今日のお題は肉料理のためのアンチョビソース。
そして料理はピエモンテの定番の冷製前菜、ヴィテッロ・トンナートです。ローストビーフに匹敵する料理。
子牛肉のマグロソースがけという、冷静に考えるとなんだか変な名前の料理。
アンチョビでさえ手に入れるのが大変な海のないピエモンテ州で、マグロのソースなんて、かなりなビックマウス。マグロはオイル漬けのことで、よく知られているアルトゥージのサルサ・トンナータは、オイル漬けマグロ100gとアンチョビ2尾、レモン汁、たっぷりのオリーブオイルというリチェッタ。リグーリア産のアンチョビとマグロのオイル漬けから生まれるソースです。
でもこの料理は、矛盾した料理名を巡る大喜利状態がとても楽しそうに繰り広げられるのが常なんです。
ジャンカルロ・ベルベッリーニシェフのヴィテッロ・トンナートは、アンチョビとツナを使います。マヨネーズを加えるのではなく、サイフォンでムース状にする軽いソースです。子牛肉は中がピンク色に仕上げてスカロップ状に切り、アンチョビをのせたゆで卵、ケッパーを載せたサルサ・トンナートと交互に盛り付けると、あれっ、マグロみたいに見えます。でも子牛肉、念のため言うなら牛肉です。
マグロのオイル漬け
材料/
マグロ・・2㎏
塩・・140g
ひまわり油・・3/4ml
EVオリーブオイル・・1/4ml
・マグロを筒切りにして水で覆い、2時間休ませる。途中で一度水を換える。
・水気をよく切って大きな鍋に入れ、水で覆う。塩140gを加えて沸騰させる。
・アクを取って火を弱め、1時間30分ゆでる。
・マグロをシートに取って24時間乾かす。
・骨と皮を取り除いて密閉瓶に入れる。
・ひまわり油とオリーブオイルを混ぜて瓶に注ぎ、口まで満たして蓋をする。
・切り落とした小片もびんに詰めてソースやクロスティーニに使う。
・びんのいくつかはぬるま湯200mlに塩大さじ1を加えた塩水で満たして塩水漬けにする。
・びんを鍋に入れて水で覆い、2分煮沸殺菌する。
・びんをふせて30分置く。
そもそも、肉をゆでずにローストする、という方法もあります。ローストビーフのマグロソースがけです。主役を豚肉にすれば、マイア―レ・トンナートになります。サルサ・トンナータは、子牛肉や鶏肉など味が軽めの肉に合うソースです。軽い肉とは、総称すると白肉です。豚肉だけじゃなくて、いろんな肉に合うはずです。
さて、ここから大喜利突入です。
そもそも子牛肉は高級な肉、庶民は簡単には手が出ないお高い肉です。ロンザは、直接豚肉とは言わないけど、豚のロースのことなので、ロンザ・トンナータと言うと、マイア―レ・トンナートより、ヴィテッロ・トンナートのフレンチ風高級感はそのまま、という高度なテクニックを用いています。ヴィテッロ・トンナータは、実はピエモンテではヴィテル・トンネと、思いっきりフランス料理っぽく呼びます。もちろん、フランスでは子牛のことはヴォ―veauと呼ぶのですが、そんなことはイタリア人も百も承知。フランス語っぽくしたいなら、ヴィテル・トンネてじゃなくヴォー・トンネが正解ですが、誰もそうは呼びません。先のサッカーワールドカップで日本がドイツに勝った時、イタリア人がお大喜びしたという困惑する話が伝わってましたが、お隣の国をライバル視する複雑な感情は、なかなか理解しがたいものがありますよね。
というわけで、イタリア人だけが知っている、豚ロースをフレンチ風にする裏技は、豚ロースをロンザと呼ぶ、でした。
ロンザ・トンナータLONZA TONNATA
主婦の裏技満載のフライパンで作るロンザ・トンナータでした。ワインの栓の抜き方カッコいい。
バリエーションの1つ、七面鳥のトンナートTacchino tonnato。
以上(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ7月号)P.32の“アンチョビ風味のリチェッタ”の解説でした。
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