのか、誰が造ったのか、どんな歴史があるのか、この料理を食べる人に伝えるべきメッセージとは何なのかと、深く知りたがる若者でした。ダ・レーモDa RemoはビチェンツァVicenzaの店で、当時はホテル学校に通いながら働いていました。その後シェフは、グアルティエロ・マルケージ師匠、モンテカルロのオテル・パリスのアラン・デュカス、パリのルーカス・カールトンのレストランなどでキャリアを積んでいます。
そんな若手時代に出会って、強烈な印象を残したのが子牛肉のステーキのグリーンペッパー風味。

フィレット・アル・ペペ・ベルデ。

ごく一般的なこのステーキから、シェフは何を感じたのでしょうか。
この料理は、アッラ・ランバダalla lampadaと呼ばれる客の前でシェフではなくサービスの担当者が卓上で作って見せる料理。

アッラ・ランバダ。クレープ・シュゼットなどがそうです。派手に炎を上げるフランベがポイント。

グリーンペッパー風味は、肉をフランベした後に、グリーンペッパー、マスタード、生クリーム、ブロード・ディ・カルネを加えて肉にからませながら熱します。

グリーンペッパーは普通は水煮の瓶入りの塩漬けものを使います。これがアロマがとても強いこしょうでした。刺激はあるのですが、それ自体の味は強くはありません。そしてこれを肉に加えて生クリームを加えると、刺激が消えるのです。さらにスーゴ・ディ・カルネを仕上げに加えると、まったく気にならなくなり、思った通りの料理ができたのでした。

いったい何がシェフをこんなに驚かせたのでしょう。
ここからは上級編です。
私は生のグリーンペッパーを使います。おそらくあまり見たことないでしょうね。私はいつも探しています。フレッシュなグリーンペッパーは、信じられない味です。一般的などんなスパイスにも勝ります。何年も戸棚で光や湿気を浴びて保存した乾燥ペッパーとは比べ物になりません。月日が経つにつれて、こしょうはその美点の繊細さやエレガントさを失い、刺激だけが残ります。なのでスパイスを買う時は、新鮮な上質のものを選ぶ必要があります。

正直言って、私はこのこしょうの塩水漬けが大の苦手で、この料理もグリーンペッパー風味というだけで食べる気がなくなるほどでした。でも、次はトライしてみようかな、という気になりました。

この料理で、シェフはスパイスの目利きの重要さを知ったのですね。
この後もシェフのアドバイスは続きます。
その一つがメイラード反応です。
料理の初歩の初歩を教えてくれる、ぜひ読み込んでいただきたい本です。

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