2020年4月28日火曜日

ティラミスに下剋上されたズッパ・イングレーゼ。最近見ない?

さて、ズッパ・イングレーゼ。
この名前のズッパの部分は、“浸す”という意味のイタリア語、inzuppare/インズッパーレから。

最近ではすっかり姿を消したズッパ・イングレーゼzuppa inglese

(約12人分)・卵黄8個、砂糖250~300g、ふるった小麦粉70g、熱した牛乳1Lでクレーマ・パスティッチェーラを作り、ホワイトチョコレート100gを加える。表面に膜ができないように粉糖を散らして、またはラップで覆って冷ます。
・同じ材料、要領でビターチョコレート400g入りクレーマ・パスティチェーラを作って冷ます。
・水1カップ、砂糖40gでアルケルメス1/2カップを沸騰させてシロップを作る。
・サボイアルディの両面にシロップをさっと浸してオーブン皿に並べる。
・その上をクレーマ・パスティチェーラで平らに覆う。
・その上をチョコレート入りクレーマで平らに覆う。
・ラップで覆って冷蔵庫で2時間休ませる。

マスカルポーネ以外はティラミスとほぼ同じ。
なぜ消えた。
アルケルメスという特殊なリキュールがネックかなあ。
ティラミスはコーヒーだもんね。

アルケルメスはアラブ生まれで、フィレンツェで洗練されたリキュール。
カテリーナ・デ・メディチがフランスの宮廷に広めた、とも言われています。

オステリエ・エ・ジェンティ・ディ・フィレンツェ・エ・キアンティ


によると、このドルチェの名前については諸説あるが、不明なことも多く、唯一確かなことは、イギリスとは関係ない、ということ。

生まれたのはトスカーナだが、最近になって、ティラミスにすっかりその座を奪われた。
有力な説は、フィレンツェ近郊の丘でぶどうを栽培するイギリス人家族に雇われた農民が、残り物を有効利用しようとして考え出したというもの。
この場合の残り物とは、朝食やお茶のケーキ。
なるほど、だいぶありそうに思えてきました。

リチェッタが最初に登場するのはフェラーラのエステ家の宮廷料理。
エステ家の宮廷料理には、アングロサクソン系のトライフルという、発酵生地を甘口ワインにひたしてホイップクリームやアマレーナを重ねた1品が伝わっていた。 
この料理のスポンジ生地をサボイアルディに変えると、ズッパ・イングレーゼになります。

フルーツトライフル


ちょっと残り物感あるかも。
イギリスとイタリアの違いは、シロップに欠かせないアルケルメス。
アルケルメスはアラブで生まれてフィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラの薬局で完成されたリキュール。


赤い色はとても美しいけど、手に入れにくいのが欠点。

サンタ・マリア・ノヴェッラの薬局


その欠点をカバーしたのが、今回の主役、ズッパ・ディ・アリオスト。
このドルチェはアルケルメスもサボイアルディも使うけど、一番の主役はチェリーのシロップ煮です。
チェリーと言えば、アリオストが総督を勤めた街、ガルファニャーナの名物でした。

そう、ここにつながるのでした。
このドルチェはズッパ。
つまり、チェリーのシロップにインズッパーレするドルチェです。
オリジナルのズッパに色々応用できそうですね。

チェリーのシロップ煮といえば、アマレーナ。

自家製チェリーのシロップ煮

材料/
種とヘタを取ったチェリー・・500g
水・・200ml
ブラウンシュガー・・200g
レモン汁・・大さじ3
コーンスターチ・・大さじ3

・チェリーの種とヘタを取る。
・鍋にチェリー、ブラウンシュガー、水を入れて火にかけ、かき混ぜて砂糖を溶かして煮る。
・小鍋にレモン汁大さじ3、コーンスターチ大さじ3を入れて溶かし、焦がさないようにかき混ぜながら2分煮詰めてチェリーに加え、10分煮詰める。
・ハンドミキサーで撹拌する。
・火を止めて数分休ませて漉し、室温で冷ます。
・スクイーザーに入れて冷蔵庫で保存する(約1ヶ月)。または密閉容器に入れて湯煎で20分煮沸殺菌する。
・ジェラートにかけたり、サボイアルディを浸してチェリーとホイップクリームを交互に重ねる。

これは高カロリーのマスカルポーネも手に入りにくいアルケルメスも使わない、新種のティラミスの一種、または新種のズッパ・イングレーゼではないですか。

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総合解説

オステリエ・エ・ジェンティ・ディ・フィレンツェ・エ・キアンティ

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