リグーリアのアンチョビについて見てみましたが、地中海はアンチョビの豊かな漁場で、リグーリアでは水揚げも多いです。様々なリグーリア料理に使われてきましたが、売れ残ったアンチョビは塩漬けにして、行商人が、リグーリアと他の地方の物々交換に用いてきました。ピエモンテの山を越えてランゲやミラノへと運ばれていきました。クーネオ県のヴァル・マイア地方では農閑期の副業としてアンチョビの塩漬けの行商が普及していました。
ヴァル・マイアはどんなところなのか、見て驚きました。
こんなところです。
すんごい山の中。
ヴァル・マイア。
アンチョビとは無縁の山の中で、必要なのは塩でした。
塩、つまり海です。
リグーリアのモンテロッソの塩漬けアンチョビ。この漁村では男性が漁に行き、女性がそれを塩漬けにしていました。村の女性の仕事がアンチョビの塩漬けでした。
この山の中で牛を育てていた若者たちは、夏になると塩を求めてリグーリアまで行き、そこで塩漬けアンチョビを仕入れてピエモンテやロンバルディアに売りました。この行商はいつの間にか大きな事業になり、ピエモンテの伝統料理まで生み出しました。
バーニャ・カウダ。
ピエモンテのバーニャカウダも、山の中で造られる塩漬けアンチョビがあったから生まれた料理なんですね。
さらに、アマルフィ海岸のコラトゥーラで知られる町、チェターラは、そもそもはマグロ漁の村でした。ところがマグロの数が激減して、マグロ以外の魚で経済を立て直す必要に迫られました。そして選んだのがアンチョビです。現在は、伝統料理、飲食業、職人たちの、知力と行政力を総動員した食べ物と文化を結び付けたプロジェクトによって、アンチョビ産業がマグロを完全にカバーしている。
チェターラのマグロ漁。
チェターラと言えばコラトゥーラ。古代ローマ人がガルムと呼んでいた調味料の子孫で、現代人の食通にも人気がある。多分、これがチェターラを救ったのでしょう。
コラトゥーラには、3月末から7月初めに獲れた脂が少なくて塩漬けに最適のイワシを使います。イワシをオークの樽で4~5ヵ月塩漬けしてイワシから出る水分を集め、水気を飛ばして濃縮し、これを再びイワシにかけて味を強め、容器の底に穴をあけて集めた汁がコラトゥーラ。1年かけて作ります。
伝統的なコラトゥーラ造り。
アンチョビはアマルフィ海岸の漁村だけでなく、ピエモンテの山の上の牧畜の村まで救っていました。
リグーリアは海と大地を結び付けたマーレ・エ・テッラの土地だけでなく、ピエモンテやトスカーナといった近隣の地方とも強く結びついています。そのキーとなった食材は、例えば、ムール貝もそうです。この話は、来月の(CIR)で詳しく取り上げていますので、お楽しみに。
コラトゥーラのスパゲッティ。腕組みで料理を説明する料理人が完全にサッカー選手のスタイル。
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