8月号のリチェッタに入る前に、イタリア料理の基礎の基礎について。
イタリア料理は地方料理の集合体です。
地方の代表的な形は、州。ピエモンテ、トスカーナ、カンパーニア、ラツィオ、シチリアなど、北から南まで20州あります。
これらの州には、独自の気候、地形、歴史、そして個性豊かな食文化があります。
イタリア料理は、これらの州に住む農民、漁師、羊飼い、そして大都市の工場労働などを生業とする人々の家庭料理がベースにあります。
つまり庶民の料理です。
それは決して贅沢ではなく、むしろかなり質素で貧しいものでした。
イタリア料理を特別な存在にしたのは、手に入るわずかで質素なもので美味しくて栄養のある料理を家族に食べさせたい、という質素でも食材には手を抜かず、むしろ徹底的に吟味する、という考え方。
食材を極めようとすると、アルティジャナーレ、つまり職人技を尊敬する、という考えに行きつきます。季節、地形、歴史などと共に、職人技の尊重、という考えがあるのもイタリア料理の特徴です。
さて、こうしたイタリア料理の基礎を踏まえたうえで、今月のリチェッタを見ていきましょう。
料理のテーマは“バカンス地のスペチャリタをアレンジ”です。
そして1品めは、シチリアの“パーネ・クンザートpane cunzato”でした。
動画に上げられているのは、見栄えを追求したあまり、イタリア料理の本質を完全に忘れた料理になってます。インパクトのある派手なものが多いですが、現実には、パーネ・クンザートは質素な農民料理です。
シチリアは、地方料理の中でもバラエティー豊かで、歴史も地形も複雑です。
パーネ・クンザートは、かなり庶民的でベーシックな料理です。
リチェッタの日本語訳は(CIR/2013年8月号P.2)にあります。
シチリアのストリートフードで、手早く簡単に食べることができる料理です。材料は田舎パン、熟した形のよいトマト、ブリーモ・サーレ(ペコリーノ)、オイル漬けアンチョビ、シチリア産オリーブオイル、塩、こしょう、オレガノです。トマトは種を取ってスライスし、ブリーモ・サーレもスライスします。アンチョビはほぐします。具を用意している間にパンを温めて縦に半分に切り、クラムに浅い切り込みを入れてオレガノ、塩、こしょうを散らしてオイルをかけて調味(クンザート)します。その上にトマト、チーズ、アンチョビをのせて、白ワインと一緒にいただきます。
伝統的なパーネ・クンザート。
これでもかなりリッチで派手ですが・・・。
今回、パーネ・クンザートを色々見て、印象に残ったのは、シチリアを代表するワイナリー“ブラネタ”のシチリア料理の本の
『シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ』のパーネ・クンザート
でした。
ワインの造り手も、いわば職人です。
ワインの造り手は、優れた農家で、地元の気候や土壌、さらには食文化をよく理解しています。なので、ワイナリーが作る地方料理の本は、優れたものばかりです。
しかも、いつも言ってますが、世界中の富裕層の顧客を相手にするワインリゾートの料理を集めたこの本のリチェッタは、とても洗練されていて、かなりのハイセンスです。
パーネ・クンザートという、地味な農民の家庭料理を、この本に見つけた時も、驚きがありました。
香ばしそうなパンに真っ赤な完熟トマトの輪切りを載せて真っ白なチーズの小片を散らしただけのこの料理、最高に美味しそうでした。
グイド・トンマージの地方料理シリーズの『シチリア』の
パーネ・クンザートは、さらに上を行っていました。トマトもチーズものっていないドーナツ形の丸いパンを2段に切り、黒オリーブが点々と載っていて、オリーブオイルがクラムにたっぷり染み込んでいるのが分かるほどオリーブオイルをたっぷりかけたパンにオレガノを散らしている手がドーンと写っているという写真です。これらの料理はパーネ・クンザートの主役が何か、よーく理解したものでした。
パーネ・クンザートは、さらに上を行っていました。トマトもチーズものっていないドーナツ形の丸いパンを2段に切り、黒オリーブが点々と載っていて、オリーブオイルがクラムにたっぷり染み込んでいるのが分かるほどオリーブオイルをたっぷりかけたパンにオレガノを散らしている手がドーンと写っているという写真です。これらの料理はパーネ・クンザートの主役が何か、よーく理解したものでした。
セモリナ粉のパンの造り方から説明するリチェッタは、かなり信頼性あり。
それでは今日は、プラネタのリチェッタの“パーネ・クンザートPANE CUNZATO”をどうぞ。
材料/6人分
《パン》
セモリナ粉・・1㎏
ぬるま湯・・600ml
蜂蜜か砂糖・・20g
生イースト・・40g
EVオリーブオイル・・50ml
塩・・20g
《具》
トマト・・8個
フィレアンチョビ・・200g
プリーモサーレ・・400g
EVオリーブオイル・・50ml
オレガノ、塩、黒こしょう
・ぬるま湯にイーストと砂糖または蜂蜜を溶く。オイルとセモリナ粉を加えてこねる。均質の生地になったら塩を加える。
・生地を覆いのある容器に移し、1.5~2時間発酵させる。約3倍に膨らむ。
・油を塗ったベーキングトレイに入れ、あまり押したり練ったりせずに手で平らにする。表面に打ち粉をし、ナイフで斜めのクープを入れ、手で平らにする。皮ができないように布で覆い、30分休ませる。
・オーブンを最高温に熱し、生地を入れたら200℃に下げて約35分焼く。
・パンが冷めたら半分に切り、トマトの輪切り、オレガノ、アンチョビ、おろしたブリーモ・サーレ、オイル、塩、粗挽き黒こしょうをはさむ。この料理はとても貧しい料理で、
地方によっては上質のオリーブオイルと乾燥オレガノ少々だけで調味する。焼き立てのフォカッチャの代わりに前日の硬質小麦のパンをオーブンで軽くトーストして使ってもよい。
ちなみに、グイド・トンマージの本のリチェッタでは、天然酵母の造り方から説明していました。
この料理のベースはパーネ・シチリアーノ。
シチリアのアルティジャナーレ製品の象徴、ペコリーノ・プリーモ・サーレprimo sale。
シチリアのオリーブオイル。
次回はシチリアのパンの話。
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