2023年9月30日土曜日

断食の間に魚を食べていると見せかけて肉を食べたい、という切実な思いから生まれたトンノという名前の料理はイタリア中の山の中にあった。

ピエモンテを象徴する料理、ヴィテッロ・トンナートの話が出たところで、今日は、今月の(CIR)の記事“うさぎのトンノ”の話(P.29)。
“うさぎのマグロ”という、これまた面倒くさい名前の料理ですが、確実なのは、この料理は肉料理で、マグロは一切入っていない、ということ。
これまでさんざんピエモンテでマグロは獲れないと言ってきましたが、この地方には、マグロ風に対する強い憧れがあったようで、各種のマグロ風料理が考え出されてきました。
これもその一つです。
うさぎのトンノ

うさぎや鶏などの白肉を魚のように見せ、マグロのオイル漬け風の味にした料理です。
そこまでして魚を食べたかったのか、とも思うのですが、これを考えだしたのはトリノの修道士。
キリスト教には肉を食べてはいけない日というのがあります。
有名なのは復活祭前の四旬節の断食。
キリストが荒野で断食をしたことに基づいています。その前にはカーニバルという断食前にごちそうを食べて騒ぐというお祭りがあります。
断食と言っても何も食べないのではなく、肉を断つ、という意味です。
この掟を破るというのは罪を犯すということ。その背後には肉を食べたいというかなり切実な思いがあったはず。

四旬節の断食。


もちろん、断食していたのはピエモンテだけではありません。
イタリア中の人たちが、知恵を絞って肉料理を考え出しました。
トスカーナには、“キアンティのマグロ”という料理があります。
豚ロースつまりロンザの料理です。
リチェッタには上質の豚肉を使う、とあります。そして長い時間をかけてマグロ風の味に生まれ変わらせます。

キアンティのトンノ。


念のために、キアンティはこんな場所。海はないです。


(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)次号、8月号は10月5日発売予定です。
もう少々お待ちください。

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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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