2023年9月13日水曜日

残り物を使うのが得意なイタリアの家庭料理は、実は食材の吟味の仕方が半端ない。

イタリア料理は各地の家庭料理と複雑な歴史や気候から生まれる地方料理の集大成、ということはよく知られていますが、このところ売れ残った魚で作るズッパ・ディ・ペッシェや、修道士のパンと水の料理とか、とにかく素朴で地味な料理が続いて、ちょっとテンション下がりました。でも、そんな地味な家庭料理のイタリア料理が、なぜ美味しいのか、そのヒントとなる文章が、『クチーナ・イタリアーナ』誌の『パンと水』の記事(CIR1P.21)に、さらっと書かれていました。
イタリア料理は贅沢な食材は避ける傾向がありますが、その分、食材を吟味して、職人の技をとても高く評価します。
今日の(CIR7月号)の地方料理、“ペーストのパスタ”は、イタリアの代表的地方料理から、イタリア人の食材の選び方が垣間見れる記事でした。連載記事なので、毎月1品、取り上げています。(記事の日本語訳はP.19)
今月取り上げたのは、ペーストのパスタです。正確にはペーストのトゥベッティTubetti al pesto。

記事のリチェッタは、とてもシンプルでベーシックなもの。市販のペーストは使いません。

ペーストのパスタ。

まず材料。パスタのトゥベッティは、もちろんメーカーを厳選します。
記事では、マルケ州、フェルモのパスタメーカー、マンチーニ社のパスタを選びました。
庶民的な家庭料理でも、パスタは値段では選びません。
多分、そこが日本との最大の違い。
値段は高くても品質の違いはよく知れ渡っています。

マンチーニ社。

パスタメーカーは、小麦畑の位置も製法も、すべてオープンです。
そしてパスタには地元産の3種類の小麦粉をブレンドしてブロンズ製のダイスを通して超低温で24時間乾燥させています。パスタに使われている小麦の種類やダイスの材質、乾燥温度や時間というのも、一般の消費者の関心事項。畑の硬質小麦の栽培状況もオープンです。



次の食材は、バジリコです。
種から管理している無農薬栽培の農家で旬の季節の春から夏だけ販売されるものを直接購入したそうです。造り手からの距離が短いものほど安くて品質の劣化が少ない、とアドバイス。

次はパルミジャーノです。レッジョ・エミリアでのみ飼育されている3000頭のバッケ・ロッセ種の牛乳から作るパルミジャーノを使います。

バッケ・ロッセ種のパルミジャーノ。

一般的なフリゾーナ種の牛乳で作るパルミジャーノは熟成最低12ヵ月なのに対して、バッケ・ロッセは24ヵ月。バッケ・ロッセのミルクはカゼインの含有量が多く、長期熟成が可能。熟成期間が長いとマイルドで甘いチーズになる。

バッケ・ロッセ。

ペーストの造り方には一切触れてないのに、最高に美味しいペーストができそう。

乳鉢を使わない現代風ペーストの本。『ファッチャーモロ・ペスト


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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