(CIR/8月号)のリチェッタに戻ります。
テーマはバカンス地のスペチャリタでした。
バカンス地は、イタリアの国中にある世界的な観光地ではなく、庶民が夏の長期休暇、バカンスを過ごすための地です。
なので、さほど知られてもいない街なのに、たまたまバカンスの時期に行くと、なんだこれは~!とびっくりすることになります。
1品目はバカンス地というより観光地、シチリアのスフィンチョ―ネでした。
2品目は、ロマーニャ地方のピアディーナPiadinaです(リチェッタはP.2)。
ロマーニャ地方のストリートフードでしたが、この地を訪れる海水浴客などバカンス客によってブームに火が付き、今ではロマーニャ地方だけでなく、イタリアを代表する薄焼きパンになりました。特にリミニRIMINIがブームの発祥地として知られています。
リミニにバカンスに訪れた人にとって、ピアディーナはビーチまで行く道で美味しい匂いを振りまいている屋台の食べ物。
海の家の焼きそばみたいなもんでしょうか。
リミニ。
ピアディーナは軟質小麦粉、塩、水がベースのシンプルな薄焼きパンで、酵母入りパンが発明される前、つまり文明の誕生以前から造られていたパン。
最初にピアディーナの明確な証拠を残したのはエトルリア人で、古代ローマ人に受け継がれ、徐々に現在のリチェッタへと変化していきました。もっとも貧しい人々の食べ物とされ、小麦粉にかかる税金が高くなると、もっと安いトウモロコシの粉を加えて作るようになります。
発酵させないので朝起きてすぐに食べることができ、オーブンではなくテストというテラコッタの道具で焼くのでパン生地がない時でも手軽に作ることができました。
今では市販品のレトルトのピアディーナが出回っていますが、伝統的なのは、この地方の料理上手の主婦で麺棒の魔術師ことレズドーラrezdoraが、手でこねた生地を麺棒で伸ばして熱した鉄板で焼く、本物のピアディーナ。昔は農民にとってのパンでした。祭りや田舎を訪れた都会の人のためにはラードを加えたリッチなバージョンを作りました。最近の一番リッチなバージョンでは、重曹やイーストを加えます。さらに牛乳、砂糖、卵、白ワイン、レモンの皮を加えたり、ラードの代わりにオリーブオイルを使ったりします。
具は次第にリッチになり、定番はルーコラ、ストラッキーノ、モッツァレラ、トマト、生ハム、モルタデッラなど。
ピアディーナ。
ピアディーナの話題は夏になると必ずと言っていいほど取り上げていましたが、この1年のリミニのピアディーナを巡る環境の劇的な変化はびっくりします。その中心は、5万ユーロが投資された13㎞にわたるヨーロッパ最長の海沿いの道、パルコ・デル・マーレ。
もっとも貧しい人々の食べ物と言われた名残はきれいさっぱり消えて、おしゃれなストリートフードになりました。
ピアディーナのポイントは、石臼で挽いた最上質の小麦の全粒粉。
ピアディーナを焼くテストを作る職人も減っていて、モンテフィッティMontefittiという村に数件だけ残っています。
ピアディーナla piadina
材料/5枚分
小麦粉・・500g
ラードまたはオリーブオイル・・100g
重曹・・大さじ1/2
塩・・大さじ1/2
・小麦粉をフォンタナに盛り、塩、重曹、ラード、ぬるま湯適量を加えて混ぜる。ピッツァのように柔らかくない堅めの生地にする。
・まとまった生地になったら少量ずつ切り取って麺棒で片側の面だけを伸ばす。
・熱した鉄板で生地をフォークでピケしながら焼く。1分焼いて裏返し、再び生地をずらしながらピケする。
・火を止めて半分に切る。
・1枚にスライスした生ハムをのせてもう1枚を重ね、ナプキンで包んでサーブする。
小麦粉と水などで作る平らなパンの伝統は、ヨーロッパ、アジア、北アフリカを結ぶルートで広まりました。一番有名なのはアラブのパン。さっと焼いた柔軟性のあるパンで、ケバブと野菜、ソースを巻いたりします。
イスラエルには、ユダヤ人がエジプトから脱出する時、パンを発酵させる時間がなかったことを忘れないようにという宗教的な理由から酵母を加えないパン、マッツァーがある。酵母をほとんど加えないパンは、中東からアジアをかすめて(インドのチャパティなど)、アフリカへと伝わります。
ピッツァとは別の発展をした薄焼きパン。
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